god bless you

ひゅうひゅうと口からか細い息が漏れる。
こんなに痛くて苦しいのに、アルカディアは死ねなかった。
勿論自分は死にたくはない。けれど、死にたいと思ってしまうほど自分の体はぐちゃぐちゃだった。
魔力の治癒が追いつかない程体が損傷している。
普段のアルカディアなら、こんなヘマはしなかった。
だが今回はあまりにもタイミングが悪すぎた。

危険魔獣に襲われた時、よりにもよって発作が起きたのだ。ぐらりと意思に反して体が傾いたと思った時には、魔獣の爪が自分の腹を貫いていた。
そしてそのまま地面へと叩きつけられた。
ただでさえ少ない魔力が治癒のためにフル回転して、余計にアルカディアの体を蝕み、動くことすらままならない状態になってしまった。
自身に伸し掛る巨大な魔獣は、まるで餌でも見るかのように血走った目をこちらに向けている。
そしてゆっくりとその大きな口を開け、アルカディアの体に食らいついた。

「​​──っ!!」

声にならない悲鳴を上げる。
しかし、それは魔獣にとって何の意味も持たないただの音でしかなかった。
痛みに耐えながら、アルカディアはなんとかその腕を動かす。すると、自身の指先が何かに触れる。それを掴んで、力いっぱい振り抜いた。
掴んだのは運良く自身の刀だったらしく、魔獣の頭部に深く突き刺さった。そこから更にグリッと捻ると、魔獣から断末魔のような叫びが上がる。
魔獣は頭を潰されながらも暴れ回り、アルカディアの腕や足に噛みついてきた。
鋭い牙が肉を引き裂き、骨を砕く。あまりの激痛に意識を失いそうになるが、唇を強く噛むことで耐え、なんとか自身の銃を手繰り寄せてその頭部を吹き飛ばしてやった。それでも即死はしなかったのか、魔獣はしばらく痙攣した後漸く動かなくなった。
そこでようやく安堵したアルカディアだったが、すぐにまた別の気配を感じ取った。
もう一匹いたらしい。
先程の魔獣よりも小さいが、今の自分にはもう戦う術がないことには変わりない。
逃げようにも、既にアルカディアは全身ボロ雑巾のようにズタボロになっていた。

「もう…さい、あく…」

息を吐くだけでも体は軋むような音を鳴らす。この状態で逃げるなんて無理だ。
震える腕を叱咤して、なんとか上半身を起こそうとするも、上手くバランスが取れずにその場に倒れてしまった。
起き上がることも出来ずにいると、目の前に大きな影が現れる。
顔だけをなんとかそちらに向けてみると、そこには醜い顔をした魔獣がいた。
目は血走り、鼻は潰れ、口からはダラリと長い舌が出ている。口の端からは大量の唾液が垂れており、なんとも気持ち悪い姿だった。
魔獣はその長い舌をアルカディアの首筋に這わせてくる。
生温かく湿った感触に鳥肌が立ち、反射的に手で払い除けた。しかしその手を簡単に捕まえられてしまい、べろりと舐められてしまう。
嫌悪感に嘔吐してしまいそうだ。

「……ぅ」

思わず小さな悲鳴を上げた瞬間、突然腹部に強い衝撃を受けた。
魔獣の長い尻尾が自分の体に巻き付いてきたのだ。先程魔獣の爪に貫かれた体は、尾が触れただけで痛みを発する。それを分かっていてわざとやっているのか、それとも偶然なのか分からないが、とにかく最悪なことに変わりはない。
魔獣にそのままズルズルと引き摺られていき、近くの木に押し付けるようにして拘束される。
尾がアルカディアごと木に巻きついているため身動きが取れない。しかも、先程まで自分を襲っていた魔獣の血がベタリとくっつき、不快感が増していく。
何とか抜け出そうと体を動かせば、それに気づいた魔獣が尻尾に力を入れてきた。

