「………」
ぱち、と静かにクラウディオの目が開く。
ぼんやりとした意識の中、視界に映る天井を見つめた。
ここは寝室か。部屋の中がうっすら明るいことから、朝になったのだろう。
ゆっくり起き上がろうとして、腰に激痛を感じて思わず顔をしかめた。
「……っ」
何故こんなにも足腰が痛いのか。
昨日はあのまま意識を飛ばしてしまったが、さすがに、覚えている。
アルカディアにめちゃくちゃにされた。
犯された。何度も。死ぬほど。
正体不明の魔獣の煙を浴びて女性の体になってしまったクラウディオを、彼は一晩中離さなかったのだ。
可愛い可愛いと嬉しそうに言って、何度もキスをして、体を貪って。
おかげで今この状態だ。
全身筋肉痛のような痛みがあり、体が重い。特に下半身が重くて怠くて痛かった。
「…はぁっ…」
寝て起きたら男に戻っていた、なんて都合の良い展開にはならず、まだ体は女のままで。
ごろりとうつ伏せになって両手をベッドに突き、再度起き上がろうと試みる。
「あ、おはよくらでぃお」
すると寝室の扉が開いてアルカディアが顔を覗かせた。ひょこひょこと駆け寄ってきた彼はベッドに腰掛けて、クラウディオの体を支える。
「大丈夫?起きれる?」
アルカディアの手を借りてなんとか体を起こす。この一連の動作だけでもう疲れた。体力がないわけではないのに、いつも以上に疲労感がある。
「………」
じ、とアルカディアを見上げる。
いつも通りの、見慣れたアルカディアの表情。昨日のアレは何だったんだと言いたいくらい普段通りだ。
まるで夢でも見ていたかのような感覚になる。
「なんかいつもよりやらしいね」
伸びた髪がぼさぼさに乱れて、目元を隠したクラウディオの顔。それを指先でそっと横に流し、現れた瞳を見て微笑む。
その目は少し潤んでいて、赤く腫れていた。泣かせすぎたせいだ。
しかしそれはそれで扇情的で、可愛らしくも見えるから不思議である。
だっていつものクラウディオじゃ、こんな顔見れない。
「…そうだ、くらでぃお、しんどくない?昨日のじゃなくて、魔力の方」
「…魔力…?あぁ、すこし」
「魔力の流れ、ずっと変だね。男女で違いとかあるのかな」
「…お前、気付いてたのか」
「うん。変な流れ方してる。体とかちょっと疲れやすいかもね」
そう言ってアルカディアはクラウディオの髪に触れる。そしてそのまま頭を撫でた。
クラウディオがあの煙を浴びてから、彼の魔力は常に不安定な状態にあった。女性化したことにより体内を流れる魔力の循環が変化したのか、それとも魔獣の能力によるものなのかは分からないが、とにかく安定していない。
一直線に流れていた魔力が波打っているかのような。そんな感じなのだ。
昨日クラウディオが珍しく混乱していたり、訳が分からなくなってしまっていたのは、おそらくこの影響も大きいだろう。
「…セオドアさんに明日お休みの電話しといたよ」
「…ああ…ありがとう…。……そのまま言ったのか?」
「ううん。魔力の流れが変になってるみたいっていうのだけ。様子みてとりあえず3日くらいは休んでほしい、って言ってた」
ただでさえクラウディオの忙しさはセオドアもよく知っていたから、これを機に休んでくれと思っているのだろう。
「…3日で元に戻ればいいがな…」
ため息混じりに呟かれた言葉に、アルカディアは目を細めて笑った。
もし戻らなかったらどうしようか。
一生このままかもしれない。
それは少し、寂しいかも。
そう思いながら、髪を触っていた手を頬に滑らせて優しく触れる。
「俺がずーっと一緒にいるよ」
「………ああ」
くすりと笑ってくれたのが嬉しくて、ぎゅうっと抱き締める。
「スープ作ったけど、飲める?」
「ああ、ありがとう」
クラウディオの手を引いて、アルカディアはベッドを降りる。
寝室を出たところで、くいっと繋いだ手を引かれた。
「先に顔洗ってくる」
「はーい」
ふらつく足取りの彼を心配しつつ、後ろ姿を見送った。
さて、準備をしよう。
