endless love


アルカディアが次に目覚めたのは触手の海の中ではなく、柔らかいベッドの上だった。寝起き特有の鈍った思考回路をどうにか動かしつつ、アルカディアはゆっくりと上体を起こそうとする。
……だが、アルカディアは起き上がれなかった。全身が鉛になってしまったかのように重く、指一本動かすことすら億劫だ。何故だろうと疑問を抱くと同時に、意識を失う前の出来事を思い出し、アルカディアの顔から血の気が引く。

「​​──ッ」

上げそうになった悲鳴を噛み殺し、恐る恐る下半身へ視線を落とす。……だがそこにあったものは、想像していたような悲惨な光景ではなかった。

汚れひとつない真っ白なシーツと、清潔感のある白い掛け布団。首を捻って辺りを見回せば、見覚えのある風景が視界に入る。間違いなく、クラウディオの家の寝室だ。

「………くら、でぃお?」

クラウディオに、助け出されたのだ。そう理解するのに時間はかからなかった。安堵と申し訳なさで胸中がいっぱいになる。あんな醜態を晒してしまったというのに、助け出してくれたばかりか、こうして衣服を整えられ、ベッドに寝かされ、介抱までしてくれている。
情けないやら恥ずかしいやら、色々な感情が入り混じって、アルカディアは唇を噛んだ。
気怠い体に鞭打って、上体を起こす。部屋の中には誰も居ないようだ。アルカディアは重いため息を吐いた。

「……、……最低」

あんなにも悍ましいものを受け入れ、快楽に屈服してしまった。溺れて、喘いで、善がってしまった。そんな浅ましい自分の姿が脳裏に焼き付いて離れず、自己嫌悪に陥る。……体には、いまだに熱が燻っている。駄目だと分かっていても、体は正直に反応する。

「……っ、……は、……♡」

熱い。苦しい。辛い。気持ち良くなりたい。理性と本能の間で葛藤しながら、無意識のうちに太腿を擦り合わせていると​​──部屋の扉が開かれた。

「目、覚めたか?」

突然聞こえてきた声に、びくりとアルカディアの肩が跳ねる。反射的に首を向けると、そこには心配そうな表情を浮かべるクラウディオの姿があった。

「驚かせたか。…痛いところは?」

クラウディオの声音には、アルカディアに対する非難の色は一切含まれていない。ただ純粋にアルカディアの身を案じているだけのようだ。それが尚更アルカディアの心を締め付ける。

「……な、い」

消え入りそうな声で答えたアルカディアに、そうか、と短く返した後、クラウディオは何かを考えるように黙り込んだ。何を言われるのかと、アルカディアは不安げに俯く。

「アルカディア」

暫くして、短くかけられた言葉に、アルカディアはびくんと体を強ばらせた。
​​──きっと、あの醜態を見られた。幻滅されたことだろう。
クラウディオは何があってもアルカディアを見捨てたりしないことを、心の底ではわかっているのに。心が不安に支配されている上に、今も彼の体は、与えられた快楽を忘れられずにいる。

「……なに…」

震えそうになる声を抑えて、努めて冷静な声で返す。しかしそれすらも不自然に思われたのではないかと考えてしまい、怖くて顔を上げられない。
しかし続けられたクラウディオの言葉は、それらの予想とは全く異なるものだった。

「…悪い…遅くなったな」

それは今のアルカディアにとって意外なもので、同時に酷く優しい響きをしていた。思わず顔を上げて、まじまじとクラウディオの顔を眺める。
琥珀色の瞳が真っ直ぐにこちらを見つめていた。そこに軽蔑の色は感じられない。むしろどこか困ったような色すら滲ませて、クラウディオは続ける。

「私が遅れたせいで、怖い思いをさせたな。部下は全員無事だったよ。…しかし、私が向かっていたら、あんなことにはならなかったはずだ」

「…違、う。おれの…不注意…で…。だから、クラウディオは、あやまらないで…」

アルカディアはふるりと首を振ると、クラウディオの謝罪を否定した。実際、アルカディアの落ち度なのだ。警戒心が足りていなかった。油断していた。それを咎められるのは仕方の無いことだし、甘んじて受け入れるつもりである。

「でも私は、間に合わなかった」

「……っ」

「怖かったろ」

クラウディオの大きな手が頭を優しく撫でてくれる。
あの迷宮で、ずっと焦がれていた相手が目の前に居る。あれだけ、会いたかった人が、目の前に。
どっと体から不安と緊張が抜けて、漸く自分は帰ってこれたのだと自覚した途端瞳からぼろぼろと大粒の涙が溢れ出た。

「くら…でぃお…っ」

「ああ、もう大丈夫だ」

ぎゅっと抱きしめられ、クラウディオの体温と香りを直で感じて安心したのか、アルカディアは彼のシャツをくしゃくしゃに握り締めて子供のように泣きじゃくった。

「も…あえない、って、おもっ、た…っ」

「ああ」

「おれ、っ…とちゅう、で…あきらめ、た…っ…ごめ…ん…」

「謝らなくていい、辛かったな。もう安心しろ」

…彼がアルカディアを見つけたとき、アルカディアは既にもはや利用価値が無いと判断されたのか、触手たちによる凌辱からは解放されていた。だがそれでもなお、酷い有様だったのだ。
粘液で汚れた痙攣を繰り返す体にぐしゃぐしゃになった髪、だらだらと口から溢れる唾液、乱れた呼吸。いくつもの涙のあと。そして何よりも​​──後孔からごぷり、と溢れ出る大量の液体。

クラウディオは泣いてしがみついてくるアルカディアをずっと優しく抱き締めて、頭を撫でてくれていた。

「体も、直に元に戻る」

漸くアルカディアが落ち着いて来ると、クラウディオは静かに口を開いた。
泣きじゃくっていたせいで忘れかけていたが、アルカディアの体の熱はまだ冷めていない。思い出してしまうと、途端に耐え難い疼きに襲われる。涙が少し引いて思考が明瞭になってくると同時に、先程までしゃくりあげて泣いていたのに、体がじわりじわりと熱に襲われていく。