「……ぁ、ぐっ!」

ミシミシという音が聞こえてきそうなほど強く、魔獣の尾がアルカディアの体を圧迫する。
あまりの苦しさに息が出来なくなり、必死に酸素を取り込もうとするが、呼吸をする度に傷が痛んで上手くいかない。
苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。
頭がおかしくなりそうだった。
視界がぼやけてきて、思考回路が働かなくなっていく。
血が流れすぎているのか力が入らず、腕を動かすことさえ出来ない。

「はっ…う、あ……」

掠れた声で小さく喘ぐしか出来なかった。
魔獣はそんなアルカディアの様子を見て楽しんでいるようだ。
ニタニタとした笑みを浮かべながら、何度も首元を舐められる。
荒い息遣いが耳障りで仕方がない。
ぐるりと木に巻きついていた尾の先端がアルカディアの顎の下へと移動して、そのままゆっくりと持ち上げる。
抵抗することも出来ず、されるがままに顔を持ち上げられたアルカディアの口内に、魔獣の太い指が突っ込まれた。
爪の生えたその指は、アルカディアの歯茎を引っ掻き上顎を押し上げる。

「ん、うっ!…ゃ、ぇ……っ!」

あまりの気持ち悪さと痛みに声を上げるが、魔獣は気にせず乱暴な愛撫を続ける。
やがて指を二本にして再び口に入れられる。一本でも苦しいのに二本目を入れられては堪らない。
なんとか押し返そうと舌で魔獣の指を退けようとするも、逆に絡め取られてしまう。
魔獣はそのまま指を動かすと、アルカディアの口からは飲み込みきれなかった唾液と血が大量に溢れ出た。

「ぅ、えっ……ぐ……っ」

吐き気が止まらず、アルカディアは魔獣の指を強く噛んだ。
しかし、魔獣はビクともしない。
むしろその行為が魔獣の加虐心を煽ってしまったらしく、更に激しく指を出し入れされた。
喉の奥にまで侵入してくる異物に吐き気が増す。

「ぅ、くっ、…か…ふ…っ」

苦しくて涙が滲む。
それでも魔獣はお構いなしに好き勝手弄ってきて、遂に限界を迎えたアルカディアの口内からずるりと魔獣の指が抜き取られた。

「……っ、げほっ、けほっ!」

勢いよく咳き込むと、同時に大量の血液が吐き出される。
その様子に魔獣は興奮したように舌なめずりした。
アルカディアの体は自身と魔獣の血によって真っ赤に染まっており、その光景がより一層魔獣を昂らせた。
魔獣は長い舌を口外に出すと、アルカディアの顔に向かって思い切り伸ばしてきた。
その舌はアルカディアの顔を汚す血を掬い取り、口の中へ運んでいく。
まるで味わうかのようなその行動に、アルカディアは背筋が凍るような感覚を覚えた。
──気持ち悪い。
その感情だけが脳内を支配する。
ボロボロの体では逃げることも出来ず、ただ魔獣に食べられるのを待つしかない。
魔獣は再び舌を伸ばした。
今度はアルカディアの顔ではなく、先程の魔獣に噛み付かれたその腕に。
べろりと傷口を舐められると、焼けるように痛む。

「…ぃ、たい……」

思わず呟いた言葉は、魔獣には届かない。
何度も舌を這わせては、また傷口を広げて血を吸い出していく。アルカディアを拘束していた尾が不意に緩み、そのまま地面に放り出された。
魔獣は力無く倒れ込むアルカディアの胸元を掴み、無理矢理体を起こさせる。
足にもう力が入らなくて、魔獣に掴まれていなければ今にも崩れ落ちてしまいそうだ。
アルカディアの喉からはか細い呼吸音しか聞こえない。もう意識もほとんど残っていないのか、虚ろな瞳はどこか遠くを見つめているようだった。
魔獣はそのアルカディアの口の中に自身の長い舌をねじ込んだ。
そのまま奥まで犯してやろうと無理に舌を進めてくる。
あまりの長さに息が出来なくなり、反射的に魔獣の肩を押し返すと、突然鋭い痛みが走った。
魔獣がアルカディアの腕に爪を立てたのだ。
痛みに体が仰け反り、無意識に悲鳴が上がる。
魔獣はそれを愉快そうに見下ろすと、そのままアルカディアの舌を絡め取って引っ張り出した。

