smoker







──アルカディアは、クラウディオが煙草を吸っている姿を見るのが好きだ。

口に咥えたあと煙草を掌で覆って火をつける。大きく煙を吸って、ゆっくりと吐くと紫煙が広がった。その一連の動作がとても優雅に見える。
彼の指に挟まれた煙草から漂う香りも好きだった。香水のような甘い匂いではなくて、煙草特有の少し苦いような香り。それを肺の奥まで吸い込むと胸の中がいっぱいになったような気がした。
そんなことを考えながらアルカディアはクラウディオをじっと見つめていると視線に気付いたのか、彼はこちらを見て優しく微笑んだ。
とんとんと灰皿の上で煙草の先端を叩き、灰を落とす。その長い指も綺麗だと思った。そしてもう一度、彼は煙草を口に含む。ふぅっと息を吐き出すと同時に、また紫煙が広がった。

「(あぁ……やっぱりいいな)」

その姿に見惚れる。いつ見ても飽きないくらい格好良いと思うのだ。しかしそれと同時に、自分のことを見て欲しいという気持ちもあった。だから、ついちょっかいを出してしまう。
ぐいっと袖を引っ張ると、彼は驚いたように目を丸くする。それからすぐに悪戯っ子のように笑ってアルカディアを抱き寄せた。

「どうした?」

「……」

耳元で囁かれる声にぞくりと背筋が震えた。顔を上げると優しい瞳とかち合う。それが嬉しくて、自然と笑みを浮かべていた。すると彼はさらに強く抱き寄せてくる。まるで愛しいものに触れるかのように頭を撫でられた。
それが心地よくて、もっとして欲しいと思ってしまう。

「何かあったか?それとも、構ってほしい?」

そう聞かれたので素直に答えることにした。

「両方」

すると彼は喉奥で笑う。

「欲張りめ」

その言葉とは裏腹に楽しげな表情をしている。そして、そっと顔を近付けてきた。額同士がくっつきそうな距離になり、唇が触れそうになる。けれど、そこでピタリと動きを止めてしまった。
どうしてだろうと思っていると、クラウディオが小さく呟いた。

「煙草の味するぞ」

「…いい」

それでも構わないと答えれば、彼は苦笑いをする。
それから軽く触れるだけのキスをした。
それだけでは物足りなくて、今度は自分から口付ける。すると応えるように舌先が入ってきて絡め取られた。唾液を交換するかのような深い口づけを交わす。
しばらくしてようやく離されたときには呼吸が乱れてしまっていた。
ぼんやりとした頭のまま彼を見上げると、頬に手が添えられ、親指がすりっと肌の上を滑った。そのまま顎を持ち上げられ、再び唇を重ねられる。角度を変えながら何度も貪るようなキスを繰り返した。

「ん…ふ、ぁ…んむッ!」

酸素を求めて開いた口から熱い塊が入り込んでくる。それはアルカディアの口腔内を自由に暴れ回った。歯列や上顎をなぞられ、逃げ惑う舌を捕まえられて吸われる。
身体の中心が熱くなる感覚に襲われて、膝ががくがくと揺れ始めた。座っているのに崩れ落ちてしまいそうだと思って、必死になって彼にしがみつく。
ようやく解放された頃には腰砕けになっていた。力が抜けてしまい倒れそうになったところを受け止められる。
荒くなった息を整えようと深呼吸を繰り返していると、背中をさすられた。

「大丈夫か?」

「…ん」

こくりと小さく首を縦に振る。
まだ頭がぼうっとしていた。視界も滲んでいるように見える。これは酸欠状態になっているせいなのか、それとも別の理由があるのか自分でもよく分からなかった。
じわじわと明瞭になっていく視界で、クラウディオの左手を見る。彼の指に挟まれたままの煙草は、灰が落ちて短くなっていた。

「…煙草」

「うん?」

「それ、ちょうだい」

言いながら手を伸ばすが、クラウディオに左手を遠ざけられてしまう。

「駄目」

「…なんで」

「お前には似合わん」

きっぱりと言われてアルカディアは眉根を寄せた。
煙草を持っているクラウディオの姿が好きなのだ。だから、いつも彼がしていることを自分もしてみたいと思う。
過去に何度か強請ったことがあるが、その都度断られていた。

「俺だって吸える」

「駄目だ」

頑なに拒まれて不満が募っていく。だが、無理矢理奪おうとは思わなかった。
吸いたいわけじゃない。
ただ同じことがしたいだけなのに、と心の中で呟く。
不貞腐れたような顔をするアルカディアを見て、クラウディオは困ったように笑っていた。

「お前はこっちの方が似合う」

そう言ってクラウディオはテーブルの上に置いていたチョコレートを一粒摘まんで、アルカディアの口に放り込んだ。
思わず反射でチョコレートを齧ると中からとろっとした液体が出てきた。

「子供扱いしてるな」

「お前が可愛いから仕方ないな」

クラウディオは笑いながら短くなった煙草を灰皿に押し付けた。
…勿体ない。
そう思ってしまった。
煙草を吸う彼の姿を見るのが好きだ。でも、こうして消してしまう瞬間を見るのも好きだった。
煙草を吸わない自分がそれを惜しいと思ってしまうのは不自然なことなのかもしれない。
それでも、やはり寂しいと思ってしまうのだ。

「そんな顔するな」

「どんな顔」

「捨てられた子犬みたいな顔だな」

「してない」

「じゃあ、拗ねた顔だ」

「……それも違う」

「ならどれだ?」

くすっと笑って頭を撫でられる。
その手を掴んでぎゅっと握り締めた。

「機嫌を直せ」

「別に怒ってない」

「なら、何を考えているんだ?」

「…何でもない」

「何だ?教えてくれないと分からないぞ」

「……」

黙っていれば、握っていない方の手がアルカディアの顔に触れた。その指先は優しく頬を撫でる。そして顎先を持ち上げられて視線が絡み合った。

「アルカディア?」

名前を呼ばれると胸の奥がきゅーっと苦しくなる。それがとても心地よくて、幸せだと思う。
​​──ああ、もう。
どうしようもないくらい、この人が好きなんだと改めて自覚した。