「う…っ♡…ぁ、…♡っ…くら♡……ぃお…♡ぁ………♡」

既に日が暮れ、室内は薄暗がりのまま、未だカーテンのひかれていない窓辺から差し込む月明りだけがぼんやりとした微かな光源を与えている。
しかし暗がりなど、寒さなど、今のアルカディアにはどうということもなかった。求めるのは明るい室内ではなく、暖かな火などなくとも体は過ぎるほどの熱を孕んでいる。
荒く熱っぽい呼吸を留められない。火照り切った体を燻ぶらせるまま、アルカディアは両腕でクラウディオに強くしがみついて収まらない熱に耐えようとする。
悲しいほどに健気、そして無為な努力だ。触手にたっぷりと犯された胸、腹の面やその内側、足先や指先に至るまで、体の全てが皮膚と肉の上を這いずり回った触手の感覚を覚えている。落ち着け、と何度自身に言い聞かせたところで叶うはずもない。犯されきった体が求めるのは確かな熱、欲望の塊、愛する者からの熱情そのもの。

「く…♡ぁ…ぁ……♡…っぁ、…♡く、あ…♡…っ♡」

宵の影が満ちる室内に声を落とす。震え、甘ったるく、熱い息の混じった呼び声だ。はしたない、情けない、と訴えかけるべき理性は先程まで復活していたのに、再び焼き切れてしまった。

「…アルカディア」

「く、ら…でぃお……♡♡ぁ♡ぁ……♡くら、…、ぃお…♡」

クラウディオを抱きしめる手に震えながら力を籠める。背中に回されたクラウディオの指先の感触でさえもびりびりとした刺激に感じられて気持ちがいい。もっと、もっとクラウディオの手が欲しい。

「くぁ、ぃお♡ぅ…っく♡は、ぁ…っ♡ひゅ、ぁ…♡く…ら……ぁっ♡」

力の抜け切った体が倒れ、クラウディオにしがみつくまま額を胸板に押し付ける。吐き出される息は熱い…どころか一秒ごとに熱を上げているようにも感じ得られる。求めるあまり赤い瞳から絶えず涙を零しながら、アルカディアは何度も名前を紡ぐ。愛しい者の名前を。

「は、…っ♡ぁ、くら…♡くらでぃお…♡く、ら…っ♡」

熱く切なげに名前を紡ぎながら、瞼に浮かんだ涙がぽとぽとと床に零れ落ちていく。

「アルカディア、どうする」

アルカディアは伏せ切っていた顔を少し擡げ、眼前に現れた彼の顔を目に映した。丸みを帯びた赤い瞳は、すぐにとろりとした笑みへと蕩けきる。

「ぁ…っ♡…っ♡くらぃお……♡」

乞い求めるものではない、安堵に包まれた熱っぽい声音で名前を呼べば、彼の手が名を紡いだ唇を、そして頬を優しく撫でる。甘えや愛しさを隠すことのないまま、アルカディアはその大きな手に自らも頬を寄せた。

「ぁ…♡ぅ……♡っ…くらでぃお…♡〜〜…たすけて…♡」

「お前が、大丈夫なら」

クラウディオの返答にアルカディアは安堵のままに瞼を閉じ、身を任せた。

そして薄い目蓋が再び開かれたとき、焦点の合わない赤い眼に彼の体と天井が映って、身体中が歓喜した。胸の底から全身へと急速に湧き上がる熱が情そのものだと、下瞼に涙が滲んでからようやく理解できた。

「く、ら…でぃお…♡」

喉まで満たした熱情が溢れるように、思わずと溢れた声は甘ったるくて仕方がない。普段見せる、冷静で警戒心の塊のような“怪物”の姿とは余りにもかけ離れた様だ。しかし、それを認知する余暇は無論、羞恥し取り繕うだけの理性や知性は、とうの前に焼き切れていた。あるのはただ、愛しい者に抱かれている喜びに浸り切るアルカディアのみ。

「アルカディア、本当に大丈夫なのか」

「ん…っ!♡ぅ、ぁ、あ♡」

「…ふむ」

「ぁ、♡は…っ♡ぁう、ぁ……♡」

「名前を呼ばれて達するほど、か」

ぴくっと全身が強張り、胸の頂を見せつけるように体が身動ぐ様には見覚えがある。今頃下着の下では白濁が溢れ出しているのだろう。アルカディアを抱きしめながら、クラウディオの目が細められる。体躯を抱く手で背中を、もう片方の手で頬を優しく撫でてやれば、達したばかりの体が堪らなそうにくねる。甘える猫のような…甘ったれる女のような様に思案の息が溢れる。

「セオドアには苦労をかけるな」

今のアルカディアの体はきっと限界を超えている。それでも陵辱された時の熱が引かないのだろう。そしてきっと、触手に犯されきったままなのが嫌なのだ。クラウディオに上書きしてもらいたいと、その蕩けた目が語っている。
明日はアルカディアの介抱で会社に行けそうにない。後でセオドアに連絡しなければ、と頭の中で思案していると​​──。

「……?」

「…っ♡ん、ん♡ん、ぅ…♡」

指先に柔い感覚を感じ、クラウディオは目下へと視線をやる。琥珀色の眼には腕に抱く愛しい子が、頬を撫でるクラウディオの指を食んでいる姿が映った。一見赤子のような様だが、けれども咥えた指先に舌を這わせ、柔く歯を立てる感覚には確かな意図がある。
くっと、絡み付こうとする舌を指の腹で少し押すように撫でてやれば、視線と意識を向けられ嬉しいとばかりに、細まった赤い目がいっそう嬉しそうに蕩けていく。

「妬いた?」

「ぁ、ふ♡ん…♡ん…♡」

自分が今目の前にいるというのに、他の者の名が出たことが余程寂しかったのだろう。頷くこともないが、咥えた指を嬉しそうに愛しそうに舐めしゃぶって離そうとしない様からしてそれは明らかだ。

「仕方ないな」

「ぅ…♡ん、ん…♡」

「可愛いな、お前は」

「…っ♡♡ぁ、ぁ♡は、ぅ♡」

告げれば、アルカディアの目がいっそう蕩けていく。ぴくっと体が震えたことから甘イキしたのかもしれない。
労わるように、愛するように背を包む手で体躯を撫でてやりつつ、さて、とクラウディオは追いすがる愛し子の口からずるりと指を抜いてやる。

