ウィスタリアは泣き喘ぎながら、朦朧とする意識の中で盛大に後悔していた。
──ああ、言わなければよかったかもしれない。
ウィスタリアとアッシュは恋人同士である。誰かを好きになることも、抱き締めてもらうことも、愛されることも知らない無垢で幼い少年だったウィスタリアにとって、それは初めて知った恋という感情であった。
そんな何もかもが初めてのことだらけのウィスタリアを、アッシュは優しく大切に愛してくれた。ウィスタリアの弟であるルカのことも、人間ですらない小さな魔獣を、平等に深く愛してくれる。
そして、何よりもウィスタリアの心を満たしたのは、自分に向けられる彼の眼差しや声音、仕草の一つひとつから伝わってくる愛情だ。彼はいつだって、言葉にしなくてもウィスタリアのことを誰より深く想ってくれていた。
ある程度の月日が経ち、ウィスタリアは漸く恋人同士の営みの意味を知った。性に関する知識はまったくないし、男同士のやり方だって勿論知らないが、ウィスタリアは大好きなアッシュとそういうことをしてみたいと思ったのだ。
彼らが所属する組織のメンバー達は、面白おかしく茶化しながらも二人のことを応援してくれて、ウィスタリアはアッシュとの行為に必要な知識を少しずつ覚えていった。
最初から気持ちいいと感じることなんてほとんど無いらしい。“開発”が必要なのだそうだ。
そのことの大した意味もわからずに、初夜を迎える前に、ウィスタリアはアッシュに言った。
「かいはつ…?してほしい」
そう告げた時のアッシュの顔といったら、もう見ものだった。いつも余裕たっぷりでクールな表情を浮かべている彼が珍しく目を剥いて驚いたものだから、ウィスタリアは何事かと思って思わず身体を震わせたほどだ。
「あの、あの…か、開発した方が痛い思いしないって……」
慌てて言い訳をするウィスタリアに対して、アッシュは無言のままじっと見つめてきた。その瞳からは何を考えているのか読み取れなくて、ウィスタリアは段々と不安になっていった。
「……わかった」
しばらくしてアッシュが発したのはたった一言だったが、それでも了承の言葉だとわかってホッとしたのを覚えている。
そして迎えたある日の夜。
ウィスタリアはあまりの緊張で気がおかしくなりそうだった。全くそういう雰囲気になっていないにも関わらず、心臓はバクバクと高鳴っているし、手足はガクガク震えてしまう始末だ。
アッシュは今シャワーを浴びている。その間に心の準備をしておこうと思いながらも、一向に落ち着く気配はない。
「う、うぐぅ…」
ベッドの上で呑気に寝ているルカの腹に顔を埋めて、必死になって深呼吸を繰り返した。
開発をするだけだ。まだ挿れると決まったわけじゃない。何度も自分に言い聞かせるが、どうしても期待してしまう自分がいる。本当にこれで大丈夫なのか、自分はちゃんと出来るのか。
「……ウィスタリア?」
「ひゃいっ!?」
背後から突然名前を呼ばれ、飛び上がるように振り返った。首にタオルをかけて上半身裸の状態で現れたアッシュを見て、更に心臓が大きく跳ねる。
最近見慣れたはずのその姿は、今は何故かとても艶っぽく見えてしまい、ウィスタリアはゴクリと唾を飲み込んだ。
「なにか飲むか?」
「の、のん…の、のむ……」
緊張のあまり呂律が回らず、舌っ足らずになってしまった。しかしそれを気に留めることなく、アッシュは冷蔵庫の方へ歩いていく。
ウィスタリアが好きなりんごジュース。それがアッシュの部屋の冷蔵庫に当たり前に常備されていることが嬉しくて堪らなかった。
手渡された缶を受け取り、プルタブを開ける。ごくりと一口飲み込むと、爽やかな甘さが喉を通っていった。
アッシュは隣に座ってビールを飲んでいる。
それだけなのに、何故こんなにもドキドキするのだろう。まるで全身が心臓になったかのように、脈打つ音が耳の奥で鳴り響いている。
