10年振りの行為で、いきなり結腸を抜かれた。
ぐぼん、と腹の奥が開く音がして、結腸に亀頭が入り込む。アルカディアの視界は真っ白に染まり、声も出せずに絶頂した。快楽なのか苦痛なのかもわからない感覚だった。
しかし、その感覚は長く続かない。結腸に入り込んでいたペニスはすぐに引き抜かれて、再び中を貫いたからだ。今度は、奥まで一気に押し込まれた。
どちゅん!と鈍い音を立てて、また結腸を貫かれる。

「ぅあんっ♡」

喉から悲鳴じみた喘ぎ声が出た。
腰を掴まれているせいで逃げることもできない。何度も激しくピストンされて、結腸を穿たれ続けた。
ばつっ、ばちんっと肌を打つ音が部屋に響く。
10年振りなのにあまりにも容赦がない。会えなかった分を取り戻すかのように、激しく求められるのは嬉しいけれど。いくらなんでも激しすぎる。
クラウディオに後ろから犯され続け、自身の体も支えられなくなってシーツの上に崩れ落ちた。尻だけを高く上げた体勢になる。
そのまま容赦なく責められて、もう何度目かもわからない絶頂を迎えた。

「ふあぁッ……♡」

びくびくっと体が痙攣する。全身から力が抜けていく。もう指一本動かせないほど疲弊していた。それなのにまだ終わりではなかったらしい。
ぐぼぐぼと結腸を突かれ続けて、喉の奥から苦いものがこみ上げてくる。

「…ぁっ、う」

胃液だ。慌てて口元を押さえ、シーツを握りしめた。内臓がずっと押し上げられていたからだろうか。

「く、ゃ…ぃお…らめ…まって…」

苦しい。気持ちいいけど苦しくて仕方ない。
必死になって訴える。あまりに苦しそうな声をしていたのか、クラウディオはぴたりと動きを止めてくれた。

「何、どうした?」

「は……きそ…」

アルカディアが絞り出すような声でそう言えば、クラウディオはぱちりと目を瞬かせてから小さく笑った。

「吐いてもいいぞ」

「や…ら…」

何も口にしていないのだから吐いても出るのは胃液だけだ。それでも嫌なものは嫌なのだ。クラウディオの前では綺麗な自分で居たいと願ってしまう。
しかしそんなアルカディアの願いを知っているはずなのに、全部お見通しのはずなのにクラウディオは抽挿を再開した。しかも先程よりも激しいものだ。

「あぐっ♡♡」

どちゅどちゅと奥を突き上げられる度に、口から胃液混じりの唾液が溢れた。
だめ、ほんとうにむり。限界。これ以上されたら本当に戻してしまうかもしれない。
ぼろぼろと涙を流すアルカディアを見下ろしながら、クラウディオは楽しげに笑うだけだ。

「気にするな。お前なら何をしても可愛いよ」

酷い男だと思う。こんなにも苦しんでいるというのに、彼は愛おしいと言わんばかりに頭を撫でてきた。

「ひぅ…っ」

どちゅんどちゅんと結腸を虐められ続ける。あまりの激しい快感に目の前がちかりと光る。

「はは、可愛い可愛い」

背後からは愉悦を含んだ笑い声が聞こえた。
意地悪が過ぎる。昔から何も変わってない。むしろもっと酷くなっている気がするのは気のせいではないはずだ。
結腸を抜かれたことは初めてでは無いけれど、昔の自分はよく耐えていたものだなとアルカディアは思う。

「ぅ、あ…もぉ、無理…ゆるしてぇ……」

ぐずぐずに蕩けた思考ではまともに考えることすらできなかった。
アルカディアの言葉を聞いているのかいないのか、相変わらず結腸を責められる。もう無理だと訴えても止めてくれない。

「吐けばいいだろう?ほら、がんばれ」

まるで子供でもあやすかのような口調だった。
優しい声とは裏腹に、結腸を責め立てる力は強くなる一方だ。
馬鹿。意地悪。最低。変態。
心の中で散々罵倒しながら、必死に耐える。
しかしそれも長くは続かなかった。
ごぽりと、喉の奥から音がして、次の瞬間には嘔吐していた。

