Get used to it




クラウディオがアルカディアを初めて抱いてから、早くも約一ヶ月分の時間が過ぎ去ったことをここに報告する。



性交、情交、交接…言い方はなんでも良いが、入念な下準備を行い、いわゆる初夜と呼ばれるものを迎えたあの日──ぐちゃぐちゃに乱れ啼くアルカディアを眼下に置く悦びは筆舌に尽くしがたいものであり、幸福値も面白いくらい振り切れた。数年がかりで口説いた末の勝利であったのだから、当然だろう。
ぼろぼろと落涙を続ける目尻に唇を落とし、愛の言葉を囁きながら腕の中に閉じ込め、幾度も極まりの先へとその手を引いた。それら全てを許される位置にある優越を食みながら迎える朝は、なにより美しいものに見えたのだから、恋とは本当に人間を馬鹿にするらしい。
全身を赤く染めながら気絶するように目蓋を下ろした寝顔に、羞恥に苛まれてルカを引きずり込み布団から出て来られなくなった姿、それから全身が痛いと文句を言いながらも用意した食事を完食した時の拗ねた表情……一ヶ月が経過した今でも褪せることなく鮮明に思い出せる。
さすがに数日は体の違和感があったようだが、そこまで仕事に影響はなかったらしい。
今ではもう、はしゃぎ回る犬のように元気にルカと共に森を駆けていることから、とっくに回復していることは窺えて。──で、あるなら、次の計画を立てるのは至極当然のことだろう。
クラウディオもアルカディアも健康な体を持つ普通の男だ。そういった欲だって自然に溜まるし、恋人関係が成立したのだから何度ベッドに引きずり込んだって良い筈だ。
初夜という最大の壁を乗り越えた今、相手の同意さえ得られれば性交へのハードルは大幅に下がったはず。
……まさかその考えが根底から覆されることになるなんて思いもしなかった。



「いい加減観念しろアルカディア」

「…悪役みたいだよ」

「言わせているのはお前だ。とりあえず一回顔を出せ」

「無理。やだ。今すぐ百メートルくらい離れて…」

「家主を部屋から追い出そうとするな」

広いベッドの上で、かれこれ十五分以上色気の欠片もない会話を繰り返しているのだが、こちらもいい加減疲れてきた。
迂遠な誘いへの理解が足りないアルカディアを思って、分かりやすくベッドに引き込んでみれば、途端に近くにあった大きめのクッションを引っ掴んでその顔を隠してしまった。これでは口づけのひとつも出来やしない。
あのアルカディアがまさか焦らしといったテクニックを使うはずもなく、ただただ「離れて」「やだ」「むり」と繰り返すばかり。愛らしいとも言えるその初心さは嫌いではないが、それを目にする回数が片手を超えてしまえば今度はもどかしさが募っていく。照れるといっても限度があるだろう。
クラウディオはここ一週間くらい何度もベッドインチャレンジを行っているが、その相手であるアルカディアがすぐに逃げるわ誤魔化すわ拒否するわで全く話にならない。この前なんて「ごめんなさい」と謝られた。ごめんなさいてなんだ。深刻そうに謝罪されるより、まだ怒られた方がマシなんだと知ったが、貴重な体験をありがとうなどと誰が言うか。
今日という今日は逃がしてなるものかと寝台に放り投げたが、正直思い描いていた営みと真逆の方向に進んでいる気がしてならない。なんだこのやり取りは。自分の恋人はいつから聞き分けのない幼児へと変わったんだ?それこそ実際に幼子であれば容易に抑え込めただろうが、相手は成人もしている男だ。クラウディオに及ばずとも一定ライン以上の力だって有している。故に本気で抵抗されると厄介なことこの上ない。──現に今だってクッションひとつ引き剥がすのにも苦労する始末だ。このままではアルカディアが手触りを気に入っていたクッションが真っ二つになりそうだが。

