あんよに鎖2


 もっとすごいこと、とは言われたが、まさか本当にこんなすごいことになるなんて思っちゃいなかった。
 デンジはベッドにひっくり返って薄暗闇の天井を見上げながら、胸の中でしみじみと呟いた。
 いやほんとマジですっげえ「もっとすごい」ことじゃん……。
 下半身がすっかり無くなってるんじゃないかと思うくらい、気持ちが良い。
 あったけ〜〜……やべェ……チンチン、完全に溶けてんなこれ……。
「う゛〜〜〜〜〜……」
 デンジは唸るような声を上げながら、二つの膝頭の間に陣取って、デンジの泣き濡れた竿を頬張っているアキの黒髪に指を差し入れた。
「ふ……は……」
 ちゅ、ちゅ、と亀頭から括れの部分に口付けながら、時折裏筋に舌を押し当てて、アキは竿全体をねっとりと舐め上げている。
 先端を包み込む舌と内頬の柔らかい肉の感触に、デンジは「あ゛〜〜……あき、ぃ」と情けない声を上げた。
 アキがフェラをしてくれるのは初めてではないし、むしろ結構好きな方でよくやってくれるのだが、今日のこれはちょっとレベルが違うというか、なんというか……。
「うぁ〜……もぉ無理ぃ」
「ん……ふは、まだイかないのか?」
 ちゅぽんと音を立てて口を離したアキが首を傾げる。唾液と先走りの混じった粘度のある糸が、アキの唇をいやらしく光らせていた。闇の中に肉感的な赤みがぼんやり浮かび上がって、口中にちらつく舌が呼気と共に差し出されるのも、デンジの興奮を煽った。
 いきたい。超イきたい。思いっきり腰振って、アキの口ん中にザーメン全部出してぇ。
 でもおんなじくらい強い気持ちで、アキの中に出したい。めちゃくちゃ気持ちよくて幸せな、愛し合うセックスがしたい。
 デンジがもどかしい気持ちを抱えたまま「う゛ー」と唸っていると、アキは輪っかにした指で竿を扱いてきた。裏筋を親指の腹で刺激しながら、もう片手の指が張った睾丸を撫で上げて揉み込んでくる。むず痒い快感が下半身から広がっていって、デンジは喉を仰け反らせた。
「あ〜〜……それぇ……めちゃくちゃ気持ちいいけどぉ〜……もーちょい……奥でイキてぇ……」
 喉の奥、とまでは言わなくても、そこそこ深く呑み込まれたい。
 デンジのあけすけな告白に、アキは面食らったような顔をした。一瞬ためらう素振りを見せたアキの髪をくしゃっと撫でる。
「なぁ〜頼むよアキぃ」
 あまえるように強請ってみると、「ん゛っ!」という咳払いと共に、また竿が生温かい粘膜に包まれた。
「っ〜〜……きもちいぃ……」
「……ん、ぐ……っ」
 口いっぱいに頬張られて、吸引される。どろどろした口の中の粘膜に隙間なく銜えられて、きゅんっと玉が持ち上がったのが分かった。
 熱い舌の腹でくりくり亀頭の裏側を舐め回されて、デンジは歯を食いしばったまま鼻から息を漏らして腰を揺すった。
「ん゛っ! くぅッ……あ゛っ……!」
 デンジの太ももに頭を預けて、アキはじゅるじゅると口内全体で亀頭をしゃぶりながら竿を扱いている。さっきからずっとこれだ。どこか恍惚とした表情で口淫を繰り返すアキの姿に、腹の底がむずむずと疼くようなもどかしさを覚えて、デンジは上擦った声を上げた。
「あっ……ぁッ……アキッ!それぇ……」
「……ふあ……?これ?」
 ぱっとアキの口から離れた肉茎が震える。アキの唾液でぬらぬらと光るそれは、完全に勃起して腹に付かんばかりに反り返っていた。
「……元気だな……」
 まるで別の生き物みたいに屹立しているデンジの性器を見つめて、アキは感嘆するように呟いた。ふうっ、と息を吹きかけられて思わず喉が鳴る。
 もう良いから早く、という恨めしい気持ちが顔に出ていたのか、アキは足の間から見上げるようにくすりと笑いかけた。そして射精に向けてぱんぱんに張りつめた陰嚢に口付けて、そのまま竿を下から上へと舐め上げた。
「ん……っ……」
 アキの舌は裏筋を辿って先端へ辿り着くと、今度は亀頭だけを口内に含んでちゅぽちゅぽとしゃぶる。
 デンジが腰を突き上げると、ちゃんと喉の奥まで咥えこんでくれた。その圧迫感に腰が震えるほど感じ入りながら、デンジはアキの頭を両手で掴んだ。
「もぉ〜良いってぇ……アキのフェラ、良すぎて我慢できねえからぁ……」
「ん……」
 デンジは誘惑を無理やり振り切って口から性器を引き抜いた。
 唾液と先走りでどろどろになってテラテラと光るそれは、扱かれなくても射精寸前だった。
 アキは口内から溢れた涎を手の甲で拭いながら、「もういいのか」と小首を傾げる。その仕草にさえ興奮して、デンジの下半身がまた重くなった。
「うん……だから、次こっち」
 デンジはアキの手を引いて体を起こさせる。不思議そうな顔をするアキの肩を押して寝転ばせると、自分も乗り上げるように覆いかぶさった。アキの髪をかき上げて耳にかけると、くすぐったそうに目を細める仕草が堪らなく可愛い。そのまま顔を寄せてキスをした。
