誓約
山積みの仕事を終え彼の病室へ帰る
今日は何をした、誰と話した、と一生懸命に話す姿は実に健気で微笑ましく少し疲れが和らいだような気がした
もう少し仕事が落ち着いたら、と考えていたがこの職場で暇な日などない
ならば早々に終わらせよう
「ノートン、今から少しだけ院内を歩こうか」
「夜は出歩いちゃダメっていつも怒るのに?」
「今日は特別。それにこれは君と私だけの秘密だ、みんなには内緒だよ」
わかった、と良い返事をするがおそらく1週間もしない内に忘れて仲の良い患者達に話してしまうだろう
人の口に戸は立てられぬと言うやつだ
ノートンは素直な分聞かれたことに答えてしまう
今回の外出がバレて彼らから狡いと責められたノートンが仲間外れにでもされれば最高なんだけど、とジョゼフは考えていた
他の患者が逃げようがどうなろうが知ったことではない
今の私には”最高の実験体”がいる
早く、早く私のモノにしなくては
「さ、みんなにバレないようにそーっと行こう」
「はーい!」
「shhh……」
「んむっ!」
「ふふ、息は止めなくていいんだよ」
はっとした表情で口を塞いでいた手を退かし息を吸い込む
空いた手が先に行ってしまうジョゼフの袖を掴んだ
勝手に歩き回るよりはいいだろうとそのままにしておくと許されたことが嬉しかったのか機嫌良くついてくる
地下にある病室を出て中庭へ
そのまますぐ側にある礼拝堂へと進む
袖を掴む手を離しノートンを抱き上げて裁断へ座らせ話しかけた
「今日のお出かけは君と大切な話をするために来たんだよ」
「なぁに?」
「ノートンは先生の事、大好きだろう?」
「うん!」
「私も君の事が好きだよ。だからね、君と番になろうと思う」
「先生と?でも僕……」
1度は嬉しそうな顔をするがすぐに項垂れてしまう
オメガという人種がそうさせるのか運命とやらを信じているらしい
運命の番……そんなもの気のせいだとジョゼフは思っている
しかしそれで納得するのなら利用させてもらう
「まだピンと来ていないだけで私達は運命の番だよ」
「そう、なの?」
「あぁ、私がそう感じている。私だけ、なんて一方通行な運命なんてアリはしない」
「そっ、かな……僕、先生の事大好き……大好きだけど、まだわからない……けど、運命……?」
自分だってそんな出会いがあったわけでない
噂で聞いたものは出会ったらすぐにわかるものらしい
そう考えるとジョゼフとノートンは運命の番では無いのだろう
しかしそんなことは関係ない
ジョゼフが欲しいのは伴侶ではないのだから
しかし実験のためにも彼には番になってもらわなくてはならない
説得をしようとジョゼフが口を開く前にノートンが喋った
「僕、先生と番になる」
「……沢山悩んでいたけどいいのかい?」
「うん!だって先生のこと大好きだし、これからも先生のことずっと大好きだもん!」
「ありがとう、じゃあ誓いを立てようか」
お互いを愛しそばにいると居もしない神の前で誓い合い、キスをする
結婚式の真似事だがノートンには嬉しくてたまらない様子だった
こんなことをせずとも番にはなれるがノートンを納得させてからでないと無理矢理番にした、と悪い噂が立ってしまう
催眠を使えば楽なことでも何かの拍子に解けてしまったら、と考えるとこちらの方が都合は良い
神に誓ったことを信心深いノートンがおいそれと否定はしないだろう
あとは部屋に戻り”あれ”を済ませるだけでいい
「これで先生と僕は番になったの?」
「あともう1つ、でもそれは病室に帰ったらするんだよ」
「なんで?」
「2人だけの約束だから誰にも見せちゃいけないんだ。神様にもね」
「わかった!」
早く戻ろう、とノートンはジョゼフの袖を掴む
この後どうするのか、聞いたらどんな反応をするのだろうか
はいはい、と袖を掴む手を繋ぎ直しふたり並んで彼の病室へと帰っていった
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