魔法は3秒で解けました



 100グラム足りなかった、と。
 ノックもせず、部屋に入ってくるなりダヴィンチ氏は言った。

「しまった、私としたことが……! 100グラム足りなかった! すまない立香ちゃん」
「ハイ?」



 一昨日の昼下がり。立香を工房に呼んだダヴィンチ氏は、二つの液体を机上に並べた。
 パッションピンクとブルーハワイ。カッと目の冴えるような発色は、いやに毒々しい。

「こいつとこいつ。いわゆる魔法の薬で、説明書によれば、正しく調合することで愛の霊薬も真っ青の惚れ薬ができる、と」
「はあ、魔法」
「どうだい一発。私の研究に助力するつもりでさ、ロマニにでも」
「……!」



 立香はさっそく想い人であるロマニ・アーキマンのコーヒーに、例の液体を一滴こぼした。ドクターはコーヒーをごくりと飲み込むと、途端に熱い眼差しをマスターに向ける。
 ここぞとばかりにドクターに向き直った立香は、頬を両手で挟んで逃げ場をなくしてやった。

「わたしね、ドクター。ドクターロマン……」

 おそるおそる、けれど言葉にするよりも早く顔を近づけて、いけ! 今だ! と勢いのままぶちゅっと口づけをした。
 した、ところだった。

「ダヴィンチちゃん……その、それってつまり?」
「……あちゃ。一足遅かった、か」

 ホラー映画のフラグのように、ビクビクしながらドクターに向き直る。
 ドクターはつい3秒前にキスしたままのその位置で、混乱の色をありありと浮かばせながら顔を真っ赤にしていた。対して立香の顔色はみるみる青白くなる。

「あ、あの……ドクター……?」
「…………………………………………えっ?」
「ひ、わ、や、ギャーーーーーーーー」
「わあああああああああああ」


 ダヴィンチ氏のエセ魔法は3秒で解けました。







診断メーカーより
【「100グラム足りなかった」で始まり、「魔法は3秒で解けました」で終わる物語を、できれば3ツイート(420字)以内で】