Clandestine
conditions





白いシーツの敷かれた、清潔なベッド。一人で眠るにはサイズは大きく、成人男性でも三人ほどは横になれそうではあった。枕やクッションが大小サイズ違いで山ほど用意されている。
ドアすらない部屋の中、天井の明かりはそのままに、卓上のランプを開いたり絞ったりと調光を手持ち無沙汰に変えていた。どうしたものかと考え込むこちらと違い、壁をつぶさにコンコンと叩いて抜け道はないかと調べる彼は、部屋を一周するなり大きな溜息をついた。
そのままベッドに戻ってくるなり、スプリングを軋ませるように腰を下ろす。ベッドの反対側に座った為、どんな表情なのかはわからない。

「……何なんだ、この部屋」

ただ、舌打ちをしそうな苛立ちを滲ませて吐き捨てる。
同感ではあるが、先程から意識が彼以外に逸れてしまう為、その一言に何の反応もできずにいた。
淡い乳白色の壁紙は天井の明かりを受けて柔らかく発光し、ちまちまと触るランプの隣、ガラスケースに入った『それ』も反射してキラキラと光っている。この場に光り物や可愛い物が好きな人がいたなら、きっと喜んで手に取っただろう。
だが蓋に貼られた紙、その文章を読めば不気味さに自ずと触れることを躊躇うに違いない。
ガラスケースの中に並ぶ二つの小瓶を示して『一人一本、飲まなければ扉は現れない』と。

「……やっぱり、これに従う?」

「中身が毒だったらどうする」

「でも、調べても何もなかったんだし…」

「…だからといって」

彼の心配も尤もだ。しかしすでに部屋を隈なく調べたあとである。
何者かの悪意か悪戯かは図りかねるが、指示に従わなければ出られないことは決まっているのだ。暗号機を解読しなければゲートが開かないように。

「『一人一本』だって。一緒に飲めば怖くないよ」

ケースから小瓶を取り出して、ハイ、と渋い顔をするクラウディオに手渡した。

「お前は……」

「…だって、クラウディオ一人でどっちも飲んじゃいそうだし…」

「まぁ、それは否定ができないな」

共に仕事に臨む時、作戦や指示など彼に任せっきりだ。
意味不明な部屋ではあるが、彼の一助となれるという意味では案外、悪くはなかった。
むしろ飲むことを勧めた自分が担えるのでは、などと考えていたら、クラウディオがまたも重く溜息をついた。

「……お前に何かあったら気が気じゃない」

無自覚なのか、意識的なのか。難しい顔をしながら零された一言に、思わず頬が熱を持つ。
彼とは心を通わせた仲で、もっと言えば肌を合わせた回数もそれなりなのだが、どうにも、告げられる言葉の甘やかさには慣れそうになかった。普段の言動が兄のようであったり指揮を取る将であったり、頼もしさや力強さを感じる反面、自分へ向けられる柔らかさとの落差に毎度のことながらクラクラしてしまう。

「な、何かあっても、くらでぃおと、一緒なら、大丈夫だと……おもって……」

自分の発言が途端に恥ずかしくなってしまって、手元の小瓶へと視線を落とし、手持ち無沙汰に転がした。こんな変な状況下でなければ、もう少し気の利いた言い回しもあったのではと思いつつ。
くしゃりと髪を撫でられて、余計に顔に熱が集まる。

「は、早く、飲もう…」

「あぁ、そうだな」

恥ずかしさに耐えきれず、蓋を開ける。きゅぽ、と小気味のいい音が二つ響き、鼻を近づければふんわりと甘い匂いが漂ってきた。
ちび、と傾けて、予想外の甘さが舌先に触れる。驚いて固まるこちらとは逆に、いっそ気持ちいいほどにカパッと飲み干したクラウディオは、舌触りが悪かったのだとわかるほどに顔を顰めてみせた。

