守るべきもの
外から帰れば城内が騒がしかった
「何事だ」
「血の剣様!!流浪様が……っ!流浪様が協会の者に攫われました!!」
ピリッと空気が凍りつく
血の剣が怒っていると誰もがわかった
その場にいた者全員が緊張で動けなくなる
「血影は」
「ぁ、ち、血影様は現在追跡中です!」
「わかった」
静まり返ったホールにカツカツと音を立て玉座へ向かう
そして玉座を背に血の剣が声を上げた
「此度の件は私と血影が受け持つ。皆はいつも通りの仕事をしろ」
「で、ですが……」
「聞こえなかったのか」
血の剣の眼が鋭く光る
ビクリと体が跳ねる
「仕事へ戻れ」
「は、はい!」
蜘蛛の子を散らすように皆ホールを出た
追跡中の血影と蝙蝠を使いコンタクトを取る
「何処にいる」
「“西ノ森ノ奥。我等ト人ノ境界ノ近クニ拠点アリ“」
「流浪は」
「“寝テイルヨ。檻ニ入レラレテイル“」
「わかった。其方へ向かう」
その場で手を上げていない、となれば目的は1つ
血の剣を誘き出すことだろう
窓を開け方向を確認する
血影の気配を捉えた血の剣はそのまま翼を広げ一直線に飛ぶ
一瞬と言う言葉が適切だろう
今飛び立った血の剣は既にもう血影の隣に降り立っていた
「状況は」
「君のご到着を待っているみたいだよ」
ほら、と指さす先には眠らされ檻に入れられた流浪とそれの上に座る人間達
それらはもう血の剣を仕留めたつもりでいるようだった
「どうする?」
「お前はここに。何かあれば流浪を最優先に動け」
「仰せのままに」
バサリと大きな音を立て彼らの前に出る
予想以上に早く来た血の剣に驚き顔を引き攣らせる
「要件は?」
「はっ、話が早くて助かる。我らが求めるはただ1つ。貴様の首だ」
「そう。ならその子は解放してもらおうか」
「心配しなくてもあんたを仕留めたら同じようにしてやるから安心しろよ!!」
下品に笑う人間達
そう言うと予想していた血の剣は血影に合図をする
(あの子を)
(oui)
注目を集めるため、マントを脱ぎ捨て剣をその上に投げる
キョトン、としている人間に血の剣は冷たく笑いながら言う
「ハンデだ。私はここから動かない」
言葉の重みと彼の眼が流浪を人質に取り自分達が優位だと奢っていたことを後悔させた
1人が血の剣へ銃口を向ける
狙いを定めようとしているが手が震えていては意味が無い
1人は銀の剣を握りしめにじり寄る
しかし何処までが血の剣の間合いかわからず動くに動けなかった
全員の意識が血の剣へ集中する
今、と血影は彼らの影を使い檻まで辿り着く
そして音もなく流浪を檻ごと回収した
全てを見ていた血の剣は安堵し力を抜く
それを隙だと思った人間達が動き出す
しかし血の剣は動かない
「微塵でも、私に勝てると……馬鹿にされたものだ」
そう呟いた
その言葉に人間達はまた動けなくなっていた
先程までは出していなかった殺気
腰を抜かしガチガチと歯を鳴らす者もいた
流浪がこちらに居るのであれば取り繕う必要は無い
「い、いいのかよ……そんな態度とって……!愛しの……ッ?!おい!!居ねぇぞ!?」
「檻ごとねぇじゃねぇか???!!!」
「い、いつの間に……?!」
「大事な人質を!!!目離す馬鹿がいるか!!クソッタレ!!使えねぇな!!!」
「私の愛し子が、なに?」
「ひぃ……っ!!」
目の前の死が怖い
何人かは武器を捨て逃げ出した
「お、おい待て!!!おい!!!」
「ねぇ」
「ひっ…?!」
「首、取るんじゃなかったの?」
血の剣の口角が上がる
紅い唇から白く鋭い牙が覗く
眼が笑っていない
「っ!!」
残った奴らだけでも戦うつもりらしい