「あの塔で何があったのか、私に教えろアルカディア」

唾液で濡れぼそった指の腹で唇をなぞり、そこで言葉を紡ぐことを命じる。再び名を紡がれ、ついには命令までも下されたことにアルカディアの身体はふるりと揺れた。高揚に焼き切れそうな脳を、しかし命に従うため懸命に働かせようと苦心する。

「…っ♡…触手が…っ、ぁ、…っ♡」

ただ説明をするだけだと言うのに、アルカディアの体が震えていく。それは恐れではない。歓喜だ。弁明がため脳裏に呼び起こされる記憶に犯されているのだ。それによりただでさえ回らない舌がいっそうもつれたのだろう。唾液で濡れる唇からは子供のような言葉ばかりが出でていく。

「ん…♡ぁ、…おれ、おれ…にっ♡からみ…ついて…♡ぁ、あ♡ん…っ♡っ♡♡」

自身の動きを留めた触手が、脚に絡みついては腕にも、そして体の中にまで潜り込んできた感覚。まるで弱い部分を知っているかのように胸を、そして急所である性器、愛され慣れた後孔までもをなぞった瞬間の高揚。

「それで…♡ぁ、っ♡なか…ぁ♡は、ぅ…♡ずっ…とっ♡おか…さ、れ…ぁ…♡ぁ…ぁっ♡」

何故だが自分にばかり構う触手が幾重にも生え、壁のように周りを取り囲んでは、ひとつひとつ全身を舐っていった。喘ぐ声を上げても外に届かない。容赦なく降り注いでは粘膜とともに体を這う触手。
その感覚を思い出しているのだろう。アルカディアは身動ぎながら、甘やかな声で稚拙に顛末を述べ上げた。

「…なるほど。媚薬効果もあったんだろうな」

「っ♡あ、うぁぁっ♡♡」

するりと、クラウディオの手がアルカディアの股を柔く撫でる。服を押し上げる陰茎の形をなぞるように、そしてひくつく後孔の具合を確かめるように、確かだが優しい手つきにアルカディアの口から悲鳴じみた喘ぎが上がった。それを聞いて尚、クラウディオは親指の腹で布越しに後孔をなぞる。

「ぁ♡ぁ♡ぁ♡ひっ♡ん…っ♡♡ん♡」

「確かに、お前を見つけた時は酷い有様だったよ」

「は、ぁ…っ♡は…っ♡ぁ♡あ♡ぁ〜ッ♡♡」

「…それで、アルカディア」

ぐり、ぐり♡と、布の上から後孔に入らんとするかのように確かになぞり続ける親指に、アルカディアの身が悶える。達するかのように背がのけぞってはびくっ♡びくっと震え、腰が官能を求めて揺れては、堪らず太腿で股座に差し掛かる手をぎゅうっ♡と挟みこむ。
そうして期待に満ち満ちた熱っぽい眼を宙にやるまま喘ぎを零すアルカディアの頬をするりと優しく撫でて、唇をなぞった。それによりアルカディアの視線と意識が眼前へと引き戻される。

「私に、どうして欲しい?」

それは猛毒のような問い掛けに違いなかった。口にしながら、クラウディオは親指の腹で後孔に緩やかな刺激を与え続けていたし、それでいてくねる体躯をもう片方の手で撫でてやった。その皮膚がどれほどの熱を持っているか、溢れる声にどれほどの切なさが混じっているか、そして健気に自身を見つめる赤い眼差しにどれほどの熱望が湛えられているか、知らないはずがないのだ。それでも問い掛けを放ったのは、この行為を確かに己のものとするため。

「ぁ♡ぁ…♡く、ら、ぁ…ぃお…♡くら…でぃ、お…♡」

太腿を擦り合わせるように甘く締め付けられ、きゅうっ♡と抱きしめるように手が挟み込まれる。クラウディオに擦り寄っては熱の籠り切った声が甘えを隠さずに名前を紡いだ。その音に寂しさが滲んでいることを察すると、クラウディオは背を支えるようにし、そこを撫でてやっていた手で頬に触れてやった。堪らなそうに目を細めて擦り寄る様は健気で、愛らしい。

「…して…♡おか、して…っ♡♡うわ、がき…して、ほし…♡」

歓喜し、身体中を赤く染め上げて強請る愛しい子の様に、クラウディオは琥珀色の眼を穏やかに細めたのだ。

「勿論。いい子だな」



「あぁっ♡ひ、ぁ♡あ♡あ♡は…っ♡んっ♡ん、ぅ〜♡」

指の腹で触手に犯され未だに主張するしこりを撫でられる度、飽きもせずに体が跳ねる。指の側面同士で挟まれ擦られれば仰け反ったままの胸の頂がびくびく♡と震え、挟み込んだままもう一本の指で押し潰すように撫でれば首までもを反らせた。
その肌に傷がないことを確かめるようにもう一方の掌が腰を、腹を…その裏側を示すようにぐっ♡と軽く撫でながら、胸にたどり着く。ぷっくりと桃色に膨れたままのそれを指先で挟みあげ、摘んだままぎゅうっ♡と優しく上に引っ張ってからぴんっ♡と離せば、雄膣はいっそう指を甘く熱く抱きしめていく。

「ぁ♡ぁ…♡く、あ…♡ぃお♡♡」

「どうした、アルカディア」

「ッ♡♡ん…っ♡」

名を紡がれる喜びにぴくりと体が震える。腹の奥がきゅんっ♡と疼くまま達しかけるのをなんとか堪えて、アルカディアは蕩け切った赤い眼にクラウディオを映す。雌穴は咥えた指をぎゅうっ♡と締め付け、ぷっくりと膨らんだ乳首は女の如き快楽を受け入れ続け、すっかりと赤くなった体は厭らしくはねる。気持ちがいい。けれど違うのだと、唇からはどこか切なさも含んだ喘ぎが溢れている。

「な、らさなくて…っ♡い、から…ぁ♡」

だから早く。言外にそう強請りながら、アルカディアはクラウディオの指を咥える後孔の縁に指をあてがい、くっと広げようとする。クラウディオの硬くて長い指を三本も飲み込む雌穴はぱつぱつと目一杯に咥えており、広げんとすれどほんの少ししか隙間は生まれない。
それでも押し広げようとする程には、体中に熱が燻っていた。触手にどこもかしこもを触れられ、そもそも滾り切っているのだ。クラウディオの陰茎は大きいものだが、いつ挿入されたとて問題はないほどに後孔は蕩けている。
その、粘膜を含み切った蜜壺を、クラウディオは執拗に愛し続けている。