「…不味い」

「…大丈夫?」

「今のところは問題ないな。アルカディアは?」

「……すごい甘くて」

「躊躇うと残りが飲みにくいぞ」

クラウディオのその言葉を聞いて、慌てて、彼と同じように一気に飲み干した。ちびっとでも飲んだのは違いないのだから残りは自分が飲もう、と言おうとしていた。自意識過剰かもしれないが、ぴくっと反応した指先は、こちらが返事に窮すればすぐにでも小瓶を取り上げるつもりだったように思う。
どろ、とした甘みが味も匂いも口いっぱい、鼻腔にまで広がって、そうして喉にへばりつくように下っていった。口元を押さえる自分へ、卓上の水を即座に差し出したクラウディオに、謝辞を述べる暇もなく流し込む。ごくごくと勢いよく水を押し入れるものの、味覚も嗅覚もバカになったかのように甘くて気持ち悪かった。

「ゔ、ぇ、えう………」

「大丈夫か」

「……ま、前に」

「前に?」

「サファイアさんが持ってきた…ケーキ、の、味」

「なるほど、それはなかなかだな」

視界が滲むほどに強烈で、袖口で拭こうとした。だがそれよりも早く伸びてきた指先が目元を擦り、思わず目を閉じて、目頭に触れた柔らかなぬくもりに肩がはねる。
おそるおそる目を開ければ、詰められたあまりにも近い距離で、クラウディオがぺろりと自分の唇を舐めていた。

「しょっぱい」

「……だと思う」

彼が目元を和ませながらそう呟くものだから、ふふ、と小さく笑い返していた。



───さて、小瓶を飲んでからどれほどが経っただろう。飲んですぐに部屋を二人で見渡したけれど、柔らかなクリーム色の壁は一周してもそのまま、ドアのような形状すら見受けられなかった。
時計もなければ窓もなく、今が何曜日で何時何分で、朝なのか夜なのかすらわからない。腹時計はこんな時ばかり裏切って一向に鳴かないし、疲労感も眠気もまったくやってこない。
ぽつりぽつりと話しているうちに、クラウディオが先に眠ってしまうという珍しい事象には遭遇したけれど。

「……クラウディオ?」

大きなベッドの上、彼が横になってもまだスペースのある端っこに退屈を持て余して座っていたが、いくら何でもおかしくないか、とクラウディオのもとへと這い寄った。この部屋と小瓶にとても警戒心を強く抱いていた彼である、こうも無防備に意識を手放すのはどうにも作為的だ。
眠っているからか脈拍は緩やかで、呼吸もとてもゆっくりだ。だが、ぺちぺち、と頬を叩くが唸りもしない。
まさかこれが小瓶の効果か、と危ぶんで、水を口移しでも飲ませようとした。ぐるぐると脳内を駆け回る自責の念に気持ち悪くなりながら、ふと、卓上のガラスケースを見やる。
先程まではなかった紙面があったのだ。
解毒剤などの隠し場所がありはしないかと手を伸ばし、連ねられた一行に瞠目した。

「……た、達しないと、鍵は現れない……?」

どういうことだ、と紙を握る指先が力んで白くなる。
ハッと顔を上げて壁へ視線を走らせれば、先程まではなかったはずの四角いラインが見て取れた。急足で近づけばそれは壁と同じ色をした扉で、同色のドアノブもきちんと存在していた。クラウディオが壁を一周叩いて回った時にはなかったのに、と思いつつドアノブを握るが、まるで接着剤でも使われたかのようにガッチリと固まって動かない。焦りから何度かガチャガチャと、更には全体重をかけてみたもののびくともしなかった。
捻ることすらできないとは、と扉を眺めていて、気づく。ドアノブの少し上に鍵穴があったと思しき金具があるのだ。おそらくはここに鍵を差せば───いやしかし何故か塞がれている鍵穴をどうしろというのか。肝心の鍵すら何処にもない。
まさかあの文面のとおりに事を進めなければ本当に出られないのでは、と頭に過ぎる。

