時計の針がカチリと動く
そろそろ日付が変わる頃だ
寝ようとふたりでベッドに入ったはいいものの、血の剣はなかなか寝つけないでいた
ちらりと横を見ればスヤスヤと寝息を立てる愛し子
寝顔を眺めていると彼から小さく息が漏れる
起こしてしまったかと思ったが再び寝息が聞こえてきた
少し体制が変わり彼の首が露わになる
そこから目が離せない

「……美味しそう」

ポツリと呟く
ハッとした時にはもう遅い
身体だけは素直なものだと自嘲気味にため息をつく
放っておけばどうにかなると思ったが目の前に広がる膳に熱が収まることはなかった
仕方ない、とベッドから出ようとする

「……つるぎ」
「……起こしてしまったかい?」
「ううん……どこ、行くの」
「ちょっと……」

後ろから愛しい声がする
いつもなら振り返るが今はそれが出来ない
罪悪感からだろう
きっと彼は気付いている

「どこに行くの?」
「まだ外は暗いよ、寝ていなさい」
「ねぇ」
「……いい子だから」

わかっている
口を開く度に彼を傷付けている
自分は彼の性格を利用する酷い奴だ
これ以上は、と何も言わずにベッドを出ようとしたがまた声がする

「いい子じゃないならいいの?」
「流浪……」

彼の手が服の裾を掴む
振り払えない
起き上がりゆっくりと彼が血の剣の背に抱きつく

「ねぇ……」

どうして、と続く声
じわりと背が濡れる
ああ、泣かせたくないのに

「許しておくれ」
「……やだ」
「流浪……」
「やだ」
「いい子にしてて」
「やだ」

これは何を言っても何をしても無駄だろう
粘り勝ちとはよく言ったものだ
仕方ない、と彼を剥がし向き合うように抱き上げる

「……わるい子なんだから」
「貴方ほどではありませんよ」
「そう、だね……」
「貴方はひどい人だ」
「うん」
「だから僕もわるい子になります」

絶対に引かないと目が言っていた

「……困っちゃうな」
「散々僕を困らせている人が何を」
「仕方がないじゃあないか」

こわいのだから

初めて彼に告げた
彼は目を丸くする

「……こわい?」
「うん……こわしてしまいそうで」
「そんな趣味が?」
「いや、これは本能って言うのかな……」

血族の純血種にはよくあることなんだよ、と彼は言った

「それは……猟奇的な意味で壊したいってこと?」
「まさか」
「じゃあ……」

なんで、と言いかけた所で血の剣が声を被せる

「求めすぎるんだよ」

恥ずかしそうに、そして切なそうな顔で流浪を真っ直ぐ見つめる

「君にはつらいかもしれない」
「……大丈夫ですよ」
「わからないよ」
「僕を誰だと思っているんですか」

舐めないでください
そう強く言われた

「君は強いな」
「貴方が弱いんです」
「はは、手厳しい」
「……剣」

見つめ合うふたり
流浪は目を閉じ彼のこたえを待った
落とされた口付けは決して軽くはない
彼の舌が強引に入ってくる
こんなキスをされるのは初めてだった
力強く腕を捕まれ離さないとばかりに流浪の舌を絡め取る
ぴちゃぴちゃとふたりの唾液が混じる音が耳を犯し流浪の思考を奪っていく
閉じることが許されない口から唾液が漏れ息苦しさで出た涙と混じる
声も吐息さえも逃がさないとばかりに口付けは深くなっていった

「ふ、んっ……んんぅ……、ふ、は、ぁ……はぁ……」

やっと離された口はふやけてしまったのではないかと思うほど感覚がなく閉じられないままでいた
そんな彼に軽いキスを落としながら服を脱がせていく

「ぁ、まっ、て………は、……息が………ッ……はぁ、は、ん……」
「……ノートン」
「ん……な、に……っ、…?」
「怖くなったら、ちゃんと言って」
「…ぅ、ん……」
「いい子」

また深く深く口付ける
血の剣の手が彼の身体を滑る度に熱い
上がる熱と酸欠でクラクラする頭に彼の声が響いた

「壊れないでね」

ゾクリと震える
こわくはない
むしろ彼に求められている事実に興奮を覚えた
きっと大丈夫
そう伝えるために彼の手を握った

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