Unexpected!
まさか、自分がクラウディオとこんな関係になるだなんて思った事はなかった。強くて、優しくて、格好いい人だという事は思っても、それは完全に尊敬や憧れでしかなくて、それ以上の事なんて考えなかった。考えなかった、はずなのだ。
アルカディアとクラウディオは恋仲になっているというか、セックスする間柄になってしまったというか、なんというか。
「ひ、ぁ、あ、ぅ…っ」
自分のみっともない声が部屋の中に響いて死にそうになる。涙でぐしゃぐしゃになった視界の先で、クラウディオは嬉しそうに、楽しそうに目を細めてアルカディアを見下ろしていて、びくびく跳ねるその体を押さえつけていた。
ほとんど動く事も出来なくなっているから、押さえつけるとは違うかもしれない。覆い被さってくるだけで充分逃げ道を塞いではいるけれど。
「や、ぁ、……っ…ふぁ」
緩く奥を穿ちながら、顔を寄せてきたクラウディオが唇を塞いでくる。ぬるりと舌が唇の上を這って、ぞくぞくと体が震えた。薄く開いた唇の隙間を割り開いて舌がねじ込まれ、口内を暴く。それを快楽として拾い上げるように体はとっくに作り替えられていて、舌が歯列をなぞったり、上顎を撫でたりするだけで体が跳ねた。
ぎゅぅ、と中を締め付けてしまって、その瞬間クラウディオが少しだけ眉を寄せたのが見える。その表情の色っぽさに眩暈を起こしそうだった。頭がぼうっとして、思考がまとまらなくなる。
「ぷぁ……っ…は、ぁ…っ…や、くら、…っや、や…っも、♡」
「うん?どうした、アルカディア」
長く深いキスからようやく解放されても、体が快楽から解放される事はなかった。弱弱しく首を振るアルカディアを見下ろして、クラウディオが目を細める。こめかみや頬、目尻に優しく口付けられる事すら気持ちよくて、泣きながら身を捩る。けれどそれは中の刺激を変えるだけで、自滅するだけだった。ひ、と高い声で鳴いたアルカディアを見て、クラウディオはうっとり目を細める。
「もう、や、だ…やだ、しない、で」
ぐす、と鼻を鳴らしたアルカディアを見て、クラウディオは目を瞬かせた。それから、一旦動きを止めたと思うと、こつりと額を押し当ててきて、そっと囁く。
「お前が嫌がる事はしたくない。何が嫌だった?」
その声は酷く真剣で、優しくて、静かだった。アルカディアの体を閉じ込めてしまう腕も、落ちてくる吐息も、触れている箇所も全部熱くて、燃えてしまいそうなのに、それを押し込めているのだろう。その優しさに胸が疼く。きっと、きゅぅ、と中が疼いて彼のモノを締め付けたに違いなくて、クラウディオは一瞬目を細めた。それでも、動き出そうとはしなかった。
「…や、じゃ、なくて」
「あぁ」
「あんまり、気持ちぃ、の、こわ、ぃ…」
舌をもつれさせながらどうにか紡いだ言葉は、聞き取りにくかった事だろう。それをしっかり拾い上げて咀嚼したのだろうクラウディオが、また、目を瞬かせた。それから、いきなり肩口に額を押し付けられて驚いてしまう。押し付けるというか、がくんと頭が落ちたみたいな感じだった。動揺しながら、首を傾げてクラウディオの頭部を撫でてみると、低く、まるで獣が呻くような声が零れ落ちた。多分、彼の声のはずだ。すぐ耳元で聞こえたから。
「くらでぃお…?」
どうしたの、と声をかけると、また低い呻き声が聞こえてくる。ぐりぐりと額を肩口に擦りつけるようにしながら、クラウディオがその逞しい腕でアルカディアの体をがんじがらめにするように抱きしめた。密着出来るのは嬉しいし、安心するけれど、少し苦しい。
「あぁ…。……そうだな、お前は、…ああ。悪くない」
「うん…?」
「私が悪い。それでいいな?」
「う…?」
クラウディオに何を確認されたのかよく判らなくて、目を何度も瞬かせる。瞬間、がばりと顔を上げたクラウディオは、少し目尻が赤かったような気がした。それに驚いて目を丸くしたアルカディアと目が合った瞬間、ゆるりと口角を持ち上げたクラウディオの表情は、悪戯めいていて、それでいて酷く男らしく、格好良くて、色っぽくて、頭が混乱する。
