Don’t cry anymore





鈍い音がして、内臓が圧迫される。咳き込みながら倒れ込むアルカディアの腹を、容赦なく蹴り上げた男は舌打ちした。

「あぁイライラすんなぁ」

男は、アルカディアを蹴り続けた。何度も、何度も。
そして今度は倒れたまま動かなくなった彼の背中を踏みつけた。

「おい、起きろ」

ぐったりとした様子で動かないアルカディアに苛立ちを覚えたのか、男は彼を無理やり起こすと壁に叩きつける。

「っ……う…」

痛みに耐えきれず声を上げると、男は満足そうに笑った。

「おー痛いか?そっかそっか、じゃあもっと痛くしてやるよ」

男は再びアルカディアを蹴り上げる。悲鳴を上げた彼を見て楽しげに笑うと、また足を振り下ろした。
その度に、血が飛び散る。
アルカディアはただ、それを受け入れるしかなかった。
男が飽きるまで、ひたすら耐え続けるしかないのだ。

​​​​──そうすれば、ルカに手出しはしないと言ったから。

この男はアルカディアが居る施設の職員だ。だが職員とは名ばかりで、実際は暴力を振るって憂さ晴らしをするだけのゴミのような存在だった。
彼はアルカディアより前にも何人もの子供を痛めつけてきたようで、アルカディアが運悪く目をつけられてしまった。それからずっと、こんな日々が続いている。
毎日のように殴られ蹴られを繰り返しているうちに、いつしか抵抗する気力すら失っていた。
それでも、死ぬわけにはいかない。
ここで死んでしまったら、あの子を守れない。

「…ぅ…」

アルカディアは壁際で小さく蹲って震えていた。身体中がズキズキと痛むし、口の中も切れて出血しているようだ。
大股で近付いてきた男はしゃがみこむと、アルカディアの髪を掴んで顔を上げさせた。

「何か言うことは?」

アルカディアは何も言えなかった。それが気に食わなかったのか、男の拳が振り上げられた。
咄嵯に身を引こうとしたが間に合わず、頬を思い切り殴りつけられる。
頭が揺れるような衝撃を受け、そのまま床に転がった。すると男はもう一度腕を振り上げ、再びアルカディアを叩きつける。

「俺様が聞いてんだろうが!答えろ!」

何度も、何度も。
頭や肩、胸などを無茶苦茶に殴ってくる。
視界がチカチカとして意識を失いそうになりながら、必死に声を絞り出した。

「ご、め……なさ……」

謝罪の言葉を口にしても許されず、また殴られる。
何も悪いことなんてしてない。
謝らなければならないことなんてない。
なのにどうして、自分が謝っているのか分からなかった。
ただ、怖かった。目の前にいる男ではなく、これから先どうなるのか分からない未来が恐ろしかった。
自分が失敗してしまったら、ルカが死んでしまうかもしれない可能性があることが何よりも恐ろしい。
だからどんな理不尽なことでも受け入れてしまうのだ。
本当は嫌だと叫びたいけれど、そんなことをしたらルカまで酷い目に遭ってしまうだろう。それだけは絶対に避けたかった。

「ご、め…なさ…い……」

アルカディアは掠れた声で繰り返す。
漸く男は手を止めた。荒い呼吸を繰り返す彼の顎を掴むと、無理矢理自分の方へと向けさせる。
そしてニヤリと笑って言った。

「お前みたいなゴミは生きてても意味ねぇんだよ」

それは、呪いの言葉。

「死ね」

その言葉を聞いた瞬間、アルカディアは息が出来なくなったような気がした。同時に全身の血の気が引き、心臓が激しく脈打つ。
ドクンドクンと音が聞こえそうなほど鼓動が大きくなっていき、やがて耳鳴りが始まった。
苦しい。息ができない。このままでは死んでしまう。
だが、この男の前では助けを求めることなど出来ない。助けてくれと言えばきっと面白がって殺される。
恐怖でパニックになっていく思考の中で、「死にたくない」という感情だけがはっきりとしていた。