「あ、ぁ〜〜っ♡♡あ♡あ♡ん、っく、ぁ…っ♡ぁああっ♡ひっ、ぃあ♡ああぁぁ♡」

肉壁に刻まれる皺のひとつひとつをなぞる様に指の腹でなぞりあげ、かと思えばくっと曲げて弱いところをぐりぐりと押す。ふたつの指でしこりを挟み込み擦り合わせたと思えば、ばたばたと上下に揺らして挟み叩く。前立腺だけを愛でていたというのに、時にはずぢゅっ♡と最奥を叩かんとするかのように深いストロークを描いて挿入を繰り返す。

「ぁ、ふ…♡ぁ、あ♡あ♡ひ、ぅぅ♡ぁ♡ん♡ん、んんっ♡」

後孔だけではない。もう一方の空いた手は胸へと及んでおり、執拗にそこを愛でた。碌にふくらみのないそこを掌全体で揉み込むように包まれると、女のように肉がないため擽るような感覚を与えられる。もどかしさに身を捩れば、宥めるように胸の頂を指の腹同士で挟まれた。くりっくりっ♡と硬くなった乳首の芯を捏ね回すと全身にじわじわと快感が広がっていく。堪らなそうに自身に絡みつく後孔を指はぐりぐり♡と擦って官能を高めていく。捏ね回していた乳首をぎゅうっと摘みあげれば堪らず腰が浮いてしまう。
ただ探るように撫でるだけではない、官能を呼び起こす動きに、強請るようにいっそう胸を突き出してしまう。

「ぁ♡うぁ…っ♡く、ぁ、ひぉ…♡♡お、ねが…ぁ♡っお、ね、が、♡ひ、ぁ♡あっ、あ♡♡」

後孔を、胸を、あれほど望んだ指で弛まず愛されているのに体はその先をねだって仕方がない。最奥がひっきりなしに甘く疼いて突き破られることを願う感覚が全身に回っているようで、それは酩酊の体感に似ていた。アルカディアはついにぐずるように鼻を啜るだけでなく、気持ち良さからか寂しさからか収まった涙を再びこぼす。
すると、クラウディオの面がアルカディアの面持ちに近づいた。潤んだ赤い瞳が必死に自身を求める愛し子を見つめては、その涙を拭ってやる。そうして指の動きは微々とも止めないまま、宥めるように頬を優しく撫でる。

「確かに、奥まで解れてる。ここなんか特にな」

「あ、ぁ〜ッ!♡♡ぁ、あ、あ♡あ♡♡」

ぐちゅりと、三本の指が円を描くように肉筒を掻き回す。言葉を示すために成された大胆な動きにまた腰がびくんっと跳ねる。

「でも、アルカディア」

「ふ、ぁ…♡ぁ♡な、に…♡」

「私にも愛でさせろ」

蕩けた赤い瞳に琥珀色が映る。アルカディアだけに与えられる優しい手つきと色に胸の裏側で一気に熱が沸き起こる。その熱が苦しくて、どうしようもなく愛しい。

「嫌か?」

「っ♡うれひ…♡ぁ♡うれし、ぃ♡」

「"いい子"だ」

「ぁ゛♡あ♡ああぁ…っ♡♡」

目の前が熱くなるのと同時、びくっ♡と腰が跳ね、もはや白濁をとぷとぷと垂らすだけとなった陰茎がまたしとどと濡れていくのを感じる。“いい子”という、称賛というにはあまりに柔い言葉は、アルカディアのために用意されたような言葉に思える。
空いた口を閉ざすことができず、透明な唾液を端からとろりと垂らしながら喘ぎを零すしかないアルカディアの唇に、自身の唇を触れさせる。

「んぅ♡ん、ぁ♡は、あ♡ふ…っ♡」

「舌は大丈夫だったか?」

「ん♡ん…っ♡らいひょ、ふ♡ぅ…♡ぁ、んく…♡」

クラウディオの舌はくちゅりと優しく咥内へと侵入し歯をなぞりながら舌に絡んだ。無遠慮に吸い付くこともなく、締め付けるように舐めるわけでもない。ただ甘い動きに頭がぼうっと暖かな熱を孕み、アルカディアは蕩けるように目を細めた。

「ん♡ん、ぅ〜…っ♡ぁ♡ふ…んっ♡ん、ぁ…は♡ん♡」

指で優しくナカを、手で甘く胸を、口で咥内を愛でられ、アルカディアの体は時折溢れさせながらも熱をいっそう募らせていく。迷宮の時とは異なった…優しく柔らかな愛撫に逸る心までもが溶かされてしまう。
最初のうちこそびくっびくっと跳ねていた体は次第にぴくっ♡ぴくっ♡と甘く震えることを繰り返すようになり、声は逼迫したものから溶けきった甘いものとなった。もはや目の前が認識できず彷徨う手を優しく握られ、時折いたわるように体にキスを落とされて、元より力の入らない体がますますとろりと弛緩する。

「アルカディア」

「ん…っ♡ぁ、ぅ♡は……っ♡ぁ♡」

「私が見えるか」

愛撫を続けられて、暫く。言いながら、大きな手がアルカディアの頬を包み優しく撫でる。広がる程よい温度は横たわるアルカディアにいっそう安堵を与えていく。
暗に起きているか否かと聞かれているとは理解できた。しかし同時に与えられるあまりに優しい手つきにアルカディアの瞼は緩やかな瞬きを繰り返すばかりとなる。

「……、ッ♡ぁ♡♡」

びたっ、と臀のあわいに触れた熱に体が跳ねる。夢の中へと落ちようとする意識を緩やかな手で掻き集めるアルカディアの目蓋がふと開かれる。睫毛を揺らして擡げられたそこには熱情とそれに付随する期待に蕩けきった赤い眼があった。そうして、自身の股座へと下ろした視線が何より望んだもの…クラウディオの陰茎を捉える。

