ひゅッ、と息を吸い込む。心臓に悪い。
眼前に広がる絶景に呼吸が止まりかけたアルカディアは、たっぷりの沈黙の後、「……ふわ……」という情けない声をやっとの事で絞り出した。
SSRと言われるやつだ。レイスがこの前イベ限最高レアカードとか言っていたやつだ。寝顔スチルとやらだ。推しの。
それが至近距離にあるのだ、むしろ奇声を発しなかったことを褒めてほしい。
実は今日に至るまで、アルカディアは恋人の寝顔をまともに見たことが無かった。
共寝をしていても、いつもクラウディオの方がアルカディアより後に寝て先に起きる。
偶に朝日の中で微睡んでいる姿は見るのだが、そもそもアルカディアは生前から低血圧気味なので、そういう時は意識もだいぶ溶けており記憶として残るものはほぼ存在しない。本当に『見てるだけ』の作業になりがちである。
なので、アルカディアがここまではっきりとクラウディオの寝顔を見たのは今朝が初めてだ。空白の時間はあれど、出会ってもう20年ほども経つのに。
昨夜は行為に励んだ後、軽く身体を清めて、その後は下着も何も着けずに二人とも産まれたままの姿で毛布に包まり就寝してしまった。
この家の設備に不調は無く、空調も効いている。毛布も上等品。
何より、筋肉量が多いためにひとより少し高めの、己に馴染んだ体温の安心感と事後特有の倦怠感によって、アルカディアは久々に深い眠りへと就けたのだ。
折角の機会なのでクラウディオの寝顔をまじまじと覗き見る。本当に綺麗な男だ。彼の枕の横に揃えて置かれていた枕の向きをいつの間にか変えていたアルカディアと違い、乱れ無くきちりとした寝姿。寝顔一つ取っても、こんなにも美しい。かつて“死神”と呼ばれた、世界でも有数の本当に“強い”存在。
長い睫毛。触れ心地は柔らかく、けれど口角が引き締まった端正な唇。絹糸のように細く、艶やかなローズグレイの髪。
ただの寝顔でも絵になりすぎやしないだろうか。
アルカディアは、本人の顔の作りも関係しているのか面食いの傾向がある。当然本人に自覚はないものの、こんな至近距離で至極の美しさを放つ人物を眺められるというのは、彼の目と心を大いに満たした。
それにしても、珍しい。もしや疲れていたのだろうか。の割には、昨晩もアルカディアの身体を情熱的に貪り尽くしてくれたが。
──それとも。アルカディアの側を、安心して眠りにつける窼(ねぐら)と捉えてくれているのなら……。
クラウディオはアルカディアの事をたくさん愛してくれている。
その事実を頭に思い浮かべてはなんだか恥ずかしくなってきて、毛布を手繰り寄せて共に寝台へと寝そべる美貌を誇る男へ、その細身を擦り付けた。
そうすればアルカディアの耳には、微かにクラウディオの心音が聞こえる。
ゆったりとしたリズムのその音を聞くと自然、冷えかけた体がほわりと暖まってきた。
きめ細かで滑らかな肌にそっと擦り寄れば、裸の肌に心地良さが広がった。
もっと堪能したくて身体を擦り寄せる。
──と。
「ひ、ぁ……、…っ!?」
ぐり、と腰の辺りに感じた硬い熱に、アルカディアの身体がびくりと跳ねた。
恐る恐る毛布を捲って確認すると、自分の身でも覚えのある光景が広がっていて、思わずぽかんと口を開けてしまった。
「(くらでぃおも、朝勃ちなんて、するんだぁ……)」
確かに男なら当然の生理現象なのだが、なんというか、アルカディアの方は精も根も尽き果てて半ば気絶するように眠りについたはずなのに、彼にとっては足りなかったとでもいうのか。
こんなことで争うつもりも無いが、それでも同じ男として何となく面白くないアルカディアは、「ぐぬ……」と低く唸った後、クラウディオの隣で寝転んだまま少しだけ身体をずらし、彼のものへとそっと指を這わせた。
少々彼を辱めてやろうなんて思って取った行動だったのだが、指先へ伝わるその固さに、アルカディアのあらぬところがきゅん……っ、と疼く。
