crash out
アルカディアが今の体になってから彼はあることに気付いた。それはどうやら人間や精霊よりも「睡魔に強くなった」ということだ。
“既に死んでいる”からこそ睡眠が必要ないだけかとも思ったが、人並みに眠気は来る。だが、不思議と耐えられてしまうのだ。それ故に「まぁいいか」が積み重なって結果的に三徹、四徹となっていく。
顔色の悪さも、目の下のひどいくまも常にあるものだから、周りはもう何も気にしなくなっていた。
昔はよく寝ていたと思うのだが、いつの間にか自分と睡眠は遠いところに位置している。クラウディオが共に居ない限り、アルカディアが自分からベッドに潜り込むことはない。ゆえに眠くて眠くて仕方がない、ということも無くなった。
先日レイスとの会話で聞いた「寝落ち」という用語はアルカディアの耳には聞きなれないものだった。寝落ちって何?というアルカディアの質問に、レイスは「睡魔に耐えられなくて気絶するように寝ちゃうことですかね」と答えアルカディアの興味を誘った。
そんなこと長らく経験していない。恐らく今の自分が眠気に負けて寝落ちることなんて、きっと世界がひっくり返ってもないだろう。アルカディアはそう思っていた。
だがしかし、今、なんとその「寝落ち」の危機に瀕しているのだ。それも久々に会った恋人の目の前で。
アルカディアの恋人であるクラウディオは、有名企業の社長ということもあって、多忙な身だ。なかなか会えないことも多く、面と向かって会えない期間が1ヶ月、ということもざらにある。そのため、久々の逢瀬になると毎度かなり盛り上がってしまうのだが、今、恋人と相対したアルカディアはいつもと違う熱が自分の体を包んでいるのを感じていた。
『とてつもない眠気が来ると、体がなんかあったかくなるんすよね』
レイスがそんなことを言っていたなと思い出す。ああこの感覚か。アルカディアは懐かしくも思える強烈な睡魔に襲われながら納得した。アルカディアがそんな状態に陥っているとは露知らず、クラウディオは自宅のソファでアルカディアを抱えながら額に優しく口付けてくれていた。
深夜、やっと帰宅したこの社長様は、ジャケットを脱ぎ落とす間も惜しんでダイニングに居たアルカディアを椅子の上から引っ張り上げた。そして恋人を腕の中におさめたままリビングのソファに座り込み今まさに久しぶりの恋人の匂いを堪能している最中である。普段の彼を見慣れた者がこの光景を目にしたら驚くだろう。体全てを使ってアルカディアを囲い込むクラウディオを本来ならよしよしと撫で、労をねぎらうのがいつものルーティーンだ。だがアルカディアは既に腕を持ち上げることすら出来なくなっていた。
ただ、ひたすらに、眠いのだ。
自分の体が性的な興奮ではなく睡魔によって熱くなっている上、この大きな男がぴったりと密着しているので更に体温は上がっていく。とろとろと瞼も重くなり、視界に恋人をおさめ続けるのが難しくなってきたころ、クラウディオの片眉が少し上げられた。
「(あ…、社長様が、触れ合いを所望されてる…)」
いつものルーティンが行われないことに疑問を持ち始めたのだろう。べろり、と、乞うように首筋を舐められるが今のアルカディアにはそんな愛撫も刺激にならなかった。
暑い、眠い、体が重い。
脳内はその三つの単語で占められている。耳元で聞こえていたはずの唸り声が、だんだんと遠のきはじめ、いよいよまずいなと思い始めた。クラウディオの前で気をやったことは何度もある。だがそれはいつも激しいセックスの後に発生するイベントで、こんなまだハグしかしてない状態で倒れ込んだら彼はきっととても驚くだろう。アルカディアは糊付けされたような唇を必死に動かして、目の前の恋人に話しかけた。