「…ぁ、う……う゛っ」

予想通り水や胃液しか出てこない。それでも不快感と羞恥心に苛まれることに変わりはなかった。
吐き出した液体がシーツの上に染みを作る。
がたがたと震えながら口元を押さえていると、後ろから抱きしめられた。

「頑張ったな」

耳元で囁かれる甘い言葉。
ずるい。結局こうやって甘やかすんだから。

「うぅ〜っ」

恥ずかしさと情けなさで涙が出てくる。
しかし、そんなアルカディアの様子を見て、何故かクラウディオは嬉しそうに笑っていた。

「可愛い」

ちゅっと頬にキスをされる。
この男は本当に性格が悪いと思う。
ごちゅ、と再び奥まで貫かれた。

「あっ♡ぁう゛…っ」

突き上げられるたびに、押し出されるようにして胃液が零れる。そのせいでシーツの上には吐瀉物が広がっていた。
吐いている最中に動かれるのは辛いし、それをわかっているはずなのにクラウディオは動きを止めてくれなかった。

「う、えっ、んぐっ」

喉が焼けるように痛かった。苦しい。気持ち悪い。だけど気持ちいい。頭がおかしくなりそうだ。
揺さぶる動きに合わせて、びしゃびしゃと吐瀉物がシーツの上に落ちる。

「可愛い」

何度も何度も、同じ言葉を繰り返された。
可愛くなんて無い。吐いて汚しているのだから醜態以外の何ものでもない。
それなのに、どうしてこんなにも幸せそうな声をするのだろうか。

「可愛いな、アルカディア」

「ぁ、あ……んっ♡」

びくんと体が大きく跳ねた。名前を呼ばれただけで絶頂してしまったのだ。

「……はは、本当にお前は私の声が好きだな」

からかうような声色に、顔が熱くなる。
違う。そんなんじゃない。
否定したいのに上手く舌を動かすことができない。

「ぁ、う…も…ばかぁ……っ」

ただただ快楽と苦痛に耐え続けることしかできない。
ぐぷぐぷと奥を突き上げられ、結腸を虐められ続けて、何度も絶頂を迎える。
もう口元を押さえる気力もなくて、シーツに額を擦り付けて喘ぎ続けた。

「う、あぁ…っ♡」

どくどくっと熱いものが注ぎ込まれる感覚がする。
ばちばち視界が弾けて、それに合わせて全身が痙攣した。

「……っ、ぁ……」

ようやく長い絶頂が終わると、ぐったりと脱力する。
もう指一本動かすことも億劫だ。
苦しい。疲れた。
荒い息を繰り返していると、ゆっくりと引き抜かれていく。
ぼろぼろと快楽だけが原因ではない涙が零れ、嗚咽が漏れた。

「ふ、ぅ…ひっく……」

クラウディオはしゃくりあげながら泣きじゃくるアルカディアの体をひっくり返して、涙やら胃液やらで汚れた顔を拭ってやる。

「大丈夫か?」

「ばか…きらい……」

「嫌い?」

「きらいっ」

「へぇ、それは困ったな」

全くそう思っていないであろう声で言われて、余計に腹が立った。
それなのに可愛がるように頬を撫でられて、胸がきゅうと締め付けられる。
本当にずるい男だと思う。昔からずっとそうだ。

「むり、って、いった…」

途切れ途切れになりながらも訴えると、クラウディオは苦笑を浮かべた。
吐きたくなんてなかった。胃液しか出なくても、好きな人の前であんな姿を見せたくなかった。

「悪かった」

優しく頭を撫でられる。
それだけで許してしまいそうになる自分が嫌だった。

「苦しかったな」

ぎゅうと抱きしめられ、あやすように背中を撫でられた。包み込まれる安心感にさらに涙が溢れてくる。

「…ぅ、う〜……」

ぐすぐすと鼻を鳴らして、肩口に顔を埋める。
汗と煙草と香水の香りがした。昔から変わらない彼の匂いに酷く安堵してしまう。
だがここで流されてはいけない。これだけは言っておかないと。