「なぁ〜……上乗ってくれよ。俺の元気なここ気持ちくして?」
「……潰れるだろ」
「そんなヤワじゃねぇってぇ。何なら駅弁でも良いし」
「駅弁って……」
 アキは呆れたようにため息を吐くと、デンジの首に腕を回してゆっくりと体を起こした。なんだかんだ甘やかされているので、デンジのおねだりは大抵叶う。
 デンジがベッドに背を預けて寝転ぶと、アキはその腰を跨いでゆるゆると膝をついた。
「ん〜……なんかこの体勢だと、俺がヤられてるみてぇ…」
 いや〜ん♡と戯けてみせると、アキは案外満更でもなさそうな顔をしながらデンジの胸板や腹筋を撫で回した。
「抱かれる気、あったのか?」
 意外にもそう問われると、デンジ自身、セックスの主導権を握ろうなんていう気概はさらさらないことに気付かされる。
 愛し合う相手と汗と唾とを混ぜ合わせて、溶けて一つになれれば、それで十分だ。
 ただ。
「……俺って愛されてんな〜って実感してぇから、抱く方が好きィ」
「…?」
 いまいち意味が伝わっていないアキの手を取って、さっまでしゃぶられていた竿に導く。そして「これ、ぎゅ〜って包まれっと、すげぇ幸せな気持ちになんだよな……」と、夢見るように呟いた。
 ようやく合点がいったのか、アキはデンジの竿を緩く握りながら「ああ」と呟いた。そのたおやかで透き通った声色に、デンジの胸がざわめく。
「いーよ……じゃあいっぱい、幸せになれ」
 アキは腰を上げると、自分の尻たぶを開いてデンジの陰茎を掴み、ひくつく窄みに押し当てた。そのままゆっくり腰を落としていく。
「ん゛っ……うあッ……!」
ずぶずぶと肉襞を掻き分けて、熱い肉棒が押し入ってくる感覚にアキの背中がしなる。デンジも待ち望んだその刺激に喉を鳴らした。
「ふ……ぁっ……」
 根元まで入ると、アキは一旦腰を浮かせて上下運動を始めた。アキのペースに任せた抽送は緩慢だったが、その分じっくりと腸壁が収縮して内部の形を覚えようとするかのように絡みついてくるので、たまらない気持ちになった。
「ん〜〜……アキのナカ……めちゃくちゃ気持ちいい〜〜……」
 デンジが陶然と呟くと、アキは「うるさい」と照れたように呟いた。デンジは口元を緩めながらアキの腰に手を添えて動きを促す。
「ん……っ…」
 アキは小さく頷くと、またゆっくりと腰を動かし始めた。ぬちゅっ、ぬちゅっと粘膜同士が擦れ合う淫靡な音が寝室に響く。その音すら気持ちいい。
「あ……ふぁ……っ…!」
 徐々に速度を増していくアキの腰遣いに、デンジは歯を食いしばって耐えた。よく、耐えた。
 時折腰を反らして深い所に当たる角度を探す仕草が堪らなくエロティックだ。汗ばんだアキの肌に、めまいがするほど興奮する。
「はぁっ……うぅ……!ンあっ……!」
「あーーーっ……アキっ、すげぇ、イイ……!」
「っ!っ、ン゛〜〜ッ……!」
 真っ白な火花が目の前にぱちぱち散って、デンジは歯を食い縛った。
 おさえようもない射精の波を感じて咄嗟にアキの腰を掴んで固定したが、アキの方もその瞬間を狙ったように背中を大きく仰け反らせて、自ら腰を落としてきた。
 反射的に目を開くと、うるんで揺れていたアキの目と視線がぶつかった。
 一瞬、その清廉潔白な青い目がひどくいやらしく微笑んだ気がして、スターターを引っ張られたみたいにデンジは震え上がった。
 ずぶ、と飲み込まれた衝撃と共に、アキの中でドクドクと精液が弾けている。
 デンジは、「う゛〜〜〜〜……」と情けない声を漏らした。
 アキは体を小刻みに震わせながら、その全てを受け止めてくれた。尿道を痙攣させながら最後の一滴まで搾り取られ、背中の骨まで溶ける気がした。
 そのたびにアキがぴくぴくと震え、熱い精液を体内に注ぎ込まれていることが嬉しくてたまらなそうにデンジを見つめる。
 その淫靡な様子に、またじわじわと欲望の炎が灯る。
 なんかもうさあ、今日のアキはへんなもんでも盛られたんじゃねえの。
「はぁっ……はっ……アキ、へーき」
「ぅ……はぁ、……あぁ……」
 荒い息を吐きながら、アキはぐったりと倒れ込んできた。さすがに真正面から倒れることはせず、横に並んで沈みこむ。
 デンジは腕を伸ばしてアキの上下する胸に手のひらをのせた。アキの速い鼓動が伝わってくる。
 汗で湿った皮膚の匂いがする。体温がじんわりと馴染んでいくのが心地よい。ちょっと触れあってるだけで、今まで繋がっていた互いの心臓の拍動すら一つになっていくようで、デンジは思わず「キス、してぇ」と呟いた。
 ふ、っ、と笑われる。あんまり可愛く笑うので、そのまま唇を奪った。舌を追いかけて捕まえては貪り尽くして、息切れしてもなお諦めきれない恋慕の情で口付けた。
 ありふれた夜の帳がおりて、窓の外では秋虫が鳴いている。明日の嵐など知らぬ顔で、ただ、穏やかに。静かに。

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