その感覚には気付かない振りをして、指先でキスをするかのようにまろい先端をちょんちょんと撫で、雁首の段差を指先で辿り、裏筋をつい……、と撫で下ろし、そうしてたどり着いた、ずしりと質量を湛える睾丸を掌全体を使ってさわさわ撫でさする。
そうすればクラウディオは、僅かに鼻にかかる掠れ声を上げたが、目覚める事は無く。しかし、むずがるようにさ迷った彼の腕に背を柔らかく抱き寄せられた拍子に、アルカディアの性器がクラウディオの脚とぶつかり、思わず彼の耳元で「ひぅ……っ♡」と声を上げてしまった。
慌てて空いている方の掌で口を塞いだが、クラウディオに変化は無い。どうやら今日は随分と眠りが深いようだ。本当に珍しい。
……このまま続けたら、流石に怒るだろうか。
「(…まぁ……大丈夫か)」
何故か開き直った心持ちでアルカディアは、掌に唾液を少し垂らすと、それを潤滑剤がわりにクラウディオへの悪戯を続行した。
唾液を塗りたくるように掌で亀頭を包み、雁首を指先でちゅこちゅこと擦ると、彼の性器は益々硬くなる。
滑りを帯びた感覚に、昨夜の余韻がまだ残る後孔が、きゅう……、と切なく疼く。
臀部を揺すり、太腿に力を入れてやり過ごそうとしたが、掌からかけ登ってくる彼の熱さに、アルカディアの身体も充てられてしまったようだ。
触れてもいないというのに勝手に緩く立ち上がったアルカディアのペニスからは、とろり……、といやらしい雫が零れる。それを掬って更にクラウディオのものへと塗りこめば、まるで自分が彼を犯しているかのような背徳的な気分になる。
それに益々興奮して、思わずクラウディオの胸元に鼻先を押し付けると、鼻腔を抜ける蕩けるような強い雄の香りに、頭がくらくらした。
クラウディオから分け与えられる熱で、腹の内側から湧き出てくる欲で。身体中がどくどくと脈打っている。
足りなかったのはなにもクラウディオだけじゃない。アルカディアも、確かに精も根も尽きたのだが、心はまだ彼を欲していた。
それに、こんなにも硬く、雄々しくそそり立つものを我慢するなんて、彼の香りと熱に脳を侵されたアルカディアには、無理だ。
「(ちょっと、だけ……っ、なら……っ)」
常套句を言い訳に、アルカディアは毛布を捲り、クラウディオの引き締まった身体に乗り上げた。
自ら脚を大きく開き、彼の腹部を跨ぐと、昨夜の情事の記憶に未だ綻ぶ後孔を、彼のそそり立つもので悪戯につついてみる。
案の定、くぱ♡くぱ♡と淫らに口を開いては、必死に雄を咥えこもうとする自らの身体の浅ましさに眩暈を覚えながらも、この先の快楽への期待感に抗えないアルカディアは、ゆっくりと腰を落としていく。
「…は、っ、……うあっ、ぁっ……ッ♡…ぁっ…♡ぁ、んうぅ…♡ふ、うぅ…、♡あ、ぅ、ん…ッ、んっ!♡」
想像以上の快楽に、咄嗟に口を掌で覆って漏れ出る声を必死に抑えるも、ふうふうと荒く響く吐息だけはどうしても零れてしまう。
快楽に震える膝で何とか身体を支えると、アルカディアはくいくいと腰を揺らめかせ、咥え込んだ質量を自らの悦い箇所に押し当てた。覚醒していないはずなのに、……いや、覚醒していないから尚更だろう。生存本能に則って充分な硬度をもったそれが、アルカディアの前立腺を容赦なくごりごりと押し潰す。
あまりの快感に、思わず垂らした涎が掌に落ち、手首を伝ってクラウディオの胸元を濡らしてしまったので、アルカディアは慌てて身を屈め、そこに唇を落とした。
じゅう、と吸い付けば、クラウディオの美しい肌には僅かに赤く色付いた花が咲く。
白く美しいのに、他の人間よりも丈夫で傷付いた所なんてほとんど見たことがない彼の体に、ほんの少しでも痕を刻めたことがなんだか誇らしく、アルカディアは誰に見せるでもない笑顔を、薄く浮かべる。笑った瞬間に内部の質量がアルカディアの悦いところをまた抉り、背を大きく反らして身悶えた。