飲みやすいようにスープをマグカップに注いで、ソファー前のテーブルに置く。
リビングに戻ってきたクラウディオはゆっくりとした動きで腰掛けた。まだ疲れが残っているようだ。
「はい、くらでぃお」
「ん……」
差し出されたマグカップを受け取って、口をつける。
優しい味だ。体が温まる。
ほっとした気持ちになった。
アルカディアが隣に座ってじっと見つめてくるものだから少し居心地が悪いが、黙ってスープを飲んでいく。
「…ねぇね、俺いまのくらでぃおにやりたいこといっぱいあるんだけど、やっていい?」
「……………例えば」
昨日の今日でこんなことを言われて、嫌な予感しかしない。
思わず身構えてしまう。
だが、そんな不安とは裏腹に、アルカディアの口から出てきたのは案外可愛らしいことだった。
「まず抱っこしたい。膝に乗っけたい。あと頭もいっぱい撫でたい」
「……なんだそれ」
「いつもくらでぃおの方が大きいから、今ならできるんじゃないかなって」
クラウディオがよくアルカディアにしていることだ。確かに今なら体格的に可能だろう。
彼曰く、ずーっとやってみたかったらしい。
「まぁ…それくらいなら」
ぱっとアルカディアの顔が明るくなり、途端ににこにこと嬉しそうに笑う。
可愛い。だから甘やかしたくなるのだ。
「やった。ありがとくらでぃお」
それに体格差でねじ伏せてもっとめちゃくちゃにしてやりたい。立ったまま後ろから突いて、奥までぐりぐりと押し付けたい。今しか出来ない。
アルカディアは賢いので、本音は言わないけれど。
「……お前、今ろくでもないこと考えてるだろ」
バレてた。
やっぱりさすがクラウディオだ。勘が良い。鋭い。
「えへ」
誤魔化すように笑って、手を伸ばしてクラウディオの頭をわしゃわしゃと撫でる。それから両手で耳に触れたり首筋に触れたりすると、くすぐったそうに身を捩られた。
可愛い。何しても可愛い。
「…あとで買い物行かないとな。もうほとんど無いだろ冷蔵庫」
「え〜、行かなくても大丈夫。昼も夜もデリバリー頼もうよ」
「……3日間も?」
「うん。3日もずーっと一緒に居られるなんて中々ないし」
ね?と首を傾げてみせると、呆れたような表情を浮かべてため息をつかれる。
そしてまた、しょうがないなという風に笑われた。
あ、今の良い。その表情好き。
「それに、下着も着けないで買い物行くの?」
結局クラウディオはずっとノーブラノーパンなのだ。そんな格好で外に出せるわけない。ただでさえとんでもない体してるのに。
無自覚だったのだろう。珍しくハッとした顔をしたあとぼそりと答える。
「……じゃあ買ってきて」
「一緒にいたい」
つまり答えはノーだ。
クラウディオはやれやれといった様子でため息をついた。
「はいはい」
「やった〜。あとで何頼むか決めようね」
「……ああ」
久しぶりの穏やかな休日。朝起きて、ご飯を食べて、こうしてゆっくり過ごしている。
たまにはこういう日も良いかもしれない。
穏やかすぎたのだろうか。
珍しくクラウディオが昼寝をしていた。
手には本を持ったままで、寝落ちしてしまったようだ。
珍しいこともあるものだと、その姿を見て微笑ましく思う。
ソファーに座ったまま眠る彼の手から本をそっと取り上げてテーブルに置き、ブランケットをお腹のあたりにかけてやる。
そのまま隣に座り、顔を覗き込んだ。
寝顔がいつもと一緒で安心する。
しかしまだ魔力の流れが安定していないのか、未だ不安定に波打っているのが分かる。
滅多にしない昼寝も、不安定な魔力が関係しているのだろう。
「…………」
頬にかかった髪を指先で払ってやり、そのまま頭を撫でると、ぴくりと反応があった。
起こしてしまったかと思ったが、まだ眠っているようだ。
しばらくそうしていたが、一向に起きる気配が無い。
ふわりと甘くていい匂いが鼻腔をくすぐる。
「……くらでぃお、」
名前を呼んでも返事はない。
この匂いは、あまり、良くない。我慢が出来なくなる。
無意識に喉が鳴った。