「ん、ぅっ…ぁ……っ!」

引っ張られた反動でアルカディアの口からは唾液が零れ落ちる。
魔獣はそんなことを気にする素振りもなく、その長い舌でアルカディアの舌を巻き取るようにして扱き始めた。

「んっ、…ん、んっ……!」

舌を抜かれるのではないかと思うほどの激しさに、頭がクラクラする。
あまりの苦しさに、アルカディアの目尻からはポロリと涙が流れた。
全身の骨が砕けそうな程強く抱きしめられ、身動きが取れないまま魔獣の唾液を流し込まれる。

「ん、ぅ…ぐ…ぇ…っ」

魔獣の唾液は人間のものとは違い、生温かくドロッとしていた。
飲み込みたくないのに強制的に飲まされ、喉の奥へと流し込まれていく。

「う、ぇ…っ、……けほ……っ」

やっと解放されたと思った矢先、再び魔獣の長い舌が口内に入ってきた。
何度も何度も執拗に絡ませられ、吸われ、甘噛みされる。
魔獣は満足するまでアルカディアの口内を蹂躙すると、ようやく舌を引き抜いた。
アルカディアは魔獣の唾液でベタついた口周りを拭うことすら出来ず、ぐったりとしたまま動かない。
その様子に魔獣は小さく笑みを浮かべた。

「…あ、……う…っ」

小さく喘ぎながら必死に酸素を取り込もうとしているアルカディアの姿を見て、魔獣は目を細める。
そして、アルカディアの首筋に顔を埋めたかと思えば、そのまま牙を突き立てた。
首から流れる血を舐めとるかのように舌を這わせる。

「っ、…ゃ、だ……」

弱々しい声で拒絶するも、魔獣はお構いなしに血を飲んでいく。強く抱き締められているその体は、小刻みに痙攣していた。

「ぅ…く……っ」

不意に魔獣はアルカディアの首元から口を離して、体を解放した。支えを失ったアルカディアはそのまま地面へ崩れ落ちる。

「は…っ、は……っ」

なんとか空気を取り込み、少しだけ楽になったところで、もうほとんど動かない手足をなんとか動かして這いずりながら移動する。
少しだけでいい、手が届きさえすれば​​──。

「は、ぁっ…はっ……」

背後から聞こえる荒い息遣いが近づいてくる。
アルカディアの動きに合わせて、ゆっくりと距離を詰めて来ているのが分かる。
魔獣はアルカディアのすぐ後ろまで来ている。
​​──急げ、あともう少し。

「……っ!」

腕を伸ばし、なんとか銃を掴む。
それと同時に、魔獣の手がアルカディアの足首を掴んだ。

「……!」

振り返ると、そこには興奮した様子の魔獣の姿があった。
その瞳は血走り、口からは唾液が絶えず垂れている。

「…ッ」

ぐいっと力強く引かれた時、アルカディアは体を捻って銃口を向けていた。
引き金を引くと同時に、耳をつんざくような轟音が鳴り響く。
弾は見事に命中したが、魔獣は怯むことなくアルカディアの足を掴み尚も引き寄せようとする。
今度は狙いを変えて、アルカディアの足首を掴む手に向かって発砲した。
魔獣の指が吹っ飛び、血飛沫が上がる。
その隙にアルカディアは魔獣の腕を蹴り上げ、転がりながら距離を取った。

「……っ、は……」

血を失いすぎたせいか視界が霞む。
魔獣は低く喉を鳴らして威嚇してきた。どうやら完全に怒らせてしまったらしい。
しかし、今のアルカディアにはそれに対抗する術がない。

