Because it agitates
またアルカディアがシャツだけ着て寝ていた。
最近ずっとこうだ。
クラウディオの古いワイシャツを寝巻きにして、下は何も履かずにいる。同じ男でも、恋人でも、さすがに少し目のやり場に困る。
「アルカディア」
「んー…」
アルカディアはその真っ白な足を放り出しながら丸まって寝息を立てている。
狙ったかのように際どい位置まで捲れ上がった裾から覗く太ももの奥が見えそうで見えない。
この男は自分がどれだけ扇情的な格好をしているのか分かっていないのだ。
「……」
クラウディオだって男である。好きな相手のそんな姿を見て何も思わないはずがない。
白い脚に手を伸ばすと、その滑らかな肌はひんやりとしていて心地よかった。
アルカディアは自分のことを何とも思ってないかもしれないけれど、クラウディオにとって彼はとても魅力的な存在だった。
「んん…」
アルカディアが小さく身じろぎしたかと思うとゆっくりと瞼を持ち上げた。まだ眠たげな瞳がこちらを見つめてくる。
「……くらでぃお」
舌足らずな声で名前を呼ばれて胸がきゅっと締め付けられたような気がした。
「服を着ろ」
「んん〜…?着て、る…」
「上だけな。下もちゃんと履け」
アルカディアはまだ夢見心地といった様子で、シーツの冷たいところを探すように足をさ迷わせている。
「やぁ…」
「嫌じゃない」
ゆっくりシーツの上を泳ぐ足を捕まえると、アルカディアは不満そうな声を出した。
そのまま足首の方へ手を滑らせると彼の体がぴくりと震えた。
普段はあまり見ることのないくるぶしの形を確かめるようにして撫でていく。
くるくると指先でなぞったり、親指の付け根あたりをさすってみたりしているうちにアルカディアはだんだん大人しくなっていった。
そしてついには完全に目を閉じてしまう。
どうやら本格的に眠りの世界へと旅立ってしまったらしい。
クラウディオは小さくため息をついたが、妙にその足の触り心地がよくて離すことができなかった。
アルカディアはすうすうと規則正しい呼吸を繰り返していて起きる気配はない。
もう少しくらいならいいだろうか。
そう思いながら再び真っ白な足に手を這わせる。今度はもっと大胆に、膝の裏に触れてみたりした。
しかしアルカディアは全く起きなかった。
それどころか気持ちよさそうに眠っている。
ここまでされても全く反応しないなんて鈍感にも程があるだろうと思ったが、それだけ気を抜いてくれているということだろうか。だとしたら悪い気はしない。
このままどこまでいけるか試してみたいという好奇心もあった。
クラウディオはアルカディアを仰向けにして、もも裏をするりと撫で膝裏に手を差し込み持ち上げる。そしてアルカディアの体の上に覆い被さってみた。
アルカディアが何も履いていないことも相まって、夜の行為を彷彿とさせる体勢になった。
もちろん本当に事に及ぶつもりはないが(今のところは)。
しかしこれで完全に組み敷いた形になる。いくら鈍い彼でも流石にこれは起きるだろうと期待したが、やはりアルカディアは微動だにしなかった。
本当に寝ているようだ。
クラウディオはなんだか面白くなってきてしまった。こうなったらとことん悪戯をしてやろうと思いつく。
ちゅ、と目の前の膝にキスを落とす。アルカディアの体は相変わらずピクリとも動かない。
調子に乗って何度か繰り返した後、ぺろ、とその柔らかい皮膚を舐めてみる。
「んっ……」
アルカディアの声にどきりとしたが、起きたわけではないようだった。
もう一度同じように舌を出してちろりと舐める。それから軽く歯を立てて甘噛みをした。
「んん…」
ぴくん、と持ち上げている足が跳ねた。やっぱり起きているんじゃないかと顔を上げてアルカディアの顔を見る。
しかし目はしっかりと閉じたままだった。
「ふぅん」
面白いものを見つけた子供のように、クラウディオは笑った。
そしてまた顔を近づけて膝に唇を押し当てる。今度はちゅうっと音を立てながら吸い付いた。