血の剣を囲み一斉に攻撃する算段のようだ
「頼みのマントがなきゃ防げねぇし飛べもしねぇだろっ?!死ね!化け物!!」
響く銃声
こちらへ飛んでくる弾丸
それを血の剣は一つ一つ掴んでポイッと投げ返す
「なっ、なん、で……!!」
「あんなもの止まって見えるに決まっているだろう。それに私には銀の弾丸なんてものは効かないよ」
何年お前達協会の人間と対峙したと思っているのさ
そう吐き捨て相手の戦意を砕いていく
「そうそう、今から死ぬ貴様等に教えてやる義理なんて本当はないのだけれど……冥土の土産ってやつかな」
涼しい顔のままメキメキと痛々しい音を立てて血の剣の腰の辺りが膨らむ
その膨らみはやがて大きな羽根になった
そして自らの腕に爪を立て血を流す
血は鋭く靱やかな美しい剣に形を変える
「剣やマントは飾りさ。あんなもの無くても何一つ困りはしない」
「だ、騙したな……!」
「人聞きの悪い。貴様等人間が勝手に勘違いしているだけだろう?」
「ち、ちくしょう!!!」
「さて、最期の言葉はそれでいいかな?」
血で出来た剣が赤く光る
「Adieu」
血の剣がそう言うと辺り一面“紅“が広がっていた
「血影」
「はぁい」
「流浪は」
「大丈夫。傷ひとつ無いから安心して」
「よかった……」
血影の腕の中でスヤスヤ眠る流浪
恐らく薬か何かだろうと血影は言う
無事なら何でも良かった
「帰ろう」
「そうだね、はい」
「ありがとう」
血影から流浪を受け取り優しく抱き締める
眠る彼がまだ目を覚まさないようにゆっくり飛んで城へ戻った
後日落ち着いてから詳しく話を聞くと寝ている間に起こったことで流浪はなにも知らないらしい
また何かあってはいけないとあの日から流浪にはたまに血影が着くようになったそうだ
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「血の剣様!!流浪様が……っ!流浪様が協会の者に攫われました!!」
ピリッと空気が凍りつく
血の剣が怒っていると誰もがわかった
その場にいた者全員が緊張で動けなくなる
「血影は」
「ぁ、ち、血影様は現在追跡中です!」
「わかった」
静まり返ったホールにカツカツと音を立て玉座へ向かう
そして玉座を背に血の剣が声を上げた
「此度の件は私と血影が受け持つ。皆はいつも通りの仕事をしろ」
「で、ですが……」
「聞こえなかったのか」
血の剣の眼が鋭く光る
ビクリと体が跳ねる
「仕事へ戻れ」
「は、はい!」
蜘蛛の子を散らすように皆ホールを出た
追跡中の血影と蝙蝠を使いコンタクトを取る
「何処にいる」
「“西ノ森ノ奥。我等ト人ノ境界ノ近クニ拠点アリ“」
「流浪は」
「“寝テイルヨ。檻ニ入レラレテイル“」
「わかった。其方へ向かう」
その場で手を上げていない、となれば目的は1つ
血の剣を誘き出すことだろう
窓を開け方向を確認する
血影の気配を捉えた血の剣はそのまま翼を広げ一直線に飛ぶ
一瞬と言う言葉が適切だろう
今飛び立った血の剣は既にもう血影の隣に降り立っていた
「状況は」
「君のご到着を待っているみたいだよ」
ほら、と指さす先には眠らされ檻に入れられた流浪とそれの上に座る人間達
それらはもう血の剣を仕留めたつもりでいるようだった
「どうする?」
「お前はここに。何かあれば流浪を最優先に動け」
「仰せのままに」
バサリと大きな音を立て彼らの前に出る
予想以上に早く来た血の剣に驚き顔を引き攣らせる
「要件は?」
「はっ、話が早くて助かる。我らが求めるはただ1つ。貴様の首だ」
「そう。ならその子は解放してもらおうか」