「もういっかい、煙草吸って」

そう告げると彼は不思議そうな顔をする。それから何かを察したように笑みを浮かべて「分かった」と答えた。
再び箱から一本取り出して火を付ける。その様子をじっと見つめていた。
煙を口に含んで吐き出す。その姿に見惚れていたら、突然ぐいっと引き寄せられて唇を奪われた。
口の中に入ってきた苦味のあるものを反射的に飲み込む。
唇が離れて至近距離で見つめられながら、美味かったかと聞かれたのでアルカディアは素直に首を縦に振った。すると彼は満足げに笑って、再び煙草をくわえた。
煙草の味なんて知らない。けれど、これが大人の味なんだということは理解できた。
煙草を吸う彼の姿が格好良く見えてしまうのは、きっと自分の目にフィルターが掛かっているからだろう。
それでも、その姿を見ているだけで満たされていく。

「……ねえ」

「ん?」

「もう一回」

甘えた声でおねだりすると、苦笑いされた。

「気に入ったのか?」

素直にこくりと首肯すると、今度は深く口付けられた。
舌先が触れ合い、絡まり合って互いの唾液を交換する。
今日は朝から雨が降っていて、ざあざあと激しい雨音が部屋の中に響いている。雨音だけが聞こえる室内で、二人はしばらく口付けを交わし合っていた。
やがて唇が離れていき、クラウディオがふーっと長く息を吐く。

「お前の唇は甘いな」

「……そう?」

「砂糖菓子みたいに甘くて、癖になる」

笑って頬にキスされた。
再びクラウディオが煙を吸い込み、紫煙を吐き出す。アルカディアはその様子を見届けてから、テーブルの上に置かれたチョコレートに手を伸ばして一つ口に放り込んだ。

「…ん」

もごもごと咀噛しながら、もう一粒手に取ってクラウディオに差し出すと、きょとんとした表情で首を傾げる。

「くれるのか?」

「ん」

クラウディオはそのままアルカディアの手からチョコレートを口に含んだあと、手首を掴みチョコレートのついた指先に軽く歯を立てた。
ぺろりと舐め上げられて身体が震える。

「……っ!」

指の腹にぬるりとした感触を感じて背筋がぞくりとする。指を這う熱い舌の感覚に、アルカディアはきゅっと目を瞑った。

「……ぁ」

指を舐められただけなのに声が漏れる。恥ずかしくて、顔に熱が集まっていくのを感じた。
ちゅ、という小さなリップ音を鳴らして指を解放したクラウディオは、アルカディアの腰を抱き寄せて耳元に唇を寄せた。

「お前は指も甘い」

囁くような低音の声色で言われて、びくりと肩が跳ね上がる。
アルカディアを片腕の中に収めながら、クラウディオは顔を背けて煙草を口に運ぶ。普段見ない角度での喫煙姿にどきりとする。
煙草を吸っているだけなのに妙な色気があって、目が離せない。
無意識のうちに、アルカディアはクラウディオの服をぎゅっと掴んでいた。

「アルカディア?」

「……」

返事の代わりに、アルカディアは彼の背中にしがみつくように腕を回してクラウディオを見上げる。
なんだかとても、どきどきする。
クラウディオが煙草を吸っている姿なんて毎日見てるのに。
煙草を持つ手つきとか、灰を落とす短い動きとか、煙を吸い込んで吐き出す表情だとか、そういう些細な仕草がいつもより色気が増して見える。
それに、さっきまであんなに深く口付けられていたのだから、余計に落ち着かない気持ちになった。
煙草を持っていない方の手で髪を撫でられ、じわじわとアルカディアの顔が赤く染まっていく。
やっぱりアルカディアにとって、クラウディオはずっと“大人の男”だった。
こんな風にときめいたりするのは、自分らしくないと思う。
でも、この人の前でだけは素直になりたいとも思った。

「……」

黙ってじっと見つめていると、困ったような顔で微笑まれた。

「……そんな目で見るんじゃない」

「なんで?」

「我慢できなくなる」

「…何を?」

「……分かってるだろう?」

少し掠れた声で言われた瞬間、体内の魔力が大きく脈打った、気がする。

「(……あ)」

何だか、いけない気分になりそうだ。

「……アルカディア」

名前を呼ばれてゆっくり瞬きをする。
そして、どちらともなく唇を重ねた。
先程よりも長い時間、唇を重ね合わせる。
次第に頭がぼんやりとしてきた。
​​──ああ、だめだ。
このままじゃ、また溺れてしまう。

「……ん、」

そっと唇が離れて、至近距離で見つめられながら名前を呼ばれる。

「愛しているよ、私のアルカディア」

その言葉を聞いた途端、身体の奥底から何かが溢れ出しそうになった。
それはまるで、コップの縁ギリギリにまで注がれていた水が零れ落ちるように。

「おれ、も」

アルカディアは目の前の男の首に手を回した。
そして、自ら唇を重ねる。

「俺も、あいし、てる」

何度も口付けて、舌を絡め合う。
煙草の味がした。苦いはずのそれが、何故だか甘く感じる。
もっと欲しいと思って、アルカディアは必死に口付けに応えた。

「んぅ……」

息継ぎの合間に甘い吐息が漏れる。
いつの間にかソファに押し倒されていた。
覆い被さるように身体を重ねて、貪るようなキスを交わす。
やがて、ゆっくりと離れていった唇が名残惜しかった。

「アルカディア」

頬を優しく撫でられる。
それから、耳元に口を寄せられて低く艶のある声で囁かれた。
その声色はひどく甘くて、どこか切羽詰まったような響きがあった。
鼓膜から脳髄にかけて甘い痺れが広がる。
ぞくぞくとした快感を覚えて、身体が小さく震えた。
耳から頬へと彼の手が移動していく。
そのまま顎を持ち上げられて上向かされた。
彼の瞳には情欲の炎が宿っていた。
熱っぽい視線に見下ろされて、胸が高鳴る。
アルカディアが思わずきゅ、と目を閉じると、クラウディオは軽々とアルカディアを抱き上げた。寝室に向かって歩き出した彼は、突然のことに目を白黒させるアルカディアの額にキスを落として囁いた。