「ぁ♡♡う、ぁ♡」

「起こしたか」

「ぁ…っ♡は、ぁ♡」

「寝ていても良いぞ」

「ゃ♡ぁ…、や、…っ♡」

優しさにも似たクラウディオの言葉に、アルカディアはか細くも否を唱えて意識を保たせる。望み続けた肉棒が自身を貫く様を、一刻とすら逃さず感じ入りたいのだ。頬を撫でる手に力なく擦り寄る様は駄々を捏ねる子供そのものだ。しかし、ずり…♡と臀の間をなぞり、後孔へと宛てがわれる陰茎にくねる腰付きは雌としか言いようがない。
アルカディアは理性的な人間だ。普段であれば、挿入の予感に沸き立つ心中が体に滲まないよう必死に堪えて、期待に満ち満ちている眼だけが彼の高揚を伝えている。体はすぐに赤くなるというのに口だけは素直に開かないことも多くあった。
けれども、触手に犯され尽くし、それにより期待を募らせた体躯をクラウディオに愛し抜かれた今、その脳裏に理性などあるはずもなく。ただ愛される喜びを欲しがる本能だけが晒されるばかり。

「可愛い」

「っひ、ぁ♡ぅ、ん…♡」

「普段からこうでも良いんだがな」

「ぁ…♡ぁ……♡ごぇ、な…さ……♡」

「良いよ。どんなお前も好きだ」

口付ける代わりとでもいうように、頬に触れる指のひとつがアルカディアの唇を撫でる。柔い皮膚を酷く優しい力加減で撫でるその指の腹を、アルカディアの唇が甘く咥えて少しと舐めた。
愛らしい舌先をくっくっと少しだけ押して貰う最中、クラウディオのもう一方の手が腰に回る。掌で背中全体を包み、一掴みするように腰を覆う手によって横たわっていたアルカディアの体が擡げられる。
元より宛てがわれていたクラウディオの陰茎がずりり…♡と後孔をなぞり、否が応でも官能の予感を感じさせるその感覚にひくつく後孔がきゅぅっ♡と締まった。ナカが甘イキしたのだ。びくっびくっと跳ねる腰を、手は優しく包み込んで離さない。

「挿入るぞ」

「…っ♡ぁ…ッ♡♡う、ん♡」

これから雌にされる宣告にびりびりと頭が痺れてしまう。舌を縺れさせながらなんとか返事をすれば、褒めるように空いた手で頭を優しく撫でられて、思考が熱で満ち満ちていく。
そうして、とろとろとした熱に浮かされるアルカディアを琥珀色の瞳がしかと見つめながら、腰を掴む手のままにその身がおちていく。

「ぁ♡♡ぁ…ッ♡あ…っ!♡、ぅ…っ!♡♡ぁ、あ♡あつ、くら…ぃお…♡♡」

ちゅっ、ちゅと口付ける様にあてがわれていた亀頭が、ひくついて深い口付けを求める雌孔に応えるようにして割り開いていく。先っぽからとろりとした粘膜を吐き出しながら押しつけていたのも相まって、後孔は挿入を容易に受け入れた。挿入を待ち望んだ体はたったそれだけでびくんっと震え、アルカディア自身の陰茎が色も薄れた白濁に濡れていく。ぎゅうっ♡きゅん♡と挿入への歓喜に打ち震えるナカを欠片でも傷をつけまいと、陰茎はひどく緩慢に進んでいく。

「ぁ゛♡あ♡ぁ♡…あ、う…っ♡ぇ♡いっぱ、い…♡♡ っ゛…ほし…♡あ゛ぁー…っ♡あっ♡」

くぷ、ずり♡と亀頭のエラで入り口を擦るようにごくごく浅い挿入を数度繰り返してから、剛直が先へと進んでいく。熱くうねっては絡みつくナカを舐めるようにじっくりと入るそれを、雄膣は美味しそうに咥え込んで、既に覚えている形をいっそう感じ取っては甘くうねった。
緩慢とした動きは優しさからだったろう。クラウディオの挿入はいつもそうだ。アルカディアが壊れないようにとただ挿入るまでにも時間をかける。
けれど自分の雄を恋焦がれる雄膣は美味しそうに深く怒張を咥え込み、結果として亀頭を、その張ったエラをそして硬く熱い竿が前立腺をごりごりと撫でながら奥へと入っていくのを、如実と感じ取ってしまう。
何より、クラウディオの陰茎は大きい故、ただ挿入するだけでもイイところを抉るようだ。挿入だけで歓喜していたナカにはあまりに過ぎた快感に、びくっびくっと何度も跳ねては逃げるように浮いてしまう腰を、逃さないとばかりにクラウディオの手が抑え込んでいる。それが屈服感を増させて、何より堪らない。

「ん゛ー…♡♡ぁ゛……っ♡ぁ、は…っ♡は、…♡ぁぁー……♡」

くたりと、クラウディオの肩に顔を乗せ頬を寄せる。赤子がぐずるような、猫が甘えるような素振りに、赤く染まってはいやらしく跳ねる体がどこまでも似付かわない。喘ぎ混じりに呼吸を整えようとするが、体中へひっきりなしに滲む快感のためにどうにも上手くできなかった。
優しく腰を掴み抑えていたクラウディオの手がふと離れる。対して冷たくもないはずの室内の空気が火照りきった背中に触れて、どうにも寒いと彼の手を恋しく思っていれば、その手はするりとアルカディアの腹に触れた。
何かを確かめるようにするすると優しく腹の上を触れたかと思えば、くっぐっ、と親指で腹を柔く押し始めた。とたん、ぐり、ごり♡と、挿入り込んだ硬い剛直が擦り付けられるようにしてナカに密着する。

「ぁ゛あ、あ♡♡ひっ、♡ん♡ぅあ♡ぁ♡ぁぁ〜…っ♡♡ぁ〜!♡♡」

「ここまで挿入ったな」

「ぁ、ひ♡♡おなかっ♡♡ん♡いっ、ぱい♡う、あ…っ♡ぃ♡ぁぁあ♡♡」

「ああ、いい子だ」

「っ♡♡あ゛っ♡♡ぁ゛ぁ♡♡あ〜…っ♡♡」

腹をぐりぐりと柔く押されるまま、 するすると頭を撫でられれば、快感と歓喜によって頭が飽和する。アルカディアは口からたらりと少し垂れた舌を出しっぱなしにしたまま、甘い喘ぎを溢し続ける他ない。
そうすれば、頭を撫でていた手が顔を撫でながらその唇に触れて、舌をからめ取って口内へと収まった。くちゅ、ちゅっ♡と水音を立てながら施される擬似的な口付けに、アルカディアはナカをきゅんっ♡きゅんっ♡と締め付ける。