沈黙が妙に恥ずかしくて何か話さなければと思うのだが、上手く言葉が出てこず黙り込んでしまう。じわじわと顔が熱くなっていくのを感じながら、ジュースの淵をがじがじとかじり続けた。
すると突然アッシュの手が伸びてきて、ウィスタリアの顎を掴んで持ち上げられる。そのまま唇を塞がれ、ウィスタリアは驚いて目を見開いたまま固まってしまった。
口の中にビールの苦味が広がる。普段なら不快でしかないその味も、アッシュのものだと思えば不思議と嫌ではなかった。唇はちゅ、と音を立てて離れていく。
「……ぁ、あしゅ……?」
「はは、顔真っ赤だぞ」
くすっと笑われて、ウィスタリアは更に顔を赤く染め上げた。
アッシュはビールを飲み干し、立ち上がる。
「髪乾かしてくる。お前はゆっくり飲めよ」
「……うん」
アッシュが洗面所に向かい、一人きりになる。ウィスタリアはしばらくぼうっとしていたが、ハッとして再びジュースをちびちびと飲み始めた。
髪を乾かし終えたら、いよいよ本番が始まるのだ。ウィスタリアは緊張を紛らわせるためにも、一気にジュースをあおる。
「んにゅあ」
ルカがあくびをしながら伸びをしている。もふもふと腹を撫でると、ルカは気持ち良さそうにごろごろと喉を鳴らした。
可愛い。ルカは見ているだけでも癒される。
ほんの少しだけ、緊張がほぐれてきたような気がした。
口角を緩めながらルカを撫でることに集中していたせいで、ウィスタリアは気付かなかった。
アッシュがウィスタリアの背後に立ち、じっと見下ろしていたことに。
「──んぅっ!?」
突如背後から伸びた手に口を覆われ、ウィスタリアはビクッと身体を大きく揺らす。何が起きたのか理解出来ずにいるうちに、ウィスタリアはあっという間にベッドに押し倒されていた。
アッシュが覆い被さってきて、ウィスタリアはますます混乱していく。
ぱたぱた暴れる両手は、頭上で拘束されてしまった。
「…ん、ぅっ」
そしてアッシュの顔が近付いてきて、今度は強引にキスされた。ぬるりと熱いものが侵入してきて、舌を絡め取られる。
ウィスタリアは激しく動揺した。
「ん、ふ…っ」
息継ぎの仕方がわからなくて、頭がクラクラする。酸素を求めて僅かに開けた口から、空気と一緒に声にならない悲鳴が漏れ出した。
「……っ、ぁ、ひゅ…っ」
ウィスタリアはアッシュを呼ぼうとした。だが彼はそれを許さないとばかりにウィスタリアの舌を吸い上げ、更に深く口付けてくる。
苦しい。気持ちいい。怖い。嬉しい。
色んな感情がない交ぜになって、頭の中はぐちゃぐちゃだ。
やがてアッシュの顔が離れていき、ウィスタリアはようやくまともに呼吸が出来るようになった。必死に肩を上下させ、荒い呼吸を繰り返す。
「……ウィスタリア」
「はっ、は…っ」
「ウィスタリア」
「ひゃ、い……っ」
名前を呼ばれる度に身体が跳ね上がる。返事をしたつもりの声は、情けないほど震えていて、自分のものとは思えないくらいだった。
「開発しようか」
そう言って笑ったアッシュの顔は──それはもう楽しそうな、悪い、男の顔をしていた。
「…あ、しゅ…」
あれ、もしかしておれ、やばい?と気付いた時には既に遅く、逃げられないようしっかり押さえつけられて、服を脱がされ始めていた。
「ま、ま、まって……!」
慌てて制止すれば動きを止めてくれる。
優しい。
「なんだ?」
「あの、その…こ、こころのじゅんび、したい……」
「ああ」
アッシュは納得したように相槌を打ち、あっさりと解放してくれた。
ウィスタリアは慌ててアッシュから距離を取る。
「う、うえ、えっと、ちょっと、お、おちつくまでまってください」
「わかった」
アッシュは微笑みを浮かべたまま、素直に待ってくれている。ウィスタリアは大きく深呼吸を繰り返し、バクバクと煩く鳴り響く心臓をどうにか落ち着かせようとした。
「…んっ、はぁ…っ」
しかし緊張が解けることはなかった。むしろどんどん悪化している気さえする。