クラウディオの体を自身にもたれさせて、背後から抱き締める。
首元に顔を埋めて、思い切り息を吸い込むと、より強く甘い香りがした。
「……っ」
ぞくりと背中を駆け上がる感覚。体が熱を持つ。
理性が溶けていく。
本能のままに動いてしまいそうだ。
「…………」
駄目だ。
このままでは本当に襲ってしまう。
なんとか耐えなければ。
「…………くらでぃお、」
名前を呼びながら、クラウディオの胸に手を這わせる。
服の上から胸を揉み、ゆっくりと刺激を与えていった。
柔らかさを楽しむように何度も繰り返し、時折先端を掠めるように弄ぶ。
「ん……」
少し身を捩ったが、それでもまだ眠ったままだ。こんなにされてもまだ起きないのは、それだけ疲れているという証拠でもある。
まぁ疲れさせたのは自分だが。
むにむにと優しく触っていたが、段々と楽しくなってきたので少し強めに掴んだり、引っ張ったり、親指でぐりぐりと押してみる。
「んん…」
少しだけ眉間にシワを寄せたが、やはり起きない。
「……可愛い」
思わず呟いて、耳を食んだ。
ちゅっと音を立ててキスをし、舌で舐めて、甘噛みをする。
「っはぁ、」
びく、とクラウディオの肩が小さく跳ねた。
吐く息が熱い。
なんだか興奮してきた。
「…ん?」
ぶわりと、一気に甘い香りが強くなった気がした。
そして彼の魔力がさらに波打った気配。
波形にすると、きっととてつもなく大きな山を描いているだろう。
「…う、ぁ…?」
ぼんやりとした声が聞こえてきた。
どうやら目を覚ましたらしい。
「……くらでぃお、大丈夫?」
声を掛けるが、返事は無い。
びりびりと魔力の圧がぶつかってくる。
「どこか痛いとか、辛いとか、無い?」
「…ぁ、あ……?」
クラウディオはぼんやりした瞳で振り向く。
魔力で頭がくらくらしているのか、上手く状況を飲み込めていないらしい。
胸を鷲掴んだままなのに、怒られないのがその証拠だ。
「大丈夫?」
「だい…じょ…うぶ…、」
呂律の回らない口調でそう言う。
彼の表情を見るに、痛みや辛さはなさそうだ。勝手に魔力が暴れているせいで意識が混濁しているだけのように見える。
「ベッド行こっか」
これは広いベッドで寝かせてあげた方が良さそうだ。
クラウディオの膝裏に手を差し込み抱き上げる。
「…?……?」
何も分かっていない彼はされるがままだ。
まだ状況を理解できていないのか、ぽやっとしたまま動かない。
可愛い。また見たことの無い彼が見れた。
寝室まで運んでベッドに下ろし、自分もクラウディオの隣に横になる。
「……ある、か、でぃあ…?」
「なぁに」
「なんで、ここ…」
寝ぼけたような口調で、クラウディオは不思議そうに首を傾げている。自分はソファーに居たのにな、と思っているのかもしれない。
「俺が運んだよ。覚えてない?」
「……?」
「無理しなくて良いからね」
まだ覚醒しきっていない頭で必死に考えているのだろう。
その様子を見ているだけで楽しい。
いつもの彼は、どんな時でも明瞭な答えを出す。酔っていても、寝起きでも。
だからこそ、こうして戸惑っている姿を見ると可愛くて仕方がない。
しばらく待ってみたけれど、まだ意識は混濁したままのようだ。
相変わらず魔力は荒れ狂っている。まるで嵐のように。
アルカディアは小さく笑って、クラウディオの頬を撫でた。ゆっくり瞬きをしながらじっと見つめてくるクラウディオに、笑顔で返事をする。
「眠い?」
「…いや…眠くない…、けど…目がまわってる…」
少し意識がはっきりしてきたのだろうか。先程より言葉がしっかりしてきた気がする。
「もし気持ち悪くなったりしたら言ってね」
「……うん」
素直にこくりと一つ、首肯される。
クラウディオはしばらくぼーっとした様子で天井を見上げていたが、やがて視線がこちらへ戻ってきた。
「…………」
「どうしたの」
「……………さっき、何してた」
そう問われ、一瞬思考が止まる。
ぎく、と分かりやすく動揺してしまった。
「……ん〜」