「あつ……」

ベッドに腰かけながら襟元を持ち上げて動かし、微風を作り出す。
じわじわと体温が上がり出し、ゆっくりと肌が湿っていく気がした。窓もない部屋で一人、バタバタと動いたからだろうか、部屋の温度が高くなっているようだった。
ふぅ、と息をついて、もう一度振り返る。ベッド中央までにじり寄ってから、そっとクラウディオの頬へ触れた。この部屋の温度では、たとえ薬の所為としても寝にくかろう───と思ってのことだった。
しかしどうだ、触れる彼の頬は熱いどころかむしろ自分よりも低く、微かに眉間へ皺を寄せ、唸って顔を背ける動作は間違いなく。

「え………あれ……?」

はふ、と息を吐き出して、ベッドについた手へと視線を落とす。自分の手の甲はいつもなら生っ白いはずなのに、まるで湯船に浸かった時のように赤らんでいた。おそらくは顔も、服を纏う胴体も。
意識してしまえば、呼吸は途端に落ち着きを失くした。それと同時に、じわじわと汗ばむ肌へ張りつくような服が疎ましかった。茹だる頭ではもう思考も回らず、覚束ない手つきで上着を脱いでいく。
服から解放されて、こちらの動きに合わせて起こる空気の流れを感じると、肌は「涼しい」と喜ぶようだった。それほどにじっとりと湿り気を帯びた体は、触れずともわかるほどに汗を掻いている。
暑い、暑くて堪らないのに───何故か下着越しに主張する雄が視界に入り、異様な興奮を覚えた。

「ッ……ぁ、ふ………!」

おそるおそる、下着の上から膨らみを辿る。自分の指が触れるだけで、それは大層悦んだ。竿を伝って腰へ、本来は排泄の役割を持つ孔を通ってその奥を疼かせ、感覚は背筋を登って首筋から脳までも痺れさせる。
普段から自慰の少ない自分が、何故、先端に指先を当てるだけで気持ちがいいのかはわからない。クラウディオの手ならばわかるのに、と視界の片隅に放り投げられたそれを捉え、ごくっと下品なほどに大きく喉が鳴った。
震える手で下着をずり下げ、上手く脱げずに片足に絡まるまま放置した。四つん這いで近寄るなり、クラウディオの大きな掌を掴む。骨張っていて、皮膚が硬くて、それが柔らかに雄を撫で上げるのだと───想像しながらも実際に手を添えて扱き、ビリビリと電流が流れるような快感に悶えた。

「あ、ぁ……ッ!く、ら……ッ……ん、ふっぅ♡」

寝ている彼の左手を使って何をしているのか、という理性は弾けて消えた。汚してしまうと怖じ気づく感情はすでに逃亡し、両手でクラウディオの手を覆い、自分の雄を握らせようと必死になっている。
気持ちよさから上体を倒し、彼の腹部に頭をすりつけた。すん、と鼻腔にクラウディオの香りと煙草の匂いがして、またやけに興奮した。
びく、びく、と体がはねるものの、どうにも絶頂には程遠い。何故だろうと熱に浸った脳みそで考えて、そのまま、じっと一点を見つめた。
見つめて───ごくりと喉を鳴らした。
ふうふうと荒い息を堪えるようにしながら、べたべたに汚れてしまった手をのばす。力が入らない指先で何とかベルトを外し、クラウディオのズボンの前を寛げた。ぐいぐいと雑に下着ごと引き下ろし、まだ芯のないそれを表に出す。色も形も常に見るモノと違い、そこに新鮮さを感じてまた喉が鳴った。
クラウディオは、深い寝息のまま微動だにしない。
しかし罪悪感も羞恥心も、茹だる頭では何も考えられず行為を進めた。