ウィスタリアは泣きそうになった。
アッシュに背を向けて、ゆっくり息を整える。その間ずっと背中に視線を感じて、余計に焦ってしまう。
落ち着け、落ち着け。自分はこれを望んだはずだ。
ぐるぐると思考を巡らせていると、突然胸元に手が伸びてきて、そのままするりと撫でられた。
「ひぃえぇっ!?」
変な叫び声を上げて飛び上がったが、アッシュは気にせず後ろから抱き締めてきた。
「ウィスタリア」
耳元で囁かれ、ぶわっと全身が熱くなる。
耳が溶けてしまうのではないかと思うほどの熱さだ。
ぎゅう、と抱き締められ、背中に感じるアッシュの筋肉質な身体に心臓が大きく跳ねる。
「待ては3回までだ。あと2回」
「ふぁ…っ」
吐息混じりの掠れた声で言われ、ぞくりと肌が粟立った。
するするとアッシュの大きな手が上半身を撫でていく。
「ぁ…っ、ん、んぅっ」
ウィスタリアはくすぐったさに身悶えた。
ぞくぞくする。でも嫌じゃない。
触れる手が熱い。
待って、まだ、緊張して──
「ぅっ!?」
かり、と乳首を爪先で引っ掻かれて、ウィスタリアの身体がびくんっと大きく揺れた。
「あっ、ぁ…!ん、ぁ…っ」
くりゅ、くに、と指先がそこを摘んで転がされる度、甘い痺れが走り抜ける。
今まで感じたことのない感覚だ。
ウィスタリアは困惑した。こんなところ触られても何も思わなかったはずなのに、どうして。
「ん、んぅ、ぅっ」
ぴり、ぴり、と電流が流れるような感覚が身体中を巡っていく。
ウィスタリアは無意識に足を擦り合わせていた。
服の上からかりかりと刺激されて、ウィスタリアはもどかしさに身を捩る。
不意にアッシュの足が動いたかと思うと、擦り合わせていたウィスタリアの両足の間に割り込んできた。そのままぐいっと足を開かされ、見えたそこはすっかり硬く張り詰めていた。
「あ、ぅ…っ」
恥ずかしくて顔から火が出そうだ。
背後でアッシュがくすりと笑った気配がする。するりとアッシュのもう片方の手が、ズボン越しに触れた。
布を隔てているとはいえ敏感な部分を撫でられると、ウィスタリアは堪らず声を上げた。
「ひ、ぁ……っ!」
すりすりと優しく撫でたかと思えば、今度はぐりっと強く押される。緩急をつけた愛撫に翻弄され、気が付けばウィスタリアは夢中で腰を揺らしていた。
乳首と性器を同時に責め立てられ、頭がぼうっとしてくる。気持ちいいことしか考えられなくなってきて、ウィスタリアはアッシュの腕を掴んだ。
「ん?」
「あっ、ぁ、ふ…っ、これ、やらぁ……っ」
「何故?」
「へん、だからぁ…っ」
「気持ち良くないのか?」
「きもち、い…っけどぉ…っ」
気持ちいい。気持ちいいけれど、このままだとおかしくなってしまいそうだった。
「なら問題ないな」
「やだ、ゃ、こわい…」
「大丈夫だ」
「ひゃうっ」
耳を食まれ、ウィスタリアは大きく身体を跳ねさせた。
怖い。気持ちいい。
アッシュは落ち着かせるように、何度もウィスタリアの頬にキスを落としてくれた。
「服、脱ごうか」
「……へ」
そう言って、アッシュは慣れた手付きでウィスタリアの衣服を全て剥ぎ取ってしまった。
ウィスタリアは抵抗しなかった。いや、出来なかったという方が正しいかもしれない。
ぽいぽいと投げ捨てられる服を呆然と見つめることしか出来ないでいた。
ハッとした時には、既に再び後ろから抱き締められていた。
「あ、しゅ…あの…」
恥ずかしくて思わず足を閉じようとしたが、アッシュの足が邪魔をして叶わない。
勃ち上がったままの自身を隠すことも出来ず、ウィスタリアは小さく震えながら俯くしかなかった。
「ウィスタリア」
「ひゃんっ」
耳元で名前を呼ばれ、ウィスタリアはびくんっと肩を震わせる。
この声を聞くだけで、勝手に体が跳ねてしまう。
「可愛い」
「っ!」
囁かれた言葉にカッと全身が熱くなる。
ウィスタリアはあわあわと口を動かしたが、結局何も言えずに黙り込んでしまった。