「覚悟しておけよ」

「……え」

甘い声が、アルカディアの思考を奪っていく。
ベッドの上に降ろされ、そのまま押し倒される。スプリングの軋む音が響いて、魔力が激しく波打つ。

「や、あ…ま、まって…シャワー、浴びたい」

「却下」

クラウディオはアルカディアの髪に触れて、指先で弄ぶように毛先に触れてから指先にくるりと巻き付けた。
さらりと流れるように落ちてきた髪を耳に掛けられる。

「お前の匂いは嫌いじゃない」

「……っ」

「むしろ興奮する」

「ばっ、馬鹿!」

恥ずかしくて押しのけようとするも、びくともしない。相変わらず鋼のような身体をしている。
クラウディオはくすりと笑って、アルカディアの耳元に唇を寄せた。
熱い吐息がかかる。
耳たぶに軽く歯を立てられて、耳の穴にぬるりとしたものが入り込んできた。
ぞくぞくとした感覚が背筋を走る。
ぴちゃり、という水音が直接脳内に響くようで、羞恥心が煽られた。

「ふ、ぁ…っ」

耳を舐められているだけなのに、何故か下半身に熱が集まっているのを感じる。
耳たぶを甘噛みされたり、舌を挿し込まれたりして、全身がぞくぞくとした。
時折歯を立てて刺激を与えられ、アルカディアは思わず声を上げる。

「ぁ、あ…ま、って…」

「待たない」

「ん……ッ」

耳への愛撫だけで既に力が抜け始めているアルカディアを見て、クラウディオはくすりと笑う。

「可愛い」

「……う、るさいぃ」

アルカディアの抵抗など気にも留めず、クラウディオは再びアルカディアの唇を塞いだ。

「ん…」

ちゅ、と触れるだけの軽い口付けを繰り返して、徐々に深いものに変えていく。
するりとクラウディオの大きな掌が服の中に入り込んできて、素肌の上を滑った。
脇腹の辺りを撫でられ、アルカディアは小さく身じろぐ。

「ん、ん……」

唇を重ねながら、身体をまさぐる手の動きに合わせて、自然と腰が揺れてしまう。
すると、クラウディオは唇を離して妖しく微笑んだ。
ふわりと煙草の香りがして、アルカディアは無意識のうちに喉を鳴らす。

「ぁ…の…くら、でぃお」

「なんだ?」

「……えと…」

​​──今日は駄目な日らしい。
どうしても、自分の欲望が我慢出来ない。恥ずかしいけれど、正直に言おう。
アルカディアは大きく深呼吸をして、意を決して口を開く。
顔が真っ赤になっている自覚は大いにある。

「…その…」

もごもごと言葉を濁すアルカディアの様子を見て、クラウディオはアルカディアの頭を優しく撫でて言葉の続きを待っている。

「あの…ね…」

「うん」

「た…たばこ、吸って」

「……ん?」

予想外だったのか、不思議そうな顔をされた。
やっぱり変なお願いだろうか?
でも、いつもよりずっとどきどきしているのだ。クラウディオのあの姿をどうしても、見たい。

「たば、こ、…吸いながら、し…して、ほし…」

「……」

沈黙が流れる。
もしかして引かれてしまったかもしれない。
静寂が居心地悪くて、慌てて言葉を続けた。

「あ、や、やっぱ、今の…なし!忘れてっ」

「……」

「や、な、なんでも…ないから、」

「分かった」

「…へ?」

「煙草だな」

そう言って、クラウディオは上体を起こしてサイドテーブルの引き出しから灰皿を取り出した。そしてポケットに入っていた煙草を一本口に咥えて火をつける。

「……ぅ」

その所作がやっぱりかっこよくて、アルカディアは思わず布団を手繰り寄せて顔を隠してしまう。
そんなアルカディアの様子を楽しげに見つめていたクラウディオは煙を吐き出してから、アルカディアの髪をくるくると指に巻き付けて遊んでいる。
やがて、煙草の先端が赤く光ると、クラウディオはゆっくりと紫煙を燻らせた。
煙草の独特な匂いが寝室に広がっていく。
ああ、この匂いだ。
そう思った瞬間、身体の奥底からぞくぞくとした快感が湧き上がってきた。

「お前が強請ったのに見なくていいのか?」

未だ顔を隠したままのアルカディアに笑いながら声を掛ける。

「うぅ…」

「ほら」

やがてそろそろとアルカディアの赤い両目が布団から覗く。
その顔は先程より真っ赤になっていて、瞳は涙で潤んでいた。

「私が煙草を吸っている姿を見るのが好きなんだろう?」

「……う…ん」

クラウディオはゆっくりアルカディアの太ももあたりに体重を乗せないように跨ると、アルカディアを見下ろしながら、見せつけるように煙草を口にくわえて大きく煙を吸い込んだ。
煙草を持つ手で顔が半分隠れているのが何とも言えない色気を放っている。

「…っ」

アルカディアはごくりと唾を飲み込む。
ゆるりと口角を上げて、目を細めて笑みを浮かべるその姿はまさに捕食者のようであった。
クラウディオの姿に釘付けになっていると、いつの間にか彼の手が胸元に伸びていて、するりと服の中に入り込んでくる。

「ぁっ」

そのまま指先でくるくると乳輪をなぞられる。
ぴくりと身体が震えた。
指先で突起に触れるか触れないかという絶妙な力加減で与えられる刺激に、じわじわと甘い疼きが生まれる。

「ふ……っ」

指先が触れる度に、アルカディアの口から声が漏れた。

「……アルカディア」

「っ」

低い声で名前を呼ばれ、身体がびくんと跳ねた。
そのままクラウディオの手が下へ降りていき、ズボンの中に入り込んでくる。
下着越しに触れられ、既に硬くなっている陰茎を撫でられる。