誤魔化すように笑うが、そんなことでごまかせるはずもない。
「……」
「……」
無言でじぃっと見つめられ、観念する。
「………………触ってた」
「…どこを」
「胸」
瞬間べちっと頬を叩かれた。
ほとんど力が入っていなかったおかげでダメージはないが、なんだか可愛くてグッときた。
「変態」
「あ、いまの言い方可愛い。もう一回言って」
「喜ぶな」
今度はぺちんと頭を軽く叩かれる。
しかしやはりあまり力は入っていない。
だが先程よりはだいぶ回復しているようで安心した。
「もう一回言って」
「変態」
「かわい。もう一回」
「うるさい」
「……えい」
「ぁっ♡」
隙を見て胸の先端を摘むと、途端に色っぽい声が飛び出してきた。
びくんっ!と体が跳ね、顔を真っ赤に染めたクラウディオが慌てて口元を押さえている。
アルカディアはぱちぱちと目を丸くし、そしてすぐににま、と笑った。
「なんか感度良くなってない?」
「っ、ぅ…」
「ねぇ」
「ぁっ、あっ!」
くにゅ、と指先で転がすと、びくびくと震えながら甘い声を上げる。
その反応を見たアルカディアは確信した。
やはり感度が良くなっている。それもかなり。
何故だろう。昨夜抱いた時はこんな風ではなかったはずだ。
少し考え、思い当たる節があった。
──あの魔獣の、煙。
クラウディオの魔力の流れをぐちゃぐちゃにするくらい強い作用を持っているのだ。魔力の暴走に合わせて催淫効果なんてものが付いていてもおかしくはない。
だって男を女にするような煙なんだし。
「ぁ、うっ…ぁっ、」
かり、と爪を立てると、びくっと腰が浮く。
そのままカリカリッと引っ掻くと、甘い声と共に背筋が反った。
可愛い。可愛い、が、正直あまり無理はさせたくない思いもある。
いまのクラウディオは疲労だったり魔力が不安定だったりで、調子が悪い状態だ。これ以上の刺激は体に負担をかけてしまうかもしれないし、本当に壊れてしまうかも。それは嫌なので、なるべく優しく触れることにした。
「ふぁ……あ…あ…っ」
ゆっくりと胸を揉みほぐしていく。
乳輪をくるりとなぞり、先端には触れず焦らす。
自分にとっては辛いが、今日は挿れるのは我慢だ。
その代わり胸だけはアルカディアが満足するまで好きにさせて貰うことにした。
「ん、ん…もぉ、やめ、ろ…っ」
ぴくぴくと肩を震わせながらも、一応抵抗の意思はあるらしい。
可愛いなぁと思いつつ、クラウディオの体を起こして背後から抱きしめた。
枕にもたれながら羽交い締めをするような体勢で胸を鷲掴む。
力の差は歴然で、いくら彼が暴れても全く意味がない。
それを理解したのか、クラウディオは諦めたように脱力し、大人しくアルカディアに身を委ね始めた。ぞくぞくする。
「くらでぃお、可愛い」
「うるさ……ぃ…」
下から持ち上げるようにして全体を包み込む。
柔らかな感触が手に馴染んで心地良い。
ふに、ふに、と形が変わる度に彼の口からは吐息が漏れた。
「はぁ…は…は…」
「きもちいい?」
耳元で囁くと、彼は小さく首を横に振った。
強情なところも可愛くて仕方ない。
アルカディアはそのまま手を滑らせていき、今度は胸の先端をくりゅっと押し潰す。
すると面白いほどに体が跳ね、またも艶やかな声が響いた。
「あッ♡」
腰から下がぐねぐね動くのがわかる。
快楽から逃げようとしているのか、無意識に体を捩っているようだ。
しかしアルカディアの腕の中に居るため、逃げることは叶わない。
「ぁ、うっ、ゃ、や……!」
親指と人差し指で挟んだまま、ぐり、と左右に捻る。
途端にぎゅうぅ…!と強く握られ、痛いくらいの快感が走った。
びりびりと痺れていくような感覚に、視界がチカチカする。
呼吸が乱れ、上手く頭が働かない。
もうやめて欲しかったけれど、アルカディアの愛撫が止まることは無かった。
「ひ…っんっ、〜っ……!♡♡」
今度は爪を立てて先端を引っ掻かれる。
かり、こり、と弄られる度に強い刺激が襲ってきて、思考が溶けそうになる。