「んぐぐ……ッ!離してぇ…」

「それはこっちの台詞だ。そんなに何かを抱き締めたいなら、これを捨てて私に来い」

「…うぅ〜…っ!」

一瞬の隙をついてクッションを取り上げてやれば「あっ!」という悲鳴が響き渡った。
つい半眼になりながら見下ろした先には、哀れなくらい顔面を紅潮させたアルカディアが居て、どうして真っ先にその顔を見せられないのかとため息を吐きたくなった。
奪い取ったクッションをぽいっとベッド下に放りながら「アルカディア」と名を呼んだら、ぶるぶる震える唇が緩慢に開かれた。

「……ぃ、」

「い?」

「嫌だって言ったっっ!」

振り抜かれたのはギフテッドの右脚だ。クラウディオはうっかり油断していたこともあって、そのまま寝台から蹴り落されてしまう。
落ちた先で出逢ったのはつい先程自分が放ったクッションで、なるほどこれが因果応報というものかと噛み締める羽目になった。
未だかつて自分にこんなことをしでかした者など誰も居ないぞ。
そう思いながらひっくり返った視界のなかゆるゆるとまばたきを繰り返し、時間をかけて体を起こしていく。その最中、ベッド上に目を向ければアルカディアは大きく目を真ん丸にしていて、自分のしたことに驚いて慌てているようだった。

「あ、わ、ご…ごめ…」

しどろもどろになりながら謝罪を口にするアルカディアは随分と動揺しており、相変わらず二人で居るところころと表情を変えるな、とクラウディオはそんな感想を抱いた。

「なあ、アルカディア」

わざとゆったりとした動きでベッド上に戻れば、大袈裟なくらい体をビクつかせた哀れな獲物が「なに…」と返事をした。
少なくとも話は出来そうだと様子を観察しながら、疑問を口に上らせる。

「なにがそんなに気に入らない?ここまで逃げ回りたくなるほどのトラウマを私が植え付けたか?それならそうと正直に言ったらいい」

理由一つ分からないまま避けられるのは正直気分の良いものではない。だがアルカディアにしか分からない何らかの傷や思いがあるとするなら、その身を無理に暴きはしないと誓うことなど造作もない。
ただ知れるものなら教えてくれと告げた瞬間──へにょりと弱々しくアルカディアの眉が下がった。
何度か視線をうろつかせ、やがて観念したようにぽそぽそと小さな声が並べられていく。

「…わ…笑わない…?」

「この状況で笑うと思うか?」

今更予防線は不要だと切ってやれば、ようやく挙動不審の理由が語られ始めた。

「…あの…クラウディオ…からしたら、くだらないこと、だろうけど、その、…………単純に、は、恥ずかしい…」

「恥ずかしい……?」

「ほらぁそういう顔する!」

「恥ずかしがったり怒ったりと忙しいな。……だがまあ、言いたいことは分かった」

本音を言うと「なんだそんなことか」といったところだが、バカ正直に口にしたが最後──またベッドから蹴り落とされるか、口をきいて貰えなくなるか、果ては部屋を飛び出して行ってしまうだろう。

「(それにしてもただの羞恥が理由とはな。既に一度経験を経ているというのに)」

随分と不思議なタイミングで羞恥に苛まれるものだと少しばかり呆れてしまうが、アルカディア当人にとっては深刻な悩みなんだろう。
それならば問題の解決に手を貸すのもまた、恋人であるクラウディオの義務だ。
膝を抱え丸くなってしまったアルカディアの背に手を当て、労るように優しく撫でてやる。
そうすればのろのろと伏せられていた顔が持ち上がり、なんとも愛らしい赤ら顔と視線が合った。
殺し屋がなんという表情を浮かべているのかと思う傍らで、自分にのみ与えられた特権を舌の上で転がしたくなる。
煮溶けていく感情を味わいながら、アルカディアに向けて薄く口角を上げた。