浅く入れただけでもこんなに気持ちいいんだ、アルカディアが一等好きな最奥の……結腸の弁まで一気に押し込んでみたら、どれだけ悦いのだろう。
淫らな妄想に緩く腰を揺らしながらクラウディオの首元や頬にちゅ、ちゅ、と口付け、時折「ぁッ、♡ぁっ、や……♡」とあえかな嬌声をあげていたアルカディアの耳元に、色気を含んだ低く、掠れた声が注がれる。
「随分可愛らしい悪戯だな」
「ん、ッ…ぇ、?」
同時に、突如伸びてきたクラウディオの手に尻たぶを掴まれ、やや強引に腰を引き摺り下ろされる。
幾度も交わって男を覚えこんだ身体だ。
多少閉ざされかけていたとはいえ、快楽を求めて甘く疼き続けていた肉は、彼の無体に抗う術など持たず、そのまま奥までずっぽり♡と長大な質量を咥えこんでしまった。
「…ひッ、!?♡…っ、ゃあぁッ!??♡♡♡」
不意に襲った己の媚肉への快楽に、アルカディアは顔を真っ赤に染め上げて目を見開き、はくはくと呼吸をする。
流石に結腸までは押し込まれなかったものの、切なく震える奥へと突然与えられた甘美な刺激に、アルカディアの頭はついていけない。
しかし覚えの良い身体は、ようやっと欲しい場所まで与えられた形と質量に悦び、彼のものをぐぱ♡ぐぱ♡とはしたなく、美味しそうにしゃぶっていた。
「ひ、ぁ、なに……ッ?な、なんで…?♡、いつ、からっ、起きて……ぇ、?♡♡」
「お前が勝手に私の身体をまさぐり始めた時からだな」
最初からじゃないか!気付かなかったアルカディアにも非はあるが、本当にこの男は!
自らを棚に上げて性質の悪いクラウディオを睨めつけるアルカディアに、しかし当のクラウディオは臆した様子もなく、悪戯が成功した子供のような無邪気さで問いかける。
「相手をしてくれるのか?」
クラウディオも寝起きで少し意識がほわりとしているようで、こてりと首を傾げながら微笑む様子に、不覚にもアルカディアの胸はきゅん……と高鳴った。この社長はこんなあざといこともできるのか。
しかし、そんな可愛らしい仕草とは裏腹に、彼の腰の動きは可愛らしさも幼気さも全くなく、どちゅッ♡どちゅッ♡とえげつない淫音を立てながら、勝手に覆い被さってきた不埒者の細身を突き上げている。
その度に、さして勃ち上がってもいないアルカディアの性器が二人の腹の間をぴたぴたと緩く往復し、先端からとろとろと零れる雫が互いの腹を濡らした。
「や…ッ♡、あ、ん…ぅッ!ぁ♡ぁ、…っ♡♡は、…ひ、…ッ♡…ちが、違うぅ……、ひ、ぁ、ちょっと、だけの、……つもり、だった、の、にぃ……っ♡」
「そうか。お前は私をあれ以上受け入れてはくれないつもりだったんだな」
アルカディアの釈明に対して、クラウディオは悲しげな声と共にアルカディアの頬を縋るように優しく撫でた。あざとい!と胸中で叫ぶアルカディアの想いはクラウディオに届いたのか、はたまた届いていないのか。
ぐうう、と唸るアルカディアをよそに、クラウディオの手は再びアルカディアの臀部に伸びて、そのまろみをするりと撫でた。どこもかしこも薄っぺらく骨張ったアルカディアの体つきの中、そこだけもちりとした手触りの尻肉を、クラウディオの手が掻き集めるようにもにゅもにゅと揉みしだいている。
以前はそこももっと平たく、薄っぺらかったはずなのに。アルカディアの身体は、クラウディオに抱かれるようになってから確実に変化している。
美しいクラウディオの指先が柔らかな白磁へと沈むたび、アルカディアは己のナカに入り込んだ質量の形を否応無しに意識してしまう。先端すぐ下の段差のきつさも、ビキビキと浮き出ては脈打つ太い血管も、全てアルカディアに馴染んだ形状であり、彼を淫らに追い立ててしまう凶器だ。