「う、ぁ……っ」

かたかたと震え出すアルカディアを見て、男は愉快そうに笑う。

「おいおいどうした?大丈夫かぁ?苦しそうだなあ?死ぬかもしんねえぞぉ?まあ俺としてはどっちでもいいんだけどよぉ。死んだ方が楽になれるんじゃねえか?」

男が何を言っているのか理解できなかった。
アルカディアはもう限界だったのだ。いつの間にか過呼吸になっていて、上手く酸素を取り込めていない状態だった。
アルカディアは必死になって空気を求め、はくはくと口を動かし続けている。

「おーい?聞いてるかぁ?」

男が顔を覗き込んでくる。その瞳は真っ黒に染まっていて、光がなかった。まるでブラックホールのような闇が広がっているように見える。
怖い。死にたくない。誰か──

「たす……け、て……」

アルカディアは初めて心の底から救いを求めた。だが、その願いは叶わない。
何故ならここは、絶望しかない世界なのだから。



「────っ!!」

アルカディアは勢いよく飛び起きた。ぜえはあと肩を大きく上下させ、荒く息をする。
悪夢を見たのだ。いつも見る、過去の記憶。

「…は…っ…は…」

額から汗が流れていることに気づき、手で拭った。
自分の意思に反して、体が勝手に震える。アルカディアは両手を強く握り締めた。
──また、同じ夢を見てしまった。
あの頃の記憶を思い出したくなくて、忘れようと努力してきたはずなのに。
思い出してしまうということは、まだ心のどこかで囚われているということだろうか。

「…………」

枕元ですやすやと眠るルカを見て、少しだけ落ち着きを取り戻した。
ぎゅ、っとその小さな体を抱き寄せる。
するとルカが目を覚ました。小さく鳴きながらアルカディアの顔を舐めてくれる。

「ごめ、ん…」

アルカディアは呟いた。ルカは首を傾げながら鳴いている。
ぽろぽろと涙を流すアルカディアの頬に、ルカは優しく、慰めるように擦り寄ってきた。

「ぅにゃあ」

「ありがと……」

ルカのおかげで落ち着いてきたものの、未だ体は小刻みに震えていた。
怖い。今にも、あの頃の光景がフラッシュバックしそうになる。
​​──誰か、助けて欲しい。
そう思ったところで、無意識に頭の中に1人の男の姿が思い浮かんだ。
会ってまだ1年も経たないけれど、アルカディアに優しさと安心を与えてくれる人。
アルカディアはゆっくりと深呼吸をした。
そしてそろそろとベッドから降り、ドアへ向かって歩いていく。腕の中のルカは彼がこれから向かおうとしている場所を察知して、嬉しそうに鳴いた。

部屋を出ると、廊下は少し寒かった。
もう遅い時間だ。
寝ているかもしれない。起こしてしまうかも。こんな時間に迷惑だ。
様々な不安が押し寄せてくるけれど、それでも会いたいという気持ちの方が勝っていた。
アルカディアは早足で歩き始める。
目的の場所はすぐ隣にあった。
ドアを見上げて、大きく息を吸って吐く。そして控えめにノックした。
少しして、ゆっくりとドアが開かれる。