「ぅ………」

不思議なことだが、以前に彼からされたことが脳裏に浮かび、そのことを思い返して腰を震わせ───真似をして、芯のない雄へと舌を伝わせて唾液を落とした。雄を支えるように添えていた手指にそれをまとわせ、覚束ない手つきで扱き始める。
小さくクラウディオが反応を示し、微かな吐息混じりの声音が聞こえたが、ちらりと一瞥するに留めた。ゆっくりと芯を持ち、硬さを帯びていく雄を下生えからじっくりと撫で上げる。自分の先走りと唾液で滑りのよくなったそれを見つつ、片方の掌へも「べえ」と垂らした。
そのまま自身の反り立つ雄、それより後ろへと前傾姿勢でなぞっていく。会陰の奥、自分で触れたことのない場所であり───昨夜もクラウディオが触れて、奥まで貫かれたところでもある。

「ッ……ふ、ぅ♡」

まだ柔らかさがあったのは僥倖か、思ったよりもすんなりと指は入った。縁の近くを出し入れするだけでも全身に震えが走る。自分で初めて触るそこに違和感を覚えるも、頭の中は快感を追うのに忙しかった。
クラウディオの雄が反り立つ頃、まだ奥まで解れていないかもという葛藤ののちに生唾を飲み込んで意を決する。この時に正常な思考があったとは到底言えない。
まるで仔鹿のような足腰でクラウディオを跨ぎ、彼の雄を指で添えつつ後孔へと押し当てた。息を整えることは諦めて、せめて、すんなり入ってくれることを願いながら腰を落とした。

「ッ、あ、う……ッ、ん♡」

全身がすでにぐっしょりと汗ばんで、張りつく衣服が疎ましい。それよりも意識が優先される後孔からの刺激に、思わず殺しきれない呻きがもれた。
やはり、まだ狭かった。目覚めていないとはいえ『起き上がらせた』ご立派なクラウディオのそれは、いつもどれほど丁寧に慎重に、そして大事にされていたかを知る。微かに走るピリピリとした痛みに腰が引けそうになるものの、すでに体重をかけた姿勢は震える足で戻せそうにない。せめてもと自身の反り立つそれに手を伸ばし、ゆるゆると刺激を与えて緩和させた。
口を開けて荒れる息を吐き出し、徐々に内部へと迎え入れていく。眠るクラウディオの呼気が震えたり詰まったりしているのを聞くと、何とも言えない喜びが胸を満たした。
いつもいつも乱されるばかりで、クラウディオがちゃんと満足しているのか、気持ちよくなれているのかを確認したことがない。それをこのような形とはいえ、実際に感じているだろう反応が如実に表れているのは嬉しくなる。

「んっ、くら……でぃお…ッ、あ…ぅ…くらぃお……♡」

まだすべて収めきってはいない。しかし少しでもクラウディオの反応を見れることが堪らなくなり、内部は意図せずきゅうきゅうと締まってしまった。収縮する体内へ押し入ってくる、その感覚に背が震えた。今更ながら腰を持ち上げるには踏ん張れず、力もうものならもっと締めるという悪循環───見方によっては良循環かもだが───に陥る。
ぞぞぞ、と背を駆け上がる感覚にまずいと思うも手遅れだった。最奥に辿り着き、小突かれた瞬間に首を反らす。「あ」とも「お」とも判別つかない一音を零して、反射に従ってびくりと体を震わせた。
ぎゅっと掴んでしまったものの、自身は最奥の刺激に弱かった。掌に覆われた屹立は、衝撃に押し出されるかのように吐精する。背をしならせて目を見開き、足の指をぎゅうと丸めながら天井を仰ぎ続けるが、依然として視覚を含めた感覚は締めつけているクラウディオの雄に向いていた。
達するとともに内部はやはり収縮し、形を覚えるかのようにまとわりついた。彼自身はというと刺激としては足りないのか、は、と小さく息をついたものの未だに硬度を保ったままである。
そして、それは───自分も同じだった。

「(お、くが………たり、な……ッ)」

口いっぱいに溜まっている唾液を飲み込みながら、天井を見続けた視線を真下へと戻す。全身で呼吸して、達したばかりで強張る体を宥めようとするも上手くいかない。力を抜こうにもクラウディオの形がありありとわかるばかりで、今し方、白濁とした汁を吐き出したのが嘘のようにまたも芯を帯び始めていた。
小刻みに震える所為か、最奥にこつこつと当たるのがまたいけない。
嗚呼、違う───違うのだ、いつもなら違う、違うのに。