アッシュはくすりと笑うと、ウィスタリアの背中にぴったりとくっつき、両手で胸を揉み始めた。
「ん、んっ」
くにゅ、くに、と柔らかく捏ねるように弄られ、ウィスタリアはぴくっと反応する。
アッシュは人差し指と親指を使って乳輪を摘み、ゆっくりと円を描くようにして動かした。時折乳頭を軽く引っ掻くと、ウィスタリアは面白いくらいに身体を跳ねさせる。
「ん、んっ、んんっ」
アッシュの指が動く度に甘い痺れが全身に広がっていく。ウィスタリアの息が次第に荒くなって行った。
「ウィスタリア」
「ひ、ぃうっ」
アッシュが耳元で名前を呼ぶと、ウィスタリアはぶるりと身を震わせて声を上げる。
「ここ、好きだろ」
「んっ、んぅっ」
こくこくとウィスタリアは必死に首を縦に振る。
好き。大好き。
だって、アッシュの声が、指が、身体が。全部、すごく、熱いんだもの。
「ふぁっ!?」
乳首に夢中になっていれば、ぎゅっと自身を握られて悲鳴のような声を上げてしまった。
そのまま上下に手を動かされると、強い快感に襲われて目の前がチカチカした。
「あ、ぁ…っ、んぁ…っ」
乳首を虐められながら性器を扱かれると、すぐに限界が訪れてしまう。
がくがくと身体が痙攣し、ウィスタリアは涙を浮かべながら懇願した。
「んぅ、あっ、ぁ…あ、ふ…っ、なに…なに…」
なにか来る。
でもそれがなんなのかわからなくて、ウィスタリアは混乱した。
勝手に腰が跳ねて、身体がどんどん熱くなる。
「ん、ぅ…っ、あ、ぁ…ッ!?♡♡」
びくんっと一際大きく身体が揺れた瞬間、陰茎から何かが弾けたような感覚がした。
凄まじい快感が走り抜けて、頭の中が真っ白になる。
身体ががくがくと小刻みに震え、息が詰まる。視界が霞んでよく見えない。
ウィスタリアはアッシュの腕にすがりついて、はーはーと荒い呼吸を繰り返した。
「……っ、あ、あ…っ」
余韻に浸っていると、アッシュの手が再び動き出す。
「ひぅっ」
敏感になった身体には強すぎる刺激だ。
ぐちゃぐちゃと音を立てながら激しく動かされると、ウィスタリアはすぐにまた絶頂へと押し上げられた。
「やっ、やら…っ!いま、だめぇ…っ」
「どうして」
「また、きちゃ…っ、ぁ…っ!」
「そういう時はイクって言うんだよ」
「い、く…?ぁ、あ……っ!」
言われた通りに口にすると、アッシュの手の動きが激しくなった。
もう出ないと思っていたのに、再び射精感が込み上げてくる。
「ぁ、あッ♡い、く……っ、イッ…〜〜っ!!♡♡」
どぷっどぷっと勢い良く吐き出された精液は、アッシュの手によって受け止められていた。
ぐったりとしてアッシュにもたれ掛かると、ちゅっと耳にキスをされる。
そのまま舌を差し込まれ、くすぐったさに小さく喘いだ。
ぴちゃ、くちゅ、と濡れた音が脳内に直接響いて、なんだかくらくらする。
ウィスタリアは無意識のうちに腰を揺らしていた。
もっと触ってほしい。もっともっと、気持ちいいことをしてほしい。
そんな考えばかりが頭を埋め尽くしていく。
「ウィスタリア」
「ん……」
アッシュはウィスタリアをベッドに押し倒すと、足を開かせてその間に身体を割り込ませた。
ウィスタリアはぼんやりとした表情でアッシュを見上げる。
片手にローションを纏わせたアッシュは、空いた方の手でウィスタリアの頭を愛しそうに撫でた。
心地良さに目を細めていると、後孔にぬるりとしたものが触れる。
「え…?」
くるくると穴の周りをなぞられる。
ぞわりとした感覚が背筋を這い上がってきて、ウィスタリアは不安げにアッシュを見た。
「あ、しゅ…」
「大丈夫だ」
そう言ってアッシュは微笑むと、つぷりと指先を押し込んだ。
「ひゃうっ」
異物感に思わず声を上げると、「力を抜け」と優しく囁かれた。
ウィスタリアはこくこくと何度も首を縦に振る。
「そう、上手」
アッシュの指がゆっくりと奥へ進んでいく。
