昼間、パワーや公安の同僚たちに散々「可愛い」「思ってたのと違う」「生意気そう」「このままでいて」などと好き勝手構い倒されていた間は、仏頂面なりにもう少しにぎやかで口数も多かったのに。
今ではすっかり気持ちまで迷子の幼児に戻ったかのようで、丸まった姿が余計に子どもくさい印象を与えた。
ちゃぷ、と湯が波打つ。素肌を包みこむ透明な湯は、男の何をも隠さない。長い手足。うなじに張り付いた黒髪。精悍な男の横顔を形作る鼻梁のライン。湯船に浸かってほんのり上気した頬。
アキの肉体はすこぶる健全で、完成された男性の引き締まった体は、裸体になると一層その見目の良さが際立った。
こんな立派なナリをしているくせに。
「アキ、ほら、洗ってやるから」
のぼせるだろ、と手を伸ばしたデンジに気付くと、アキは素直に手を取って湯船から上がってきた。
「……うん」
促されるまま、濡れた洗い場の床にべたりと座り込む。普段の大人然とした彼では有り得ない仕草、表情。
──とどのつまり、早川アキはご都合主義の悪魔によって厄介な状態になっていた。
アキの聡明なおつむはすっかり可哀想に幼児退行してしまったわけだが、悪魔の干渉は人体にまでは及ばず、彼の肉体は健康な成人男性そのものをキープしていた。
しばらくしたら治る、との適当な診断の元、アキは自宅療養となり、デンジが彼なりに甲斐甲斐しく世話を焼いて奮闘してきた日々の委細は一旦置いておくとして。
現状である。
アキの肉体は彼の突然の無知によって、それまで年相応に旺盛だった性欲の発散方法を失って迷子になっていた。意識が向かなくとも、溜まるものは溜まる。
未知の疼きに高ぶっていく身体は、さぞ本人には恐ろしいのだろう。
アキが繰り返し、怖い、変だ、と呟きながらモゾモゾと半勃ちになった自身を抑えてグズりながら部屋を訪れてきた時、デンジは危うく椅子から転がり落ちて無駄にまた死ぬところだった。生き返るからといって軽率に死んでいる場合じゃない。
「デンジ、へん……ここ、おかしい……」
「あ〜、じゃあ、まァ、風呂入ったときよく見てやるか」
縋るような目で頷くアキに興奮するものの、図体がでかいからか罪悪感が湧いてこない。ただただ、倒錯的な絵面とエッチな予感に見る間に自分の下腹部も元気になっていくばかりだった。
デンジだってアキがこんなことになってから結局、何だかんだでご無沙汰なのである。
「ちんちん、ビョーキになってねえといいな? アキ」
「っ……ぅ……」
無駄に意地悪なことを言ってみたくなるのも、まあ致し方ない。
◆
「んじゃ、よく見てやるからよお、足開いてちゃんと持って」
ふくらはぎから、膝裏をなぞりあげ、手のひら全体で開かせた脚を押し上げる。
濡れた洗い場のタイルに背中を預けたまま、かぱ、と開いたあけすけな格好を強要されて、アキは狼狽えた顔でデンジを見た。ビクッと、と丸い膝頭が震えている。
「っ、…ぅ、……恥ずかし…い、…」
すっかり骨から溶けたようなアキの体は、戸惑いながらもデンジの──今は自分にとっての大切な「年上」の──されるがままになっている。
「ほら、アキ、手ここ持って」
「あっ、ぁっ、うぅっ…!」
ほつれた髪がまとわりついた肩を震わせて、アキは促されるままプラプラと足を開いた。
その間に陣取っているデンジを、不安そうに見上げる。視線が絡み合う。ニヤ、とぎざぎざの歯を覗かせたデンジは、大きく口腔を開いて、次にはアキの疼いて仕方ない性器に噛み付いた。
