「以上で報告は終わりです」
「ありがとう。お疲れ様、今日はもう終わりなさい」
「はい。血の剣様もあまり無理をならさぬよう……昨晩もお休みになられた時間が……」
「わかっているよ、ありがとう。流浪」
「……では、失礼します。」

流浪をココへ連れてきてから時間はあっという間に過ぎた
あんなに小さかった愛し子が今ではどの同胞よりも大きく強くそして賢く育った
血の剣から見ればまだまだ子供だが見た目はもう大人になった
仕事を手伝うようになってからは更に成長し、誰よりも信頼出来る側近の1人である

「ふふ、あの子にお小言を言われるようになるなんてね」
「君を心配してくれてるんだよ」
「わかるとも。昔から変わらずいい子のままさ」
「本当に……あ、そろそろ私も終わっていかな?」
「うん?あぁ、いいよ。ご苦労さま」

もう1人の側近である血影にも終わるよう指示を出す
早く終わりなよ、と釘を刺して彼は部屋を出て行った
あと少し、これをまとめたら終わろう
コンコン
再び机に向かう血の剣の部屋をノックする音がした

「どうぞ」

扉から顔を覗かせたのは先程自室へ帰らせたはずの血影だった

「どうしたんだい?忘れ物?」
「言い忘れたことがあってね。この後少し空けるから何かあったら蝙蝠でお願い」
「はいはい、行ってらっしゃい」
「いってきまーす」

血影はたまに仕事が終わると外へ行くことがある
朝には戻るし楽しそうにしてるからいいか、と放っている
それに血影がいない日は自分にも益がある
コンコン
再びノック音が部屋に響く

「どうぞ」
「失礼します」
「いらっしゃい」

そこにはいい香りに包まれた流浪がいた
血影が出かける日にはこうしてお茶を淹れて来てくれる

「いい香り。今日はなぁに?」
「レモンティーです」

お茶を受け取るために仕事を中断する
今日はお菓子も用意しているらしくいそいそと用意する流浪

「珍しいね、お菓子まであるなんて」
「今話題だと先見の君にお聞きしたので」
「ふーん……なんて言うの?それ」
「スコーン、と言うらしいです」

初めて聞く食べ物だった
ジャムや紅茶などに合うと聞いて取り寄せてもらったらしい
彼の淹れてくれた紅茶を飲む
次にスコーンとやらを小さくちぎって食べてみた
サクッとした食感にふわりと甘さが広がる
スコーン自体の味付けは薄くジャムや紅茶に合う、と言われている理由がわかる

「あ、美味しい」
「よかった」

大人になってからはあまり笑わなくなった彼が柔らかく笑う
昔は花が咲くように笑っていたが今は綺麗に笑うようになったなぁとお茶を飲みながらしみじみ思う
少し話してお茶とお菓子が終わる頃にはすっかり日付が変わりそうな時間になっていた

「いけない、ゆっくりしすぎてしまった」

再開しないと、と立ち上がる血の剣を流浪が腕を掴んで止める

「無理しないで、って言ったよね」
「でも今日の分が終わってないのはよくないでしょ?」
「ダメ。今日はもう終わり」

大きくなり力が強くなった流浪に腕を掴まれたらなかなか動けない
それに真っ直ぐ血の剣を見つめる目が譲る気はない、と言っている

「仕方ないなぁ……明日早起きしてやるとしよう」
「うん」

諦めて再び座る
腕を掴んでいた手はするりと手に降り、重なる指と指を絡ませる

「君、最初からこうするつもりだったでしょ」
「さぁ、なんの事だかさっぱり」
「もう」

甘えん坊だな、と彼の額に口付ける
それを素直に受け入れる流浪

「きて、剣」
「仰せのままに my boy」

夜はまだ長い

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