「ん……っ」

「目、閉じるな」

「……ぁ」

言われるがまま、視線を逸らすことが出来ずにいると、クラウディオはくすりと笑って、再び煙草を口元へと運んだ。

「ふ…ぁ……あ…ッ」

クラウディオは煙草を口で揺らしながら、アルカディアのモノを扱く手を速めていく。
先端をぐりっと親指で押され、アルカディアは思わず悲鳴のような喘ぎを漏らした。

「ひ、あっ、あ……ッ♥」

快楽から逃れようと腰を引くと、それを咎めるかのように強く擦られ、思わず達してしまいそうになる。

「ひゃ…あ…ッ、ぁ、あ……ッ♥♥」

必死で耐えようとするも、我慢出来ずに達してしまいそうになったその時、クラウディオはぱっと手を止めてしまった。

「ぇ……あ…?」

もう少しで絶頂を迎えそうになっていたアルカディアは呆然とする。
どうして、と言わんばかりの表情で見上げると、クラウディオはくつくつと愉しそうに笑った。

「アルカディア」

「な、な…なに……?」

「自分で脱いで、足を開いてくれ」

「え…?」

「出来るな?」

「え……え……」

戸惑うアルカディアをよそに、クラウディオは煙草を灰皿に押し付けて消してしまう。
そして、アルカディアの頬をするりと撫でてから彼の体の上から離れていった。

「アルカディア」

「ぅ……」

有無を言わせぬ口調で名を呼ばれる。
アルカディアは観念してゆっくりと起き上がると、恐る恐る自分の衣服に手をかけた。

「……」

クラウディオとは何度も身体を重ねているのに、今日はいつも以上に恥ずかしい。
しかし、恥ずかしいけれど、それ以上に興奮している自分がいた。
アルカディアは意を決して、着ていたシャツを脱いでいく。
露になった上半身に、クラウディオの視線が突き刺さる。
恥ずかしくて、消えてしまいたい。
しかし、ここで躊躇っていても仕方がない。
アルカディアは震える手でベルトを外し、下着ごとズボンを下ろす。
アルカディアは羞恥に耐えきれず顔を俯かせた。

「……アルカディア」

「っ……」

低く囁かれて、ぞくぞくとした快感が全身を走る。
アルカディアはごくりと唾を飲み込むと、おずおずと足を左右に開いた。

「良い子だ」

「っ……!」

その言葉だけで、イってしまいそうだった。
アルカディアは震えながら顔を真っ赤にして、きゅっと唇を噛み締めた。

「アルカディア」

「んっ」

耳元で甘く名前を呼ばれて、びくんと体が反応する。
次の瞬間、アルカディアの陰茎にクラウディオの手が触れた。

「ぁ……」

「動くな」

「ぅ…」

「いいこ」

「ぁ……んっ、ぅ…っ♥」

ゆっくりと、焦らすように、大きな手が這う。その度にびりびりした甘い痺れが走る。
やがて、ゆっくりと手が上下に動き始めた。

「ぁっ、や…ぁっ、あんっ、ぁっ、ぁっ♥」

待ち望んでいた刺激を与えられて、無意識のうちに腰が揺れてしまう。

「アルカディア」

名前を呼ばれ、のろのろと視線を上げると、琥珀色の瞳と目が合った。

「ぁ…ぅ……っ」

途端、身体の奥底からどくどくと熱いものが込み上げてくる感覚に襲われる。

「ふ……ぁ……っ、あっ、んっ、んっ♥」

そのまま、一定のリズムで扱かれ、先端をぐちゅりと押し潰される。

「ぁっ、あっ、…あ♥」

「可愛い」

「っ〜〜♥♥」

熱っぽい声で言われて、身体の奥底からぞくぞくとした快感が湧き上がってくる。

「ん、ぁっ、…あっ、ふっ♥♥」

次第に、手のスピードが速くなっていく。
絶頂が近いのか、身体がぶるりと震えた。

「は、ぁ゛…っふ、ぅ…っん、ん゛んっ♥♥ひ、ぅ♥♥」

「アルカディア」

「……っっ♥♥♥」

甘い声で名前を呼ばれ、身体がびくんと跳ねる。
同時に、目の前が真っ白になって、身体が痙攣した。

「ふ…っ…ぁっ♥」

びくんびくんと身体が跳ねるのと同時に、勢いよく精液が飛び出す。

「ぁ…う、ふ、〜〜ッ♥」

絶頂を迎えた余韻に浸っていると、優しく頭を撫でられた。それすらも気持ち良く感じてしまい、アルカディアは小さく声を漏らす。
そのまま暫くの間撫でられていると、段々と意識が遠退いてきた。
ふわふわした心地良さに身を任せていると、ゆっくりベッドに押し倒されてしまう。

「へ……あ…?」

何が起こったのかわからずにいると、背中に柔らかなマットレスの感触を感じた。
そのまま、両膝の裏に手を回され、両足を大きく開かせられる。

「あ…え……?」

困惑していると、後孔にぬるついた何かが触れる。

「ぇ…?あ……!?」

それが指だと気付いた時には既に遅く、太く長い中指がずぷりと挿入されていた。

「あ゛…っ♥」

突然の異物感に目を見開く。しかし、それも一瞬のことだった。
すぐに快楽に塗り替えられていく。
クラウディオの指が内壁を押し広げるようにしてぐるりと回転し、ある一点を掠めた瞬間、アルカディアは大きく体を仰け反らせた。
そこはアルカディアが一番感じるところで、そこばかりを執拗に責め立てられ、アルカディアは喘ぎ続ける。

「ひゃ…っ、や…ッ♥…そ、こ…ばっか…り……ッ、だめ……っ♥」

「駄目じゃないだろう」

「んぁッ♥」

ぐりっと強く押されて、びくんと身体が跳ね上がる。

「は、ぁ…っ、ん…っ♥」

快楽から逃れようと身を捩るが、そんなことは許さないと言うかのように、更に激しく掻き乱される。

「ぁ…や……ぁ……っ♥」

アルカディアは涙を浮かべながら弱々しく首を振った。
しかし、それは逆効果だったようで、クラウディオは愉しそうに口角を上げた。
ぐりぐりと前立腺を弄られる度、身体中に電流が流れたかのような強烈な快感が駆け巡る。

