unbalance!







「……っ、あぁ!」
 ベットに縫い付けていた丈くんの手首を開放して、そっと指を絡める。きゅ、と軽く力を込めると、縋るように握り返された。
 いつもは口を抑えてしまうから聞くことのない嬌声も、今日はちゃんと聞こえる。それでもまだ、声を抑えようとして下唇を噛むからくぐもった声ばかりしか拾えないけれど。
 別に、口は軽いかもしれないけれど、丈くんとのセックスの話を友達に話したりなんかしない。ただ、可愛いなってそれだけで終わるのに、俺の中での秘密で終わるだけなのに、どうやら丈くんはそれが恥ずかしいらしい。
 もっと声聞かせて、なんて言える立場ではないから、声に出して伝えたことはない。でも、わざとそう仕向けることぐらい、許してほしいものなのだ。

 丈くんとそういう関係を持つようになったのは、大体一年くらい前からだった。夜の繁華街で、迷子になっていたら丈くんと出会って、何でかはよく覚えていないけれどホテルに二人で雪崩れ込んで、セックスをして。それから、今までずっとそんな関係をずるずると引きずっている。
 人には言えないけど、こうして二人で落ち合ってセックスをするのは二人だけの秘密、みたいな感じがして結構楽しい。二人だけの秘密というのは、確かに本当にそうなのだけれど、そういうことではない。親の目から離れて物陰に隠れたり、秘密基地っていって遊んだあの感じが、丈くんといると蘇ってくるような気がするのだ。それを言ったら、アホちゃうって一蹴されたけど。

 滅多にすることもないキスも、今日はし放題だ。声が大きくなった瞬間を狙って、唇を塞いで舌を絡めとる。ん、と漏れた声に含まれた甘さに少し勘違いしそうになりながら、短めに口を離す。息が苦しくなるところまでも、特別気持ちよくなるところまでもせず、中途半端なところで切り上げてやれば、なんでというような瞳が向けられる。うるうるとした目に孕まれた欲に、キスして欲しいん? と尋ねてやる。普段、自分から何かを強請ることなんてしない丈くんに、こんなことを聞くなんて意地が悪いなぁと我ながら思う。それでも、何か頷くぐらいしてくれたらいいな、なんて期待を込めながら。

「っ…ぁ、してっ、」
「え?」
「せ、ぇへん、のっ?」
「え、あ、するけど」

 するけど、さ。今の狡くない? てか今日丈くんなんかおかしない? イくんもなんか早ない? 気のせいやないやんな? ……なんか可愛くない?
 目が伏せられたのを合図に、ゆっくりと唇を重ねる。舌を差し込めば、控えめに丈くんの舌が自分の舌に触れる。かわいいなぁ、なんて思いながら歯列をなぞる。試しに上顎も、なんて軽くなでると喉の奥が鳴った。弱いんかな。

 少し緩めていた律動を少しだけ早くする。できるだけ丈くんの弱いところにあたるように意識しながら、上顎のポイントも表情を見ながら探る。なんだか、今日は手加減なしに、なし崩しにしてしまいたい気分だ。どうせ、明日は土曜日だ。丈くんだって講義はないだろうし、自分だってもちろんない。体が痛くなったって、楽になるまで、とことん付き合うつもりだ。それで、あわよくば丈くんと一日中一緒にいたい。一年もブレーキをかけてきたのだから、もうそろそろ意識してもらえるくらいになってもいいだろう。
 
 半分くらいとんでいる、丈くんの頬をゆるく撫でる。中で何回イッたのかは最早分からない。あと少しで果てそうな自身ともう少しで飛んでしまいそうな丈くんと。大学生の性欲なんて大概こんなものだろう。むしろ、今までここまでやってこなかった自分をほめてほしい。

「おおはしっ」
「なに? じょーくん」
「ぁっ!…ぅ、すき、やで?」
「俺も大好きやで、丈くん」

 どうせ、覚えてないんだろうなぁって思いながら、好きという言葉がつい漏れてしまった本心であることをひそかに祈った。

 

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