「く、」
クラウディオ、ともう一度名前を呼ぼうとした、つもりだった。けれどそれは叶わなくて、瞬間、強い力で体を引っ張り起こされたと思うと、視界が変わっていて、目の前で火花が散る。
「は…ぅ…っ」
チカチカと目の前が光って、何が起きたのか一瞬理解出来なかった。目を白黒させているアルカディアを、クラウディオが見上げている。自分が見下ろす状態になっているのだと気づいて、余計に混乱した。
「ぁ…、ひ、ぅっ♡」
ぐぷん、と深く熱が入り込んでくる感覚に顔を歪ませる。その時ようやく、クラウディオの膝の上に座るような体勢にされているのだと判った。自重で深く咥えこまされた凶器のようなソレに、息が詰まる。クラウディオは、逃げるように身を捩ったアルカディアの腰を掴んで落とすと、その衝撃で背を丸めてしがみついてきた彼の背中を優しく撫でた。
「…っあ、ぅ、う…っ♡…ふか、ぁ♡」
彼の皮膚を抉るかもしれないぐらいに強く爪を立てるけれど、肌が傷ついた様子はない。恐らく、今のアルカディアはほとんど力を入れられていなかった。
ぶるぶると震えるアルカディアの背中を撫でる手は優しい。けれど、必死にしがみついて見つめ返した彼の瞳は、決して優しくなんかなかった。
強すぎる快楽を痛みとすら受け取るくらいに敏感になっているアルカディアが、苦しくなって閉じられなくなった唇からぽたぽたと唾液を溢れさせていると、クラウディオが苦笑しながらそれを舐め取り、吸い上げてくれる。ぬるりと熱い舌が這う感触に震えて、きゅ、と後ろを締め付けると、息を詰めるのが聞こえてきた。
「悪いな、アルカディア」
「ふ、ぇ」
ぽつりと小さな声で謝られて、目を瞬かせる。何で謝るんだろう、とバラバラになりかけた思考を手繰り寄せて考えようとしたアルカディアは、またすぐに意識を霧散させる羽目になった。
「ひぅあ…っ?」
大きな手が、アルカディアのお尻の肉を掴んで割り広げるようにしたと思うと、これ以上入らないと思っていた熱が、ぐん、と奥まで突き上げてくる。かと思うと、ずるりと中ほどまで抜けて、窄まった中をごりごりと擦りあげられた。そうやって、ぐちゅぐちゅと音を立てて下から突き上げるような律動を繰り返されて、頭が真っ白になる。余す事なく広げられた内壁は、まるで歓喜するように震えながらクラウディオのモノに懸命に絡みつき、吸い付いていた。ごん、ごん、と奥を叩かれる度に目の前で火花が散って、高い、悲鳴のような嬌声が零れ落ちる。
「あ、ひっ…ひ、うぁっ…♡ぁ、あっ…!♡や、ぁ、あっ!♡やだぁっ♡」
クラウディオの手は大きいから、時折指先がヒクついている結合部を撫でていく。多分わざとだと思うのだけど、頭が馬鹿になっているアルカディアには判らない事だった。悪戯をするように結合部を撫でたり、時折指先を埋めたりされても、ただ身悶えるしか出来ない。
あんまり気持ち良いと怖いって言ったのに、と恨み言をどうにかして紡いだと思うのだけど、それを聞いたクラウディオは笑うだけだった。
「あぁ、だから、私が悪い」
そう、少し楽しげに囁かれる。アルカディアは夢中で首を振って、必死に足を彼の体に絡ませた。びくびくと跳ねて、時折背中を蹴ってしまうのだけど、クラウディオは気を悪くした様子はなく、甘やかすように口づけてくるだけだ。
「や、やっ…くら、でぃ、お♡俺、おれ、も…っ♡」
「ああ。いいよ。何度でも気をやってくれ、アルカディア」
アルカディアの言葉を聞いて、クラウディオが笑う。大きな手がアルカディアのモノを優しく包み込んで、くちゅくちゅと撫で、扱かれた。瞬間、きゅーっと奥が疼き、中が痙攣したように震えた。そこを、ごちゅんと熱で叩かれる。その衝撃で、とぷりとクラウディオの手に欲を吐き出したのに、クラウディオは動きを止めてくれなかった。とん、とんと奥ばかりを優しく叩かれ、撫でるように熱を押し付けられ、また体が熱くなって、すぐに反応してしまう。
「ひ、ぁ、あっ……♡や、ひど、ぃ、い…っ♡イッた、イッた、のにぃ…っ♡」