服越しに引っ掻かれるのがとてつもない気持ち良さで、クラウディオは堪らず身をよじった。
「あっ、ぁ…!ひっ…ん、ぁ…♡」
「可愛い」
「ぅ……ぅ…♡」
「もっと聞かせて」
「い、ぃ…加減…にし…ろ……っ」
「なんで?気持ち良くない?」
「そ、じゃな…」
どろどろと思考が蕩けてくる。
このままではまずい。
怒涛の快楽が襲ってきて、もういっぱいいっぱいなのだ。
これ以上はだめだ。でないと──。
「…〜〜〜〜〜〜ッッ♡♡♡」
きゅうううっ♡と摘まれた瞬間、頭の中で何かが弾けた気がした。
声にならない声を上げ、びくんっ!!と大きく体が跳ね上がる。
びくっ、びくっ、と痙攣しながらクラウディオの足が宙を蹴っていた。
絶頂を迎えたのだ。
そんな彼に構わず、アルカディアは尚も胸への責めを続けた。
くにゅくにゅと揉みしだいたり、カリカリと引っ掻いたり、ピンと弾いてみたりする。その度にびくんびくんと体が跳ね上がる。
「…っ♡♡……っっ♡♡♡」
無意識に体を丸めようとしてしまうが、アルカディアに抱き込まれているせいでそれは叶わなかった。
それどころか胸を突き出すような形で固定されてしまい、余計に快楽が強くなっていく。
「可愛い。胸だけでイっちゃったの?」
「〜〜っ♡♡……っ…っっ♡」
必死になって首を横に振る。
否定しているつもりなのだろう。
だが体は正直で、先程からずっと小刻みに震えていた。
「素直じゃないなぁ」
「んんっ…!?」
ぎゅうううっ!!と乳首を強くつねると、びくっと腰が浮いた。
そのままくにゅくにゅと揉みほぐすと、腰がびくびくと震え始める。
「ぁ、ぁ……ぁ…♡」
腰が浮き、ゆらゆらと揺れている。
まるで発情期の猫のようだ。
「腰動いてる。どうしたのくらでぃお?」
「…っ、う…ぁ……♡」
わざとらしく問いかけるも返事はない。
ただただ荒い息を繰り返しながら喘いでいるだけだ。
相当感度が良くなっているらしい。
「くらでぃお、ここ好き?」
「あ゛ぅッ♡♡」
ぎゅううっ♡と強くつまみ上げると、一際大きな声が上がった。
そのままぐりぐりと捏ねくり回したりカリカリと引っ掻いたりしてやる。
すると面白いくらいに体が跳ね上がり、甘い声が響き渡った。
「あ゛っ♡あ゛っ…あ゛っ…♡♡」
「ねぇ、好き?」
しつこく問い詰める。
その間もぐりぐりと胸を虐め続け、クラウディオを追い詰めていった。
やがて観念したのか、彼はぽつりと呟く。
「……す、き……」
消え入りそうな声で、小さく答えるクラウディオ。
ぞくぞくとアルカディアの背中に快感が走り抜けていき、全身が熱くなった。
可愛い。可愛すぎる。
何この生き物。
「…はーっ♡はぁっ…♡」
びくびくと体を震わせ、熱い吐息を漏らしている。
瞳には涙が滲んでいて、頬は真っ赤に染まっていた。
その姿があまりにも扇情的で、アルカディアの興奮は最高潮に達してしまった。
挿れたい。でも今日は我慢だ。そう自分に言い聞かせ、なんとか理性を保つ。
「くらでぃお、いい子」
ちゅ、と頭にキスを落としてから彼の服を捲り上げた。現れたのは大きな胸とぷっくりと赤く腫れ上がった2つの突起。
「ぁ、う、…」
白くて綺麗なそれをするりと指で撫でる。するとそれだけでぴくんと体が跳ね、吐息が漏れた。
やわやわと全体を包み込み、ゆっくりと刺激していく。
「マシュマロみたい」
ふにゃりと柔らかい乳房に指を沈め、優しく愛でる。
少し力を入れると形を変え、とても心地良い感触が伝わってきた。
きゅっと乳首を引っ張ってやれば、「んんっ!」とくぐもった声が聞こえてくる。
「ん…っんん……っ」
親指と人差し指を使って摘み上げ、くにくにと弄ぶ。
するとびくびくと腰が跳ね、甘美な声が響いた。
「う、ぁ♡んっ…ん……♡」
「気持ちいいね」
「ん…っ♡」
「もっと気持ち良くなって」
「あっ♡」
かりかりと先端を引っ掻くと、またもやびくんと腰が跳ね上がる。
そのままくにくにと弄び、もう片方は爪を立ててかりかりと引っ掻き続けた。