「お、奥、♡ぁ、やめ、てぇ……、ッ♡♡」という懇願も虚しく、クラウディオは深いところを重点的に擦り上げようとするので、アルカディアは前へ前へとずりずり身体を逃がして、少しでも抽挿の角度が浅くなるように調整する。すると丁度アルカディアの胸元がクラウディオの顔の前に位置するようになり、自然、突起をクラウディオの口元に差し出す形になった。
「ひ、っ……ッ!?♡んん、ッ!♡」
触れられてもいないのにぷくりと立ち上がり、まるで食べてくれとばかりに存在を主張するそこが、供物のように捧げられたのだ。クラウディオがそれを無下にする理由は無く、アルカディアは突如与えられたもう一つの弱点への刺激に益々喘ぐ羽目になった。
大きな口でかぷりと、片方の乳輪全体を含まれる。まるで乳飲み子がそうするようにちゅくちゅくと優しく吸われたかと思えば、唾液に塗れたそこをぴんッ♡ぴんッ♡といやらしい音が聞こえそうなくらいに激しく、舌で先端を弾かれる。
身体を前に逃がしたのは完全に失敗だった。奥への責め苦からは逃れたが、またも前立腺をピンポイントで突かれる形となってしまった。
それに加え、胸の突起を好き勝手に舐め回される。複数の泣き所を同時に攻められる快楽に、アルカディアの思考は次第に蕩けていく。
あん、んう、と艶めかしい声を上げながら、与えられる悦びに耐えるアルカディアが俯けば、その目線の先にはクラウディオの額が位置していた。快楽に溶ける視界の中、普段はさらさらとした手触りの彼の髪が、汗を吸って僅かに濡れているのが見える。
あのクラウディオが。昔から仕事の時でさえ、一滴の汗すらかかずにいつも涼しい顔をしていたクラウディオが。
自分みたいな奴なんかに必死になっている。自分なんかに心を砕いて入れ揚げて、そして貪欲にアルカディアを求めてくれる。
──眩暈がした。
「(……ほんと、なんで、俺、なんかに……)」
くらくら、ぐらぐら、脳が揺れる。
答えの出ない事を考えるのは好きじゃない。……答えが分かりきった事を考えるのは、もっと好きじゃない。
じわりと視界が滲んだ。快楽だけではない、もっと別の理由がある。
アルカディアは、誤魔化すように目の前にあるクラウディオの前髪を掻き上げて、そこに隠されていた額に口付けた。
「…ッ、は、っ…アルカディア……?」
疑問符が混じるクラウディオの声を無視して、アルカディアはそこに柔く唇を押し付け、まるで祝福を与えるかのような口付けを贈る。
はあ、と感嘆の息を吐いたアルカディアはその薄い唇からぬるつく舌をちろりと伸ばす。
彼へ賞賛をおくるように、薄い朝焼けと蕩けた意識の中、緩く内部を突かれながらも、アルカディアは一心不乱にクラウディオの額や頬に口付ける。
戯れに繰り出されるアルカディアのこの行いが、クラウディオの心を酷く煽る行為だということを何度も経験しているというのに、熱に蕩かされた頭はそれすらも判断出来なくなっていた。
己を慈しむ聖者のようなアルカディアの健気さに、彼の臀部を柔く揉み込んでいたクラウディオの手に力が込められた。肉に痕が残りそうな程に指先が強く食い込む。
それにアルカディアが「ひ、♡」と小さく悲鳴をあげた瞬間、痩せぎすなアルカディアの身体はクラウディオによっていとも容易く持ち上げられ、そのまま寝台の上、仰向けにぐるりと押し倒された。
尻を掴んでいた掌はいつの間にかアルカディアの両膝の裏あたりに移動しており、両脚がシーツに付きそうなくらいに大きく開かされれば、自然と臀部が……クラウディオとの結合部が上を向く。
交わる箇所は昨夜から愛され続けたせいで赤くぽってりと腫れ、二人の体液でてらてらと妖しく光っている。長大なクラウディオのものは太い血管を何本も浮き上がらせながら雄々しく脈打ち、それを、慎みなど投げ捨てたかのようにぐぱりと口を開けたアルカディアの後孔が悦んで舐めしゃぶり、ひくひくと痙攣しながら受け入れていた。