痛くはないけれど、苦しい。
ぎゅう、と目を閉じて耐えているウィスタリアを見て、アッシュは体勢を変えてウィスタリアに覆い被さるような形になると、額に口付けた。
「ん、ん……っ」
優しい口付けに少しだけ緊張が解れる。
ウィスタリアが落ち着いたのを確認すると、アッシュは再び指を動かし始めた。
「あ、ぁ…っ」
内壁を擦られ、少しずつだが確実に広げられていく。
じわじわと押し寄せる快楽の波に、ウィスタリアは身を震わせながら必死に耐えた。
そしてアッシュの長い指がぐっと曲げられ、ある一点を掠めた時だった。
「ひうっ…?」
びりびりと全身に電流が流れたかのような衝撃に襲われる。びく、と跳ねた体に気が付いたのか、アッシュは同じ場所を攻め立てた。
とん、とん、と一定のリズムで叩かれれば、その度に甘い痺れが生まれる。
「ひぁっ、あ…っ、んぅ…っ♡」
ウィスタリアの手がうろうろと彷徨い、アッシュの腕を探し当てると縋るようにぎゅっと掴む。
いつの間にか苦しさなんて消え去っていて、ただひたすらに甘い快感だけが全身を支配していた。
目を閉じて甘い息を吐きながら自身の腕にしがみついてくるウィスタリアの姿は酷く扇情的で。
「(……唆るな)」
指だけでこんなにふにゃふにゃになるとは思いもしなかった。素質があるのか、それともウィスタリアがアッシュを好いているからなのか。どちらにせよ嬉しい誤算だ。
「ん、んぅ…っ♡」
ぐり、と前立腺を強く押せば、ウィスタリアはアッシュの腕をさらに抱え込む。
そのままトン、トン、と連続して叩くと、ウィスタリアは泣きそうな声で喘ぎ始める。
「やぁ…っ、んっ、んぅ…っ♡」
きゅう、と中が締まり、同時に陰茎から少量の精液が溢れ出す。
先程絶頂を迎えたばかりのそこは赤く腫れて膨らんでおり、今にもはち切れそうだ。
アッシュは一度指を引き抜くと、二本に増やして再び挿入した。
「ふあっ…!?」
圧迫感が増して息を呑んだウィスタリアだったが、すぐに快楽へと変わる。
ぐちゃぐちゃと中を掻き回され、ウィスタリアは無意識のうちに腰を揺らしていた。
「あ、あ…っ、あぅ…っ」
アッシュは体を起こすともう片方の手で陰茎に触れた。
ゆるゆると上下に扱かれると、ウィスタリアはびくんっと大きく身体を仰け反らせる。
「ひぃっ!?あ、ぁ、や…っ!だめ…っ!」
前と後ろを同時に責め立てられ、頭がおかしくなりそうになる。
目の前がチカチカして、何も考えられなくなる。
「あ、ぁ…っ!また、いく……♡あ、ぅ…ッ!♡♡」
どぴゅっ、と勢い良く飛び出した白濁は、アッシュの手の中に受け止められていた。
はーはーと荒い呼吸を繰り返していると、アッシュがウィスタリアの乱れた髪を整えてくれる。
「さて、そろそろいいか」
「……?」
何のことだろうと思っているうちに、アッシュはサイドテーブルに手を伸ばしていた。
引き出しの中から取り出した何か。
ウィスタリアは荒い息のまま不思議そうに目を瞬かせる。
持ち手がついていて、大きく張り出した突起はくびれていて、先端が丸くなっている物体。
見たことのない形状のそれに首を傾げていると、アッシュが手に持ったそれをウィスタリアに見せつけるように軽く振った。
「電動のエネマグラだ」
「えね…」
名称を言われてもウィスタリアはハテナでいっぱいだ。そんなウィスタリアを見て、アッシュは小さく笑みを浮かべた。
「お前の中に挿れるんだよ」
「…………へ?」
たっぷり数十秒の間を置いて発せられたのは、間抜けにもほどがある声だった。
そんな無機質なものを?中に?無理じゃないかな。
だって、そんな大きいものが入るわけがない。
「ぇ、ま、まってっ」
「わかった待とう。あと1回」
「え、あ、わ、ちが…」
しまった。貴重な“待て”を無駄にしてしまった。
ウィスタリアは慌てて首を横に振る。
「ちが、いまの、今のは間違いでっ、あの、ま、まってぇ…」
