Depends on his mood

ふわりと意識が浮上し、アルカディアの瞼がゆっくりと開く。
朧気な意識の中、重みを感じて身動ぐも起き上がることは叶わない。
「……んぅ」
背後から全身に巻き付くように抱き締められていることに気が付き、アルカディアはぼんやりとしながら視線を彷徨わせる。
クラウディオだ。どうやら彼はまだ眠っているらしい。
上半身はその腕に抱えられ、下半身は脚で挟まれており身動き一つ取れない状況だった。
「……んん〜」
小さく声を上げながらアルカディアはもぞりと動く。その腕の中から這い出そうと体を起こすと、ぐいっと強い力で引っ張られた。
そのまま再びぽすりとベッドへと倒れ込む。そしてまた後ろからぎゅっと抱き込まれてしまう。
「…ん゛うぅ…」
寝ぼけているのかなんなのか、まるでぬいぐるみでも抱くかのように力を込めてくる彼にアルカディアは呻きながら眉間に皺を寄せた。
どうにか抜け出せないかともがくものの、しっかりとホールドされているためびくともしない。
「…どこへ行くんだ?」
耳元で聞こえてきた掠れた低い声にアルカディアはぴたりと動きを止める。
次いで、少しばかり不機嫌そうな響きを帯びた言葉が続く。
「……じっとしろ」
「おきる…」
「起きる必要無いだろう」
離すまいとするかのように、更に強く抱きしめられる。
今日は休みだからゆっくりしていろという事だろうか。
「おれは起きるの〜」
「駄目だ」
「んん〜!」
アルカディアがシーツを掴もうと腕を伸ばすが、それも直ぐに絡め取られてしまった。
大きな手に包まれるように握りこまれてしまい、いよいよ脱出は不可能だと悟った。
「…おもい…」
「私の重さには慣れてるだろう」
「……」
「よく押し潰してるからな」
彼の言葉が行為中を指していることを悟り、アルカディアの顔がぶわぁっと赤く染まる。
それを見て彼は楽しげに喉の奥で笑った。
「…すけべ!」
「何を言う。お前の方がよっぽど淫乱だろう」
「いんらんじゃないもん!」
「あんなに乱れておいて?」
「あれはくらでぃおがっ……あぅッ?」
反論しようと振り向いた瞬間、項に噛みつかれアルカディアは思わず悲鳴を上げた。
ちゅっと音を立てて吸い付かれるとぞくぞくとした感覚に襲われ力が抜ける。
「ひゃ、ちょ…、まっ、てぇ……」
抵抗の言葉を口にするも虚しく、首筋に舌が這わされる感触に体が震える。
熱い吐息と共に耳を食まれると背筋に甘い痺れが走った。
いつの間にか腰を抱いていた手が服の中に潜り込み、直接肌に触れてくる。
「んん〜っ、もうっ…」
身を捩りなんとか逃れようとするも、やはりそれは叶わなかった。
するすると脇腹から臍まで撫で上げられればゾクゾクとした快感が駆け巡る。
「…いま、は…しないっ」
そう言うと彼はピタリとその動きを止めた。突然の静止に驚いたアルカディアは、肩越しに振り返って彼を見上げる。
「そうか」
「うん…」
あっさりと引き下がった事に驚きつつも安堵したその時、再びぎゅうと力強く抱き締められた。
緩んでいた足が再び絡み付いてきて、身動ぐことも出来ない程に強く拘束されてしまう。
「え?ちょっと、あの……」
困惑の声を上げるも、彼からの返答は無い。
背後からアルカディアの肩口へと顔を埋めたまま微動だにしなくなってしまったのだ。
その表情は見えないものの、どうやら寝ているわけではないらしい。
「……くらでぃお…?」
「…うん?」
「…どしたの?」
体に回った彼の手がすり、と指先で優しく腕を撫でる。その僅かな刺激にぴく、と小さく体を震わせた。
それに気付いたのか、クラウディオはふ、と微笑みながら耳元で囁いた。
「今は挿れない」
「……ん」
先程の話の事だろうと理解し、こくりとアルカディアは首を縦に振る。
「でもお前のことはイかせる」
「……………え」
予想していなかった言葉に目を見開き慌てて逃げ出そうとするが、時既に遅し。がっちり拘束されてしまっているためどうすることも出来なかった。
「ま、ま、まって…なんで…」
「そういう気分だ」
暴れようとしてもびくりとも動かない。 それどころか、もぞもぞと動く度に余計に押さえ込まれてしまう始末だった。
それでもどうにか抜け出そうとしていると、彼の大きな手が伸びてきて胸に触れる。
ふに、と揉まれ反射的にアルカディアは小さく声を上げてしまう。
そんな反応を楽しむかのように、今度はゆっくりと円を描くように捏ね回された。
「やっ、んん…」
「嫌か?」
