あなたの欠片
イリアステル──否、未来の人たちとの戦いが終わって、二週間がたった。
あっという間だった気がする。それでも、私の時間は進まない。私はあの戦いで、最愛の人を失ったから。
今の私は、クロウの仕事を手伝う形でブラックバード・デリバリーをしている。
クロウはハイウェイ・パトローラーの勧誘も来ているみたいだし、これからは私だけの仕事になるかもしれないな。なんだかんだで、利用者多かったし。
宅配している時が一番気が楽になる。……いなくなったプラシドのことを考える暇がなくなるから。
でも、考えないことは寂しい。私の中でだけ生きているプラシドが、考えないことによって死んでしまう気がする。
だから、宅配の帰りに時間があるときは、必ずとある場所に通うようにしている。
「……ほんと、ここはいつまでたっても変わらないなぁ」
大きく凹んだそこを見下ろし、苦笑いを浮かべる。私がプラシドと初めて出会った、石板落下地点。郊外だからか、舗装される様子がない。
舗装なんて、されなくていい。ここが、私に残された唯一の場所だからだ。
プラシドを忘れられない私の、大切な、大切な場所。ここで待っていたら、プラシドがまた来てくれるかもしれない、なんて甘い考えを持った、私の。
「……ねぇ、プラシド」
ポケットから灰色のかけらを取り出し、太陽に向けるようにして話しかける。勿論、答えなんて返ってくるはずもない。返ってくるはずもないが、話しかけずにはいられなかった。
これは、プラシドの一部だ。プラシドが壊れた時に、ルチアーノが渡してくれた、プラシドの一部。……プラシドの心臓部分、だ。
「また、あえないかな」
この欠片を持っていると、また会える気がする。そんなはずはないって、頭では理解しているけれど。
貴方はアポリアで、遊星に力を与えて、アーククレイドルで潰えた。……会えるはずないのにねぇ。
こんな馬鹿みたいな妄想したくないのに。それでもそう考えてしまうのは、私がそれだけ彼を好いていた証拠なのだろうか。考えるのすら億劫になって、私はぎゅっとそのかけらを握りしめた。
「……プラシドが、悪いんだからっ。なんで、なんでいなくなるのよ……!!」
どうしようもない怒りと虚しさに襲われて、思わずその場に蹲る。
違う、プラシドは悪くない。悪いのはだれでもない。プラシドも遊星も、この世界を守ろうとして戦ったんだ。そのやり方が、少し違っただけで。
不思議と、涙は出なかった。前に泣いて泣いて泣いたから、とっくに枯れてしまったのだろうか。泣けたら、楽だったのかもしれない。そんなことを考えていたからか、私は背後に迫る影に気づくこともできず。
「会いに来てやったというのに、随分と酷い言い草だな、名前?」
「……っ!?」
振り返ればそこに愛しい人の影があって。幻覚でも見ているのか、自分の頭をまず疑い頬をつねったが、それをすれば当人は眉間に皺を寄せた。
ああ、あぁ、おかえりなさい。それを紡ぐ前に溢れた涙に、私は私の生を、そして彼の帰還を確かに感じた。
あなたの欠片
(振り返った先にいるのは待ち望んだ人)
title…反転コンタクト
加筆修正 2016.06.16
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僕らが生きた世界。