ビクンッと大きく腰が浮く。アキは泣きそうな悲鳴をあげた。
「ぅ……っ♡ あ〜……あ〜っ♡♡」
丹念に舌でしゃぶられて、イヤイヤと大きく首を振る。さらに逃げを打つ体を押さえつけられ、アキの目にはたちまち大粒の涙が浮かんだ。唇から漏れる息も、荒くせわしく変化する。
「やだっ、やだ、あ゛〜〜…♡ こわいっ……」
「怖くねえよ、嬉しすぎてちんちん泣いてんじゃん」
ちゅくちゅくと先走りをこぼす先端を舌先でいじめて吸い上げる。曖昧に首を振るアキの懇願を無視して、敏感な蟻の戸渡から陰嚢に至るまで、勝手気ままに弄り回す。
「ァ〜〜っ♡ も、やだ、やっ、や〜〜…!」
「ヤじゃなくて、きもちーだろ、」
見てみ、と促されて、アキは健気にしゃくりあげながら自分の下半身を見た。べろ、と濡れた舌をひらめかせたデンジが、その先端でふくれあがった竿の裏筋を舐めあげる。
「アキのちんちん、俺んクチン中入んねえぐらいでっかくなってんじゃん」
「うっ、うっ…んぅぅ…♡ 」
「これはァ、アキがちゃんと気持ちいいー♡ って言わねえと治んねえかもな? 爆発しちまうかも」
引き攣ったアキが、恐怖にきゅうっと爪先を丸めた。ややあって、苦しげな息遣いの中から泣き言めいた囁きで「気持ちいい」と繰り返し始める。呪文のようにリピートされる脳髄を蕩かすような甘い響きに、デンジも熱くてもどかしい気分を煽られる。
「っんんぅ、きもち、ぃ…♡…気持ちいい…イヤだぁ…♡」
「ちゃんとみてやってんだから、嫌がんねえの。マジでビョーキになってたらどーすんだよ」
「うっ、やだっ…♡ ぁっ、あ…っ、デンジっ、ちゃんとっ…治してぇ……!」
目まぐるしい快楽に青い瞳をぎゅうっと閉じて、睫毛の間から透明な雫をぼろぼろと落とす。
シャワーヘッドの隙間から、ぼたぼた雫が落ちてきて、狭い洗い場を濃厚に湿らせていた。
いつかアキが 正気に戻って、過去の記憶を掘り返したら、多分このあたりで羞恥のため自死しかねない。
そんなことになっては大変なので、デンジはさっさとアキが正気を遠くはるかに飛ばすよう、こちこちに硬度を増した性器を丹念に五指で絡めてしごいた。ラストスパートに向けて一気に責め立てる。
ぐりぐりと尿道を開くように弄ると、無理に絶頂を急かした動きに翻弄されて、アキは喉を開きながら絶叫した。控えめに閉じたり開いたりしていた両足が、宙空で何度もピンと張っては痙攣する。
「あ〜〜、っ♡ ちんちん、へんっ♡ なんか、出るぅ……♡」
どろっと濃厚な先走りがあふれて、溺れてしまいそうな匂いがデンジの鼻先を擽った。
「ハァ、っ…ハァ…♡ アキ、洗ってやっても意味ねえな」
目の前にあったシャワーを掴んで、弱から強に切り替えると、昂ぶったアキの下腹部に至近距離で当て流す。ちょっとしたデンジの悪戯心だったが、これがとことん効いたのか、アキはすっかり陥落した犬のように腹をさらして身悶えた。
「ぅうっ、ん゛♡ ああッ! しゃ、わァ……きもちっ、良い♡ あ゛、ぎもちぃ♡」
勝手に自分で割り開いた膝をガクガクと震わせて、シャワーの柔らかな湯が性器に当たるもどかしい刺激に夢中になって腰をふるアキは、とんでもなくいやらしかった。
「アキ、これ好きなんだ?」
ざあざあ流れる湯の当たり具合を左右に降って追い立てる。
「ふぁ、うっ、ん゛♡ ああッ、あ゛、シャワーぎもちぃ♡」