「お前が何にそこまで追い詰められているのか確かに私には分からないが、現状の打開策については提示してやれるぞ」

「……打開策?」

「ああ。至極簡単な話だ。私に抱かれれば良い」

「……………………え?」

なにを言ってるんだと言外に伝えてくるアルカディアの表情に、一層クラウディオの笑みが深まってしまう。

「良いかアルカディア、継続から力を得るように、何事も経験を重ねていけば日常化も可能となる。今のお前に不足しているのは私とのコミュニケーションだ。お前がすべき努力は私との触れ合い一択だ」

「そ、それらしいこといってる……っ」

「ただの事実だ。それともアルカディアはこの先ずっと、私にお預けさせるつもりなのか?」

「ぅぐ…」

痛いところをつかれたとばかりに唸るアルカディアに勝機が見えたため、あとは押しの一手しかない。
一層体を寄せながら、ひそりと真剣みを帯びた囁きを相手に差し出す。

「私に愛されることに慣れろ」

そうすれば全て解決だと教えてやれば、じわりとアルカディアの耳が赤くなっていく。初々しいその様に心がくすぐられて仕方ない。

まろい頬を手のひらで包み、顔をこちらに向けさせ口づける。
とうとう拒まれなかった事実に眦を下げながら、柔い肉に優しく歯を立てた。



「はっ♡ぅ、んん、っ♡」

ぬぢぬぢと粘着質な水音を立てながら、随時表情を確認すべく仰向けの姿勢を取らせたアルカディアの後孔を慣らしていく。
初めての交接に向けて長く時間をかけて拡張した場所が、この一ヶ月で再び慎ましく閉じてしまったため、万が一にも傷がつかないよう丁寧にナカを探る必要がある。
乾きにくいローションをたっぷり奥まで注ぎ入れながら、アナルの縁から奥へ向かって指の抜き挿しを繰り返す。
異物を押し返そうとする肉襞をあやし、早く受け入れてしまえと教育を施していく。一度教えたことを思い出せと、じっくり炙るような刺激を与えていけば、熱を孕んだ媚肉がひくひくと収縮を始めた。
良い兆候だと褒めるべく内部を掻けば、きゅぅっと一際強く指が揉み絞られ、打てば響くいじらしさに口角が吊られてしまう。
快感を拾い上げだした隘路に、さてもう一本と新たな指を潜り込ませ準備を進めていく。
何度も何度もローションを注ぎ足し、挿入した指の隙間から漏れる酷い水音で聴覚さえ犯し続ける。身の内で感じる快楽と水音を丁寧に繋ぎ合わせ、いずれ更なる深みにハマれるよう仕込みは万全に。ペッティング一つに翻弄されるアルカディアの姿は、クラウディオに確かな愉悦を味わわせてくれる。

「はっ、ッ♡くら、でぃお…もう、いい……っ……こんな、ここまで、慣らさなくて、いいからぁっ…」

「お前が逃げ回らなければもっと早く終われたが、流石に時間が経ち過ぎだ。あと少し大人しくしておけ」

自業自得だ諦めろと呆れた視線を投げると、悔しそうにアルカディアの眉間に皺が寄った。反抗的なその様相に甘やかし過ぎたなと、仕置きの意味を込めて前立腺への刺激を開始する。
わざと避けていた快感の源泉を愛でてやれば、面白いくらいアルカディアの腰が跳ねた。
挿入中の二本の指を使って前立腺を優しく揉んでやれば、アルカディアの全身が引き攣ったような強張りを見せ、両の脚がピンと伸びていく。
爪先でシーツを掻きながら悶える恋人の姿を堪能しつつ、一層熱心に開発済みのポイントを捏ね愛でてやれば、ひゅっとアルカディアの喉が鳴った。