「動くぞ」

「ん…っ♡ぁ♡ん、ふぁ♡♡あっ♡あ♡は、んんっ♡」

声をかけ、するりと腹を撫でたクラウディオの手は、再びアルカディアの腰を優しく覆い掴む。赤く火照りきった体躯を少しだけ持ち上げてはまた降ろし…ぐりぐりと押しつけるように降ろしきってやる。それは結腸口をこちゅっ♡と優しく叩く動きであった。
激しさのない、優しくノックをするような感覚に、けれどもアルカディアは身を震わせる。クラウディオの精液を与えられ続けた腹の奥が、自身の雄に種付けされることを強請って仕方がないのだ。亀頭が触れる度にぢゅぅ♡と深く吸い付く結腸口は、亀頭が少し離れていくだけで切なそうにひくついている。

「く、ぁ、ひぉっ♡く、ら♡♡あ♡ふ…っ♡んっ♡♡」

「どうした?」

「ぁ♡もっとっ♡んっ、ん♡もっと…ぉ、く♡♡くら…ひお♡」

「お前の体が保たん」

「ぁ、っぁ♡や、…っ♡なん、れ♡♡やぁ…♡」

熱にうなされて水気が滲んでいたアルカディアの眦からぼろっと涙が溢れる。眉尻が下がり、寂しさを隠しもしない表情だ。ぼろぼろと涙がこぼれ続ける眦を、優しく撫でて拭ってやる。子供のような駄々に対しても与えられる優しさに、ナカはきゅうっ♡と亀頭に甘く絡みついた。
しかしそれだけでは満足できない…どうしても奥まで満たされたいと、覆い掴まれている腰がぐっぐっと自ら揺れようと身動ぐ。抑えられているため碌に動けはしないものの、微かに揺れる感覚で気づいたのだろう。アルカディアへと向けるクラウディオの眼がわずかに細められる。

「こら」

「んぅ♡ん、ん…♡は、♡ぁあ♡」

「明日が辛いぞ」

「ん♡ん♡あ、ぅっ♡ゃ、ぁぁ♡」

駄々をこねる唇に、涙を拭っていた手が触れてあやすように舌を絡め取る。舌の表面を優しく撫で、くちゅっと絡み付いては程よく締め付ける感覚はひたすらに甘やかだ。とちゅっ♡と優しく最奥への入り口を叩く陰茎の動きも、その度に小刻みに前立腺を擦る竿の感覚も、全てが気持ちよくて仕方がない。
けれども、アルカディアはいやだと涙を流す。拭われたばかりの眦から水粒を溢れさせ続け、撫でられる舌を縺れさせながら駄々の言葉を紡ぐ。
クラウディオの言うことは正しい。引き際を見定めなければ体は容易く壊れる。これは酷い我儘だ。恥ずべき醜態だ。わかっていても留められない欲望が、もう長く燻っている。

「ぁ♡っ♡ここ…ぉっ♡ぁ!ひっ♡♡」

アルカディアは己の手で腹の上を押し込む。否、碌に力の入らない手では撫でる程度しかできなかった。先ほどのクラウディオの手とは比べようもない。しかしとんっとちゅ♡と優しく押しつけられる亀頭に、向こう側から散々愛されているも同然なのだ。細やかな刺激だけでも、剛直を恋しがる腹の奥はびりびりと疼く。

「おなか…っ♡おく♡♡さわっ、て…ぇ♡な、…かっ♡ぁ♡く、ら…でぃお♡」

「アルカディア」

「ぁ、ぁ♡…う♡ここ、ごん…ごんって…♡ひて…っ♡おね、が♡だから、ぁ♡あん♡」

クラウディオの精子を、その怒張をなにより求めている腹の奥が寂しいと震える如く疼いている。
ぐり、と、指や掌で皮膚の上から最奥を捏ねる。自身を屈服させる雄を強請る子宮はたったそれだけで達するに似た法悦を身体中に響かせて、それでもなお渇望して疼きを増していく。

「ぁ゛〜〜っ♡♡ぁ、あぁ゛あ♡…っ゛♡こ、こ♡ここぉ♡♡あるか、でぃあの、いちば、…おくっ♡♡は、ぁ♡くらぃお…っ、だけの♡もの、だか…ら♡ぁ♡ぁ♡」

「……」

「おかして…♡おかひ、て♡っ、おねがい…♡あ♡ぅ♡くらぃおの、めすに…っ♡♡なりた…ぁ゛ー…っ♡ぁーっ♡」

何度やったとて渇きは拭えないというのに、それでも求めて仕方がないと言わんばかりにアルカディアの手は己の腹を…否、雄子宮を腹部の上からぐりぐりと押し込んで刺激する。いきり立った怒張で満たされ、皮膚をその形に押し上げるほどに咥え込んだ記憶が染み付いている体は何度も甘く絶頂を感じては、物足りなさに涙さえ浮かべた。
欲しい、欲しい、ほしい、ほしい!ほしくてたまらない。
蕩けきり、深い海底の如くなった眼は欲望と、それから連なる寂しさや期待、あらゆる熱情で溢れかえっている。
琥珀色の眼がそれを映した。ややあって、眼はゆっくりと…それもほんの少し細められる。それから、クラウディオの手が動いた。

「ゃ♡や…っ♡ぬけちゃ…ぁっ♡♡ぁ゛あっ♡やら♡あ♡あ〜っ♡」

腰を覆い掴んでいたクラウディオの手が、アルカディアの体躯を擡げ始める。こつこつと優しく叩かれていた行き止まりは己を柔く嬲る亀頭を恋しがってひくついた。
そんな結腸口に構わず、クラウディオの怒張はずりずりと抜けていく。寂しい、行かないでと縋り絡みつく肉筒をずりゅ♡ごりゅ♡と掻き拡げていきながら後退していく剛直に、体は逐一法悦を得る。甘く達しながらも弱々しく首を横に振る様は実に健気だ。