「ん、んんっ♥」

再び勃ち上がった陰茎の先端からは透明な先走りが零れていた。

「ふ…っ、ん…んんっ♥」

いつの間にか、二本に増えた指が激しく抜き差しされる。
ぐちゅぐちゅという水音が響き渡り、アルカディアは羞恥に顔を赤く染めた。
しかし、それに構わずクラウディオはアルカディアの中を犯し続ける。

「は…ぁ…う…っ♥」

やがて、ゆっくりと指を引き抜くと、アルカディアの秘所は誘うように収縮を繰り返していた。

「アルカディア」

「ぅ……」

甘く名を呼ばれて、ぞくぞくとした快感が走る。
アルカディアは期待に満ちた表情でこくりと喉を動かした。

「挿れるぞ」

「う、ん……」

アルカディアは消え入りそうな声で返事をした。そして、ゆっくりと息を吐く。
やがて、硬く張り詰めた熱塊が押し当てられて、ゆっくりと体内に侵入してきた。

「……っ」

圧迫感に眉根を寄せて耐える。
一番太い部分を飲み込むと、後は楽だった。
ずぶずぶと音を立てて奥まで挿入される。
全て入ったところで、一度クラウディオの動きが止まった。
暫くの間、お互いに呼吸を整えながらどちらからともなく唇を重ねた。
舌を絡め合う濃厚なキス。その間も、互いの腰は密着したまま離れない。
しばらくして、名残惜しそうに離れた唇から銀糸が伸び、切れた。

「動くぞ」

「ん……」

小さく首肯すると、ゆるやかな抽送が始まった。最初は緩やかだったが、徐々にその動きが速くなっていく。

「ぁ、あッ♥♥ぁ、ひ…ッ♥♥ぃっ♥♥ぁッ♥♥♥は、ひぅ♥♥♥」

激しいピストン運動に合わせて、口から甘い声が漏れ出る。
結合部からぐちゅぐちゅと厭らしい音が聞こえてきて、聴覚からも犯されているような気分になった。

「ぁッ♥♥ぁんッ♥♥ひぁッ♥♥ぁっ♥♥ぁっ♥♥」

何度も最奥を突き上げられて、アルカディアは甘い声で鳴き続けた。
持ち上げられた両足ががくがくと震え始める。

「あ、あ゛​​──ッ♥♥♥♥あ゛ぅッ♥♥ぁ、はぁッ♥♥♥」

絶頂が近いのか、アルカディアの身体が大きく痙攣する。
同時に、肉筒がきゅんきゅんと締まり、射精を促すように淫らにうねる。
それに応えるようにして、どくんと脈打った楔が一際大きく膨れ上がり、次の瞬間、熱い奔流が体内へと注ぎ込まれた。
同時に、アルカディア自身からも白濁液が飛び散る。

「〜〜〜〜〜ッ♥♥…ッは、ぁ゛、ぁ♥ ッふ、ぅ〜〜〜〜ッ♥♥」

腹の奥にじんわりと広がっていく感覚に身震いした。
絶頂を迎えた余韻に浸っていると、再び抽挿が開始された。今度は、先程よりも激しく、貪るような動きだ。達したばかりの体には強すぎる刺激に、アルカディアは悲鳴のような声を上げる。

「ひや、ぁっ♥♥ぁ、ぐ、ぅ゛う、♥♥」

休む間もなく責め立てられ、頭が真っ白になる。
苦しいはずなのに、それ以上に強い快楽を感じてしまう。
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そんな考えが脳裏に浮かんだ瞬間、自分の中の何かが壊れてしまった気がした。
そのまま激しく揺さぶられ続けているうちに、再び限界が訪れた。

「ひっ♥♥ぁ、ぁ、ひ♥♥ひっぅ♥♥は、あ♥♥んぁ♥ま、って♥」

アルカディアは涙を流しながら訴える。しかし、そんな彼の顔を見たクラウディオの動きはより一層激しさを増した。

「ぁ、やら♥♥また、ぁ♥いく♥♥」

「ああ、好きなだけイけ」

「ぁ、あっ♥♥ぁ♥♥ぁ♥♥♥♥ぁ♥♥♥♥」

アルカディアは再び果てた。しかし、それでもクラウディオは止まらない。
快楽漬けの身体はもはや言うことを聞かず、ただひたすらに与えられる快楽を受け入れることしかできなかった。

「も…やめ゛ッ♥♥おぐッ♥♥♥あっう゛ぅ…ッ♥♥♥」

「やめていいのか?」

「やぁ、♥♥♥♥」

そう言いながらも、クラウディオは容赦なく突き上げてくる。

「だめ♥♥だめ、ぇ♥♥そこ、そこぉ゛ッ♥♥♥♥」

「何が駄目なんだ?言ってみろ」

「おく♥♥おかひ…く、なっひゃ♥♥ゃ゛、あ゛ッ♥♥♥ぉぐ、らぇ゛、〜〜ッ♥♥や゛〜〜〜ッ♥♥♥♥」

ぐりぐりと最奥を突かれて、視界が明滅する。

「あ゛♥♥♥あ゛♥♥♥あ゛♥♥♥♥あ゛♥♥♥」

びくびくと全身が痙攣し、頭の中で火花が弾ける。

「ぁ、う…あ♥♥♥♥」

アルカディアの陰茎からは透明な液体が勢いよく吹き出し、二人の体を濡らす。
それと同時に、体内の雄を締め付け、搾り取るように収縮を繰り返した。

「くっ……」

その強い締めつけに、クラウディオもまた絶頂を迎える。
どぷりと大量の精が吐き出され、熱いものが腸内を満たしていく。

「あ、ぁう゛ぅ…ッ♥」

その熱さに感じ入り、アルカディアは蕩けた表情を浮かべる。
するりと頬を撫でられただけでアルカディアは甘い声をあげて体を捩らせた。
──気持ち良い。もっとしてほしい。
そんな思いでいっぱいになっていると、不意にクラウディオの体が離れていく。