あまりにも卑猥な光景にアルカディアが、かああ、と頬を染め上げれば、クラウディオがくつりと笑いながら腰を引く。
あ、とアルカディアの本能が警鐘を鳴らした瞬間、クラウディオは、ほぼ真上からアルカディアを串刺しにするかのように腰を叩き込んだ。
「あッ…ッ!…ぁ、っ、ひ、あ!♡…うあ、あっ、……ッ♡っ、やっ、ゃぁ、ぁ…っ…♡らえ、ぇっ…♡ぁ、ぁう…ッ♡、は、♡……ッ♡♡ゃ、らめ……ッ、ひ、ひぁ!?♡」
どちゅんッ♡ぼちゅんッ♡と、先程よりも更に酷い音をあげながら、クラウディオの欲が何度も何度もアルカディアの細腰に叩き込まれた。媚びるように腸壁がうねり、受け入れた質量を滅茶苦茶に搾り上げる。
それでもクラウディオは律動を止めることなく、アルカディアの名を幾度も呼びながら、狭い胎内でその欲望を思う存分暴れさせた。
張り出した先端で奥をごちゅごちゅと突かれると、アルカディアはいよいよ目を蕩かせ、ひいひいと情けない声をあげることしかできなくなる。
精嚢の裏を擦られるたびにアルカディアの性器から少量の体液が飛んだ。
そこは駄目だ、これ以上は、だめ。
だって、そのさらに奥には。
「らめ…っ、と、止まって……ッ♡あ!?、う゛、〜〜〜〜〜っ、ぅ、あッ♡♡あ゛…っ……ッッ♡♡♡」
ぐぼん、と一際異質な音が鳴る。
結腸に、入ってしまった。
アルカディアの一番好きなところ。
ここをクラウディオの太く、大きいものでゆっくり押し広げられ、最奥の壁に固い先端をぶつけられると、アルカディアの頭は真っ白になってしまう。
「や、ゃぁあ…っ♡う…うぁ…ッ♡……っ、ら…、めぇ…ッ♡♡あ゛っ♡や…ッ♡♡ぁッ、…っぁ゛♡や、♡や、ぁ、♡くら♡ぃぉ、っ……っ♡♡」
「…っ、……はは…っ、やらしい」
「……ッ!や、…や、だ、っ、い…ぉッ、…あ゛…っ言わな、……っ、でぇ……!♡あ゛!?んぁあ゛ッ!♡♡」
自分でも分かっている。アルカディアだって興奮していたのだ。彼の熱に充てられて内部は熱く滾り、剛直を突き立てられるのを今か今かと待ちわびていた。
昨夜だって甘やかな愛撫で蕩かされつくし、骨の髄までとろとろにされてから散々クラウディオを迎え入れたところだ。そこは当然まだ綻んでおり、ぐぼぐぼ、ぬぱぬぱと品の無い音を立てながら弁が雁首を美味しそうにしゃぶっている。
陰茎が最奥まで突き入れられるたびにアルカディアの薄い腹はぼこりと膨れた。
無慈悲にも串刺しにされる昆虫標本のようだ。寝台に縫いとめられ、男の欲を打ち込まれるだけの哀れな存在。アルカディアの表情が甘く、それはもう甘ったるく蕩けていなければ、この行為は傍から見れば一方的な蹂躙に思えただろう。
豊かな赤髪がシーツの上で跳ねる。普段は血色悪い肌も、昨夜から愛され続けたことによって全身が仄かに染まっており、はふはふと呼吸を繰り返す唇もいつもより幾分も瑞々しい。
もぎたての果実のように罪深く、まるで堕落を誘うように震えるアルカディアの唇にまんまと誘惑されたクラウディオが、上体を折って噛み付くようにそこに口付ける。
二人の身体が密着したことによって益々深くなった結合に、快楽の涙を湛えるアルカディアの目が大きく見開かれた。懸命にシーツを握る指先は白く、ぐり、と中を強く抉られたことで益々血の気が失せる。
クラウディオによっていとも簡単に持ち上げられたアルカディアの足先も悲鳴をあげるように、びく、びく、と力なく宙を蹴り続けていた。
ちゅくちゅくと可愛らしい音を立ててお互いの唇を吸いながらも、クラウディオは腰を力強く、一気にアルカディアの奥まで打ち込んでくる。
そのくせ、抜く時はいっそ焦れてしまいそうなほどにゆっくり。アルカディアに見せつけるように、いや、見なくても、アルカディアの内部が彼の性器を益々覚えてしまうほどに、じっくり、時間をかけて。