「う、ぅ〜……いじわる……っ」
「そうだな。私は意地悪なんだ」
くつくつと笑いながら、クラウディオの手の動きが激しくなる。
すっかり立ち上がった乳頭をきゅっと摘むと、ぴくんとアルカディアの体が跳ねた。
そのままくにくにと弄ばれると、じわりと下半身に熱が集まっていく。
慌ててその腕を掴んで止めさせようとするものの、片手で胸の前で纏められてしまい動かす事ができなくなる。
もう片方の指がまた乳首に伸び、カリ、と爪で引っ掻かれた。
「あっ、ぅ…」
そのまま先端だけを擦られるような動きに、じんわりと快楽が蓄積されていく。
「ん、んぅ…は……」
時折きゅうっと強めに引っ張られ、ピリッとした痛みにも似た感覚に襲われる。
それを繰り返されるうちに段々と頭がぼんやりとしてきてしまい、思考が鈍っていくのを感じた。
ぴくぴくと小刻みに体が震え、無意識のうちに膝を擦り合わせる。
それに気が付いた彼は、アルカディアの耳元へ唇を寄せそっと呟いた。
「安心しろ、挿れないから」
耳にかかる熱い吐息と、甘く響く低い声。
それだけで体の奥がきゅんと疼いてしまう。
アルカディアはその言葉に喜べなかった。一番気持ちいいものが貰えないことが確定しているのだから。
「う、ぁ…」
物足りなさを感じながらも、アルカディアは抵抗することを忘れてしまっていた。
ぐりぐりと押し潰すようにして強く捻られた瞬間、びりりとした強い刺激が走りアルカディアは思わず背を仰け反らせる。
「ひ、あっ♡」
ぎゅっと強く目を瞑ると、瞼の裏がチカチカと点滅する。
それを見た彼は満足げな笑みを浮かべ、反対の突起へと手を伸ばした。
「あ、やっ、だめっ……」
制止の言葉など聞くはずもなく、再び同じように責め立てられる。
「ぁ、あッ、は……っ♡」
先程よりも強くなった快感に身を捩るが、逃がさないというように更に深く抱き込まれただけだった。
「やぁっ、あ…っ、あぅ……ッ♡」
何度も執拗にそこばかり攻められていると、次第に腰が揺れ始める。
その動きを咎めるようにクラウディオの足がさらに強く絡み付いた。
「ひゃ、あ…ッ、あッ…♡あ、あ……ッッ♡♡」
突起をぎゅっと強く摘まれると、一際高い悲鳴のような喘ぎが漏れる。
それと同時に、びく、と大きく体が痙攣した。
「……っ♡……ぁ……っ♡」
「……イった?」
絶頂の余韻に浸りながら必死に呼吸を整えていると、不意に耳元で囁かれる。
その吐息すらも快感に変わり、小さく身を震わせた。
「ふ、ぅ…う〜っ…♡」
びくびくと跳ねる体はクラウディオに抑え込まれ、快楽を逃がせない。そんなアルカディアの様子を見て彼は楽しげに喉を鳴らした。
「ほら、もう一回」
「うっ、うう〜…っ」
「頑張れ」
「は、う…っ」
ぎゅうぎゅうと痛いほどに抱き締められて身動ぐことすらままならない。
そんな状態で胸への愛撫が再開され、再び快楽の波へと飲まれていく。
「ん、ん…っ、んぅ……っ♡」
達したばかりの体にその刺激は酷で、アルカディアは弱々しく首を振って拒絶を示した。
しかしそれが聞き入れられることはなく、容赦なく快楽を与えられ続ける。
片手で纏められたままの両手は解かれることなく、ただひたすらに胸を苛められ続けた。
「や、や…あぅ、ん…ん〜〜〜ッ♡」
びくんッと一際激しく体が跳ね、再び絶頂を迎える。
がくがく震える体を宥めるように優しく撫でられると、それさえも感じ入ってしまう。
絶頂の波が引かない内にまた次の快楽を与えられ、アルカディアは泣きそうになりながら声を上げた。
「ま、まって…まってぇ……」
「待てない」
「や、あああっ…♡」
すっかりクラウディオに開発されてしまったそこは、僅かな刺激で簡単に上り詰めてしまうようになっていた。
体を満足に動かせないせいで、いつもよりずっと早く高みに押し上げられてしまっている。
絶頂の感覚が短くなって、すぐにまた次が来てしまうのだ。
そんな状態のまま胸だけを延々と虐め続けられ、アルカディアは気が狂ってしまいそうな程の快楽に恐怖を覚え始めていた。
そんな彼の様子に気付いているのかいないのか、彼は手を止めることなく動かし続けている。
もう何度目かも分からない頂きを迎え、アルカディアは大きく背をしならせた。
「ふ、ああぁ…っ♡あっ、あんっ、あうっ♡う、んっ…あ、うっ♡うう…〜っ!♡」
胸だけでこんなに気持ちよくなれるなんて知らなかった。
すっかり性器と成り果てたその場所を、大きな手が包み込むようにして揉みしだく。
