長引いた会合を途中で抜け出し、自室に戻る。
大方話はついていたし、あとは武市がいい様にやってくれるだろう。


襖を開けると、薄暗い部屋の中に、丸くなって横たわる名前の姿。
近くに雑誌が無造作に置かれているところをみると、読んでる合間に、眠気に負けて寝てしまったらしい。

自分の羽織を脱ぎ、起こさぬよう静かにかけてやる。


煙管を取り出し、窓枠に腰かけ真っ暗な外を眺める。
宇宙の中では、どこを見ても先は真っ暗な暗闇でしかない。
まるで自分の心の中だ。考えれば考えるほど、憎しみが黒い塊となってあふれてくる。



ふと、名前の横顔をみる。

あまりの静けさに変な不安が頭を過るが、呼吸をするたびに小さく体が動いているのをみて安心する。
すやすや眠っている姿は、まるで小動物だ。

名前は、真っ黒に染まった自分に光を差し込んでくれる唯一の存在。



「ずっと傍にいてくれ」



髪をやさしく撫で、額にキスを落とし、彼女の目覚めを待ち遠しく思う。



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