枕に上体をもたれさせながらベッドに寝そべるクラウディオの体の上で、アルカディアはすやすやと昼寝をしていた。
随分と気を抜いているらしく、頭からは耳が生えているし、尾てい骨の辺りから生えた2本の尻尾がぱたぱたと一定間隔で縦に揺れている。
その頭を撫でると、ぴくぴくと耳が動くのが可愛い。
自身が魔人族だということに漸く慣れてきたのか、クラウディオと共に過ごす時は耳や尻尾を出してくれるようになった。
やがてもぞりと動き、ゆっくり目を開けたアルカディアを見て、クラウディオはふっと笑みを浮かべる。
「起きた?」
「……ん…」
まだ少し寝惚けているらしい。
舌足らずな口調で返事をして、ぼんやりしているアルカディアの耳をマッサージするかのように揉んでやると、気持ち良さそうに目を細めた。
もっとやって欲しそうに頭を傾けてくる姿はとても可愛くて、愛おしい。
前から猫みたいだとは思っていたが、今のアルカディアは最早完全に猫だ(事実、猫のようなものなのだが)。
耳から手を滑らせ、頬に触れる。
そのまま顎の下を指先で掻いてやれば、ごろごろと喉を鳴らして上を向く。どうやらここが好きらしい。
「んぅ…」
うっとりと息を吐いて気持ちよさそうに全身を預けてくるのが可愛くて仕方がない。ごろりとクラウディオに頭を擦り付けながら甘えてきて、そんなアルカディアの姿を見ると胸の奥がきゅっとなるのだ。
「可愛いなお前は」
「んん〜…」
すりすりと胸に顔を埋めてくる姿がまた可愛くて、思わずぎゅーっと抱きしめてしまう。
苦しいはずなのに嬉しそうな顔をして抱き締め返してくるものだから、もう本当に堪らない。
「あとでヨーグルトのおやつ、つくって」
「ああ、いいよ」
了承すればアルカディアは嬉しそうに笑ってクラウディオの胸に頬ずりをしてくる。
その姿がどうしようもなくグッと来てしまって、クラウディオは自身の体の上でご機嫌に揺れていた尻尾を掴み、毛並みに沿って優しく撫で上げる。
すると、びくん!と体が跳ねた。
「あ…ッ」
甘い声を上げたかと思うと、恥ずかしそうに身を捩らせる。
「ぁ……ん…」
アルカディアはふるふると首を横に振るが、その表情には快楽の色が見え隠れしていて。
尻尾の付け根をぐりぐりと押して刺激を与えてやると、あっという間に力が抜けてしまったようで、再び胸に体重を預けてきた。
腰だけを上げて頭をクラウディオの胸に押し付けるようにしながら荒い呼吸を繰り返す様はまるで発情した雌猫のようだ。
「んぅ…ぇ?」
突然ゆっくり上体を起こしたクラウディオに、アルカディアは目を瞬かせる。そのままクラウディオは胡座をかいて座り、膝の上にアルカディアをうつ伏せに寝かせた。
優しく頭を撫でてやると、アルカディアはクラウディオの太ももに頭を乗せ、心地好さそうに目を閉じる。
ごろごろと喉を鳴らす音が聞こえてくる。
しばらく撫でていると心地よく眠気が襲ってきたのか、ゆっくりとアルカディアの瞼が落ちていく。
「……ん〜」
このまままた寝てしまいそうだ。しかしまだ昼過ぎだし、せっかく休みなのだから一緒に過ごしたい気持ちもある。
それに何より、こんなにも無防備な恋人を放っておくなんてこと出来るわけがなかった。
「……」
暫く考えた後、クラウディオはおもむろに尻尾を掴む。
そして掴んだまま軽く引っ張った。
「ひゃ!?」
突然尻尾を引っ張られたことに驚いたのか、アルカディアが悲鳴を上げる。
その反応に気をよくしたクラウディオはそのまま尻尾を掴んだ手を動かし始めた。
根元から先端までを丁寧に撫で上げ、時折強く握ったり緩く握り直したりを繰り返しているうちに、アルカディアの口から熱い吐息が漏れ始める。
「ふ、ぅ…ん、ん……」
ぴくっぴくっと肩が小さく震えている。尻尾がピンと伸びていて、その下の尻も小さく揺れていた。
「あ…っ!」
不意打ちのように付け根を強く握られ、アルカディアは高い声で喘いだ。