「……ウィスタリア?」

中から出てきたのはアッシュだ。
彼は驚いたようにアルカディアを見下ろしている。

「どうした?こんな時間に…」

「……」

何か言わなければと思うのだが言葉が出てこなかった。俯いて黙っていると、アッシュは静かに口を開く。

「寒いだろ、入れ」

「にゃあう」

アルカディアの代わりに返事をするかのようにルカが鳴き声を上げた。アッシュは小さく笑ってルカの頭を撫でる。

「ほら、早く入ってこい」

促されてアルカディアは恐る恐る部屋に踏み入れた。

「それで?どうしたんだ?」

ソファに座っているアルカディアの右隣にはルカが丸まっている。左隣に座っているアッシュは優しい声で尋ねた。
アルカディアは俯いたままおずおずと口を開く。

「…ぁ、の…」

「うん?」

「…ぃ、たい……」

「……痛い?」

アルカディアはこくりと小さく首を動かした。体が震える。また呼吸も荒くなってきた。
その様子を見て、アッシュは眉を寄せて心配そうな表情を浮かべる。

「どこが痛い?」

「かお、と…おなか、…あた、ま…も…」

「……他には?」

「うで…も…しんぞう、も……いたい……」

アルカディアは泣きそうな顔で訴えた。
アッシュの目には、彼にはどこにも傷がないように見える。だが、確かに苦しんでいるのだ。

「……っ……こわ、い……」

アルカディアは消え入りそうな声で言う。

「……何が怖い?」

アッシュはできるだけ穏やかな口調で問いかけた。
アルカディアは目で見てわかるほど、可哀想なくらいに震えていた。

「ぜんぶ、おれ、が…わる、い、って…」

「……」

「みんな、がっ、おこ、って…たた、かれる…」

「……ウィスタリア」

「あやま、て、も…やめて、くれな…くて」

アルカディアの脳裏に浮かんできたのは、あの日の光景だった。
自分を殴る男。向けられる冷たい視線。罵声を浴びせられ殴られ蹴られた痛み。嘲笑する笑い声。
『お前みたいなゴミは生きてても意味ねぇんだよ』
『死ね』
耳元で囁かれた呪いの言葉。
やがてアルカディアの瞳からは大粒の涙が流れ始めた。
ぽろぽろと零れ落ちていく。
それに気付いたルカがアルカディアの膝の上に乗り、慰めるように頬を舐めた。

「ず、っと…けら、れて…からだ、いた、い…よぉ……っ」

アルカディアはしゃくり上げながら訴える。
アッシュは何も言えなかった。
この小さな体に一体どれだけのものを背負って生きてきたのか。
自分と会う前は、どんな人生を送ってきたというのだ。

「…あやま、る……から……」

「…もういい」

「……ごめ、んなさい……っ……ごめん、なさ、いっ……」

アルカディアは必死になって謝った。だがその謝罪に価値などない。
何もしていない人間に罪はないのだ。
アルカディアは謝らなくてもいいのだ。

「ウィスタリア」

アルカディアは本格的に泣き出してしまった。
ルカが寄り添って、優しく舐めてくれる。その温もりが愛おしくて、アルカディアはルカを抱きしめながら泣きじゃくる。
アッシュはそんなアルカディアの背中をゆっくりとさすってやる。

「大丈夫、怖くない。ここに君を傷つけるものは無い」

「ぅぐ……ひっく……」

「君は悪くない」

アッシュは優しく言い聞かせた。するとアルカディアはふるふると首を横に振る。
悪いのは自分の方なのだと訴えているようだった。

「違う、君のせいじゃない」

「ひ、ぅ……」

「誰も、君を責めたりしない」

「え…ぅ…う…」

アルカディアは首を振っていた動きを止めた。そしてアッシュの顔をゆっくり見上げる。
涙で濡れている赤い瞳が揺れていた。
──ああ、綺麗だ。
アッシュは思った。
彼の心はとても純粋で美しい。
アッシュはふわりと微笑んで言った。

「君は生きていい」

その言葉にアルカディアは目を見開く。
今まで誰も、言ってくれなかった言葉をくれた。
──許された気がした。
アルカディアの瞳から再び大粒の涙が溢れ出す。
ルカを抱き締めたまま、無意識にアッシュの胸に飛び込んでいた。
アッシュはその体を受け止めて、ゆっくりと抱き寄せ頭を撫でてやる。

