買取
下品な笑い声が響くホール
使用人がほしい
そう相談しただけでなぜこんな場所に連れて来られなければならないのか
タバコや酒、香水の匂いが充満するそこに長居したいとは思わない
司会がハンマーを叩く音がした
人が人を買う
俗に言う闇オークション
頭が痛い
「どうですか?楽しんでいただけてます?」
「おかげさまで。しかしなかなか盛況ですね」
「ここは物がいいですから。貴方も欲しいと思ったら手を上げないとあっという間ですよ」
「そのようですね」
また1人、落札されたようだ
私が欲しいのは使用人であって奴隷ではない
しかし収穫ゼロでは彼の顔に泥を塗ることになる
(参ったな……まだ利用価値はあるんだが……)
適当に選んで金でも握らせて追い出そう
一刻も早く帰りたい
しかし次々出てくる女はどれも高値で落札されていく
どうしても欲しいものではない
そんなものに大金を出せない
困っていると次にステージに上がった人間には誰も手を上げなかった
それもそのはず
男だった
女を目当てに来る豚に男など用はない
見目が良ければ何人かは手を上げるだろうが顔や腕にやけどがある
こんな人間誰が買うか、とボヤく輩もいる
(確かに見目はあれだが……これならちょうどいい)
彼は手を上げた
スタートの金額の10倍の値で
ざわつく会場
司会までもが狼狽える
「他にいないのか?なら決まりでは?」
「は、はい!では、この商品はこれで……」
「ちょ、ちょっとデソルニエーズ伯?!なぜなのような者を……!?」
「使用人として良いと思ったからですよ。それでは手続きがるのでこれで」
買った彼を迎えにいく
金を小切手で支払い彼の手を引いて会場を後にした
「身なりを整えろ」
そう言って彼をバスルームに投げ込む
あとで自分も入るため用意をしておく
あれやこれやとしてると男が出て来た
彼にバスローブを放り投げそれでも着ていろと言えば素直に従った
「よし、こっちへこい」
返事は無いがちゃんと付いて来ているようだ
部屋に前に立つ
「今夜はここを使え」
男はコクリと頷く
「喋ることができないのか?」
「……いえ」
「なら返事くらいをしろ。あと本心を言えば私はお前のことは要らない」
「ならなぜ」
「あの場を離れるためと建前だ」
隠すこともなんだろうと淡々を事のあらましを話す
「お前がここを出たいのなら好きにしろ。ただしその場合、お前を買った分の金額を今すぐに払ってもらう」
「……そんなお金ないです」
「だろうな。あんな場所で売られるくらいだ」
「僕はどうしたら、いいですか」
「金額分働いて返せばいい。使用人の真似事をして数年も働けばすぐだ」
使用人が欲しいのは本当
「わかりました。金額分、ここで働かせていただきます」
「よろしい。明日にでも仕立て屋を呼ぶ。それまでは私の服を着ていろ」
「はい」
「先に休んでいろ。私はまだやることがある」
そう言って部屋立ち去ろうとするジョゼフを彼は呼び止めた
「あの、なんとお呼びすれば……」
「あぁ……私はジョゼフ。好きに呼べ」
「ではジョゼフ様と」
「お前は」
頭にハテナを浮かべる彼
天然なのだろうか
「お前の名は、と聞いているんだ」
「ぁ……失礼しました。僕はノートン、ノートン・キャンベルです」
「ではノートン、おやすみ」
「おやすみなさいませ、ジョゼフ様」
明日から頼むぞ、と言って彼は行ってしまった
言われた通り部屋に入って休もうとするノートン
1人用の小さなベッドに綺麗なシーツが敷かれいい匂いがした
「こんな良いベッドで寝て良いのだろうか……」
躊躇いはあったがそこに倒れこみたいと言う欲求もあった
悩んだ末、誘惑に負け横になる
「ふかふかで、気持ち良い……」
気付けばそのまま寝ていた
用事を済ませ、彼がちゃんとベッドで寝ているか確かめに来たジョゼフは思わず笑ってしまう
ノートンの寝顔は子供のような笑みを浮かべ口には少しヨダレが垂れていた
「ふふ、これなら疲れが取れることだろう」
おやすみ、と電気を消して部屋を出る
部屋に戻り自分もベッドへ入る
「あの顔、カメラに収めたかったなぁ」
そう呟いて深い眠りについた
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