「や、あ♡っごぇ、ん…なさ…♡ぅぁ♡あ♡ごめ…なさ…っ♡も、もぉっ、わがまま…いわな、ぃ♡いわな、からぁ♡ひ♡あ゛ぁ〜っ♡」

腹を己の形に膨らませていた怒張はそこから鳴りを潜め、前立腺を掻く。雁首が容赦なく凹凸を抉りなぞっていく快感は凄まじいものだ。びくっびくっと腰が跳ねて気持ちよさそうにくねるのに、面持ちだけが悲しそうに、寂しそうに眉尻を下げている。

「ぁ♡ぁ゛…っ♡ぬかな、ぃ…で、ぇ♡お、ねが…ぁ♡ぃ…っ♡ひ、ぁぁ、あ♡やだ…っ♡やらぁあ…っ♡あ、〜〜…っ♡ぁ〜…っ♡」

赤い瞳に張られていた水の膜が溢れ出し、ぼろぼろと涙が頬へと伝っていく。そのまま顎へと流れ、ぽたぽたと落下していく涙を拭う手はいない。怒張は前立腺からも離れていき、そのまま入り口へと降りていく。
やっと、やっと貰えたのに。アルカディアは自責と悲しみから涙が止まらない。我儘を言わなければ。優しさを甘んじていれば。我慢ができなかったから。先に立たない後悔が胸裏を満たし、よもや死んでしまうのではと錯覚するほどの寂しさが身体中を満たした。
そうして、唇から溢れる喘ぎに涙の色が滲み始めた時。
ご、ぢゅッッ♡♡ と、甚だしい音がアルカディアの体を貫いた。

「ぁ゛…────ッッッ!!♡♡♡────…っっ♡♡〜〜〜ッ、!?♡♡♡…っ゛♡♡♡…────ッ!!!♡♡♡」

身体中に衝撃が走ってる。痺れるよりずっと強く、震えるなんて間もなく、響くどころで済まされない。びくびくっと体が何度も跳ね、背中が仰け反って、ただそれだけしかできない。

「ぁ──ッ!!♡ぁ゛♡♡ぁッ♡ぁーっ!♡ぁ──〜〜ッ♡♡♡」

碌に声が出ないのに、喉が震えることをやめられない。内側で溢れかえった熱が暴れ回って、それを吐き出そうとして必死なのだ。その熱の根源が腹の奥にあること、そして先ほど捏ねられ続けた結腸口が何か熱くてたまらないモノを咥え込んでいると理解したとき。結腸口の際、最奥、疼き続けた腹奥に熱いものがぶち撒けられた。

「ぉ゛…ぁ…───ッッ♡♡♡ぁ゛あ、あ゛、あ♡♡♡うああ゛──ッ♡♡♡あ゛───ッ!!♡♡あ゛──ッ!♡♡♡」

もはや悲鳴に近い喘ぎを、アルカディアは自身で認知できない。耳に入っては居るのだが、音などよりも腹の奥から溢れ出る法悦が脳を埋め尽くし、他のあらゆる感覚を受け取れなくさせているのだ。見開かれるも焦点が合わない赤い瞳からは生理的な涙が溢れ続け、快感という衝撃が止まないために腰が本能的に動いて逃げようとする。
しかし腰を覆い掴んだままのクラウディオの手がそれを捉え続けて引き戻すために挿入はいっそう深くなるばかりだ。最奥…望まれていた腹の奥まで入り込んだ怒張は、己の精液で満たされた結腸の中を心地良さそうに感受し、一滴も無駄にしないと言わんばかりに亀頭を一番奥の壁に擦り付けている。そのために快感はいつまでも止まない。
メスイキを繰り返しているアルカディアの眦を、クラウディオのもう片方の手が優しく拭う。激しく優しい愛撫のひとつひとつを受け取る度、アルカディアの体は逐一感じ入っては達してしまう。

「ぁ♡ぁ゛、あ♡ぁ♡あ゛ー♡」

「明日後悔することになるだろうが、仕方ないな」

「ぁ゛♡づ…♡♡ぁ♡あ゛♡あー…♡ぁ♡あつ♡ひ…ぃ♡♡」

「もう意識飛びかけてるか?」

涙を拭っていたクラウディオの手がアルカディアの頭を優しく撫でる。それに無意識に擦り寄りながら、アルカディアは甚だしい熱に身悶える。腹の中にとても熱いものがある。先程この身を犯し尽くした触手なんかとは、比べ物にならないくらい熱いもの。
これは、これはなんだ?

「腹の奥まで挿入れてやったぞ。解るか」

「ぁ゛あ!♡あ♡ぁ、くぁ…っいお、の♡♡ん゛♡♡ぁ〜っ♡♡♡」

「はは、認識してイッた?」

「あぁあ゛♡♡あ♡ん♡うれ、ひ♡♡うれし、ぃ♡♡っ♡♡ぁ♡」

「こうすればもっと良いか?」

「お゛♡あ♡♡ぁ♡♡あ゛ーッ♡♡あ゛ぁ゛、う、ぁーッ♡♡」

ぐぢゅぅっ♡と結腸の弁を抉りながら亀頭が出ていったかと思えば、また弁を打ち付け揺らしながら最も奥へと入り込む。怒張が結腸に出入りする。それだけで体にはただならぬ法悦が与えられ、アルカディアはびくっと跳ねては声をあげる他なにも出来やしない。

「可愛いなぁ、アルカディア」

「ひっ♡♡ぁ♡ぁぁ゛♡♡ぁ゛〜〜…ッ♡♡」

「塔でのことなんて忘れさせてやる。私が、もっと愛してやる」

「あ゛…ッ♡♡ぁ♡ん…ッ♡♡ん♡♡うぁぁぁ♡♡ぁ──♡…っ゛♡♡」

「だから、寝るな。起きろ」

「ん゛っ♡ぉ゛あ!♡♡あ゛、あ〜〜っ♡♡♡ぁ〜っ♡♡ぁ♡ふ、ぁ゛♡♡ひ♡♡」

過ぎた快感に意識が遠のきかければ、怒張が一気に抜けては突いて、酷い快感に叩き起こされる。そうして目の前で弾ける白い火花を認識するより前に、唇に指が触れた。擽るように撫でる動きに誘われて口を開けば、くちゅ♡と酷く優しく舌を絡める。時折上顎を、その少し奥を擽られれば程よく苦しくて気持ち良くて堪らない。
唇を愛でる長い指はするりと唇をなぞってから離れていく。蕩け切った赤い瞳に琥珀色の眼が映って、嬉しくてたまらない。