「待つよ。これで3回目。もうお前の待ては聞かない」
「あぁぁ〜ちがうぅ〜」
無情な宣告にウィスタリアは涙目になる。
自分の下らないミスでアッシュが待ってくれなくなってしまった。どうしよう。
だってこんなの絶対入らない。あんなに大きなものがお尻に入るはずない。壊れてしまうかもしれない。
真っ赤な瞳に涙を浮かべながらぷるぷる震えていると、アッシュは優しく微笑みながら頭を撫でてくれた。
「ウィスタリア」
「あしゅ……」
「大丈夫だ。私を信じろ」
「うぅ…っ」
その言葉はずるい。
信じたいけど怖い。でも信じるしかない。
ウィスタリアはぎゅっと目を閉じてこくんと小さく頷いた。
「いい子」
そう言って笑ったアッシュは、目を閉じたままのウィスタリアに口付ける。ぴく、とその細い体が跳ねた。
「んむ」
ちゅく、と舌を絡め取られ、くすぐるように上顎を舐められる。
ぞくりとした感覚にウィスタリアは体を震わせた。
「ん、んぅ…っ」
キスの心地良さに意識が蕩けていく。
くたりとウィスタリアの体から力が抜けた瞬間を見計らい、アッシュはぐっとエネマグラの先端を押し込んだ。
「んんっ!?」
ずぶ、と中に入り込んでくる異物感にウィスタリアはびくりと跳ねた。
冷たいそれがゆっくりと侵入してくる。
アッシュの唇が離れていくと同時に、ウィスタリアはぎゅっと目を瞑ってシーツを掴んだ。
「んっ、く…っ、ふ…っ♡」
ぐぐ、と入り込むと、アッシュは一旦手を止めた。
「息を止めるな。ゆっくり吐け」
「ふ……っ、は、ぅ…っ」
言われた通りに息を整えると、少しだけ苦しさが和らいだ気がする。
はふはふと浅い呼吸を繰り返すウィスタリアは、不意にあることに気が付いた。
「あ、ぁ…っ、ぇ…?」
エネマグラの突起部分が前立腺に触れているのだ。
それだけではない。
腸壁がうねるたびに突起がぐいぐいと前立腺を押し潰してきて、強い快感が生まれる。
「ひぅ…っ!?や、これ……っ、あぅ…っ!♡」
「気持ち良いか?」
「あ、ぁ…っ、だめ…っ!ぐりぐりしないでっ♡」
アッシュの言葉にぶんぶんと首を横に振った。
これはだめ。本当にだめ。だめだめだめ。
かたかたと全身が小刻みに震え出す。
助けを求めるようにアッシュを見上げたウィスタリアは、はっと息を呑んだ。
アッシュは笑っていた。楽しげに、愉悦に顔を歪ませていたのだ。
ウィスタリアは心のどこかで思っていた。
この人は、とんでもなく意地悪な男だと。
「ぁ…だ、め…あ、しゅ…」
アッシュの手が、ゆっくりとスイッチに触れる。それと同時に、ふくらんだしこりを押し潰すように、ぐっとエネマグラを押し込んだ。
「────ッッッあ゛♡♡♡♡♡」
びくんっ!と身体が大きく仰け反る。
目の前が真っ白になって、一瞬意識が飛んだ。
高速で振動する突起が、前立腺をめちゃくちゃに掻き回す。
強すぎる快楽から逃れようと腰を浮かせるも、アッシュがそれを許さない。
ぐいっと強く引き戻され、さらに奥へと突き刺さってしまう。
「あ゛♡♡あ゛…ッ!!♡♡ぁ、あ…っ、うああぁっ!!♡」
がく、がくんと大きく痙攣しながらウィスタリアは初めてにも関わらずドライオーガズムを迎えた。
絶頂の余韻に浸る間もなく、またすぐに次の波に襲われる。
イっている最中にも容赦なく責め立てられ、何度も連続で達してしまう。
「ひ、ゃッ、あ゛♡あ、あ゛♡♡」
止まらない。終わらない。ずっと気持ちいい。
頭の中で火花が散る。何も考えられない。
開きっぱなしの口からは飲み込みきれなかった唾液が流れ落ち、瞳からはぼろぼろと大粒の涙を零していた。
ベッドの上をのたうち回るウィスタリアを、アッシュはじっと見つめている。
その視線にすら感じてしまい、ウィスタリアは甘やかな声を上げた。
「ふ、あぁっ♡ぁ、ひゅ…こぇ、と…め、て…っ」
「開発してほしいと言ったのはお前だろう?ほら、いい子。頑張ろう」
