今日は新しい患者、ノートンのカルテを作るために様々な検査をしている
特に異常は見つからなかった
大きな事故にあったと聞いていたが後遺症と言えばあの幻覚と体に残る火傷くらいだ
運がよかっただけなのか、生命力が強いのか
どちらにしてもいい実験台になる
最後の1枚に目を通す
そこには驚く結果が出ていた

「Ω……」

Ωは社会的に下位の性質
何をしても問題にならない、という点では最高だ
しかしΩには特殊な準備がいる
その手配も担当医になる自分がやらなくてはいけない
度重なる難題にまた頭が痛くなる

「君は自分がΩだと知っているかい?」
「……?」
「……こういう薬を飲んでいなかったかい?」
「それ、持ってる」

事故に遭う前は抑制剤だと知っていたようだが今ではなんの薬か分からずに飲んでいたらしい
あとこれも、と番事故防止用のチョーカーも持っていた

「それは今すぐ首に付けなさい。お風呂に入る時以外に取ってはいけないよ、いい?」

こくん、と頷き首に巻く
聞き分けがよくて助かる
とりあえず彼の部屋を大部屋から個室へ変えるように事務へ電話する

「ごめんね、急遽君の部屋が変わるからもう少し待ってておくれ」
「なんで?閉じ込めるの……?前の所みたいに!また僕を閉じ込めるの?!やだ!!いやだ!!」
「落ち着いて、隔離はするけど閉じ込める訳では無いよ」
「うそだ!!!うそだうそだうそだ!!!!いやだ!!帰る!!!病院なんてやだ!!!」

ここに来る前の病院で余程ひどい扱いを受けたらしい
必要ないと思っていたが仕方がない

「わかったわかった、とりあえず水を飲んで」
「……なにか入ってるんだ」
「ただの水だよ、ほら」

疑い深い彼を納得させるために自らもその水を飲む

「ね?ただの水だよ。叫んで喉が乾いただろう?さぁ」
「……」

まだ疑ってはいるようだ
それでも目の前で飲んでみせた甲斐あって口をつける
今がチャンスだろう

「落ち着いたらこっちを向いて。診察の続きをするから」
「やだ。帰る」
「帰るのは診察が終わってからでもいいだろう?」

はい、っと椅子へ座らせる
真正面からノートンを見つめ、ゆっくりと話しかける

「私の目を見て……そう、いい子だね。私の質問に答えておくれ」
「……はい」

必要な情報は聞き出した
次は

「君はどういう人を信頼する?」
「……優しい、人……たた、かない……」
「叩かれたのかい?酷いねぇ……よしよし、私はそんなことしないよ」
「本当……?」
「本当だとも。現に君を叩いてないだろう?」
「う、ん……」
「ほら、私は信頼出来る人間だろう?」

疑い深い子は催眠にかかりやすい
あと少しで堕ちるだろう

「もっと私の目を見てご覧」
「うん……き、れい………」
「ふふふ、ありがとう。綺麗なものは好きかい?」
「すき……」
「なら、私の事も好きだね」
「す、き………?」

あと一押し
もうすぐ、もうすぐ

「うん、君は私の事が好きなんだよ」
「せんせぇが、すき……」
「私も君が好きだよ、ノートン」
「すき、せんせぇ、すき……」

出来上がり
これで彼は私の思うがまま

「さぁおいで、君の部屋へ案内しよう」
「うん……うん、せんせぇ……」

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