「あ」

突然パキン、と言う音がしたと思えば魔物管理者の影が声を上げる
正確には影にいる者
普段は影に入っている彼が表へ出てきた

「ちょっと、場所を考えて出てきて下さいっていつも……どうかされました?」
「うーん……飾りが壊れてしまってね」

ほら、とアズラーイールの手が開かれ真っ二つに割れた物が顔を表す
どこの飾りだろうかと彼を見る
服ではない
徐々に視界を上に持っていくが壊れた物があったと思われる場所がわからない

「ここだよ」
「……あぁ」

彼自身が指を指しやっとそれが何なのかわかった
人ではないアズラーイールの頭にある角の先端に付いていた飾りだったらしい

「取れるんですか、それ」
「後付けのカバーみたいな物さ、角の先端が尖っているせいであちこちに引っかかってね」
「僕はそれ角の一部だと思っていました」
「残念ながら適当に見繕っただけの物さ」
「へぇ」

どこから出したのか分からない書類に今の話をこと細かく書いていく
職業病というものなのだろうか
アズラーイールは別に気にしていないがたまに同僚から呆れた顔をされていることに彼はまだ気付いていない
飾りをもっと見たいと言うのでもう使えないからあげるよ、と彼に手渡す

「これってすぐに代わりを用意できるんですか?」
「出来なくはないけどそのままにしていても困らないからなぁ」
「あちこちに引っかかるのでは?」
「昔は表を歩いていたからね、今は君の影に潜るから特に問題は無いんだ」
「……ふぅん」

壊れた飾りを袋に詰めポケットへ入れる
振り返り行きますよ、と言った彼の背中は何かを考えているようだった

数日後、魔物管理者から小さな包みをもらった

「なんだい?」
「開封すればわかりますよ」

それはそうだけど、と文句を言いながらも封を解いていく
中には先日壊れた飾りによく似たものが入っていた

「もしかして直してくれたのかい?」
「いえ、直すような技術は持っていないので」
「え、でもこれ……」
「直せないので一から作りました」
「……わぉ」

予想の斜め上だった
壊れた飾りを見本に一から作るなんて誰が想像出来ようか

「最近なんかゴソゴソやってるとは思ったけど……作ったかぁ……」
「気に入らないのならば捨ててくれていいですよ」
「いいや、十分すぎるものを頂いてしまったよ」
「そうですか」
「わざわざ作ってくれるなんてね」

所々歪であってもしっかりと作られた物で試しに付けてみるとピッタリだった
サイズを測った訳でもないのに
割れた飾りからそこまで分かるのか、と感心する

「似合うかい?」
「……やっぱり素人の作ったものでは差が出ますね」
「気にしないよ、君しか見ないんだから君がいいなら良しさ」
「貴方は背が高いのでほとんど見えませんけどね」

見えないのなら無くても良かったのでは?と疑問に思ったが彼なりの理由があるのだろう
今まであった物が無いと落ち着けない、とか

「どうしてわざわざ作ってくれたんだい?」
「貴方が不便だと言ったからです」
「うん?でも君の影に居たら問題ないって前にも……」
「隣を歩けと言っているんですよ」

驚いた
表に出ていると嫌な顔をするくせに
でも最近はあまり文句を言わなくなった気もする

「ふふ、君も変わったね」
「だとしたら貴方が変えたんです」
「そっか……悪い気はしないね」

スルリと彼に寄り添い抱きしめる
身を委ねるように腕に擦り付く彼が愛おしい

「それに」
「うん?」
「こうして僕が貴方に触れる時、怪我をしたら貴方が悲しむでしょう?」
「……そうだね」

ぎゅう、と強めに抱きしめる
自分のことしか考えていなかった自分が恥ずかしくなってきたアズラーイールの気持ちを汲むように魔物管理者は言う

「一緒に過ごすこと、これから慣れていきましょう」
「うん」

珍しく魔物管理者から頬にキスをする
自分からしたのに恥ずかしいのかアズラーイールの腕に顔を埋めるように潜っていく
驚いたが嬉しさが込み上げて彼の顔が見えるように抱き直した

「ふふふ」
「なんですか」
「嬉しいだけ」

この幸せが続くことを祈る

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