それから何度か同じことを繰り返される度に身体中が敏感になっていき、その感覚が段々と快楽へと変わっていく。
「ん、んん…っ、ぅ、う……」
いつの間にかアルカディアの口の端からは唾液が伝っていて、それがぽたりとシーツに落ちる。
びくんっと体が跳ねると同時に、アルカディアの両足も上に向かってぴんっと伸びた。
「しっぽ、だめ…」
弱々しく拒絶の言葉を口にするが、その声音は酷く甘く蕩けている。
尻尾を弄られるのが余程気持ちいいのか、無意識のうちにもっと触って欲しいとばかりに自ら尻尾を差し出すようにしているのが可愛らしい。
「ぁ、ん…ん……」
アルカディアは目を閉じ、与えられる快感に身を委ねていた。
ふわふわとした微睡みの中で感じるそれはあまりにも甘美なもので、抗うことなど出来ない。
「ぁ、ふぁ、あ…ッ」
付け根を擦る指の動きが速くなるにつれ、徐々に絶頂が近づいてくる。
アルカディアは身を捩らせながら悶えた。
「ぁ、あ…ッ!ん、んん…〜〜〜ッ!」
やがて全身を震わせながら達すると、アルカディアはぐったりと脱力する。
頭がぼうっとするらしく、惚けた表情をしている。
そんな姿を見ながら、今度は尻尾ではなく耳を優しく撫で始めた。
「ん…んぅ…」
耳の内側を指先でなぞり、優しく揉んでいく。
「は、ぅ……」
耳も弱いらしい。先程の尻尾への愛撫も相まって、すぐに気持ち良さそうな声を上げ始めた。
ぴこぴこ動く耳が可愛くて、耳の穴に人差し指を入れ、そのまま奥の方へ滑らせる。
「ん、ん……っ♡」
ぞくぞくするのだろう。
背中が反り、甘い声が上がる。
耳の裏から付け根にかけてを親指と人差し指で挟むようにして擦り上げると、またアルカディアは体をびくんっと跳ねさせた。
「や、それぇ…」
どうやらこれも好きらしい。
何度もそこを擦ってやれば、アルカディアは甘えるような声を出しながら腰を揺らす。
「ん、ん…ん…っ」
アルカディアは目を閉じたまま夢中で腰を振り続けている。
そんな姿がどうしようもなく淫らで、クラウディオは思わず生唾を飲み込んだ。
「あっ♡」
同時に尻尾をぎゅっと掴まれると、アルカディアは再び高い声で鳴いた。
尻尾を撫でられるとどうしてもそちらに意識がいってしまう。
尻尾に気を取られていた隙に、いつの間にかクラウディオの手がズボンを引き下ろしていた。
逃げようとすると尻尾を掴まれて引き寄せられてしまうため、逃げることが出来ない。
「んん〜っ、だめっ」
快楽と眠気のせいで力が入らないのか、抵抗しようとする手はあっさりと払われてしまう。
「あっ、あっ♡しっぽ…やだぁ……」
付け根部分を掴まれた状態で扱かれると堪らないようで、アルカディアは腰を高く上げて喘いだ。
そのまま何度も激しく扱いてやると、アルカディアは涙を浮かべて首を振る。
「や、やめ…っ、ん、んぅ……っ♡」
制止の声を無視して手を動かし続けていると、やがてアルカディアはびくんっと大きく仰け反った。
そのまま勢いよく射精し、ベッドの上に白濁液が飛び散る。
「はー……っ、は…っ」
荒い呼吸を繰り返しながらぐったりするアルカディアの体をベッドに転がす。
汗ばんだ肌に張り付いた髪を払ってやり、額に触れるだけのキスを落とした。
「んぅ!くらでぃおのばか」
「ふふ、尻尾だけでイってしまったな?」
「……うるさい」
頬を赤く染めたまま拗ねたように唇を尖らせて言う様が可愛らしく、つい笑みが溢れる。
ばしばしと尻尾で太腿を叩かれた。
「可愛い」
そう言って頭を撫でると、アルカディアはむすっとしながらクラウディオの手に噛み付いてくる。痛くはないが、歯形が残るくらいには強く噛まれている。
「気持ちよかっただろう?」
「きもちよかった!」
半ば自棄になったように叫ぶアルカディアの尻尾を掴んで撫で回してやった。
「あぅ……」
尻尾を掴まれると何も出来なくなってしまうのが分かっているからこその行動である。
案の定アルカディアは悔しそうにしながらも、尻尾を触られると気持ちいいのか、されるがままに大人しくしている。