「……っ」

立つことが出来ず、座り込んでしまう。銃を杖がわりにするも、足が震えてまともに立てない。
どうにか逃げ道を模索するが、背中を向けた瞬間、後ろから襲われるのは目に見えて明らかだった。
アルカディアの体力的にも時間の問題だろう。
魔獣は轟音のような唸り声を上げながら、一歩ずつ近付いて来る。
──もう駄目かもしれない。
そう思った直後、魔獣はピタリと動きを止めた。

「……?」

先程までの怒り狂った様子が嘘のように、魔獣はがたがたと震え始めた。何が起きたのか分からずに困惑していると、魔獣の視線がアルカディアの背後に向けられていることに気づく。

「……っ!」

慌てて振り向くと、そこには一匹のディスクーシャが居た。
ゆらりと10本の尾を揺らしながら静かに座っている。ふわふわとした長い毛は、まるで炎のようだ。
閉じていた額の目が開くと、魔獣は怯えたように後ずさる。
ディスクーシャはそっとアルカディアの前に立った。
そして、アルカディアを守るようにして魔獣を見据える。

「………」

アルカディアは痛みも何もかもを忘れて目を奪われていた。
その美しさに見惚れてしまっていたのだ。
魔獣はしばらくディスクーシャと睨み合っていたが、やがて逃げるようにしてその場を去っていった。

「……ぁ、……」

アルカディアは力無く地面に倒れ込む。
魔獣が去ったことで緊張の糸が切れたのだろうか。

「……」

目の前にいるディスクーシャは何も言わず、ただ黙ってアルカディアの傍に寄り添ってくれていた。

「あ…りがとう……」

掠れた声で礼を言うと、ディスクーシャはくるると喉を鳴らして応えてくれた。
そして、アルカディアの頬に顔を擦り寄せてくる。
──暖かい。
​​──懐かしい。
​​──初めて会った気がしなかった。

「(ルカが生きてたら、これくらい…大きくなってたのかな…)」

ふわりとたくさんの尻尾が自身の体に巻きついてくる。アルカディアの体を少し浮かせると、数本の尻尾が体の下に滑り込んできた。
まるでふわふわのベッドの上に寝転んでいるかのような心地良さに思わず笑ってしまう。

「……あったかい」

ディスクーシャの舌がアルカディアの乱れた髪を整えてくれる。
これはディスクーシャが家族や仲間にだけする仕草だったはず。
不思議と痛みを感じなくなっていて、アルカディアが小さく息をついた時。

「…アルカディア!」

聞き慣れた声が耳に届いた。
ぼんやりと頭を擡げ、声の主を探す。

「大丈夫か!?」

「…くら…でぃお…?」

現れたのはクラウディオだった。背後にもう一匹、ディスクーシャが見えた。
きっとあの子がクラウディオを連れてきてくれたのだろう。

「……っ」

安心した途端、再び激しい頭痛に襲われる。
頭を押さえながら起き上がろうとするが、上手く体が動かなかった。

「動くな、じっとしてろ」

「……うん……」

クラウディオの息は乱れていて、表情にも余裕がないように見える。他人事のように、珍しいなと思った。

「このこが、助け、て…くれた…」

「ああ…」

血まみれのアルカディアを見て、クラウディオは苦虫を噛み潰したような顔になる。
アルカディアがここまでヘマを打つことなどない。だから尚更、心配だった。

「…なにがあった?」

「まじゅう…おそ、われたとき…に…ほっさ、おき、た…」

「…なるほど。よく頑張った。もう大丈夫だ」

「ん……ありが、と……う……」

優しく髪を撫でられ、その大きな手に安堵する。
ディスクーシャの尻尾に包まれているのが暖かくて、とてつもなく眠かった。
これが単に安心したからなのか、死ぬ直前だからなのかは分からない。

「傷、見せろ。仰向けにするぞ」

クラウディオのその言葉に、はっとして慌てて首を横に振る。

「だ、め…」

「何故」

今の自分を、クラウディオには見せられない。こんな姿を見たら、彼はきっとまた悲しい顔をしてしまう。
顔も腕も足も血まみれで、腹部なんて見てられないほどぐちゃぐちゃだ。