そのまま指先で先端を弾かれてしまえば、甘い痺れが全身に広がった。
「ひぅっ♡あっ、あっ、あっ♡あっ、うあっ、あっ♡」
ぴん、ぴんと何度も軽く引っ掻かれた後、ぐりぐりと押し潰される。その度に体が大袈裟な程に跳ね上がり、甘えたような媚びきった声で喘いでしまう。
最早抵抗する力など残っていないことを悟った彼は、拘束していた腕を離して両手で胸を可愛がり始めた。
「あっ、あっ、あっ♡やっ、あっ♡あっ、あっ、あっ♡」
くにくにと指の間で転がされ、時折摘んで引っ張られる。
その度に強い快感に襲われ、アルカディアはいやいやと首を振りながら悶えていた。
そのままごろりと仰向けになるように体勢を変えられ、ぐりぐりと乳頭を捏ねくりまわされた。
「あ゛っ、ひあ゛ッ、あっ♡♡♡」
「こっちの方が気持ちいいだろう?」
今までとは比べ物にならないほどの強烈な刺激に、アルカディアは悲鳴じみた声を上げる。ぐりぐりと押し潰すような動きに加え、爪を立てカリカリと素早く引っかかれては堪らない。
「ひぁっ♡ひゃめっ♡おぇが…ぃ…っ♡あっ、あぅっ♡あっ♡♡」
そんな風にされてはおかしくなると訴えるが、彼はそれを無視して責め立ててくる。
ピンと立った突起をきゅっと摘み上げると同時にもう片方の先端を強く捻られ、アルカディアは呆気なく達してしまった。
下にいるクラウディオを押し潰さんばかりに仰け反り、ガクンガクンと痙攣する。
「あ゛ッ……!!♡♡♡」
「……またイった?」
「あ……っ♡」
びく、びくんっと断続的に震える体を抱き締められたまま、アルカディアは焦点の合わない瞳で虚空を見つめた。
閉じられなくなった口からは唾液が零れ、顎まで伝っている。
「も…やら…っ♡むい……♡」
呂律の回っていない口調で限界を訴える。するとようやく胸から手を離してくれた。
「……っ♡……ぁ♡」
散々弄ばれたそこは赤く腫れ上がっており、ジンジンと熱を持っている。
やっと解放されたというのに、未だに快楽の余韻が残っているようで上手く体に力が入らない。
「は……ぁ♡」
「まだ足りない?」
「ちがっ…も、むね…やぁ……っ♡」
ずるりとクラウディオの体の上からずり落ちベッドに沈む。そしてゆっくりと体を丸めて小さくなった。
これ以上の快楽を与えられたらどうなってしまうのか分からなくて怖い。
そんな思いが無意識のうちにアルカディアを小さくさせていた。
目は虚ろで息は荒く、口の端からは飲み込み切れなかった唾液が垂れている。小さく痙攣している姿はまるで小動物のようだ。
「ふふ、可愛い」
「……っ」
楽しそうな声音にまた虐められるのではないかと更に身を縮こまらせる。そんなアルカディアの姿を見て彼は笑みを深め、そっと髪を撫でてきた。
「ごめん、意地悪したな」
「……ぅ」
急に優しくされるとなんだか調子が狂う。
先程までの行為は一体なんだったんだと問い質したいところだが、今の状態では何も言えなかった。
「もうしないよ、満足した」
「…まん…ぞく…」
「うん」
「……」
本当に?そんな疑問が頭に浮かぶ。
だってあれだけ胸だけを執拗に虐められたのだ。これで終わりだと言われても納得出来ない。
アルカディアはさらに体を縮め、彼の顔色を窺うように見上げた。
「ほんとに…?」
「本当だよ」
「…じゃあ……ぎゅうして…」
「はいはい」
そう言うと彼は丸まったアルカディアを包み込むように抱き締めてくれた。
そのままぽん、ぽん、と背中を優しく叩かれる。
「ん…」
その心地良さに目を細め、もっとと言わんばかりに体を擦り寄せる。
絶頂し過ぎて強ばっていた体が弛緩していくのが分かった。
「シャワー浴びようか。ぐちゃぐちゃだ」
「…………」
言われてみれば、確かに下半身は色々な液体で濡れていて気持ちが悪い。
誰のせいで、という意味を込めて目の前の彼の腕に噛み付いた。力が抜けているせいでただ咥えただけに終わってしまったけれど。
「悪い悪い」
あぐあぐと甘噛してくるアルカディアにクラウディオは苦笑いを浮かべ、それから軽々と持ち上げて浴室へと向かう。
「……くらでぃおのばか」
「そうだな」
「すけべ」
「否定はしない」
「いじわる」
「それはお前が一番よく知ってるだろ」
「えっち」
「まあな」
「へんたい」
「はは、全部肯定する」
結局この男なら何をされてもいいと思ってしまうくらいには、彼に惚れてしまっているのだと自覚させられる。
悔しいなと思いながらもアルカディアは大人しく運ばれて行ったのだった。