宣戦布告
※怪盗パロ※
「こんばんわ」
声は上からした
時刻は0時過ぎ
今日はトラブルがあり仕事が先程終わって帰る所だったノートン
こんな時間に人と会うことなどまずない
ビクリと思い切り肩が跳ねた
「あぁ、驚かせてすまない」
耳にいい声が降ってくる
暗くて姿が見えないがその声には聞き覚えがあった
「今降りるよ。危ないから動かないで」
「は……?」
声の主が居る場所は結構な高さだった気がする
しかし彼は優雅にコートを舞わせトンッと目の前に降りてきたのだ
「やぁ」
「貴方は、月下の紳士………」
月下の紳士
この街でその名を知らない者は居ない
彼は巷を賑わせる宝石専門の怪盗だ
本来は月下とだけ名乗っているが周りが彼の立ち振る舞いを見て勝手に紳士と付け加えて出来たコードネームが月下の紳士
それが気に入ったようで今では自分からそう名乗っている
そんな彼がなぜここに?と首を傾げるノートン
彼とは面識はない
この姿では
「ノートン・キャンベルくん、だよね?」
「……そう、ですが……貴方が欲しがるような宝石なんて僕は持ってませんよ」
ほら、と両手をあげる
きっと目当ては自分だろうと分かりきっているが態と知らないふりをする
「私がそんな追い剥ぎみたいなことしないって君なら知っているだろう?」
「さぁ……初対面ですから」
「誤魔化さないでよ。いつも一緒に居るのに」
「なんの事やら。貴方のことなんて知りません」
「そんな寂しいこと言わないでおくれ。mon pote」
彼を見た時に感じた嫌な予感
杞憂であって欲しかったがどうやら当たってしまったらしい
「いつもの呼び方ならちゃんとお話してくれるかい?ねぇ、モグラ」
そう言ってノートンの鼻を啄く月下
やっぱり、と目を閉じため息が零れる
「はぁ……人の素性を調べるなんて、ナンセンスですヨー月下」
「欲しいものはしっかり調べる性分なんだ」
「何馬鹿なこと言ってるんですか」
モグラ
彼も月下と同じように宝石専門の怪盗
最初こそ対立していたが最近はタッグを組み2人組で行動することが多い
ちなみにモグラと言うコードネームは彼の侵入経路が地下ばかりでまるで地中にいるモグラの様なやつだ、と言うことで付いたらしい
「で、ワタシの正体を知ってどうしたいんですか?こちらの所有する宝石でもほしいんです?」
「別に宝石目当てじゃないよ」
「じゃあなんでこんな……」
「言っただろう、欲しいものはしっかり調べるって」
「だから、それは宝石の事でショウ?」
「違う違う、私が欲しいのは……」
君だよ
そう言ってる投げキスをする
さっきからこの人は何を言っているのだろうか
訳が分からなくなりノートンは頭を抱える
狙う宝石の好みは似ているが他は分かり合えないだろうと思っていた
それがこれ程とは
「はぁ……僕が欲しいとか……頭でも打ちましたか?」
「君って私にも自分にも失礼な奴だね」
「ドーモ」
月下が欲しがるような価値など自分にはない
それに異性ならまだしも彼らは同性だ
ノートンはどう考えても彼の頭が可笑しくなったとしか思えないのだ
「私は大真面目だよ。君が欲しいんだ」
「はいはい。もうお好きになさってください」
もう考えるのも疲れた
早く帰りたいと適当に遇う
「………適当に返事したこと、後悔させてやるよ」
「後悔もなにも……んぅっ?!」
不意に腕を捕まれ引き寄せられる
気付けば月下に唇を塞がれていた
空いている手で月下を突き飛ばすノートン
おっと、と後ろへよろける彼から少しでも距離を取る
「な、にを……!」
「何度でも言ってやる。私は、君が欲しい」
「欲しいって、そういう……?!」
「それ以外何があるんだい」
信じられない、と言う顔で月下を見上げる
ふふん、と鼻で笑い唇を舌で舐める
その姿に艶があり、思わず赤面する
「……ッ!」
「必ず物にするよ、ノートン」
何か言ってやろうと口を開くが言葉が出ない
そんなノートンの事情を気にすることも無く今日はもう帰るよ、とこちらへ歩み寄る月下
身構えていたが彼の方が早い
またね、とすれ違いざまに頬へ軽くキスをされた
殴ってやろうと振り返ればそこに月下の姿はない
上を見る
大きな月をバックに揺れる彼のコート
「〜〜〜〜っ!」
叫びたいが今は夜中だと思い出して声を我慢する
次会ったらあの綺麗な顔をぶん殴ってやる
そう決めたノートンだった
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