「くら、でぃお……」
ん?といつもの低い返しが眠気で赤くなった耳朶に届く。
「ごめ……今日、なんか…ねむ、くて。今度、上に乗る、から、それで……」
ゆるして、という言葉は口のなかでうまく紡がれずに消えていった。かくん、と首が傾きクラウディオの胸元にずしっとした重みが乗る。それはアルカディアが10何年ぶりに睡魔に敗北した瞬間だった。
すうすう、と穏やかな寝息がこだまする室内で、クラウディオはまるで彫像のように固まっていた。それは勿論、今しがた自分の腕の中で電源が切れたかのように眠りに落ちてしまった恋人が原因である。
久方振りの触れ合いに逸る心を押さえつけながらも、まずは恋人の匂いを堪能しようと、手順を踏んでいた矢先の出来事。さしものクラウディオも人の子、もとい恋するただの男である。これからという時に恋人が寝てしまい、固まってしまうのも無理ないことだった。更にいうなれば、彼の硬直の原因はもう一つある。寝入る前のアルカディアの言葉だ。
『今度、上に乗る』
そのフレーズがクラウディオの思考を止めていた。今まで数々の交わり方をして来て、勿論アルカディアの言う「上に乗る」という体勢も二人は経験済である。だがいつもそれを促すのはクラウディオからで、それも大体アルカディアが前後不覚になっているときに、どさくさに紛れて体位を変える。だからアルカディアから積極的に彼に跨ること、というのは今までなかったのだ。
そんな彼がまさか自分から提案するとは。困惑と失望と期待でぐちゃぐちゃの感情をクラウディオは抱えながら、ようやくふうと一つ息を吐いた。自分に全体重を預けるアルカディアをしっかりと抱え直すと、立ち上がる。そのまま真っすぐ寝室へ向かうと綺麗に整えられたシーツの上にそっと細い体を寝かせた。この寝台の様子からして、恋人が幾日も寝ていないことは明らかだった。常人なら確かに耐えられないほどの睡魔だろう。
自分が一緒に居ないと眠らないのはなんとかしなければならないな、とほんの少し呆れを滲ませながら青白い目元を撫でる。寝息をたてる口元に口付けたかったが、自分の体はいまだ恋人を求めて燻っている。過度な触れ合いは危険と判断したクラウディオはアルカディアの唇をそっと指で撫でるだけに留めた。
「起きたら存分に対価を支払ってもらうぞ」
自分の体の上で淫靡にはねる恋人の姿を想像しながら、クラウディオはいつもの低い艶やかな声でそう呟いたのだった。
深くて短い眠りを一人で堪能したアルカディアは、スッキリとした頭で目覚めた。脳みそはクリアだが寝入る前の記憶は正直朧気で、暫しベッドの上で放心する。
「(あれ……確か昨日は…クラウディオが久々に帰って来て……あれ?俺昨日…?)」
ちらりと自分の装いに視線を落とす。衣服は多少シワが出来ているくらいで特に乱れはなく、そしてヘッドボードの時計を見る限り、今はまだ深夜と呼べる時間だった。ベッドから下り立つ時も特に腰や背中に違和感はなく、それらの事実はアルカディアが昨夜クラウディオと何もしていないことを示していた。
「(何もせずに寝たの久しぶりだ…)」
いつもまるで飢えを満たすように互いを求めあい、クタクタになるまで体力を消費して気付けば朝ということが多い。そういえば昨日はクラウディオと会ってすぐに、安心したのかひどい眠気に襲われたんだっけとアルカディアはガシガシと頭を掻きながら、寝室から出た。
目印となるローズグレイを探す。会社に戻ってしまったか、と不安になったがリビングのソファでそれは見つかった。ジャケットを脱ぎ、ベストのままソファに横たわっていた恋人にそっと近寄る。この家のソファはそこそこ大きなものだがこの人にはそれでも足りないらしい。長い足を持て余しながら横たわる姿にアルカディアの頬が自然と緩んだ。
