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目覚めたのは誰かが微かに俺の足を蹴ったから、だった。けど俺はベッドを一人で使っていた筈。何かの勘違いだろうと静かに瞳を開けると目の前には間抜けな寝顔のレヴィアが。そして驚いて起き上がった反対側には、見るからに半裸のレギオンが眠っていた。

「……っえ?」

放心状態の俺は、一瞬にして目を覚まし自然と正座の体勢を取りました。落着け俺。落ち着くんだ。今は今日はいい天気だなとか考えている場合では無い。
何がどうなってこうなった?いや誰と誰がどうしてこうなった神様???
頭にたくさんの疑問符を浮かべながらちらと自分の体を確認する。現実逃避する為もう一度寝ようかと強く瞳を閉じたが、どう考えても夢では無かった。俺は残念ながら確かに覚醒してしまっている。その時壁にかけている鏡に首筋の痣が映っている事に気付き、薄らと昨晩の事を思い出した。
寝ようとした瞬間レヴィアが訪れて来た。そう。確かにそれでレヴィアを仕方無く部屋に入れて…でも明日は書類仕事するからと断った筈。この齧る様な痣を付けたのは確かにレヴィアだ、そこまでは覚えているんだけども​​──

「レヴィアがいるって事は…理解出来るとしてもなんで…レギオンまで…ここに…?」

俺はレヴィアに今日は何もしないからな、しないぞ、と何度も念を押し先にベッドに入った。そして起きればこの状況になっていた訳であって勿論それからの事は全く覚えていない。
すやすやと静かに眠っているレギオンが寝返りを打ち反対を向いた。彼の寝顔を見るのは久しぶりで俺はあちこちに跳ねまくる髪の毛を少しだけ撫でた。
真っ青になった俺は、興味心でちらと布団を持ち上げてみる。予想通り所か裏切らない展開。レヴィアが半裸で寝るのは日常茶飯事、しかし何故か俺までも寝巻きを着ていなかった。

「…ッレヴィア!おいレヴィア、起きろ早く!事件が!事件が起きてるぞ馬鹿!」

眠っているレギオンに気を遣い普段より小さな声で言いながら、俺はレヴィアを強く蹴りあげた。今は何より話を聞くべきだ。話を聞きたい。俺は途轍もない焦りを感じつつ、床に落ちている服を拾った。

「起きろてめぇ!聞いてんのか!」

「痛てぇ…どうしたんすか朝から…まだ寝れるっしょ…」

「いいから早く起きろ!」

「…んん?おはよアルさん…」

「お前。単刀直入に聞くけど昨日俺に何かしただろ?」

「へ?昨日?いやアルさんが何もしたくないって言うから、俺もすぐに寝たけど?」

「じゃあなんで俺が脱いでるんだ…どうせお前が寝てる間に変な事しただろ」

「暑がりだから脱いだんじゃないですか?俺のせいじゃないですよお」

「そんな訳あるか!正直に言え。今なら1発殴るくらいで許してやる」

「そんな剣幕で言われても…。そっちのレギオンにも聞いてみたら?」

「ん〜…おはよ…アルさん、」

気持ち良さそうに伸びをしたレギオンが小さく瞳を開いた。そして半裸状態の俺らを見て事の発端に気付いたんだろう。眠気眼に俺を見上げていたレギオンが、物凄い勢いで立ち上がった。そして何事も無かったように無言で服を着て行く。だから何故脱いでいる。それが唯一の疑問点なんだよ!なんで俺たちは服を脱いでんだよ!

「おはよレギオン」

「レギオン…」

「…おはよーございます。…良い天気っすねアルさん」

「そうだないい朝だな…そんな事よりお前に聞いておきたい事がある」

「…ん?なんすか?」

「どうしてお前がここにいた?お前の部屋っていうか客室はもっと向こうだろ」

「それは…」

「アルさんに用があったんだって。でももうアルさんは寝てたし、折角ならここに泊まってけば?って言ったんですよ」

「そうっす!そうそう」

「わざわざ俺のベッドに?部屋あるのにか?」

「うん」

「…それとその内アルさんが起きたら聞いてみようかなと思ったんすよ。そんで気づいたら寝てました」

「それだけですよ。別に深読みするほどでもないっしょ」

「そうっすよアルさん〜、色々考えすぎなんですって」

と言いながら二人は隅に落ちている服を拾い着て行く。心成しか早くこの場から立ち去りたい様な雰囲気が汲めた。
…妙に二人のチームワークが良過ぎる。どうしてこうもタッグを組んでいる様に見えるんだろう。俺の単なる思い込みだろうか。俺は若干の苛々を感じながら眉を顰めた。そしてレヴィアのズボンを引っ張り着せまいとした。

「ワー!何すんですかアルさん!パンツ脱げる!」

「そんな怒る事じゃないっすよアルさん!止めてあげて!レヴィアさんのパンツが!」

「…お前ら、何かあったのならはっきり言え。怒らないから。本当に今なら1発で済ましてやるから言え」

「既に怒ってんじゃないすか…」

「いやだからアルさんの考え過ぎなんだって!単純に、アルさんと寝たくて横になったんだって!レギオンも俺も!」

「そうっすよ〜。横になってみたら疲れてたせいかこてっと寝ちゃったんです。それだけっすよ!」

「じゃあなんでお前も俺も脱いでるんだよ!しかもレギオン!これはどう説明するつもりだよ」

そう早口で聞き返した時急に無言になった二人がちらと視線を合わせたもので、俺は益々心配になった。これは酷い。確実に怪しい。
もう怪しいとしか言い様が無く、あんな様子ではむしろ何かありました、だけど二人で必死に隠そうとしているんですとしか思えない。俺はシーツを握り締め彼らからの返事を待った。何を聞いたってきっと言い訳にしかなっていないんだろうが。

「それはほら、流石に三人で寝るには暑かったんすよこの部屋が!アルさんって布団を引っ張って寝る癖あるし…」

「そうそう。さっき俺も言ったじゃん?夜は暑くて寝苦しかったって。これは間違いないです」

「だってオレが来た時既にアルさん暑そうに脱いでましたしね」

「その後レギオンもまたベッドに入って、気づいたら寝てた、と。そういうことよ」

「そうっす。アルさんは深く考え込み過ぎてるだけっす、何もなかったですよ」

そう言った二人が仲良さげに笑い立ち上がる。今まで強く握っていたズボンから手を離すと、レヴィアは困らせてごめんね、と笑顔で言い俺の頭を撫でた。

「………ん?」

きっと知らなくて良い事実もあるはずだ。心の奥底ではまだ二人の事を疑ってはいるが、到底聞いたって答えてくれそうに無いし。それなら端からもう無かった事にしてしまおうと。俺はため息を付きドアの方へ向かう二人の背中を見つめた。
俺もまた服と端末を手に立ち上がる。
そこで、隅のゴミ箱に捨ててある明らかに使い切った感のある、独特な香りのする某避妊具(×2)に気付き思わず落とした端末の鈍い音が部屋に響いた。



そして

フラグが立ちました。

ドアを背中に深いため息を付いた男が二人、顔を見合わせ笑顔で頷いた。