「ぁ、ぁ、ぁ…♡んん……っ♡」
白い足がシーツの上を滑っている。
快楽から逃れようとしているのだろうが、そんなことを許すはずがない。
アルカディアは両方の乳首を摘むと、ぎゅうううっと引っ張り始めた。
「〜〜〜〜〜〜ッッッ♡♡♡」
強い痛みと快楽が同時に襲ってくる。
びくびくと体が痙攣し、視界がチカチカと点滅した。
アルカディアの腕の中で仰け反って絶頂を迎える。口の端からは唾液が零れ落ちていた。
「あっ、あ゛っ、〜〜っっ♡♡」
絶頂を迎えた後もアルカディアの手の動きは止まらない。
ぎゅううっと引っ張ったり、カリカリと引っ掻いたりしてくるものだから、その度に絶頂を迎えてしまう。
何度も絶頂を迎えたせいか、クラウディオの顔はすっかり蕩けてしまっていた。
虚ろな目で快楽に溺れている。
「……っ♡……っ……♡」
「くらでぃお、可愛い」
アルカディアは再び胸に手を伸ばすと、今度は直接揉みしだいていく。
柔らかなおっぱいが揉まれる度にぐにゃりと形を変える。その光景が酷く官能的だった。
──もう訳が分からない。頭がおかしくなりそうだ。
どうしてここまで感じてしまっているのだろう。頭はずっとくらくらしているし、体は重いし、全然力が入らない。
このままでは本当にまずい。
これ以上されたら壊れてしまいそうだった。
だから早く終わって欲しかった。なのに、 アルカディアが止まる気配は無い。それどころか更に激しく責め立ててきて、どんどん追い詰められていってしまう。
そしてとうとう、その時が訪れてしまった。
びくびくと腰が震え、太腿がガクガクと震え出す。
何かが迫り上がってくる感覚に焦燥感を覚えた。
だめだ。これは駄目だ。
「ぁ、ぁ、ぁ……♡」
恐怖を覚えたのなんていつぶりだろう。
がく、がく、と腰が揺れる。
いやいやと首を横に振っても、アルカディアは決して止めてくれなかった。
むしろ一層強く胸を虐め始める。
嫌だ。怖い。助けて欲しい。
だが彼は無慈悲にも胸への愛撫を続けていく。
やがて限界が訪れたのか、一際大きく体が跳ね上がった。
「あ゛ッ!?♡♡」
びくんっ!!と一際大きな反応を見せた後、全身が硬直する。
ぷしゅ、ぷしゃああ…と透明な液体が吹き出し、ベッドを濡らしていく。
足の指先までピンと伸び、背中が大きく弓形に反り返った。
「あ゛♡ぅあ゛♡あ゛、あ゛……っっ♡」
びく、びく、と小刻みに体が跳ねている。
どうやら胸だけで潮を吹いてしまったらしい。
仰け反ったクラウディオの顔は甘く蕩け、口からは唾液が伝っていた。瞳は焦点があっておらず、どこを見つめているのかもわからない。
その姿があまりにも淫靡で、アルカディアはごくりと唾を飲み込んだ。
もっと乱れさせたい。この美しい男をめちゃくちゃにしてやりたい。
そんな欲望が湧き上がり、下半身が熱くなる。
しかしここで我を失うわけにはいかない。
アルカディアは必死になって己の本能を抑えつけ、自身の胸に後頭部を押し付けて痙攣するクラウディオの頭を優しく撫でた。
「くらでぃお、頑張って偉かったね」
「…ぁ、ぅ……♡」
ぎゅうう、と服を握り締められていることに気付き、愛おしさで胸がいっぱいになる。
かわいい。
「くらでぃお、大好き」
ちゅ、ちゅ、と顔中にキスを落とす。
額や頬に口付けをする度、ぴくんと身体が跳ね上がった。
「はっ…♡ぁ……っ♡」
やがてゆっくりと痙攣が収まっていき、くたりとアルカディアに身を預けてくる。
それでもまだ小さく震えているのが可愛くて、頬が緩んでしまう。
それにしても、まさか胸だけで潮を吹くとは思わなかった。
いつもより敏感になっているとはいえ、ここまで乱れるとは予想外である。
アルカディアはぺろりと唇を舐めると、再び胸に手を伸ばした。
「……っ」
すると、びくんっと大袈裟なほどに震えたクラウディオが、身を守るように丸まってアルカディアに背を向けた。その行動に、アルカディアはぴしりと固まってしまう。
……拒絶されてしまった?
