Chapter 1

01



「うぇええええん皆ぁああ!お願い!ノート写させてええええ」
「もう、りりかったらまた寝てたの?このままじゃ卒業危ういよ?」
「昨日リアタイしたアニメが良すぎたんだもん〜〜〜」
「お前まじでろくでもない奴だな」
「放っておきなさい、雛希。自業自得なんだから」
「そうだ。むしろ卒業なんてせずに小学校に戻った方が良いだろ」
「まさかの出戻り!?!??!??!?」

 いつも通りの帰り道。いつも通りの会話。
 いつも通りのりりかの悲痛な叫び声。
 しかしそれはいとも簡単に崩れ去ってしまう。

「!? えっちょっ皆逃げて!!!!!!」
「え?」

 次の瞬間、私達は轟音と衝撃に飲み込まれた。


***


 次に目を覚ました時、俺はやたらきらびやかな部屋のふかふかしたベッドに寝かされていた。
 ……? たしか学校から帰ってる途中、りりかが情けない声を出しながら歩いてたら急にでかいトラックが……


 トラック?


「っ、おい!皆ぶじっ、……ぐぅ……っいてえ……」

 慌てて身体を起こすもえげつない頭痛が襲いかかってくる。何だ?どんだけ頭打ったんだ俺……。
頭痛を堪えつつ周囲を見渡すと、左隣にはりりか、右隣には雛希が同じくふかふかベッドで眠っていた。雛希の向こうには美緒も眠っている。良かった、全員無事みたいだ。
 ほっと胸を撫で下ろすと同時に、改めて自分の置かれている状況に理解が追いつかなくなる。マジでどこだここは。病院にしては高待遇だし、天国にしてはリアルだ。全く状況が掴めない。そもそも俺は死んだのか?人生初の事故と死(?)に未だに着いていけない。

「目を覚ましたか」
「っうぉおおあぇあ!?」

 やべえ変な声出た。慌てて声の聞こえた方へ向き直ると、見知らぬおっさんがいた。やたらと髪をガチガチに固めている。誰だこのおっさん。

「君は……堂本碧君だったか、身体の調子はどうだ?」
「あ、はい、おかげさまで潰れてもなく……っていやいやいや!あんた誰だよ」

 思わずツッコんでしまった。いやでもまじで誰?寝てる間に荷物漁られたのか?
 更に状況が読み込めず混乱する俺に、おっさんも俺を不思議そうに見つめてくる。
 そして、あろうことかおっさんは首を傾げながら更なる追い討ちをかけてきた。

「? 何を言っているんだ?君たちは明日から私の家で預かる予定になっているはずだが……」
「……………………は????????」


 どうやら俺は事故って頭がおかしくなってしまったらしい。

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