「〜〜〜ッ、っひッ♡♡♡ぁ、ぁ゛ッ♡♡♡ゃッ、ぃやっ、待っ────ッッぁ、うっ♡♡♡♡」

ぬちゅっ♡ ぬちゅっ♡ ぬちゅっ♡ ぬちゅっ♡

「抜ぃっ、……ひッ♡♡♡ぁ、ぅっ♡♡抜、てっ、くらでぃお、♡♡♡くら、……ん、ん──ッッ♡♡♡♡」

ぬぢっ♡ ぬぢっ♡ ぬぢっ♡ ぬぢっ♡

「ッぁ、ひっ♡♡♡そこばっか、ゃ、ゃ♡♡♡」

ぬちゅっ♡ ぐちゅっ♡
────ぐぶぶっ♡♡♡

「ぅぁ゛ッ!?♡♡♡」

リズミカルに止まることなく責めを与えるうちに肉縁が柔らかくなったのを感じ、これならばと更にもう一本指を足した。
とろっとろに蕩け濡れた隘路に三本目の指を侵入させ、同じように前立腺付近を集中的に擦ってやれば、とぷりとアルカディアの陰茎からカウパー液が垂れ落ちアルカディア本人の腹を汚した。
やはり後ろだけではまだ射精は不可能かと観察していたら、一際高くアルカディアの背が反り、ぎゅっと後孔のクチが締まった。
アルカディアの陰茎は未だとろとろと先走りを流したまま勃起しているが、どうやら軽く中イキをしたらしい。
アナルセックスの素質がありすぎるのも考えものだと思う傍ら、這い上がってくる確かな興奮に身の内が焼け焦げていく。
指一本突っ込んだだけで「絶対無理!死ぬ!」と大騒ぎしていた姿がもはや懐かしい。
はぁはぁと荒い呼吸を幾度も重ねるアルカディアを見下ろしながら、挿し入れたままの指を使って、くぱぁっと限界まで尻穴を拡げてみた。
ローションで出来た糸が千切れていくのを眺めつつ、ぐるりと指を回転させ、柔軟性に富んだ肉壁の最終確認を行う。
案外早く馴染んだなと、優秀なソコを胸中で褒めつつ、芯を通した自身の陰茎をスラックスから取り出した。
一瞬張り詰めたままのアルカディアの陰茎を解放してやろうかと悩んだが、あまり最初にトばすと後がキツいだろうと手心を加えることにする。……これがアルカディアにとっての手加減になるかどうかは分からないが、精々最後まで付き合ってもらおうと、取り出した陰茎の先でアルカディアのアナルリングにキスをした。
そのままずるずると奥へ押し込んでいけば、熱い肉筒が歓迎するように激しい収縮を開始する。

「ぁ゛ッ〜〜〜〜〜っっ、っ♡♡♡♡♡♡ぁ、ぁ、ぅそ、……ッひ、♡♡♡う、あぁっ♡♡♡♡♡」

目を見開き、細切れになった嬌声を吐き出すアルカディアをじっくり観察しながら、腰を前後に揺らしていく。
単調な動き一つにさえ、過剰なまでに反応する猥りがわしいその様相。
未通の体を開き、今も尚こうして触れていられる喜びに浸りつつ、滾る欲を更に奥へと突き挿れた。

じゅぶっ♡ じゅぽ、にゅちゅぅっ♡

注ぎ続けたローションを撹拌するように陰茎を押し込んでは引き抜き、徐々に深く潜っていく。
締まる肉襞と接触する毎にいやらしい水音が立ち、アルカディアの震えが増すのが分かった。

「ぅ、ゃっ♡♡やだっ♡♡ひっ♡ん、ぁ、あ♡♡」

随分と可愛らしい拒否の声につい口角が上がってしまう。
気持ち良さそうに下腹をヒクつかせるアルカディアの声はすっかり溶けていて、痛みの影は欠片も見えない。
これなら多少激しくしても問題は無いなと、腰をしっかりと掴み、三本の指で愛で育てた前立腺に亀頭を打ち付けてやった。