「いま、だめ」

「断る」

「なん、でも…いうこと、きくから」

「お前の頼みなら聞いてやりたいが、今回は無理だ。大人しくしろ」

アルカディアはそれでも首を横に振る。
ディスクーシャの尻尾にもたれ掛かるようにうつ伏せで寝ているため、仰向けにさえならなければバレないだろうと思っていた。
あとで尻尾を洗ってあげないと、なんて呑気なことを考える。

「……アルカディア」

「やっ、やだっ!」

強く拒否すると、クラウディオは悲しげに眉を下げた。
アルカディアは罪悪感を覚えるが、ここで折れるわけにはいかない。

「何故そこまで拒む?」

「み…な…ぃで…」

「………」

「…ぐちゃ…ぐちゃ…で、きたな、い…から……」

自分で言っていて泣きそうになった。
本当はもっと綺麗な姿で会いたかった。
彼に相応しい自分でありたかった。

「ごめ…」

小さく呟くと、クラウディオの手が頬に触れた。そして、そのまま顔を上に向けさせられる。
涙が溜まった目尻にキスをされ、アルカディアは目を丸くして固まった。

「お前は私にとって、一番大切な存在なんだ。どんな姿であろうと関係ない。私はお前を愛してる」

「……ぁ、……」

「……頼む。見せてくれ」

そう言われてしまえば、断れなかった。
アルカディアは観念し、ゆっくりと体の向きを変える。

「……っ」

クラウディオは息を飲んだ。
想像以上に酷い状態だったからだ。
服はボロボロで、血は止まっているものの、肌が見えないくらいに赤く染まっている。
腕も足も骨が見えそうなくらい肉が削がれており、特に腹部は内臓が見えそうなほどだった。
アルカディアでなければ、確実に死んでいただろう。

「……すまない」

「…?…くら…でぃ、お……?」

「私が、もう少し早く来ていればよかった」

「……ぇ…?」

「お前を、守ってやることができなかった……」

震える声でそう言うと、アルカディアの頭を優しく撫でた。まるでアルカディアがどこかに行ってしまうことを恐れるかのように。
アルカディアはそんな彼を見つめながら、そっと口を開く。

「だいじょ、ぶ…だよ……」

「……」

「だって…くら…でぃお…、きて……くれ、た………」

掠れた声でそう言いながら、アルカディアは微笑みを浮かべた。
そして、クラウディオの頬に手を伸ばす。
その手は弱々しく、今にも消えてしまいそうだ。

「ね…お願、い…きいて……くれる…?」

「ああ」

「…だっこ、して…ほしい…」

「いくらでもしてやる」

「ぎゅぅ…て、して…ほし、い……」

「ああ」

その願いを聞き入れ、クラウディオはアルカディアを抱きしめた。
彼の体温を感じる。心臓の音を聞く。その鼓動が、生きていることを実感させてくれた。

──ああ、良かった。

まだ自分は生きていた。

──生きていて、よかった。

そう思うと同時に、強烈な睡魔に襲われる。
ふわりとディスクーシャの尻尾が二人の体を包み込んだ。

「おやすみ、アルカディア」

「…ん……」

「ゆっくり休め」

「うん……」

アルカディアの瞼がゆっくりと閉じられ、やがて穏やかな寝息が聞こえてくる。
それを確認したクラウディオはディスクーシャ達を見上げた。

「ありがとう、本当に助かった」

2匹のディスクーシャは嬉しそうに喉を鳴らして鳴いた。
この2匹が居なければ、アルカディアを見つけることは出来なかっただろう。
手を伸ばしてディスクーシャの顎を順番に撫でてやる。気持ち良さげに目を細める姿が可愛らしい。

「必ずまた礼に来る」

クラウディオの言葉に、ディスクーシャ達は嬉しそうに鳴いた。





​​──かわいいかわいい子。
わたしたちの愛するかわいい子。
愛しい片割れの子。
もう、ひとりじゃないのね。
もう、こわくないわね。
一目でも、会えてよかった。
愛しい子よ、どうかしあわせに。