「む、り…ぃっ♡むりだよぉ…っ!ぁっ、い、く…っ♡♡」
これ以上されたらおかしくなっちゃう。
必死に懇願するも、アッシュは聞き入れてくれない。
こんな状況じゃなければ、優しくてかっこよくてきゅんとしてしまうような笑顔で、ウィスタリアの頭を撫でるだけだ。
「いい子、いい子。私のウィスタリアはいい子で可愛いな」
「んぅぅ〜〜っ♡♡♡」
褒められる度にお腹の奥がきゅんと疼く。
もっと撫でてほしい。もっともっとして。
ウィスタリアの思考は次第に蕩けていき、無意識のうちにそんなことを考えてしまうようになっていた。
あれからどれくらいの時間が経っただろう。数分なのか、数時間なのか。時間の感覚なんてもうとっくに無くなっていた。
「あ、ぁ…っ、あぅ……っ♡♡」
ウィスタリアはぐったりと横たわったまま小さく喘いでいた。
エネマグラは未だにウィスタリアの中に居座っていて、絶え間なく前立腺を苛め続けている。
びくん、と時折思い出したかのように体が跳ねるが、もはやウィスタリアにはどうすることもできなかった。
仰け反ったまま動くことも出来ず、ただひたすらに暴力的なまでの快感を受け止めるしかない。
虚ろな目は焦点が合っておらず、半開きになった口の端から唾液が垂れ続けている。
「ぁ、あ…っ、あー……♡」
「ウィスタリア、私の声が聞こえるか?」
「ぁ、しゅ…」
ぼんやりとした意識の中、アッシュの言葉にこくりと小さく首を縦に振る。
するとアッシュはその頬を両手で包み込んで、優しい声で言った。
「疲れたな。少し休もう」
「ん…んぅ……」
アッシュはエネマグラに手を伸ばすと、ゆっくりとそれを引き抜いた。
ごぽっ、とローションが溢れ出し、ウィスタリアは小さな悲鳴を上げる。
ずる、ずると中を刺激しながら引き抜かれていくそれに、ウィスタリアはふるっと体を震わせた。
「ふぁ……ぁ…♡」
やがて全て抜き終わると、ウィスタリアはくたりと脱力してシーツの上に沈み込んだ。
後孔はすっかりエネマグラの形に広がってしまっており、ぱくぱくと物欲しげに収縮を繰り返している。
その様子を見たアッシュはくすっと笑うと、ウィスタリアの目元にキスを落とした。
「たくさんイけて偉いな。本番はまた今度だ」
「ん、ん…あしゅ…」
ゆるゆるとアッシュの手を握り、そのまま彼の手を枕にしてウィスタリアはくたりと脱力する。
「あっしゅは、いじわるう…」
「はは、可愛い可愛い」
「ん゛うぅ」
拗ねたように唇を尖らせるも軽くあしらわれ、ウィスタリアは不満げに眉を寄せた。
「……つぎ、ほんばん?」
「 ふふ、そうだな」
アッシュは目を細めて微笑むと、ウィスタリアの額や瞼、鼻先など顔中にたくさんのキスを落とす。
「次はもっと可愛がってやる」
「……っ」
ぞくりとする程色気のある声音に、ウィスタリアは思わず息を呑んだ。
この人はどこまで自分を夢中にさせれば気が済むのだろうか。
ウィスタリアはきゅんと胸を高鳴らせ、おずおずとアッシュを見上げた。
「……あしゅ」
「ん?」
「…ぎゅうして」
そう言うとすぐに、アッシュの腕が背中に回される。
アッシュに抱きしめられているという事実に嬉しくなったウィスタリアは、自らも腕を回すと甘えるようにしてその胸に顔を擦り寄せた。
アッシュの匂いが心地良い。
ウィスタリアはそのままゆっくりと眠りに落ちていった。
「……可愛いなお前は」
穏やかな寝息を立てるウィスタリアの髪を、アッシュは愛おしそうな表情で撫でる。
「本当に可愛い。お前ほど可愛い生き物はいないよ」
ウィスタリアは知らない。
自分がどれだけ魅力的なのかということを。
どんな仕草も、言葉も、行動も、全てが自分にとって毒になるのだということを。
「(風呂に入れてやらないとな)」
汗と涙と唾液でぐちゃぐちゃになっているであろう身体を清めるため、アッシュはウィスタリアを抱き上げると浴室へと向かった。