「……辛かっただろう。よく頑張ったな」

「ふ、…う、ぁ……っ」

「もう我慢しなくていいよ。ここには私しかいない」

アッシュの優しい言葉に、アルカディアの感情が爆発した。
大きな声で泣き叫ぶ。
アッシュはただひたすらに、アルカディアの背をさすってやった。
ルカもアルカディアの腕の中で心配そうに小さく鳴いている。
アルカディアはアッシュの胸に顔を埋めて泣き続けた。

ずっと誰かに助けて欲しかった。
でも、誰にも頼れなかった。
だからアルカディアは、泣くことすらできなかった。
悲しくて、寂しくて、痛くて、苦しくて。
やっと、楽になれた。
アッシュは黙ってアルカディアの体を支えてやっている。
ルカもアルカディアの傍から離れようとしなかった。
アルカディアはそのまましばらく泣き続けていた。



「………」

わんわん泣き続けたアルカディアは、いつの間にか泣き疲れてアッシュの胸にもたれかかって眠ってしまっていた。
アルカディアの腕の中から這い出したルカが、アッシュの顔を覗き込む。

「みゃあ」

「…ん?どうした?」

「うなぁ」

ルカはアッシュの頬をぺろりと舐める。それからアルカディアの肩に乗り、彼の頭に自分の頭を乗せた。
まるでアルカディアを守るように、ルカは丸くなる。
アッシュは目を細めてその様子を眺めていた。

「仲がいいな」

「んにゃう」

この子には何かあるだろうとは思っていた。だが、まさかここまでとは思わなかった。
こんな小さな子供が、一人で抱え込んできた苦しみの大きさに驚いた。
きっと想像を絶する地獄のような日々を過ごしてきたに違いない。
出会った日の、あの怯えたような目を思い出す。
ずっと、あんな目をして過ごしていたのだろうか。

「……」

眠るアルカディアの髪をそっと撫でた。
泣き腫らした瞼が少し痛々しい。だが穏やかな寝顔だった。
あんな精神状態で自分の部屋に来たということは、頼ってくれたということだろう。まだたどたどしいが、少しずつ信頼してくれているようだ。
ルカはアルカディアの頭を枕にして、同じように穏やかな表情を浮かべて眠っている。
この二つの小さな命が、少しでも救われればいいと思った。



「………」

アルカディアはぼんやりと天井を見つめていた。ここはどこだろう。
見覚えのない部屋の中。ふかふかのベッドの上。

「……?」

ふわりと頭に何かが触れていることに気が付いて、首を動かせばルカが枕の上に寝そべっていた。

「…ルカ」

「みゃう」

ルカは尻尾をぱたぱたと動かして返事をした。
ごろりと寝返りを打って、ルカの体に顔を埋める。ルカは嫌がらずに受け入れてくれた。そのままぎゅっと抱きしめる。

「…あったかい」

「なー」

「……」

泣いてしまいそうになった。
ここはどこだろう。
ここはとても温かい場所だ。
安心する。とても心地良い。

「……」

昨日のことを思い出そうとしたが、記憶が曖昧でよくわからなかった。
自分の部屋では無いことは確かだ。

「……起きたのか」

突然聞こえた低い声に、アルカディアはびくりと体を震わせた。慌てて振り返ると、そこにはアッシュがいた。

「…あ、しゅ…?」

「おはよう」

アッシュは優しく微笑んだ。
どうしてアッシュがいるのかわからない。
アルカディアは混乱していた。
だが彼を見てすぐに昨晩の自分の行動を思い出して、さあっと血の気が引いていく。

「あ、ごめ、なさ…おれ、きのう…っ」

「謝らなくていい」

「……え……?」

「謝らなくていいと言った」

アッシュはゆっくりとした口調で言う。
その瞳は真っ直ぐにアルカディアを見据えている。
アルカディアは戸惑った。なぜ怒らないのだろう。
アッシュはゆっくりと歩み寄ってくると、ベッドの端に腰掛けた。