形のいい唇からは微かな寝息が聞こえる。彼は疲れきっているだろうに、大して触れ合うことも無く、更にはこんな狭いソファで寝かせてしまった。罪悪感からアルカディアがクラウディオの目元をそうっと撫でる。少し疲れの色が見えるそこを数度撫でると、そのまま頬にも唇で触れてやる。滑らかな肌を一瞬だけ堪能して去ろうとすると、腕がアルカディアの腰に巻きついて、ぐん、と引っ張られ胸元に倒れ込む。
「唇にはしてくれないのか?」
「……寝たフリ上手だね」
「お前は全て承知の上でキスをしてくれたのだと思っていたが」
すり、と形のいい鼻先が首筋に埋まってそこからじわりと熱が産まれる。
「寝る前の記憶…あやふやなんだけど…なんでこんなところで寝てるの?俺の隣で寝れば良かったのに」
「酷なことを言うなお前は」
え?と見上げるとそのまま頬に手が添えられた。べろりと唇を舐められてアルカディアの背が震える。
「これから、という時に寝入ったのはお前だ。眠気を口にしていたから、静かに寝かせてやったんだ」
「あ…、」
「待てが出来た恋人に褒美を与えてくれるだろう?」
腰に巻きついていた腕がするりと離れ、アルカディアの背中をつつーと撫でた。普段なら何とかして誤魔化す誘いの言葉だが、多少の罪悪感に襲われてる今、アルカディアはほんの少し迷った後、こくんと素直に頷いた。
寝室に戻ると、クラウディオは真っ先にベッドの上で横になり楽しそうに笑った。
「それで、何がほしいの?」
アルカディアが黒のカットソーを男らしく脱ぎ捨てると、クラウディオがぴくりと眉を動かした。
「覚えてないのか?」
「うん?」
「お前が、寝入る前に言ったことだ」
なんとなく嫌な予感がする。アルカディアは寝落ちする前の記憶をさらったが、やはり昨夜はあまりにもひどい眠気のせいで全てがぼんやりとしていた。
「…おれ、何か言った?」
片目が細められる。これはクラウディオがちょっとむっとしたときの動きだった。
「『今日は眠い。今度、上に乗るから許して』」
戸棚からローションのボトルを取り出していたアルカディアは予想外の言葉に驚いて、慌てて寝台を振り返るとクラウディオの自信満々な視線とぶつかる。
「そんな、こと、俺が言うと思う…?」
「ほう?じゃあ私が嘘をついていると?」
「いくらなんでも…直接的すぎるじゃん。ハグとかキスとか、あとは……んー、膝枕とか?それくらいなら分かる、けど」
性技が巧みではない自分が、そんなハイレベルな行為を詫びとして恋人に提案するはずがない。アルカディアはそう思っていた。故に疑ったのだ。だが、クラウディオはその反論に小さく息をつくと、アルカディアに向かって何かを放った。
「わっ、……なに、これ」
なんとかキャッチに成功した小型の機器。再生と停止ボタンがついているのでどうやら音に関係するものらしい。
「再生してみろ」
話の流れ的に正直押したくなかったが、アルカディアは視界の奥で注がれる琥珀色の圧に負けて再生ボタンを押した。まず、聞こえてきたのは衣擦れの音。そして甘く響く恋人の唸り声。唇や舌が戯れている水音も聞こえてきて、これが昨夜の触れ合い時の音声データであることが分かった。何で録音してるんだ、という疑問はひとまず置いておくしかない。こんな風に自分たちの行為の音を聞くことがそもそも初めてだったので、アルカディアの耳がじわっと赤くなった。暫し衣擦れの音が続いていたが、ぐるる、と何かをねだるときの甘く掠れた唸り声が聞こえたその少し後、会話が始まった。
『くら、でぃお……』
『ん?』
『ごめ……今日、なんか…ねむ、くて。今度、上に乗る、から、それで……』