「ッ、ぁ、う♡♡」

瞼を閉じて、クラウディオの常を思い返そうとした瞬間、跨って座ってしまっていた胴体が動いた。その為に、中が擦られて吐息とともに嬌声が出てしまい───かぶさるように「アルカディア」と問いかけられた。
あれ、と思いつつ顔を上げれば、肘で体を起こしたクラウディオが、珍しくも瞠目しつつ、眦を赤らめながらこちらを見据えていた。その表情の機微を捉えるには、少し、視界が滲んでしまって不明瞭だ。

「く、ぁ…ぃお…っ♡」

呂律が回らない。クラウディオへ手を伸ばせばすぐに掴み、更には崩れそうになる体を支えてはくれるけれど、状況が呑み込めない為か動いてくれる気配はない。
それもそうだろう。自分とて、何故に寝ているクラウディオを襲うような真似をして跨っているのか、まったく理解が追いつかないままだ。もちろん茹だった頭ではそこまでの考えなど及ばないが。
クラウディオにしがみついて、荒い呼吸を何とか整えようとする。ふと見下ろした自身と彼の腹部に粘った液体が垂れてしまっていて、嗚呼なんてことを、と少しばかり罪悪感が顔を覗かせた。
だが、それもカサリと揺れた紙の音で、引っ込んだ。

「……いい趣味をしているな」

視線をゆっくりと上げれば、あからさまなほどに怒ったクラウディオが何かの紙を丸めて捨てたようだった。

「悪いなアルカディア、辛いと思うがもう少し我慢してくれ」

「ッ、ぅ……あっ、ぇ、…あっぅ♡」

しかしこちらへ向き直る時にはそんなそぶりは微塵もなく、ただただ強く抱きしめてくれた。しかしあっという間にベッドへと転がされて、ぐぐ、と押しつけられる腰に背がしなる。自分でちびちびと挿し入れていた時とは違って、弱いところを狙うような動きだった。
また迫り上がるぞわぞわとした感覚に、クラウディオにしがみつく。先程、達したばかりでもまだ快楽を追いかける体に、正直なところ困惑している。むしろ怖いとすら感じていた。
───熱に浮かされた頭の所為か、それを言葉にはできなかった。

「アルカディア、私を見ろ」

目を閉じてクラウディオの肩口でふうふうと息をついていると、引き剥がされるなり、静かな声が焦点を誘導する。涙で滲んだ視界は、固い指先が拭い去った。
クリアになった先で、落ち着き払った琥珀色の双眸とかち合う。

「私がいる」

クラウディオだと認識したからだろうか。
そのじわりと滲むような微笑にほっとして、全身を覆う変な興奮はなりを潜めた。

「………ッ、くらでぃお……ぁ、ッう♡」

「ああ、大丈夫だから」

それでも、挿入されたままの事実と、火照った感覚はすぐに消えるものではないけれど。

「悪いなアルカディア、少しの間だけ辛抱してくれ」

「ッ、あ!♡くら……ん、………ふ、ぁ…っ♡」

ゆったりと馴染ませるような抽挿に、先程までの追い立てられるような焦燥感はなく、また追い詰められるような快楽もなかった。ただ労るような口接けがあり、気遣うような触れ方だけが今のすべてだ。
何故、クラウディオが謝るのだろう。そんな考えは、浮かんではすぐに消えた。じっくりと広がるような快楽と、耳元で何度も呼ばれる声音に意識は翻弄されたからだ。

吐精した回数を途中まで数えていたが、もう出るモノもなくなり疲れきった頃、鍵の開くような音とともに視界がぐるりと回って、あとは憶えていない。
ただ「手を握ってほしい」と繰り返したうわ言に、彼が最後まで繋いでいてくれたことだけは確かだ。