So please




突然出かけて帰ってきたかと思ったら、アニキはテーブルにフルーツの山を並べだした。
メロンやパイナップル、イチゴなどカットフルーツが次々と袋の中から出てくる。

「どうしたの、それ」

「んー?美味しそうじゃない?」

確かに瑞々しいそれらは美味しそうだが、余りにも多すぎやしないか。
おそらくと言うか、確実に俺も食べさせられるだろうそれらを眺める。

「どんだけ買ったの」

思わず溜息が零れる。
アニキの奇行には、未だに慣れない。

「俺さ、最近、牛肉とかそんなに食ってないんだよね」

「へ?肉食いてーのアニキ?焼肉とか行く?」

脈絡もない言葉に、アニキが肉を食べたいのかと思って問えば、何故か溜息を返される。
いたって普通な返答をしたつもりだ。何が不満だと言うのか。
まぁ、アニキにとっては一般的な回答じゃ物足りないのかもしれないけれど。

「俺、今酒も飲んでないじゃん」

「知ってる。…何、さっきから」

アニキの欲しい言葉がわからない。というか、これでわかったら凄いと思う。
大量のフルーツに、肉食ってない、酒飲まない。どんなクイズだ。

「あーもー、ソウルくんは鈍いなー」

「それで分かったらすげぇよ」

どうして溜息を吐かれなければならない。むしろ溜息を吐きたいのはこっちだ。
そう思いながら目の前にあるフルーツの山からイチゴを摘まんで口へと入れた。

「だからねー、ソウル、フェラしてよ」

「……………はぁ!?」

予想の斜め上どころか、大気圏外の言葉に一瞬理解が遅れた。
ソファに座るアニキを見れば、満面の笑みを浮かべている。その顔から出たとんでもない言葉に動揺を通り越して、呆れるしかない。

「意味わかんないし…」

流石に頭を抱えざるを得ない。
確かに、これまでにアニキに対してそうした行為をしたことはない。というか、恥ずかしすぎて出来ない。

「なんかさ、牛肉食うと濃いドロドロしたのになって、酒飲むと苦さが増すんだって。で、フルーツ食べると薄まって苦味も減るんだってさ」

楽しそうに話すそれが何をさしているかなんて分かりたくない。が、分かってしまっている以上、何か返答しなければならないのだろうか。

「…飲め、ってこと?」

「え、飲まなくていいならやってくれんの?」

どんな思考回路から出た言葉だ、と言いたくなったが、そもそもアニキの頭の中を理解するなんて無理な気がする。
そりゃ、いつかはアニキにしてあげられたら、とか思ってはいたけれども、まさかこんなに準備万端な状況を創り出されるとは思わなかった。

「ば…ばかぁ」

一言返すので精一杯だ。きっと、顔は真っ赤になってるし、思わず俯いた。
クスクスと笑うアニキの声が聞こえて、ちらっと見てみれば、楽しそうにカットパインを食べていた。
どうやら、アニキがこのフルーツの山を食べるまでに覚悟を決めておかなければならないようだ。