「もうだめ!」
暫く尻尾を弄っていると、アルカディアはぐいっと胸を押し返してきた。
「シャワーあびる!」
それだけ言い残して、アルカディアはぷんぷんと怒りながら風呂場へと駆け込んでいった。
その後ろ姿を見送りながら、後で尻尾にリボンでも巻いてみようか、などと呑気に考えながら、クラウディオはキッチンへ向かった。
シャワーを浴び終えたアルカディアがリビングに戻って来ると、クラウディオはキッチンに立っていた。
「おやつ?」
「ああ、ヨーグルトのケーキだ。今冷やしてる」
ぱっと目を輝かせたアルカディアは尻尾をぴんっと立てて、クラウディオの手元を覗き込む。
盛り付けに使うフルーツを切りながら端の小さい部分をアルカディアの口元に持っていくと、アルカディアは躊躇うことなくそれを口に含んだ。
背後からクラウディオに抱き着きながら、口の中に広がる甘酸っぱさに目を細める。
「おいしい」
「それは良かった」
「俺も何かしたい」
「じゃあ紅茶いれてくれるか」
「わかった」
アルカディアは嬉々としてティーポットを取り出し、茶葉の入った缶を手に取った。
二人で準備を進めているうちに、やがて部屋中に甘い香りが広がる。
「良い匂い」
「美味そうだ」
「うん」
やがて出来上がったケーキを持って、二人はソファーに並んで座った。
「いただきます」
「どうぞ召し上がれ」
一口サイズに切り分けたそれをフォークに乗せて口に運ぶ。
ヨーグルト特有の酸味と甘味が絶妙にマッチしていてとても美味しい。
「んまい」
「ふふ、そうか」
「食べないの?」
「私はお前を食べたい」
「すけべ」
クラウディオの言葉に、アルカディアは文句を言いつつも少し恥ずかしそうに俯いた。
「……あとでなら、いい…」
消え入りそうな声で呟いたアルカディアの耳が真っ赤に染まっていて、それが可愛くてクラウディオは思わず声を上げて笑った。
「冗談だよ」
「嘘」
「本当だ」
「いじわる」
「そんな私が好きな癖に」
笑いながらケーキをアルカディアの口に運んでやる。アルカディアは素直にぱくりと口に含んだ。
「んむ……」
「どうだ?」
「おいひい」
「ふふ、だろう?ほら、もっと食え」
「ん」
結局全部食べ終わるまで、アルカディアはずっとクラウディオに餌付けされ続けていた。
全て平らげて満足気に息を吐いたアルカディアは、隣に座るクラウディオにぴったりとくっついて甘えるように擦り寄ってくる。
「ねぇ、抱っこ」
「はいはい」
「んー…」
そのまま膝の上に乗せられたアルカディアはぎゅっと抱き着いてくる。
その背中を優しく撫でてやると、アルカディアは猫のように喉を鳴らして喜んだ。
ゆらりと揺れた尻尾がクラウディオの腕を撫で、まるで早くしろと急かすように何度も何度も絡みついてくる。
「こら、あまり煽ってくれるなよ」
「さっき、後でならいいって、いった」
「……」
「だから、はやく」
「……ああ、そうだったな」
このまま押し倒してやろうと思ったが、アルカディアの瞳は既にとろんと蕩けていて、このまま事に及んでも寝てしまいそうな雰囲気があった。
仕方なくそのままベッドに連れて行ってやると、アルカディアはごろんと転がったまま動かない。
「眠いのか」
「ねむい」
「…だろうな」
「……でも、する」
「無理するな」
「する」
アルカディアはふわふわとした口調のまま起き上がると、ぽんぽん、と自分の隣を叩く。
「ん」
「……」
「ん!」
有無を言わせない様子で促されたクラウディオは溜息をつきながらも、ベッドに乗り上げてアルカディアの隣に横になる。
アルカディアはその体を抱き寄せると、胸板に顔を埋めた。
そして、大きく深呼吸をする。
「くらでぃおのにおい…すき」
「そうか」
「うん…」
そう言うと、アルカディアはそのまま動かなくなってしまった。
暫くすると、小さな寝息を立て始める。
「まったく…」
すやすや眠るアルカディアの頭を撫でながら、クラウディオは苦笑したのだった。