「……っ」

その重みでベッドが軋む。
アッシュがすぐ隣にいることに緊張してしまう。

「……」

「……」

お互い何も言わずに沈黙が流れる。
アッシュはゆっくりと口を開いた。

「ウィスタリア」

「っ…」

アッシュに名前を呼ばれて、アルカディアは思わずビクリと震えてしまった。
アッシュは気にせずに続ける。

「私は君に謝罪を要求するつもりはない」

「……」

「君は悪くない」

「で、でも…」

「君はただ、ルカと生きることだけを考えていればいい」

「……っ」

アルカディアは息を呑んで目を大きく開いた。
アッシュの言葉はあまりにも優しすぎて、胸の奥底に染み込んでいくようで。
じわりとアルカディアの赤い瞳に涙が滲んでくる。
アッシュはアルカディアの頭を撫でた。

「落ち着いたらおいで」

そう言ってアッシュは立ち上がって、そのままリビングへと行ってしまった。
残されたアルカディアは再びルカに抱きつく。

「ルカ……」

「にゃあ」

アルカディアはルカを強く抱き締めて泣いた。ルカはアルカディアの頭に擦り寄って慰めてくれる。
生きていてもいいのだろうか。許されるのだろうか。
あの人を信じてもいいのだろうか。
──ああ、そうだ。
自分は今まで一度も、誰かを信じたことなんてなかった。
初めて信じることができた。
それが嬉しくて、幸せで、アルカディアは静かに涙を流し続けた。



しばらくして、寝室からそろそろと出てきたアルカディアは、ソファーに座っていたアッシュの元まで行くと、彼の足下にぺたりと座り込んだ。

「あの、あり、がとう」

「……ふっ」

アッシュは目を細めて笑みを浮かべると、アルカディアの頭に手を置いてわしゃわしゃと髪をかき混ぜるように撫でた。
アルカディアは驚いてアッシュの顔を見上げる。

「そんなところに座らないでソファーに座ればいい」

「う、ん…」

「朝ご飯食べようか、何が食べたい」

「へ…何、って…」

「なんでもいいぞ」

アッシュは優しい笑顔を浮かべたまま言う。
だが、いきなり言われても思いつかない。
おろおろと慌て始めるアルカディアに、アッシュは苦笑いを浮かべた。

「じゃあ、パンケーキでも焼こうか」

「…ぱんけーき…」

「食べたことがないか?」

「ない…」

「そうか。美味しいよ」

「……」

「一緒に作ろう」

「…ん」

アルカディアはアッシュの誘いにおずおずと小さく返事をして立ち上がった。
アッシュの隣に立って、二人でキッチンへと向かう。
ルカもその後を追ってきた。

「にゃあ」

「ルカは大人しく待っていてくれ」

「なぁー」

不服そうな声を上げて抗議するルカに、アッシュは笑いながら冷蔵庫の中から卵や牛乳を取り出す。
アルカディアはどうすればいいかわからずに、その場に立ち尽くしていた。

「まずは、このボウルの中に卵を入れてくれ」

「こ、これ…?」

「ああ、割ってくれるか?」

「う、うん……」

アルカディアはアッシュの指示通りに、言われたとおりに行動していく。
だが、初めてのことで上手くいかない。
殻が入ったり、黄身が崩れて白身に混ざったりと失敗続きだ。
それでも、アッシュは何も言わずに見守ってくれていた。

「で、できた……」

「上手に割れたな」

「……!」

褒められて、アルカディアは驚いたように目を丸くする。
それから少し照れたような表情を浮かべた。

「ぁの…」

「うん?」

アッシュは優しく微笑んでくれる。
その瞳には慈愛の色が浮かんでいて、アルカディアはまた泣きそうになった。

「…たのしい」

「それは良かった」

「ここ、きてから、いろんなもの、たべた。はじめてのこと、ばっかり…」

「……そうか」

「…ありがとう」

「……こちらこそ」

アッシュは優しく微笑んだまま言った。
アルカディアはその言葉の意味がわからなかったが、なんだか心が温かくなって自然と頬が緩む。
ルカは二人の様子を見て、満足げに鳴いた。