「、ぁぇ?」

僅かな息を唇から漏らしたアルカディアの顔には、理解不能の文字が綴られていて、一拍遅れて響いた悲鳴が室内を彩っていく。

「〜〜〜〜〜〜ッ、っっ、♡♡♡♡は、ひゅっ♡♡ぁ♡ぁ、♡あ゛♡♡♡ッッ゛────ぃ゛ァあっ♡♡♡♡」

「っ、」

激しい収縮をみせるアナルリングの動きに射精感が込み上げるが、軽く息を詰めて落ち着きを取り戻し、絡み付いてくる肉襞を抉るように腰をグラインドさせる。
ぶるぶると震える敏感なしこりを逃がさぬよう亀頭で押し上げ擦ってやれば、呼応するようにアルカディアの腰が跳ね上がった。
雄を逃がさないようしゃぶりついてくる粘膜の動きに、こちらもまた翻弄されてしまうが、アルカディアを教育するにはまだ何もかもが足りていない。
羞恥を忘れるくらい体を繋げれば、次から言い訳など口にしなくなるだろう。

「(だがその代わりに別の文句は盛大に飛んでくるだろうな)」

容易く予想出来てしまう未来に微苦笑を浮かべながら、もう一段強く腰をばちゅんと叩きつけた。
初夜では触れなかった奥の狭窄部へと亀頭を擦り付け、滲む先走りを塗り込んでいく。
ぐっ、ぐっ、と細かく腰を揺する度にアルカディアのナカも反応を見せ、引き攣った喘ぎ声が散りばめられる。

「ぁ、ぁ、ひっ、♡♡♡深、……苦、しっ♡♡♡ ゃ、くらでぃお♡♡♡ぅ、そこ、苦しぃ♡♡♡」

責め苦から抜け出さんと身を捩るアルカディアをベッドに縫い付け、ぢゅぷぢゅぷと泥濘んだ場所を幾度もノックする。
芯を通したアルカディアの性器がこちらの律動に合わせて上に下にと振り回される姿を眼下に置きながら、ただひたすらに後孔だけを嬲り続けていると、いよいよ耐え切れないとばかりにアルカディアの手が自らの陰茎へと伸ばされ始めた。
膨らんだ肉棒を握ろうとする素直な手を直前で捕らえてシーツに沈めると「どうして」と疑問符を掲げた瞳が向けられた。

「まだ“待て”だアルカディア」

「なんで…、ゃ、…くるし…っ、♡イきた…っ」

「お前がちゃんと快楽を学ぶまでこのままだ」

ぐぢゅんっ♡

「──っ、ひぃッ♡♡♡♡♡」

アルカディアの「苦しい」は、与えられる快楽を上手く咀嚼出来ていないからこそ出る台詞だ。優秀な後孔から得る刺激に、さっさと慣れてしまえばいい。
この行為が「とても気持ちのいい」ことなのだと、この機会に刷り込んでやるつもりだ。
強情な精神がグラつくくらい、たっぷりと。
色を乗せた眼差しひとつで潤むほど。
──アルカディアの体の内を、自分のために変えてしまいたい。
本人には決して囀ることのできない欲に苛まれながら、熱くうねる隘路を亀頭で抉った。

「い…ぃ゛ぅうっ♡♡くら、……っぁ、ぁ、ぁ゛ッッ♡♡♡」

暴れる肢体を抑え込み、捕らえた手指に自身の指を絡め繋ぐ。
ばちゅばちゅと音を立てながら抽挿を繰り返し、奥のクチを少しずつ拓いていく。
クラウディオの長大な男根を根元まで受け入れさせるのは流石に哀れだと思うが……だからといって、やらないとは言っていない。
まろい尻との距離を詰めるべく熱い肉襞を掻き分けていたら、アルカディアの下腹部が小刻みに痙攣を始めた。びくびくと怯えるように震える下腹部には、消化しきれない快楽が蓄積しているのだろう……今なら触れるだけで射精しそうだなと、暴発寸前といった様相の陰茎を目にし、作戦を変えることにする。
アルカディアの強張りに合わせて奥の狭窄部もキツく閉じてしまっているため、一度イかせてやった方がスムーズに事が進みそうだ。──とは言え、優しく導いてやる気は毛頭ない。