「…?」

ぼんやりとした思考でクラウディオの姿を追いかけようと手を伸ばすと、彼はアルカディアのその手を掴みぐっと腕を引いて自身の膝に乗せると、座位のような姿勢になった。そしてサイドテーブルに置いていた煙草を手に取り口にくわえた。それを見たアルカディアの肩がびく、と跳ねる。
火をつけてゆっくりと煙を吐くクラウディオの姿に、じわじわと快感が溢れていく。無意識にぎゅう、と挿れたままのものを強く締め付けた。

「ん…ぅ…ッ♥」

眉根を寄せて小さく喘いでしまい、アルカディアは慌てて口元を手で押さえた。クラウディオが再び深く紫煙を吸い込むその姿を見つめていると、自然と魔力の流れが激しくなっていく。
​​──ぁ、これ、やばい
ぞくぞくと背筋が震えた。
今にも達してしまいそうな感覚。けれど、それを必死に抑え込み、アルカディアは耐えていた。
クラウディオが煙草を吸っている姿を見てイくなんて、恥ずかしくて死んでしまいそうだ。
そんなことを考えながら快楽に耐えていたが、それも長くは続かない。
ふと、クラウディオがアルカディアを見下ろして微笑んだ。
アルカディアはその視線と表情に、ビクンと身体を大きく震わせる。

「我慢しないで、イけばいいだろう」

「や、やだ…い、や…」

耳まで真っ赤にして首を横に振るアルカディア。そんな彼の姿にクラウディオは楽しげに笑った。
彼には全部、バレてる。
アルカディアが、クラウディオの喫煙姿を見て興奮していたことも、絶頂を堪えていたことも。
全て、お見通しなのだ。
羞恥心と快楽と期待とが入り交じり、頭がおかしくなりそうになる。

「ほら、アルカディア」

「や、やだ……ぁ…んっ♥」

びくびくと小さく震えながら、ぎゅっと目を強く閉じて耐えるように両手を口元で握り締めた。

「目、閉じるなって言っただろ」

「ぁ、や……ッ♥」

口元の手を払って顎を捕まれ、無理矢理顔を向けさせられる。
びく、と再び身体が反応した。

「あ、ぁ…♥」

見られている──。
そう自覚した瞬間、きゅうう、と秘部が締まった。

「私に見られるのも、私を見るのも、好きだなお前は」

「ぁ、ぁ♥ちが、あぁッ♥♥」

否定の言葉を口にするも、体は正直だった。

「あ、あ ──……♥♥」

見られてる。あの綺麗な瞳が、自分を見ている。
それだけで、こんなにも身体が悦んでしまう。
そして間近で、こんなにも近くで、煙草を吸われてしまえば、もうどうしようもなかった。
びく、びく、とアルカディアの体が小刻みに痙攣する。
──だめ、駄目、駄目
必死に自分に言い聞かせるが、無駄だった。
じわりと視界が滲む。
やがて、限界に達した身体が絶頂へと上り詰めていき──

「……ぁ」

───訪れた絶頂の波にアルカディアの体が一瞬硬直する。直後、大きく仰け反ってガクンガクンと激しく痙攣し始めた。

「ひ、ぁ──〜〜〜ッ♥♥ひッ♥♥♥ぅあ──ッ♥♥あ──ッ♥♥♥♥」

「……ッ」

強烈な締めつけに、クラウディオが僅かに息を飲む。
顎を掴まれているせいで顔を隠すことも逸らすこともできず、アルカディアは泣きじゃくりながら激しい絶頂に身悶えた。

「あ──ッ♥♥あ゛──ッ♥♥♥ぅ、う゛ッ♥♥あ──ッ♥♥♥♥」

ぴゅく、とアルカディアの先端から少量の白濁液が飛び散る。しかし、それは射精と呼べるようなものではなかった。
クラウディオは動いていないし、自身を触られたわけでもない。
クラウディオに見つめられただけなのに。
クラウディオの喫煙姿を見ていただけなのに。
アルカディアは果ててしまったのだ。
その事実が、更にアルカディアを追い詰めていく。
絶頂の余韻に浸りながらも、アルカディアはぼろぼろと涙を流した。
恥ずかしい。死にたいくらいに恥ずかしかった。
けれど、それすらも今のアルカディアには快楽となって襲いかかってくる。

「っは、ぁ…っ♥ぁう…、っぅ゛ぅ…っ♥♥ん、ふ、ぅあ、ぅ…っ♥い゛、きたく、な゛♥」

がくがく震える手で自身の顎を掴むクラウディオの腕を払いのけようと試みるも、力が入らなくてただ手を添えるだけになってしまう。

「何度でもイけばいいだろう?」

「ぁ、あ…っ♥やめ、ぇ…ッ♥みな、ぃれ…っみな、で……えッ♥♥」

「どうして?」

「はずか、し…♥♥みちゃ、や…ぁッ♥♥」

「お前は可愛いよ。もっと見せてくれ」

「やら、ぁッ♥♥やらぁ…ッ♥♥♥」

ふるふるとなんとか首を横に振り、懇願するように訴える。
だが、それで聞き入れてくれるほど優しい男ではない。
むしろ、そんなアルカディアの反応を見て楽しんでいるようですらあった。
アルカディアは羞恥心に苛まれながら、それでも抗えずに何度も体は絶頂を迎える。

「ひあ゛、ゃら、や゛…♥♥い、く…いぐ、い、〜〜〜ッ♥♥♥ 」

──イきたくない。イくのが止まらない。苦しい。気持ち良い。恥ずかしい。辛い。幸せ。好き。愛してる。
そんな感情が入り交じり、アルカディアの中でぐるぐると回る。
そんなアルカディアの姿を、クラウディオは愉しげに眺めていた。