「ぁ♡はー…っ♡は、ぁ…あ♡♡うれ、ひ♡♡うれひ、っい♡♡」

「嗚呼…いい子だな、アルカディア」

「っうぁぁあ♡ぁ〜〜ッ♡♡ぁ゛ぁ♡ひゅき、♡すきぃ♡♡くらでぃお♡ぁ♡ぅ゛ああ♡♡」

歓喜に打ち震えて溢れていく涙をクラウディオは優しく拭っては頭を撫でてやる。結腸を突かれ、竿で前立腺を舐られ、胸を摘まれながら、時折口付けてもらいつつ頭を撫でられる。そのすべてに感じ入る快感を受け取っては辛いと嘆く脳を、アルカディアは構えなかった。与えられる法悦が嬉しくて、眼に映る琥珀色が愛しくて、それだけに満たされながら、乱れる夜を費やしたのだった。



下半身から発せられる鈍い痛みが皮膚の裏側を撫でるようで、その感覚が意識を抉るようだった。だから目が覚めた。

「………ぃ…た…」

瞼を擡げたとて、長らく情報を得ていなかった視界は焦点を合わせるのにやや時間を要する。不明慮な眼前を曖昧な意識で捉えながら、その間にも鈍痛は収まらない。思わずと発せられた声は、音と成るまでの間に喉のそこかしこにぶつかった如き擦れ具合で、ろくな音として成れていなかった。
果たしてどうしてこうなったのか。目覚めたという事実以外は何事をも思慮に入らない起きたての意識を、アルカディアはゆっくり回していく。その間にも続く鈍痛はどうやら腰から発せられるらしい。体から発せられる情報だ、なによりも先に認識できる。しかし、何故腰から?
そう考えていた最中、真隣にある窓辺から溢れる日差しの明々とした様を数秒ほど見つめ…思わず息を呑んだ。

「く、らでぃお…!」

クラウディオは今日は仕事だったはず。降り注ぐ真昼時の日向に焦りながら、いの一番に思い起こした事実を糧にアルカディアは素早く起き上がろうとする。しかしベッドから降りんとした体は…そのままべたりと地面に落ちていった。

「ぃ゛…っ」

擦れた声は悲鳴も上げられず、鈍痛が腰を中心にして響き続ける体は落下の衝撃も相まって碌に動かない。受け身も取れず床に倒れ込んだ体制のまま、アルカディアは溜息をついて困惑を極めた。とにかく痛い。アルカディアは情けなく地面に頬をつけるまま眉を顰める他ない。

「……」

そう、寝ぼけ眼で困惑していた最中。アルカディアは漸く思い出す。昨日…触手の海からクラウディオに助けてもらったこと、そしてその後のことを。

「…っ、ぁ」

とたんに、顔中へ熱が昇る。余程の熱に魘されていたのだろう。脳裏に思い出される記憶は曖昧な部分も多数あり、全貌とまではいかぬ。しかし僅かだけでも認知できれば、その様がどれだけはしたなかったか理解できる。
羞恥に言葉を詰まらせていると、がちゃりと扉の開く音がした。

「大丈夫か?」

寝室に入ってきたクラウディオが、倒れ込んでいたアルカディアを抱えると優しくベッドへ横たわらせる。そのまま離れていった手を恋しく思う間もなく、彼と目が合ってしまったものだから、アルカディアは思わず顔を覆ってしまいたくなった。
クラウディオは嘆息するように目を細めると、優しくアルカディアの頭を撫でながら音を放つ。

「今日はここに居ろ」

「っ、しご…と…は…?」

「こんなお前を置いて私が行けると思うのか?」

「ぅ゛……」

「2日くらいは安静にしておけ。わかったな」

喉は擦れ、声は碌に出せず、ただの一歩も動けやしない。そんな体のアルカディアを、クラウディオが放っておくなどしないことは明白だ。二の句が継げず眉尻を下げるアルカディアの頬を擽るように優しく撫でていく。迷宮で受けた触手とも、情交の際に交わったものとも違う。子供のような戯れを行うその動きに、思わず小さな笑みがこぼれた。

「いつも、昨日のように無邪気で素直なら良いんだがな」

体から力を抜き、素直に横たわる意思を固めたアルカディアをその眼に映し、クラウディオはそう紡ぐ。昨夜。告げられた言葉は熱い情交を思い起こさせ、アルカディアは再び顔へと熱を溜める。羞恥にまみれていた面持ちは…けれども数秒後、不安げに眉尻が下げられた。少し、少しとクラウディオを見てはそらされる視線に、クラウディオの首が傾げられる。

「……い、や、…?…」

ややあって、ようやく告げられた言葉は恐る恐る紡がれて、不安といった感情を酷く滲ませていた。それは声尻だけではない。赤い瞳からも、下がったまま戻らない眉尻からも、少し震える唇からも、やや強張った体躯からも明らかだ。
クラウディオはその様をじっと見やった後、頭に乗せたままの手でくしゃりと髪を乱してやる。片手ですっかりと包み込める程度に小さな頭を、壊さないように、慎重に。

「どんなお前も好きだ」

「…っ」

「私に二度、同じことを言わせるのはお前くらいだな」

「ぁ…ご、め……」

「可愛いと言ってる。謝罪は要らん。言う度にベッドから出られない時間が長引くと思えよ」

頬を撫でていた手が、唇に柔く押し付けられた。その様と声を聴き、アルカディアは困ったように柔く笑う。

「会社の方はセオドアに任せてある。だから、今日と明日は私を独り占めにできるぞ」

琥珀色の眼でその笑みを見届けて、クラウディオはそう告げて微笑んだ。クラウディオがこうも誰かを甘く優しく扱うなど、他の人々は想像もつかないのだろう。
頭部を撫でる手を甘受しながら、アルカディアは心地よさそうに目を瞑って笑っていた。