むにゃむにゃとその後は言葉になっていなかった。だが、大事なのはその前だ。アルカディアはうわぁ、と顔を手で覆った。確かに、自分は言っていた。上に乗る、と。
「アルカディア」
「はい……」
「乗ってくれるな?」
音声データの再生がぷつんという音を立てて止まった。
「……重くない?」
「全く」
アルカディアは今、ベッドの上でクラウディオの腰を跨ぐようにして言葉通り乗っかっていた。下着を脱ぎ落としあらわになった尻の狭間にごりっと感じるかたいもの。それだけで背筋を甘い電流が駆け上っていく。お預けを食らっていたのはアルカディアも同じだ。だが、どうにも素直に求めることが出来ない。いつもなら再会の勢いに任せて求めることが出来るのだが、自分が寝落ちし微妙なラグが発生したせいでどうにも気恥ずかしさが勝ってしまっていた。
そのまま脱がせてくれ、という要望を叶えてやるために恋人のボルドーのシャツに手をかけ、ぷちんぷちんと1つずつ、ボタンを外していく。肌があらわになるにつれ、アルカディアの鼓動も少しずつ早くなっていった。手の位置が下がっていくたび、自分の中の恥ずかしさも少しずつほどけていく。
「下もお前の手で」
「ん……」
もうこうなったら全部叶えてやる。そう覚悟を決めたアルカディアはずり……と一度後退して、クラウディオのスラックスを脱がしにかかった。ジジ……とチャックを下ろし、ホックを外す。近くで見ると縫製の丁寧さが分かり、流石いいスーツを着ているな、などと思いながら下着ごと脱がすと、ぶるんと飛び出した肉に頬をぺちんと打たれ、アルカディアは目を丸くした。
「ふぁ……」
「待てが長かったからな」
それを言われるとどうにも反論が出来ない。アルカディアは天を向いてビキビキと震える先端を掌で覆った。
「…ごめん」
よしよし、と撫でると、逞しい腰がビクッビクッと揺れた。じわりと先走りが滲み出た気がして、素直な反応に思わず笑みが漏れる。戦場であれだけ強さを誇る男が、自分の体を求めて震えている。アルカディアの体に熱をもたらすにはその事実だけで充分だった。そのまま手を滑らせ数度、扱きあげるともうクラウディオの方は準備が万端だった。
だが、アルカディアはまだ出来ていない。先走りを纏ったアルカディアの手の上にクラウディオがローションを垂らした。混ざりあったそれを指に纏わせてそっと後ろに手を回す。目を瞑っても感じる強烈な視線に犯されながら、アルカディアは必死に自分の後孔をほぐした。
細い指が三本埋まる頃、アルカディアの陰茎もすっかり勃ちあがりぷるぷると震え始めた。正直自分の指三本ではギリギリのラインだが、もう我慢が出来なかった。そそりたつモノがしっかりと自分の肉孔を貫くように、位置を調整する。期待と不安で脚ががくがくと震えていた。そんな細い脚をクラウディオがするりと撫で上げる。
「自分で下ろせるか?」
こくこくとアルカディアが頷くと手は離れていった。ぷちゅ、とゆるんだ肉孔に切っ先が当たる。はくはくと開閉を繰り返しているそこに腰を揺らして擦り付ける。
「ん゛っ、うぅっ……!」
熱い。苦しい。気持ちいい。
アルカディアの脳内は今その三つの単語で占められていた。熱杭に自分から腰を下ろして貫いてもらったのに、恐ろしいほどの刺激にともすれば腰が逃げ出してしまいそうだ。クラウディオはぴくりとも動かず、ただその瞳はアルカディアを見つめていた。ぼやけた視界にうつった顔は満足げに笑んでいる。
「好きに動いてみろ」
「は……う……」
圧迫感にふうふうと息をつきながら、前のめりになって動けずにいた体に鞭打って、ゆっくりと腰を動かす。少し動く度に凄まじい快楽が伝播していった。上に乗る、と言うのは簡単だが実行するのがこれほど難しいことだったとは。
「んっ……う゛っ、んっ♡」