これもアルカディアが好む突き方だ。無慈悲な程に激しく一息に犯されてなお酷くされたことに悦ぶ身体を、今度は勿体ぶってとろとろに、優しく優しく甘やかしながら、名残惜しそうにずろずろと抜く。引き抜く度、腸壁のヒダが雁首に引っかかってくちくちと卑猥な水音が響くのが恥ずかしくて、やめてと口で何度も伝えたのだが、快楽に蕩けきったもの欲しげな表情でそれを言ったところで全く意味を成さなかった。
クラウディオの動きに合わせて勝手に追い縋ってしまう腰も、ろくに触れられてすらいないのにぴんッ♡、と勃ちあがったままの胸の突起も、全てがアルカディアの羞恥を煽る。
じゅぽ、ぐぽ、と酷い音を立てながら繰り返される律動に、アルカディアの身体は殆どイきっぱなしに近い状態だ。
「ひゃ、ぁ、…ッ♡……ぉ、っあ゛…ッ♡…だ、めぇ…ッ♡あッ♡♡、…う゛、ぅ…っ♡…っ♡♡ぃ…あ♡♡♡…ぁ!うぁ、ッ♡…そ、こッ……だ、め……♡…だめ...っ♡♡…ひあ、!…ぁっ!?♡」
獣のような声をあげながら快楽に緩みきっていたアルカディアの身体が、突如としてぎくりと強張る。
……嫌な予感がする。
昨夜も結構な回数励んでしまったせいで、先程からアルカディアの男性器は禄に立ち上がりもせず力なくしなだれ、僅かに粘る水を、くぱくぱ口を開けるだらしない尿道口から零し続けるだけだ。
しかしこの、むずむずとせり上がってくる感覚。覚えがある。
「まっ、待って…♡♡ぁッ、め…ッ♡、ら゛め♡、………うっ♡…ッ♡ぁ゛、……ッ、らぇ、なの…っ♡ほん、とに、とまって、ぇっ……♡♡あ゛っ、あ゛ッ……♡ら゛め、…ッ、ぅ…あッ…♡♡」
持ち上げられた足はいつしかクラウディオの腰にがちりと絡みつき、腸壁は子種を欲して彼の陰茎を扱きあげる。
いやいやと緩く首を振りながらも種を強請り、自身の腹の中を耕す陰茎に絡みつく様は雌でしかなく、拒否どころか、己を汚す男の征服欲を益々煽るだけだということにアルカディアは気付いていない。
「やだ、や…ッ♡、あ゛ひ、♡…ぁ゛ッ♡あ゛ぅ、あ、っ♡、やっ…っ、あ…!♡…やッ♡ら、め……っ、…ッだめだめ、だめ、ッ…♡♡ぁ、ッ♡ぅ、うぁぁっ!?♡♡♡」
切羽詰まった声を上げれば、それに呼応するようにひときわ大きく突かれ、アルカディアの男性器からぷしゃりと液体が飛ぶ。昨夜さんざん吐き出したそこからは大した量もなく、僅かに濁る白を少量零しただけだった。
けれども同時に奥へと感じる、クラウディオの射精は違った。昨夜もたっぷりとアルカディアのナカへ出したはずなのに、彼の精は今またアルカディアのナカをびゅるびゅると夥しい量でもってマーキングしている。
注がれる精液で、腹の中がどんどん重くなる。薄い腹はぽこりと膨らみ、圧迫感に、あ、あ、とか細い声を漏らしたアルカディアの身体はぶるりと震え、次の瞬間、しなだれた性器からぷしゃっ、と液体が漏れだした。
アルカディアの腹の上にぱしゃぱしゃと広がる、透明の液体。
びしゃびしゃと跳ねるように放たれるそれはクラウディオの腹部をも汚し、垂れた潮はアルカディアの胸や脇腹を伝い、寝台の上のシーツを水浸しにしていく。
「や…っ、やあぁあぁ……ッ♡」
その光景と快感に混乱して、アルカディアは目を瞑り、眉を寄せ、首を振る。
初めて潮吹きをした時にお漏らしをしてしまったと勘違いして盛大な自己嫌悪に陥った経験から、アルカディアは潮を吹くことが苦手になってしまったのだ。
「だ、駄目って……ぁ、う…止まってって、言った、のに、ぃ……ばかぁッ♡」
悩ましげな表情でぼろぼろ涙を垂らしながらも、快感の余韻にびくんびくんと痙攣するアルカディアを宥めるため、クラウディオはこの可愛い可愛い子を更に攻め立ててやりたい欲望をぐっと我慢して、長大なそれを、愛しい者の未だもの欲しげにひくつく蜜壷から引き抜いた。