「…はくの、やだった…」

「ああ、すまなかった」

「あと…」

「なんだ」

「…………吐いても、可愛いとか言うの、やめて……」

「何故」

不思議そうな表情で聞き返されて、思わず黙ってしまう。
誰が喜ぶというのだ。吐いている姿など普通見たくないだろうに。

「かわい、わけない…」

「可愛いぞ」

「かわいく、ない…!きたないし、やだし、はずかしいし、みせたくなかったのにぃ……」

ぽろぽろ涙を流しているアルカディアを見て、クラウディオは微笑んだ。
この男は何を言っているのだろうと思った。可愛い以外に言葉がないじゃないか。

「愛してるよ」

「……っ」

耳元で囁いてやると、その細い体びくりと体が震えた。
汚いなんて思わない。どんな姿でも可愛いと思う。本当はもっと見せて欲しいと思っている。

「やっと会えた。今度こそやっと手に入れた。二度と離さないから覚悟しておけ」

「……っ、ぁ」

ぞくりと背筋が震える。
その言葉の意味を理解した途端、恐怖と歓喜で頭がおかしくなりそうだった。
逃げられない。逃がされない。離れることなんて出来ない。

「ぁ、あ…ぅ……っ」

震えながらクラウディオにしがみつく。
嬉しい。怖い。好き。嫌い。大好き。全部欲しい。自分のものにしたい。
ぐるぐると思考が巡る。
どうしようもないほどに狂わされている自覚があった。

「私はどんなお前でも愛してる。お前の全てが見たい。知りたい。だから隠さず全てを見せてくれ」

「ん、ぅ…」

ぼふ、とアルカディアの顔が真っ赤に染まる。
そんなの無理だ。恥ずかしくて死んでしまうかもしれない。
だけど、それ以上に嬉しかった。求められていることがわかってしまったから。
信じていたけれど、心のどこかでクラウディオはもう自分に興味が無いのではないかと不安になっていた。10年も経てば、忘れられてしまうのではと思っていた。
だけど違った。彼は変わらず想ってくれていて、そしてこんなにも求めてくれている。
何一つ、彼は変わっていなかった。

「……こ、んな、きたなくて、ごめんね……」

「お前のどこが汚いって?」

ぽろぽろ零れる涙を拭うかのように頬に何度も口付ける。
こんなにも美しい生き物を、クラウディオは初めて見た。穢れを知らない無垢な魂。神が作り上げた芸術品のように完成された美しさ。
こんなにも美しく尊い存在が目の前にいることに、心の底から感謝したい気分になった。

「お前は綺麗だよ。私の宝物だ」

「……っ」

「愛している」

「ぁ……う……っ」

ぎゅうっと強く抱き締められる。
こんなにも真っ直ぐに好意を向けてくれるのは、後にも先にもクラウディオだけだった。
動かないはずの心臓がどきどきと高鳴って、息が詰まる。

「…ぁ、あ…う……っ」

ぼろぼろと涙が零れた。幸せすぎて、死んでしまいそうだ。
自分は愛されてる。
アルカディアがずっとずっと飢えていたものだった。

「…っ、ぁ……う……っ」

泣きじゃくるアルカディアを抱きしめながら、クラウディオは笑みを深めた。
嗚呼、ようやく手に入れた。ようやく手に入れられた。
もう絶対に手放したりしない。誰にも渡さない。

「…くらでぃおぉ…すき……だいすき……」

甘えるような声に、胸の奥が熱くなる。
最早、アルカディアの世界にはクラウディオしか居なかった。ずっと傍に居ると言ってくれた彼の言葉を疑うこと無く信じることが出来た。
もう二度と離れたりしないと誓ったのだ。
例え地獄のような場所に落とされても、きっと一緒に堕ちてくれるはずだ。
だって、そう約束してくれたのだから。

「…おれの、こと……おいてかないで……」

置いていかないで。一人にしないで。
涙声で訴えると、優しいキスが降ってきた。

「ああ、ずっと一緒だ」

甘い声で囁かれ、全身を幸福感が満たしていく。
もう何も怖くない。ずっとこの腕の中にいればいいのだ。そうすれば幸せなまま生きていける。
すり、と彼の肩口に頬ずりをした時だった。