浅い部分に当たるように腰を細かく動かす。うまく当たって感じ入るたびに腰が戦慄き、薄い腹が痙攣した。その刺激でクラウディオも口から熱い吐息を漏らす。
「奥に……ふ、当てなくていいのか?」
「ぁっ、ん…んうっ♡い、ま、だめ……♡」
「なぜだ?」
ぐっと腰を掴まれてアルカディアが慌てる。
「だ、め、だって、あッ!♡ん…♡これ、ふか、すぎ、る…の」
「今まで何度もこの体勢で奥を貫いてやったが」
ぶんぶんとアルカディアが首を左右に振る。クラウディオが言っているのはアルカディアが前後不覚になっているときの話だ。だが今はまだそこまで意識を飛ばしていない。それゆえにアルカディアは怯えていた。だから浅い、自分のいいところのみを狙って腰を動かす。気持ちいい。確かに気持ちいいのだが、自身が浅瀬での戯れで満足できる体でないことはアルカディアも分かっていた。
怯えながらも段々と大胆にグラインドし始める恋人の動きにクラウディオの口元が弧を描く。
「……っは、う、んッ♡んうっ♡♡」
ぱんっぱんっと肉がぶつかる音。自分が大きく動けば動くほど得られる快感も大きくなる。だが、どうやら自分の動きだけでは一番欲しいところに届かないということに気付いた。下からも、突き上げて貰わなければ。
大きな手がアルカディアの目元に滲む涙を拭った。咄嗟にアルカディアは自分に触れた手を掴み、その長い指を口に咥える。その間も腰は上下に揺れている。しっかりと彼の腕を抱えながら、アルカディアは必死に腰を動かしていた。
その様子をクラウディオは楽し気に眺めている。自分の指を甘く噛みながら、淫靡に腰を動かす恋人の姿に獰猛な唸りが止まらなかった。
褒美はきちんと受け取った。むしろ恥ずかしがりの恋人にしては充分すぎるほどだ。そろそろ、こちらもその誠意に答えてやろうとクラウディオは目の前で揺れる細い腰を空いた手で掴んだ。
「ん゛っ♡♡」
ずん、と下から突き上げられてアルカディアが甘噛みしていた手が口から離れた。たった一突きで激しい快感がびりびりと体中をつたっていった。
「あ゛っ♡うっ♡♡ふかっ、ふか…い♡♡」
「ふ……お前がいつもより、動いているから、だ」
「ん゛っ♡♡んんっ、うそ、…ぁっ♡」
「嘘なものか、ほら。もう奥にはまっているぞ」
ぱちゅんぱちゅんと肉がぶつかる音と淫水の跳ねる音、そして体内で鳴るぐぷん、ぐぷんという音。それら全てがクラウディオの言っていることが真実だと語っていた。自分のいやらしさを理解したとたん、きゅうと腹が甘く戦慄く。そのままきゅっきゅっと中の肉をしめ上げるとクラウディオが耐えるように眉を寄せた。
「……っ」
「ぁ、あっ♡はっ、ぅ♡むり…、これっ♡腰、とま、んな♡♡」
腰を激しく動かしながら何度も甘イキを繰り返すアルカディアのナカ。一度は耐えたものの、目の前で一心不乱に快楽を貪る恋人の姿と相まってクラウディオも己の限界が見えていた。勢いよく体を起こし、上で跳ねていたアルカディアを腕の中におさめる。一瞬のうちに座位へと変わった体勢に、細い両脚がロックするようにクラウディオの逞しい腰に絡みついた。ぎゅううとぴったり密着し隅々まで互いを感じ合う。
「────っ♡♡」
何度目かの律動の後、ぶしゃっと最奥に叩きつけられた熱にアルカディアの体がびくんと揺れる。それをトリガーに解放された自分の欲と向き合いながら、アルカディアは遠くなる意識の中で唇を気だるげに動かした。
「も……上に、なんて、乗ら、ない……」
そう言ってかくんと頭を下げ、アルカディアは落ちてしまった。クラウディオはしばし絶頂の余韻に浸った後、静かにくくっと笑った。意識を飛ばしたアルカディアの耳朶に唇を寄せると、いつもよりも低い声でそっと囁いた。
「悪いな。今回は録音してないぞ」