「心配しなくてもあんたを仕留めたら同じようにしてやるから安心しろよ!!」
下品に笑う人間達
そう言うと予想していた血の剣は血影に合図をする
(あの子を)
(oui)
注目を集めるため、マントを脱ぎ捨て剣をその上に投げる
キョトン、としている人間に血の剣は冷たく笑いながら言う
「ハンデだ。私はここから動かない」
言葉の重みと彼の眼が流浪を人質に取り自分達が優位だと奢っていたことを後悔させた
1人が血の剣へ銃口を向ける
狙いを定めようとしているが手が震えていては意味が無い
1人は銀の剣を握りしめにじり寄る
しかし何処までが血の剣の間合いかわからず動くに動けなかった
全員の意識が血の剣へ集中する
今、と血影は彼らの影を使い檻まで辿り着く
そして音もなく流浪を檻ごと回収した
全てを見ていた血の剣は安堵し力を抜く
それを隙だと思った人間達が動き出す
しかし血の剣は動かない
「微塵でも、私に勝てると……馬鹿にされたものだ」
そう呟いた
その言葉に人間達はまた動けなくなっていた
先程までは出していなかった殺気
腰を抜かしガチガチと歯を鳴らす者もいた
流浪がこちらに居るのであれば取り繕う必要は無い
「い、いいのかよ……そんな態度とって……!愛しの……ッ?!おい!!居ねぇぞ!?」
「檻ごとねぇじゃねぇか???!!!」
「い、いつの間に……?!」
「大事な人質を!!!目離す馬鹿がいるか!!クソッタレ!!使えねぇな!!!」
「私の愛し子が、なに?」
「ひぃ……っ!!」
目の前の死が怖い
何人かは武器を捨て逃げ出した
「お、おい待て!!!おい!!!」
「ねぇ」
「ひっ…?!」
「首、取るんじゃなかったの?」
血の剣の口角が上がる
紅い唇から白く鋭い牙が覗く
眼が笑っていない
「っ!!」
残った奴らだけでも戦うつもりらしい
血の剣を囲み一斉に攻撃する算段のようだ
「頼みのマントがなきゃ防げねぇし飛べもしねぇだろっ?!死ね!化け物!!」
響く銃声
こちらへ飛んでくる弾丸
それを血の剣は一つ一つ掴んでポイッと投げ返す
「なっ、なん、で……!!」
「あんなもの止まって見えるに決まっているだろう。それに私には銀の弾丸なんてものは効かないよ」
何年お前達協会の人間と対峙したと思っているのさ
そう吐き捨て相手の戦意を砕いていく
「そうそう、今から死ぬ貴様等に教えてやる義理なんて本当はないのだけれど……冥土の土産ってやつかな」
涼しい顔のままメキメキと痛々しい音を立てて血の剣の腰の辺りが膨らむ
その膨らみはやがて大きな羽根になった
そして自らの腕に爪を立て血を流す
血は鋭く靱やかな美しい剣に形を変える
「剣やマントは飾りさ。あんなもの無くても何一つ困りはしない」
「だ、騙したな……!」
「人聞きの悪い。貴様等人間が勝手に勘違いしているだけだろう?」
「ち、ちくしょう!!!」
「さて、最期の言葉はそれでいいかな?」
血で出来た剣が赤く光る
「Adieu」
血の剣がそう言うと辺り一面“紅“が広がっていた
「血影」
「はぁい」
「流浪は」
「大丈夫。傷ひとつ無いから安心して」
「よかった……」
血影の腕の中でスヤスヤ眠る流浪
恐らく薬か何かだろうと血影は言う
無事なら何でも良かった
「帰ろう」
「そうだね、はい」
「ありがとう」
血影から流浪を受け取り優しく抱き締める
眠る彼がまだ目を覚まさないようにゆっくり飛んで城へ戻った
後日落ち着いてから詳しく話を聞くと寝ている間に起こったことで流浪はなにも知らないらしい
また何かあってはいけないとあの日から流浪にはたまに血影が着くようになったそうだ