やだやだ、と首を振るアルカディアの頬を、クラウディオがそっと撫でた。無意識に口を薄く開くと、うっとりと目を細めたクラウディオが口づけてくる。するりと入り込んできた舌が、アルカディアの舌を絡め取った。小さく体を震わせたアルカディアの腰や背中、うなじをくすぐるように撫でていく指先に翻弄されて、夢中になりながらクラウディオの舌に自分の舌を絡ませる。
「ん、あ…」
「何度でもって言っただろう?」
「やぁ、ぁ♡…っぁ、あ♡」
はひはひと拙い呼吸を繰り返して、ぽろぽろと泣きながら、クラウディオの太い首に頬を擦りつけるように首を振ってしがみつく。その体を下から揺さぶられて、また、自分のモノが勃ち上がってしまう。それがクラウディオのお腹に擦れて、彼の体をいやらしく濡らしてしまうけれど、アルカディアは気づかずに、ただ気持ちよさでしがみついて、自分から押し付けるみたいに腰を揺らしていた。
「あぁ、可愛い。可愛いな、お前は。またイクか?」
「ん…♡う、ん…い…く、♡」
素直に答えると、褒めるみたいに頭を撫でられた。嬉しくなってうっとりと目を細めると、クラウディオがアルカディアの頬や目尻に啄むような口づけを落としていく。
「ぁ、あ、ぁ…っ♡」
「く…っぁ、」
びく、と腰が跳ねた瞬間、奥を熱く濡らされたのが判って、同時に達していた。ぐ、ぐ、と奥に塗り付けるように腰を何度も押し付けられ、最後まで注がれる感覚に、中がヒクついてしまう。柔くクラウディオの肩に噛みついて、強烈な絶頂の余韻に浸っていると、ずるん、と中から熱が引き抜かれた。
体勢はそのままで、アルカディアはクラウディオに抱えられたままだ。達した直後は荒々しかったクラウディオの呼吸も、今はもう落ち着いている。とんとんと優しく背中を叩かれて、小さく震えながら肩口に頬を押し付け、ぐったりと体を預ける。
少しずつアルカディアの呼吸も落ち着いてきているのに、涙腺だけが壊れてしまったみたいに、涙が次から次へと溢れて止まらない。すん、と鼻をすすると、クラウディオがアルカディアの顎を掬い上げて顔を上向かせた。泣いているアルカディアを見て、まるで困り果てたように眉尻を下げる。その表情がなんだか大型犬をちらつかせて、内心で笑ってしまいそうだった。実際に笑ってしまったらどうなるか判らないので、どうにか飲み込んだけど。
「もう…やだ」
「ん?あぁ、そうか。大丈夫だ、もうしない」
涙を吸い取るように口づけながら、クラウディオは小さく笑った。肩を揺らされると、体を預けてしまっているアルカディアの体も少しだけ揺れる。小さく身じろぐと、太い両腕がアルカディアの体をぎゅうと抱きしめた。可愛い、と囁いた声が耳朶をくすぐる。
している時は考えられなくなってるからいいんだけど、冷静になりつつある今言われるとどうしても、男が言われて嬉しい言葉じゃないよなぁ、と思う。そりゃあ、クラウディオから見ればアルカディアなんて子供だろうし、小さいだろうから、そういう感覚なんだろうけれど。その気持ちが少し顔に出ていたのかもしれない。僅かに尖らせた唇を、クラウディオの指がツンとつついた。
「どうした、私のアルカディア」
とろりとした、蜂蜜みたいに甘い声が零れ落ちて耳朶をくすぐる。どうせだからと、むっつりと不機嫌を顔に張り付けて見せたら、クラウディオはぱちぱちと目を瞬かせた。
「すけべ」
「ん?何の話だ?」
すごい格好よくて丁寧な人だと思ってた。こういうタイプじゃないと思ってた。何かこう、すけべで意地悪な、エッチな人だと思ってなかった。だから、すけべ、ともう一度告げると、小さく笑われた。
────まぁ、そういう所も好きになってしまったわけだけど。
「だい好き」
そう零して頬に口づけると、嬉しそうに微笑まれた。大きな手がアルカディアの頬を撫でる。甘えるように手の平に頬を押し付けると、クラウディオがゆるりと目を細めた。
「よし、もう一回しようか」
「やだ!」
ぺちん、と頬を叩いた音に、クラウディオが笑ってなんとかおさまった。良かった。