「は…ッ♥は…ッ♥はぁ……ッ♥は……ッ♥」

やがてようやく絶頂の波が収まり、アルカディアは肩で息をしながら額をクラウディオの肩口に押し付け呼吸を整えていた。
全身が酷く熱い。汗もかいて、髪が肌に張り付いて鬱陶しかった。
クラウディオは煙草を灰皿に押し付け火を消すと、指先でアルカディアの首元を擽った。
びく、と体が震える。
体はすっかり力が抜けていて、抵抗なんてできそうになかった。

「ん…ぅっ♥」

「ほら、まだ終わりじゃないぞ?頑張れるだろう」

「やだ…やらぁ……」

「大丈夫だ。私はここに居る。ほら、目を開けて私を見ろ」

「やら、ぁ♥」

嫌々と駄々っ子のように首を振ると、クラウディオは小さく笑って先程と同じように顎を掴み、強引に顔を上げさせた。

「ぁ、ぁう……♥」

涙で潤んだ視界に映るのは、美しい恋人の姿。
​​──かっこいい。綺麗。大好き。

「あ、ぁ……♥」

見つめられるだけで達してしまいそうなほどの快楽が押し寄せてくる。
駄目だ。これ以上は本当に無理。
頭では分かっているのに、体は言うことを聞かない。

「あ……♥あ…ぅ♥」

​​──かっこいい。かっこいい。どうしよう。どうしよう。
魔力がどくんどくんと脈打って流れていく感覚。

「く…ら、ぃお……♥」

「うん?」

「す、き…♥すき……♥だい、すき……♥」

ぽろりと口から零れた言葉は無意識だった。
けれど、一度溢れ出した想いは止まることを知らない。

「すき…くら、ぃお…♥」

きゅ、と弱々しくクラウディオのシャツを握る。
クラウディオは何度も愛の言葉を囁く目の前の可愛い子に、優しく甘く微笑んだ。
その表情を見たアルカディアの目には、きっとハートマークが浮かんでいたことだろう。

「ああ、知ってる」

「ん、ん…♥」

ゆっくりと唇を重ねられ、舌を絡め取られる。
──甘い。美味しい。嬉しい。気持ちいい。
ちゅ、ちゅ、と何度か軽くキスをしたかと思うと、今度は深く口付けられた。

「んむ、ん…♥ん、ふ…♥」

「ふ……ッ」

歯列をなぞり、上顎を舐められ、ぞくぞくとした快感が背筋を走る。
そしてそのまま舌を吸われれば、それだけでまたイってしまいそうになった。
──だめ、もう、いく

「ふ…う、ぅ〜〜〜〜〜ッ♥♥♥♥♥」

ビクン!と身体が大きく跳ね上がり、再び絶頂を迎えた。
イキすぎて辛いはずなのに、体は貪欲に快楽を求めてしまう。
びくびくと震える体をゆっくりと押し倒され、ゆるりと腰を動かされた。

「あ、あ…っ♥あぅ…♥あ、あ…っ♥」

「ん……っ」

「あ、っ♥ぅ…っ♥ん、あ…あ…っ♥」

「っ……は」

ゆっくりと最奥をとんとんと突かれるだけで、とてつもない快感がアルカディアの体を襲う。

「ぅ…♥」

ぞわぞわとせり上がってくる何かを感じ取り、アルカディアはふるっと身を震わせた。

「ぁ、ぁ、え?♥や、ぁ…っ♥」

「何だ?」

「や、やらぁ…っ♥そぇ、やぁ…っ♥」

「何が嫌なんだ?」

「やら、やらぁ……っ♥」

首を横に振って必死に抵抗するも、聞き入れてもらえない。
奥の一点を目掛けて何度も何度も執拗に突き上げられ、アルカディアの体はがくがくと震えた。
激しく突かれている訳でもないのに、ただそこに触れられているだけなのに、頭がおかしくなりそうな程の強烈な絶頂に襲われる。

「ぁ、あ…♥ゃ、やら…ッ♥あ゛ッ♥あ゛ッ♥ま、って♥♥」

「く…ッ」

「ひッ♥♥♥…ぐッ♥♥♥」

快感が強すぎて、アルカディアの頭は混乱していた。とん、とん、と一定のリズムで奥を叩かれているだけなのに、どうしてこんなにも気持ちが良いのか。
気持ち良すぎるのが怖くて、アルカディアはぼろぼろと涙を流しながらいやいやと首を振り続けた。
だが、そんなアルカディアを見ても、クラウディオは動きを止めようとしない。

「ぁ、あ…♥ゃ、ら…♥あ ♥♥」

「は……っ」

「ひ……ッ♥♥♥」

ぐぷぐぷと音を立てながら抜き差しを繰り返され、やがてアルカディアの体は面白いくらいに痙攣した。

「あ、ぁう゛…ッ♥♥♥ぁ、お゛っ!!?♥♥ぉ、お゛…ッう゛ぅ…っ!?♥♥♥」

がくがくがくッと今までに無いほどに体が震え、視界がチカチカと点滅する。
跳ね上がるアルカディアの体を押さえつけて、クラウディオは変わらずその一点を目掛けて腰を突き込む。
呼吸すらままならず、アルカディアは目を剥いて悶絶し、獣のような声を上げた。

「ぁ、ぇ…?♥♥……っ?♥ぁ、っ?♥♥ぉッ♥♥あッ♥うぅあッ♥ん、ぇ、ぇ゛ッ♥♥は、ひゅッ♥ひッ、い゛っ♥うぁぁっ♥♥はひ、ひぅ♥♥♥あ゛ぅっ♥♥♥ん、ぁ…い、ぐ♥♥♥ぁ、♥♥♥あ、〜〜〜〜っ♥♥♥♥」

訳が分からないままアルカディアは何度もケツイキをさせられていた。
あまりに強い快楽に意識が飛びそうになるが、それでも容赦無く叩き込まれる暴力的なまでの快感によって無理矢理引き戻される。