ぬぢゅっ♡ ぬぢっ♡
ぶちゅぶちゅぶちゅッッ♡♡♡♡♡

「はッ…ぅ…!ぁ、あ゛ぁ゛〜〜〜〜ッ♡♡♡♡♡♡♡」

埋め込んだ陰茎の位置を調整し、今のアルカディアが一番感じやすい前立腺を狙って腰を動かす。
拡張時は勿論のこと、挿入時にも少し可愛がった場所だが、今度は情け容赦なく狙い打ちにする。
仰け反り逃げようとする姿勢をまさか許すはずもなく、どこまでも追いかけ、責め立て、啼かせ続けていると、後孔の動きに変化が見え始めた。
どこか緊張を含んでいた肉壁が陰茎に甘えるようにきゅうきゅう吸い付きだし、貪欲にも思えるその変わりように肌が粟立つ。酷い苦しいと訴える言葉とは裏腹に、どんどん性交に適した体へと進化している事実が堪らなく愛おしい。
前立腺を押し潰していた亀頭を使い、精嚢も合わせてねっとり虐めれば、アルカディアの性器が一際大きく反応した。尿道口がぱくぱくと開閉し、どろりと濁った体液が溢れだす。
猛った男根を銜え込みながら、ゆっくりと白濁を垂らしていくその光景は、脳神経が焼き切れそうになるほどの興奮をもたらした。
同性の立場としてはなんとも可哀想なイキ方だと薄っぺらい慰めを口に上らせたくなるが、言ったが最後──どの口が言うのだとアルカディアの怒髪天を衝くこと間違いなしだ。

「ぇ、ぁ……?おれ……今、……?」

なにが起こったのか未だに理解出来ていないらしいアルカディアは、目を白黒させながらたくさんの疑問符を散らしている。
そんな未知との遭遇を果たした恋人にクラウディオは笑みを注ぎ、労わりをこめて放置され続けた陰茎を優しく握れば「ひっ」と小さな悲鳴がアルカディアの唇から漏れた。案外とコチラ方面は怖がりなんだなと面白くなってしまう。
ぐずぐずに弱った逸物をゆっくり扱き、裏筋を搾り上げるように力を加えればアルカディアの臀部が浮いた。同時にきゅっと締まったアナルリングに一瞬意識が奪われたが、手指の動きは継続する。

くちゅ♡ くちゅ♡ くちゅ♡

「ゃ゛ッ!♡あ゛、ぁ゛、ぁぅ……っっ♡♡♡」

吐き出し済みの体液を塗り込むように緩急をつけて竿を擦り、雁首を指の腹で撫で上げる。
とどめに色づいた亀頭をくりくりと虐めれば、後孔の蠢きも激しさを増した。

「〜〜〜ッ、っっ゛、♡♡♡♡ゃ゛らッ、ゃ゛、ゃっ♡♡♡も、イっ、た!イった、のにぃ゛♡♡♡また、いく、ゃだ、♡♡♡離して、くらでぃお、ッッ────ゃ゛♡♡♡」

ぎゅうっと繋がったままの片手がきつく握られ、まるで拠り所にされているようで実に気分が良い。
勢いよくびゅぷっと精液を飛ばす鈴口に指を添えると、もうやめてとアルカディアから泣きが入った。
だが射精を我慢させたぶん、どうせなら最後まで出せば良いと、尿道に残った精子まで搾るように陰茎の根本から扱き上げれば、どろりと僅かな残滓が顔を出した。
途端にぐったりと脱力したアルカディアは半ば自失状態で、深い官能の底にあることが窺える。
全身を朱に染めたアルカディアは初々しくも危うい色香を漂わせており、捕食される側の顔をしている。仕事の時は何もかも喰い尽くしそうな顔を見せておいて、囲いの中ではコレなのだから参ってしまう。