「……くらでぃお?」
恐る恐る声をかけてみるも、返事はない。自身の膝の上で縮こまっている恋人の姿に、アルカディアはショックを隠しきれない。
嫌われてしまっただろうか。もう二度と触らせてくれないかもしれない。そんな不安が脳内を埋め尽くしていく。
ゆっくり彼の顔を覗き込むと、口を手で覆って荒い呼吸を繰り返していた。ぼたぼたと涙が溢れて、小さく震えている。
「ごめんなさい」
アルカディアは咄嵯に謝った。
衝撃だったから。
昨日みたいな、快楽からくる涙に見えなかった。恐怖によって流されているように見えたのだ。
あのクラウディオが、怯えてる。
そう理解した途端、一瞬にして血の気が引いた。
「ごめ、おれ、やりすぎた」
慌てて謝罪するも、やはり返事はなかった。
…当たり前だ。あれだけ怖がっておいて許してくれるはずがない。
「…なかないで、くらでぃお…」
ぼろぼろと零れ落ちる涙を拭ってやる。
それでも泣き止まない彼に、どうしたらいいかわからなくなった。
もう何を言っても無駄なような気さえしてくる。
小さく震え続けるクラウディオを抱きしめて、おろおろと狼狽した。
「…なかないで、おねがい」
「……」
「きらわないで、おねがいだから」
「……っ」
「なんでもする、だから、きらわないで」
嫌いにならないで。お願いだから。何でもするから。
何度もそう呟いて、ひたすら懇願する。
するとよろよろとクラウディオの腕が伸びてきて、弱い力で押しのけられた。
「…ぁ」
拒否されたのだと悟った瞬間、目の前が真っ暗になった。
絶望で視界が歪む。胸を引き裂かれたかのような痛みを感じた。
「…い、ま…さわるな…」
弱々しい声でそう言われ、全身が凍り付く。
どうして?本当に嫌われてしまった?
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
絶対に離さない。手放してなるものか。
そう思ったら無意識のうちに腕を伸ばしていた。
「やだ…」
「やだ、じゃ、な…いま、やめろ…」
「…なんで…」
抵抗されたが、構わず後ろから抱きつく。
ぎゅう、ときつく抱きしめて、首筋や肩口に顔を埋める。
そのまま思い切り息を吸い込めば、汗の匂いと彼自身の香りが入り混じって鼻腔を満たした。
「ゃ、め、……っ♡」
びくんとクラウディオの体が跳ねた。
あれ、と不思議に思って彼を見ると、相変わらずぼろぼろ泣きながらこちらを睨みつけている。
「いま、やめろ…っ」
「なんでなの」
「や、め…っ」
「ねぇ、なんで」
「ぁ……っ♡」
「くらでぃお」
「っ……!♡♡」
もう一度名前を呼べば、びくびくっと体を痙攣させた。そしてまたぐったりと力を抜いてしまう。……もしかして。
「ずっとイキっぱなしになってるの?」
「っっ!!♡♡♡」
図星だったのか、大きく目を見開いたクラウディオは必死に首を横に振った。だがそんなものは何の意味も成さない。
だって、こんなにも可愛い反応をされて我慢できるわけが無いのだから。
「なんで触っちゃ駄目なの」
「…ひ♡」
ぎゅうっと震えたままの体をさらに強く抱き締める。耳元で囁くように問い掛ければ、彼はいやいやと首を左右に振り始めた。
「おしえて、くらでぃお」
「ぁ♡……ぅ…♡♡」
「おねがい」
「…はな、せ…」
掠れた声で言うと、身を捩って逃げ出そうとしてきた。アルカディアは逃がすまいと腕の力を強める。そのせいで密着度が増してしまい、お互いの体温を感じ取ってしまった。
それが引き金となったのか、突然ぶわぁっ、とクラウディオの瞳から大量の涙が溢れ出した。
「っ!?」
ぎょっとして動きを止めると、クラウディオはアルカディアに向き直って勢いよく抱きついてきた。
ぎゅうっと思い切りしがみついてくる。
「ぁっ♡ぁっ♡ぁっ♡」
アルカディアの胸に顔を埋めて、がくがくと震えている。さすがに心配になって、アルカディアは眉を下げた。
「くらでぃお、大丈夫?」
慌てて背中をさすってやる。
するとびくんっ、と一際大きな痙攣を起こし、絶頂した。
「──っっっ♡♡♡」
声にならない悲鳴を上げ、アルカディアにきつくしがみついたまま動かない。