「も、やめ、へ…ッ♥いれ、ちゃ、や、ぁ…ッ♥♥ぁッ、やめ、抜い゛ッ…ぃああッ!!?♥♥♥ぁッ、お゛ッ♥♥やめ゛、ぇ゛ッ♥♥♥い゛、きた、くな゛♥♥ひあ゛、ゃら♥♥や゛、いぐ、いく、〜〜〜ッ♥♥♥ 」

イッてもイッても終わらない絶頂地獄。
イけばイク程感度が増していき、もう自分が何を言っているのかさえ分からなかった。

「…アルカディア」

アルカディアに聞こえるように耳元でその名前を呼んでやる。すると、それさえも気持ち良いのか、彼はぶるりと体を震わせてまた達してしまったようだった。

「ふ、ぅ♥ふー…っ♥ふ、ぁ……ッ♥」

「…どうして欲しい」

こちゅこちゅと緩慢な動作で中を掻き回しながらそう問えば、アルカディアは虚ろな瞳でぼんやりと宙を見つめたまま口を開いた。

「ひゅー…ッ♥♥ひゅー…ッ♥♥ぁ、う?♥♥ひっ♥♥は、ぁ、んぇ…?♥♥」

「聞こえないか?」

「ん、ぁ…あ…♥ふぁ、ぅ…っ♥♥」

「ん?」

「ぅ…っ♥あ…ッ♥あぅ、う…っ♥」

「……」

──可愛い。
快楽で理性を失いながらも必死になって何かを伝えようとする姿はとても愛らしく思えた。
だが、生憎と今のクラウディオには言葉を理解する余裕がない。

「ほら、どうして欲しいかちゃんと言え」

「ぁ♥♥ぅあ♥♥あ♥♥ひぁ♥♥♥」

もはやアルカディアはまともに喋ることさえできない。しかし、言わなければ終わらないことだけは理解できた。

「ひ、ぎゅ、ぁゔぅ♥え゛ぅ、ぁ♥
♥♥」

「言えたら望み通り、滅茶苦茶にしてやる」

「あ゛​​──っ♥♥♥あ゛、あ゛ぁう゛ッ♥♥う゛、んん゛ッ♥♥」

耳元で囁かれた言葉に、ぞくりと肌が粟立つ。
ほしい。めちゃくちゃにしてほしい。もっと、気持ちよくなりたい。
奥まで突かれて、結腸口をこじ開けられて、中をかき混ぜられて、奥まで注いでもらって──。
頭の中がどろりと溶けていく。
理性など既に欠片も残っていなかった。

「おね…ぁ…♥せ、えき…♥ほし……ッ♥♥」

「どこに?」

「お、ぇ…の……なか、ぁ♥おく…い、ぱ…ぃ……ッ♥」

「…孕みたいのか」

こくこくと何度も首を振る。
早く欲しい。中に出して欲しい。いっぱい、たくさん。
今までに無いほどに乱れ狂ったアルカディアを見て、クラウディオは小さく笑みを浮かべた。
そして、ゆっくりと腰を引いていく。
抜けてしまうギリギリのところで動きを止めれば、アルカディアは切なげに息を漏らした。
そんなアルカディアの頬を撫でながら、クラウディオは言う。

「なら、私をその気にさせてみろ」

「ぁ…う、ぇ?んぅ…っ♥」

「どうした?出来ないのか?」

「ぅ、うぅ……っ♥う、うぅう……っ♥」

そんなの無理だ。出来るはずが無い。
だが、この状態で放置されるのはもっと辛い。どうにかして彼の気を引こうとアルカディアは動かない頭を必死に働かせた。
どうすればいいだろう。
どうすれば動いてくれるだろうか。
やがてのろのろと両手を伸ばしてクラウディオの首に腕を回すと、そのまま抱きついた。ぐっと彼の顔を引き寄せ、その耳元で口を開く。
​​──ちょうだい、くらでぃお
吐息混じりにとびきり甘い声でそう呟けば、次の瞬間、勢い良く最奥を突き上げられていた。

「──ッ!?♥♥♥ぉ♥♥ぅ、う゛、〜〜〜〜〜っ♥♥♥」

視界が真っ白に染まる。一瞬呼吸が止まった。
声にならない悲鳴を上げながら、アルカディアはがくがくと体を痙攣させた。

「は……ッ」

「あ゛──……っ♥♥♥」

びゅるるるるるるるるッ!どぷっ!ごぽっ!!♥♥

熱いものが胎内を満たしていく感覚。待ち望んでいたものを与えられ、アルカディアは幸福感に包まれていた。
頭がおかしくなる程の快感。全身が蕩けてしまいそうなくらい気持ちが良い。
ぎゅうとクラウディオの首にしがみついて、無意識のうちに自ら腰を押し付ける。

「あ、ぁ…♥あぅ……ぅ♥♥」

絶頂から降りてくることが出来ずにいるアルカディアを見下ろし、クラウディオは満足げな表情を浮かべるとゆっくりと己を引き抜いた。

「ぁ……ッ♥」

ずるりと引き抜かれていく感覚にさえ感じ入ってしまう。完全に抜かれると同時に栓を失ったそこからは大量の精液が流れ出した。
くたりと力無く横たわるアルカディアを眺めつつ、視線を下に向ければ、そこには散々蹂躙された穴があった。
赤く腫れた縁からは、未だ収まりきらなかった分が大量に溢れ出している。

「……アルカディア」

「……っ♥♥」

びくびくと体を痙攣させているアルカディアは意識を飛ばしたようで、呼びかけても反応は無かった。
仕方ないなと思いつつも、その姿はなかなかにそそるものがある。もう一度犯してやりたい衝動を抑えて、とりあえずは体を綺麗にしてやろうとタオルを手に取り、汗で張り付いた前髪を払い除ける。

「ん…ぁ……♥」

ぴくりと体を震わせて、アルカディアは小さな喘ぎを漏らす。
それを聞き流しながら、クラウディオは優しく語りかけた。

「愛しているよ、私の可愛い子」

「……ん、ぅ……っ♥」

ふわりと微笑んで、クラウディオは眠りについた恋人の顔中にキスを落としていった。