「さて、そろそろ良いか」

最低限必要な休息は挟んだため、次はこちらの番だと繋ぎっぱなしであった左手をゆっくり引き抜き、精液に濡れた右手は軽くシーツで拭っておく。アルカディアの体を固定するのに、濡れたままでは滑る恐れがあるため致し方ない。
緩んだ口の端から唾液を一筋零すアルカディアの腰を両手で掴み、念のため「動くぞ」と一声掛けておく。
──そうして依然として滾ったままの剛直を、再度深くまで捩じ込み直した。

ずちゅうぅうぅぅっっ♡♡♡

「ぁっ、うッッ!?♡♡」

結合部から最奥にかけてごりごり刺激してやれば、すぐに歓迎するように肉襞が蕩け堕ちた。
すっかり快感に従順になったなと感慨深く思いつつ、一度見逃してやった狭窄部に亀頭を打ち付けていく。

「はっ、ひゅっ♡♡ぁ♡あ゛♡ぁぅっ♡」

穿つほどに開いていく奥のクチに、ぶぢゅっと陰茎の先を食わせた瞬間、ぼろりとアルカディアの双眼から大粒の涙が落下した。

「ぅぁ、あぁあぅうぅ……ッ゛♡♡♡」

痛みが強いようなら無理をする気はなかったが、むしろ気持ち良さそうに喘ぐアルカディアに欲が引き摺られてしまう。
シーツを掴みながら全身を波打たせるアルカディアの痴態をしっかり網膜に焼きつけ、残りの竿を埋めきるように腰をずぶりと沈めた。

「──っ゛♡ぃ、い゛あ、あ゛ぁっ♡♡も、ゃ、終わっ、て、♡♡こわ、怖ぃ、」

「セックスは怖いものじゃないぞアルカディア。変化を喜べ」

腕を伸ばし、いいこいいこと頭を撫でて宥めあやせば、ぐずぐずの涙目で睨まれた。自分を組み敷く男にそうした目を向けるべきではないと、実地で教えてやるべきか。

「諦めろ。お前の体はもう戻らない」

知ったからには戻れると思うなとクツリと喉を鳴らし、本能の赴くまま腰を引いて肉壁をじっくり嬲り直し、ごぢゅんっと勢いをつけて隘路を抉った。
瞠目するアルカディアの方へ上半身を傾け、震える身を抱き寄せながら口付けを贈る。
ちゅっ、ちゅっ、と繰り返し唇を重ね、徐々に深いものへと変えていく。
ねっとりと咥内を舌で舐め辿り、縮こまる相手の舌を絡め取って引き摺り出せば、更にアルカディアの瞳がとろりと溶けた。相変わらずキスは好きらしい。
それはそれでいやらしくて好ましいが、キスひとつで満足出来るような殊勝さなぞ、こっちは有していない。

ちゅ♡ くちゅっ♡
ぬぶっ♡ ぬぢゅっ♡ ぐぶぶッ♡

上も下も思うまま水音を響かせ、アルカディアの呼吸を攫い、最奥を捏ね愛でる。
紅潮した淫らな顔を視界いっぱいに広げながら、どぼっと一際深い場所に精液を注げば、一拍遅れてアルカディアも絶頂した。
卑猥な動きを見せる肉襞に陰茎を締め付けられ、ぐっと目を細めて過剰な刺激をやり過ごす。
その後触れるだけのキスをしてから顔を離すと、ぼぅっと呆けたアルカディアの視線とぶつかった。
どこかふわふわとした空気を纏うアルカディアの姿に大丈夫だろうかという気持ちが湧いたが、意識はあるためきっと問題無いだろう。
白濁まみれの後孔に栓をしながらアルカディアの耳へと唇を寄せ、最後にこれだけはと大切な忠告を囁いておく。

「次に逃げたら、もう手加減は無しだ」

覚えておけと釘を刺した瞬間、ザァッとアルカディアの顔から血の気が引いたのが分かった。
優しく抱いてやったのだと、これでしっかり伝わったことだろう。



ニコリとわざと意地悪く口角を吊りながら、耳殻に響くように大きくリップ音を鳴らした。