お触り禁止

「暴れんな、手、怪我するぞ」
「マジかよ、なあ、……っ、これ、ハンザイじゃねえの」
 ぎっちりと封じられたデンジの拳が、アイアンフレームに繋がれた手錠の金属音を虚しく握りしめる。ガチャガチャと動かすたび、遊びのない鎖が頭上で悲鳴をあげている。
 デンジは鼻にシワを寄せ、歯を食いしばって、フーフーと漏れてくる息を噛み締めるのに必死だった。
 散々火のつくようなキスで溶かされて、誤魔化されてる間に、いつの間にかデンジは悪い大人に手錠をかけられていた。
 タイホしてやる、とかなんとか、耳元であつく呟かれた。怖い。アキがやべえ酔い方してる。
 背中はスプリングのよくきいたベッド。視界のど真ん前には、デンジの腰を跨いで膝立ちになった酒くさい早川のセンパイ。完全に目が据わっている。おれ、明日まで生きてられっかな。ポチタ、爆発しねえよな。
「………足も、しばっとくか?……」
「いっ?! いい、お、お気遣いなくゥ……!」
 ブンブンと首を振ると、アキは若干不満そうに赤らんだ目元を細めた。身じろいだ二人分の体重に合わせて、ベッドのスプリングがいやらしく軋む。
 アキはぺろりと赤い舌の先で自分の唇を舐めると、デンジの太腿の付け根を、長い指とゆるやかなリズムで行き来させ始めた。
 意味深に恥部の近くをコスコスと擦り上げられて、デンジは眉を下げた。背骨をぞくぞくとした痺れがかけ抜ける。反撃したいという意思とは別に、体は呆気ないほど高ぶっていく。だんだん暴力的な気分がそそられていく。
「っ、やめろって、クソ……アキ、っン、てめえ……!これ、外せ!」
「なにキレてんだ、犬のくせに」
「ッ、んだァ、この、タチワリィ酔っ払い…!――ひっ」
 する、と透明な首輪をなぞり慈しむように、アキの手がデンジの耳たぶから首筋を撫でまわした。口の悪さとは裏腹に、アキはすっかり毒気の抜けた顔をしていて、時折むず痒そうに下半身を揺らした。――エロ過ぎる。
 現行犯逮捕、拘束が必要なのは明らかにそっちだろ!とデンジは叫びたかった。のだが、すっかり息が上がって、むき出しのスターターロープが皮膚に触れるのさえもどかしい。
「アキ、……手ぇ、いてぇって、……チンコもいてえし、助けてくれよ」
 殊更同情をひくように、まばたきに熱を込めてデンジはアキを見上げた。
 拘束された両腕は、頭上に完全に縫い留められている。両足にも殆ど力が入らない。
 溺れるような性感を覚えた若い肉体が、甘いいたずらを堪えるのなんてどだい無理な話だ。
 アキの目が丸く見開いてから、だんだん機嫌よく薄っすらと笑んでいくのを見ているだけで、痛いくらいに性器は勃ち上がっている。
 ほどいた髪を首筋に垂らしながら、アキは上体を倒してデンジに口付けた。宥めるような柔らかさ。でもそれは始めの一口でしかない。
 唇を合わせたあと、舌先だけ引き出して絡め合うのがメインディッシュ。
「ん、はっ……んぅ、ぉ、……ん――」
 まさに犬の如く仕舞い忘れた垂涎の舌が、離れたり、捕まったりするたび、むずむずした衝動が、留め処なく体を駆け巡る。
 散々蕩けあって酸欠でボーッとしていたデンジは、あれよあれよと言う間に拘束されたまま、裸に剥かれた。
 酔拳の使い手の如くユラユラしながらあっという間に自分も裸になり、アキも一つ大きく息を吐いている。よいしょ、とデンジの上で身じろいだアキの体が下方へずれ、不自由なまま追い詰められ、すっかり悪酔いさせられた気分のデンジの性器を捉えた。
「ぅぁっ! いま、触られっ、と、あ、あ!」
 膨れ上がった竿の形をなぞるように扱かれ、とろとろと蕩けてきた先端へとニチュニチュ絞り上げられる。
 収縮するように陰嚢を揉みこまれると、デンジの体温は階段を数段飛ばしで駆け上がるように上昇した。
 そこから吐き出す、という単純で激烈な快感が早く欲しくて堪らない。せり上がって来る淫らな誘惑に負けそうになる。
「ア、ア! づよくすんの、っ……やめろ、やッ、め…!」
 アキの手のひらが、ねっとりと零れた先走りごとデンジの亀頭を包み込み、まぶすように動かした。擦過速度を変えられると、あまりの甘ったるい快感にデンジの腰は完全にびくついた。このまま足を抱えられても、広げられても、もう、抵抗できそうにない。
「っ……アキッ、くそ、っ、あ、ちょっと……待てって、アキ!」
「……なんだ、」
「――オレ、イ、いれられんの、こええ……んだけど…!」
 絞り出したデンジの言葉が、ベッドに落ちる。
 アキは、一瞬、本当に意味がわからないとばかりに時のとまった顔つきでデンジを見た。
 びきびきに血筋の浮いた陰茎と、二の句を告げずにいるデンジの顔をまじまじと見比べる。

 直後。ぬぷぷ……♡ と泥濘んだ淫靡な音が、二人の下半身を生温かく包み込んだ。尻を浮かせたアキが、弄り回していたデンジのそれを容赦なく食いしゃぶる。
 
「ッ!……っ〜〜〜〜〜〜……♡」 
 
 背骨が溶けるほど気持ちよく仰け反ったデンジの頭上で、手錠がしつこくガチャガチャ鳴り響く。
 アキの体内に搾り取られて、あっという間になき濡れた性器が、その不規則な金属音のリズムに導かれるように、再び硬度を増す。

「んっ……♡ デンジ、なんだ、こわかった、のか……?」
 よしよし、と言わんばかりにダメな大人に髪の毛をなぜまわされて、デンジは真っ赤になったまま奥歯を噛み締めた。

 ――――ぜってええ、次は反撃する。


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