美智子の弟子達が家族の話をしていたとき
それはノートンの一言で始まった

「ねぇ、君はどうやってうまれたの?」

皆の視線がジョゼフに集中する

「どうって……君達と同じだよ。母からうまれたんだ」
「つまりお母さんもお人形?」
「違う違う、作ってもらったんだよ」
「あぁ、生みの親ね」

ちゃんと伝わっていないことはすぐにわかった
恐らく自分が人形の身でいるせいで母=造り手と思っているのだろう

「君達と同じだと言っただろう?作られたのではない、産まれたのだ」
「いやいや、だってお前さん人形じゃん?」
「人形の身体ってだけさ。普通の人形がこんな風に喋って動くのかい?」
「そ、それはそうだけど……」
「信じられないと言うのなら仕方ない」

ジョゼフが席をたち部屋に帰ってしまった
怒らせてしまったのかと不安だったが案外彼はすぐに戻ってきた
手には1枚の写真を持っている

「ほら、これが私の両親だ」

見せてもらった写真にはジョゼフを抱く人物とその横に立つ人とは思えない者
写真からでも伝わる恐怖
頭には角があり瞳は深淵の様に深く暗い
関わってはいけないタイプの化け物
ここに居た誰もがそう思った
ただひとりを除いて

「こっちが父で、私を抱えているのが母だ」
「お母さんは普通の人間なの?」
「うーん……この時はまだ少し混じっていたかな、でもそうだね、母は人間だよ」
「混じってる……?」
「長く父と居るから“寄ってしまった“んだよ」

恐らくジョゼフの言っていることがよくわかっていないのだろう
とりあえず母は人だと言うことはわかったならそれでいいらしい
ふーん、と視線を写真に戻す
この場で興味津々に写真を眺めるのはノートンだけだった

「お、親父さんはなかなか……その……」
「怖いだろう?でもああ見えて父は大天使なんだよ」
「て、天使?」
「悪魔の間違いでは?」
「人の親を悪魔とは失礼だなぁ」

だって、と言われるがまぁ無理もない
ジョゼフ達のような人ならざる者はいつだってそういう扱いを受ける
わかっているさ、と言おうとすると写真を見ていた彼が言う

「綺麗な目……ジョゼフの目はお父さんに似たんだね」
「そうかい?ありがとう、ノートン」
「綺麗ってお前……」
「真っ暗で怖くないの……?」
「?透き通ってて、奥に見える深い蒼がとても綺麗だなって……皆には見えないの?」
「子供と大人とでは物の捉え方が違うってだけだろう」

子供扱いしないで!とノートンが怒る
父の目をそのように言ったのは彼で2人目だ

「綺麗なのに……」
「ふふ、君は私の母とよく似ている」
「?お母さんと?」
「物事の本質を見る目を持っていることと、母は君のように優しくて強い人だ」

きっと弟子達の誰よりも優秀な導師になるだろう
そう言ってジョゼフはノートンの頭を撫でた

「……でも、僕にはお母さんが居ないから、きっと無理だよ……」
「立派な母が居るじゃないか」

キョトン、と目を丸くする
ジョゼフはカーテンを指さす

「皆、そろそろ休憩は終わりやよ」
「はーい」

美智子が顔を出す
彼はきっとあの人のことを言っているのだとわかった

「素敵なお母様だね」

私の母には負けるけど

写真を回収し部屋へ戻ろうとするジョゼフ
ノートンはニッコリと笑いジョゼフの背にさけぶ

「僕の妈妈が1番だもん!!」

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