「あ……」
アルカディアは少し体を震わせた後、小さな吐息のような声を上げた。
クラウディオはその艶やかな声を聞いて、ますます楽しくなってくる。
何度もそこに口づけを落としていると、次第にアルカディアは身を捩り始めた。
「ん…んん…」
寝ているとは思えないほどその動きは官能的で、まるで誘うように腰を揺らめかせていた。
無意識に快楽を求めているのだと思うと、下半身がずしりと重くなる。
この男は無防備すぎる。
クラウディオは熱に浮かされた頭でそう思った。
こんな姿を見たら我慢できるわけがない。
「はぁ……」
クラウディオは熱い息を吐き出すと、ぐり、と自分のものを押し付けた。
「あっ…」
途端、びく、とアルカディアが大きく反応した。
「ん…」
そのまま緩く揺すり続けると、アルカディアはまた甘い声を漏らした。
「は、」
「ん、う…」
「はは……」
思わず笑い声が漏れてしまう。
アルカディアは眉根を寄せて苦しそうな表情を浮かべているが、それでも目覚める気配はなかった。
何も履いていないせいで、押し付けられる刺激が直接伝わっているのだろう。
「は、」
「ん、」
「アルカディア」
名前を呼びながら、すっかり勃ち上がった自身を強く擦り付けゆさゆさと揺する。
「ん、ぅ…?」
するとアルカディアはようやく薄目を開いた。
ぼんやりとした瞳がこちらを見つめてくる。その目には涙が溜まっていた。
「くら…」
「おはよう」
「…ん…ぉは…んぇ…っ?」
ぐ、とさらに強く股間を押し付けると、アルカディアは驚いたような悲鳴をあげた。
「え、ちょ、な、なに…」
「なにって、見ての通りだが」
「な、…え…?」
「お前が煽るから」
「あお……」
まだ状況が理解できていないらしいアルカディアを無視して、クラウディオは彼の脚を抱え直した。
そしてゆっくりと腰を動かす。
「ん、ゃ…!」
するとアルカディアはやっと状況を察したのか、焦ったような声を出した。
「ま、待って…なんで…っ」
「お前が悪い」
「な、なにもしてない…っ」
「したじゃないか」
「してないぃ……」
そんなことを言いながらもクラウディオは押し付けて揺さぶるだけで、それ以上のことはしなかった。
アルカディアは混乱しているようで、どうしていいかわからないといった様子だ。
「や、やだ、」
そう言って逃げようとするが、それは叶わない。
足は抱えられているし、何より力が入らないらしくほとんど抵抗になっていなかった。
「やだぁ……」
弱々しく首を振って訴える姿がいじらしい。嫌がっているというよりは戸惑っているという感じだったが、クラウディオは構わずに続けた。
「ん、ぅ…んん…」
ゆるゆると動くたびに、アルカディアは鼻にかかった声を漏らす。
その様子が可愛くて、ついいじめたくなってしまうのだ。
ついにアルカディアの口から熱い吐息が溢れた時。
するりとクラウディオが体を離していく。
「ん…ぁ、…ぇ?」
「さてと、昼ごはんにしようか」
「……へ、」
アルカディアは呆然とした。
じんわりと快楽が生まれ始めたところで放り出された彼は、戸惑いの色を見せた。
咄嗟に離れていくクラウディオの袖を掴んで引き止める。
「なんだ?」
「ぁ、え…」
クラウディオは楽しそうに笑っている。
アルカディアは無意識に言葉を発していた。
「…し…しない…の?」
その言葉を聞いた瞬間、クラウディオはゾクッと興奮が背筋を駆け上がるのを感じた。
──あぁ可愛い。
だからこの子はやめられないのだ。
「…したい?」
「ん……」
アルカディアは素直にこくりと小さく首を動かした。
そしてその顔には期待の色が浮かんでいる。
クラウディオはそれに気づかぬふりをして、彼の頭を撫でてやった。
「可愛い」
「…くらでぃお」
恥ずかしそうに視線をさ迷わせながら、遠慮がちにクラウディオの胸にぽすんと額をぶつけてくる。
「…はやく」
「…はは、欲しがりめ」
クラウディオはくすりと笑ってその細い体を抱き締めた。