「…ふわっ!?」

クラウディオはアルカディアを抱き締めたまま体を起こし、そのまま彼を子供のように抱き上げてしまった。
慌てて首に手を回すと、ぎゅうと力強く抱きしめられる。

「え?なに…なに……?」

困惑しながら問いかけると、額にちゅっと可愛らしい音を立てて唇が触れた。

「風呂に入ろうか」

確かに汗やら胃液やらでべとついているし、このまま寝るのは嫌だった。
シーツも汚れてしまっているので、洗濯しなければならないだろう。

「うん…」

こくりと素直にうなずくと、クラウディオは満足げに微笑んだ。
その笑顔にきゅーんとしてしまう。
しかしこの抱き上げ方は如何なものか。まるで幼子を抱える時のように、片手は尻を支えて、もう片方はあやすように背中を撫でられている。

「ぁの…」

「なんだ」

「…はずかし…」

消え入りそうな小さな声で呟くと、くすりと耳元で笑う気配がした。

「私以外誰もいない。気にする必要はないだろう」

「そ、だけど……」

「昔は喜んで飛びついてきただろうに」

「だ、だって……」

組織にいた頃はまだまだ子供だった。今も大して変わらないかもしれないが。
ルカと一緒に、クラウディオに抱っこだのおんぶだのせがんでいたのを思い出す。
だが、今は離れ離れになって初めてひとりぼっちになって、いろんなことを経験してきちんと1人前の大人になったのだと知って欲しいのだ。

「んん…おれおとなになった…」

「ふふ、私の前ではずっと子供でいろ」

わしゃわしゃと頭を撫でられて、少しだけむくれる。
この男はいつもこうだ。自分を子供扱いしてばかりいる。
だけどそんなところが好きなのだ。優しくて、甘くて、とても心地良い。

「…ぁ、ぅ…うー……」

ぎゅうっと首に抱きつくと、クラウディオは嬉しそうに笑った。
それがまた愛おしくて、頬を擦り寄せる。

「…ん、ぅ……」

ふわりと漂う香りに、思わずうっとりと目を細めた。
やっぱり好きだ。落ち着く。安心出来る。
事後の眠気も相まって、だんだん瞼が重くなってきた。

「ふあ…」

「寝てもいいぞ」

「ん……」

こくんと小さくうなずいて、クラウディオの首筋に顔を埋める。
いい匂いだ。大好き。もっと近くに感じたい。
すりすりと顔を押し付けて甘えると、大きな手がぽんぽんと軽く背を叩いた。

「お休み」

「ん……」

お休みなさい。
返事をする間もなく、アルカディアの意識は完全に闇へと落ちた。



「……ん…?」

ぼんやりとした思考の中、アルカディアはゆっくりと目を開いた。
カーテン越しに差し込む朝日が眩しい。
二度寝しようと寝返りを打つ。すると何かにぶつかった。

「……?」

なんだろうと不思議に思いながら視線を向ける。
そこには見慣れた広い胸板があった。

「……くらでぃお?」

ぽつりと名前を呼ぶ。しかし反応は無い。
どうやら眠っているようだった。
すうすうと規則正しい呼吸音が聞こえる。
珍しいこともあるものだ。普段はどんなに疲れていてもアルカディアより早く起きていたのに。

「…ねてる」

じっと見つめていると、胸の奥がきゅっと苦しくなった。
無防備で穏やかな表情をしているのが可愛らしく思えて仕方がない。

「……かわいい」

無意識のうちにぽろっと口から言葉が零れる。
それと同時に愛しさが溢れ出した。
ずっとこうしていられたら、どれほど幸せだろうか。
ずっと傍に居てくれたなら、きっと寂しくなんてない。

「ずっといっしょ」

ぎゅうっと強く抱きついた。
温かい。気持ちが良い。
これから、ずっとずっと一緒に居ることが出来る。
そう考えるだけで心が満たされていく。
ああ、自分は幸せ者だ。こんなにも素敵な人が自分のものなのだから。

「だいすき」

愛している。ずっと傍に居て欲しい。

「あいしてる」

囁くように愛を紡ぐ。それからしばらく、アルカディアは飽きることなくクラウディオの寝顔を見続けていたのであった。