駄々をこねる吐息さえ灼熱を帯びたアキの体は、自らの熱と欲で熔けて壊れてしまいそうに見えた。
きっと思考回路は既に焼ききれている。 あとはきれいさっぱりこの記憶を消してくれますように……。
「んっ、んっ!……ふ、んっ……♡」
アキのびしょびしょに濡れた体に抱きついて、そこここにキスをしながら、デンジはすっかり勃起した自分のそれをアキの性器になすりつけた。湯の心地に抱かれながら、ぬるぬるとした皮膚に滑るのもひっかかるのも気持ちいい。自儘に動くデンジに密着されたアキは、うまく動けないもどかしさに両手を伸ばして、デンジの肩をゆすぶった。
「んっ…はぁ…!ん…ん…っデンジ、さわ、って…っ…♡」
アキの腰が、うずうずと揺れる。 涙を浮かべて焦れる姿に、唐突にはげしい渇きを覚えて、デンジは頤を上向かせる間もないままにアキの口腔を再び舌で犯しつくした。
縋りついてくる手をつかんで、己の指と絡ませ、捕まえる。
「アキも一緒にシようぜ、ほら、きもちーきもちー♡」
「っ!」
包み込んだアキの手ごと、勃ち上がってぬるついた性器を擦りあげる。握りすめた性器を撫で回すように絞る頃には、アキの苦しげな息遣いが泣き言混じりに「うぅ〜♡」とか「ァー♡」とか脳髄を蕩かすような甘い響きをこぼし始めた。
「あ〜〜、クソ……気持ちいいっ…♡ すっげえ量出そぉ、…!」
「ああ゛〜っ♡ ふぁっ、やだっ♡ はぁっ、あんっ…♡」
目まぐるしい快楽にアキの体がぎゅうっとこわばって、次にはバタバタと暴れまわる。湯ですっかり温まった皮膚が、湯のせいではない熱で昂ぶっていく。
「ひっ、ぁっ♡ 出るぅ…でん、じぃ…」
「ん〜〜? なんだってぇ?」
腰を揺すりたてて、快楽のふちギリギリのラインを綱渡りする。
「っんんぅ、も、はぅ…♡ なんかっ…っ…なんかぁ、くるぅ♡♡!」
言葉選びこそ拙いが、アキのいきり立ってる勃起はビクビク筋を立てて凶悪な見目をしているし、ぱんぱんに詰まった玉袋が揺れて擦れているのだって、どう頑張ってもオスの象徴でしかない。
なんならアキの声はデンジより一段低く、喘いだって唸ったって可愛いかと言われれば多分可愛くはないのだ。性の境の曖昧なかわいらしい幼児なんかとは程遠い。なのに。
「でっかいのがクるときはぁ、イク、な♡ イクイクッて言えって♡♡」
「はふ♡ いく、 イク、 あ゛〜♡ あ゛ぁ〜〜イク、するっ♡♡」
痙攣しながら、壊れた蛇口のように不定期に先走りがこぼれる。あともう少しで間欠泉みたいに何もかも噴き上がる。ただの射精なのに、いい大人がこの騒ぎよう。冷静に考えればこの馬鹿みたいなテンションも、阿呆みたいな淫語のリピートも、変態嗜好ここに極まっている。
なのに、それが妙に興奮するのも本音だった。
「ァ〜〜っ♡ イクっ♡… おしっこれちゃうぅ…♡」
「っ…! あ〜〜もお、…ヤベぇッ…! 出るっ出る!」
デンジの荒い息が首にかかって、そこから伸ばされた舌と歯が、アキの耳をはむ。
加減なく扱かれて叩きつけるような快感の渦に、アキの鼻から引っ切り無しに抜けていた甘ったるい喘ぎが、一瞬止まった。
「ッ……ぅぅん゛……っ♡♡」
強過ぎる絶頂感に、ビクッと震えてから、声もなくどぷどぷと出し始める。
その惑乱した腰がまだ快感を追うように振りたくられるから、デンジはそこに押しつけるようにして自身も思い切り精を放った。