どうしよう。大丈夫だろうか。
アルカディアは、とりあえず頭を撫でて落ち着かせようと試みる。すると少しだけ力が緩んだ気がした。
「くらでぃお?」
「…っ♡…ふ……っ♡」
まだ余韻が残っているらしく、時折びくんっと身体が震えている。
それでもゆっくりと深呼吸を繰り返して呼吸を整えようとしている姿に、アルカディアの胸がきゅんと高鳴った。
「い、く…の、とまん、な……っ」
涙声で訴えられ、ごくりと生唾を飲み込む。
快楽が強すぎて苦しいのだろう。可哀想で可愛くて仕方がない。
もっといじめたい。めちゃくちゃにしてやりたい。
そんな欲求が沸々と湧き上がってくる。
アルカディアが触るだけで、呆気なく達してしまうほど敏感になっているのだ。
それなのにアルカディアにしか縋れなくて、イってしまうのにしがみついてくる。
可愛い。可愛い。
「あ、る、か……っ」
舌足らずな声で呼ばれ、思考が停止する。
無意識に息を止めていたことに気付き、深く呼吸をした。
「…たす、けて……」
その言葉を聞いた瞬間、ぷつん、と何かが切れた音がした。
気付いた時にはもう遅い。
ゆっくり顔を上げたクラウディオは、涙と唾液で顔を汚していた。真っ赤に染まっている頬には幾筋もの涙の跡があって、虚ろな表情でこちらを見つめてくる。
「おね、が…っ」
もう無理。限界だ。
理性がぶっ飛んだ。
もう我慢できない。
ごめんなさい。許して。
「……ごめんね、くらでぃお」
ベッドのど真ん中を陣取って丸くなるクラウディオ。あれだけ我慢したのに、結局欲望のまま抱いてしまった。
彼の体の負担を考えると反省すべきなのだが、それでも後悔していない自分がいる。
だって、彼が“助けて”と言ったのだ。あんなにも切羽詰まった声で。今すぐどうにかしてほしいという目で。
そんなの、誰だって我慢できなくなる。
あれは反則だ。
何しても絶頂してしまうような状態を解放するには、もう気絶するしかないだろう。そうに違いない。
だからアルカディアは欲望に任せて彼を何度も犯してしまった。
もう前後不覚になっているクラウディオに騎乗位をさせて、自分から腰を振らせて。正直最高だった。
最後の方はもう泣き叫んでいたけど、それも興奮材料の一つになってしまった。
本当に酷いことをした。自覚してる。
だから、意識を取り戻したクラウディオは完全に拗ねていた。
「床で寝ろ」と吐き捨てた彼はベッドを独り占めしている。いつもより小さいから独り占めしても空いたスペースは結構ある。可愛い。
「くらでぃお〜…」
床に座り込んで、彼の名前を呼ぶ。
返事はない。
「一緒にご飯食べようよ〜」
「食欲がない」
「じゃあお茶しよ」
「いらない」
取り付く島もない。
だがここで諦めたら駄目だと自分を奮起させる。
「俺とお話しよ」
「しない」
「一緒にテレビ見よ」
「みない」
むぅ、と唇を尖らせる。
ここまで頑ななクラウディオは初めてかもしれない。
だがなんとか許してもらいたい。
「こっち向いて」
「………」
「俺のこと好き?」
「………」
「俺はくらでぃおのこと大好き。愛してる」
ぴく、と反応があった。
それに嬉しくなってさらに続ける。
好きだよ。
ずっと傍にいて。
ずっと隣にいてほしい。
離れたくない。離したくない。
絶対に幸せにする。
「こっち向いて、くらでぃお」
「……」
「お願い」
ベッドの縁に腰掛けて、優しくさらさらとした髪に触れる。
そのまま手櫛を通すように頭を撫でると、そっぽを向いていた彼はゆっくりと振り返った。
「くらでぃお」
彼の顔はいつも通り綺麗だ。でも少し腫れぼったい目をしていて、目尻は赤く染まっている。
「俺のこと見て」
寝そべる彼に覆い被さるようにして、するりと両頬に手を当てる。そして真っ直ぐに見下ろした。
「ずーっと、俺のこと見てて」
「……お前以外、見る気ない」
その言葉が、何より嬉しい。
ああ、やっぱり彼が好きで好きで堪らない。
この気持ちが溢れて止まらなくなる。
「だいすき」
ちゅ、と触れるだけのキスをした。
すると、彼が瞼を閉じるもんだから。
ぎゅうっと胸が締め付けられて、もう一度。