midnight


耳元で聞こえるアルカディアの甘い声はまるで麻薬のように頭の中に響き渡る。
ぴったりと密着して、クラウディオの膝の上でゆるゆると腰を動かすアルカディアの艶めかしい姿は、見ているだけで興奮してしまう。
首に回された腕にぎゅう、っと力が込められ、少し苦しいぐらいだけれどそれすらも心地よい。

「んぅ…♡ぁ……ふ、あ…♡」

対面座位で繋がっているため、いつもよりも深くまで入ってきてしまうのか、小さく喘ぐアルカディアの声が可愛らしい。
背中を撫でてやると嬉しそうに身を捩って擦り寄ってくる。
今日はゆっくりしたい、というアルカディアのおねだりに応えてソファーで行為に及んでいるのだが、これはこれで悪くないなと思う。
時折キスをしたり抱き締めたりしながらゆっくりとしたペースで動くと、それに合わせるようにアルカディアの中がきゅっ、と締まるのだ。
快楽を求めるというよりは甘えてくるような動きがなんとも愛おしく感じられて仕方がない。

「…アルカディア」

「…ん…?」

名前を呼べば、蕩けた瞳がこちらを見つめる。
ぎゅうぎゅうと抱きしめ合っているせいで、唇が触れ合いそうな程近い距離だ。
そのまま触れるだけの軽いキスをして微笑みかけると、恥ずかしそうにはにかんで笑ったアルカディアがまた軽く口付けてきた。
今度は深いものを返しながら下から突き上げるようにして揺さぶれば、気持ち良さそうに目を細めてもっと、と言うかのように自分からも腰を動かしてくる。

「あっ……ッ♡あ、ん…♡」

奥の方をぐりぐりと刺激すると良いところに当たるらしく、びくびくと身体を震わせながらも懸命に動いてくれる姿が健気でいじらしい。
アルカディアの両手がクラウディオの後頭部へと回り、さらにぎゅうっと強く引き寄せられる。
その拍子に深く繋がったままの結合部がぐちりと音を立てて、それがまたお互いを刺激したようで中にある熱の質量が増していく。

「は、ぅ…♡んん…♡」

するりとアルカディアの尻を撫でるとぴくんと小さく反応を示す。下だけ全て脱いで、上はそのままの状態なのがまたそそるものがある。
こうして肌を重ねるようになってもう随分経つはずなのに、いつ見ても新鮮に見えるというのは不思議だと思う。
日を追うごとに美しくなっていく気がするのはきっと気のせいではないはずだ。
そんなことを考えていたら突然きゅうっと中のモノを強く締め付けられてクラウディオは息を飲む。

「かんがえごと…やだ…」

拗ねたように言うアルカディアに思わず苦笑いを浮かべてしまう。
バレていたようだ。

「悪い。お前のことを考えていた」

正直に答えれば、きょとんとした表情を見せた後すぐに頬を赤く染めて照れ臭そうにするアルカディアの姿があった。

「昔より綺麗になったと思ってな」

「……きれい」

「ああ」

出会った時から美しかった。それは間違いない。
しかし、今はそれよりもさらに美しさを増しているように見える。
妖艶さと清楚さが同居しているかのような不思議な魅力を持つようになったと思う。

「うれしい」

はにかみながら笑うその姿は天使そのもの。穢れを知らない無垢なる存在。
だがそれと同時にどうしようもなく欲情させられる。
とんっ、と腰を突き上げると「ひゃうっ♡」と可愛らしい声を上げる。
そのまま何度か同じ動作を繰り返すと、がくがくと脚を震わせたアルカディアが限界を訴えてきた。

「んっ♡ぁ、んっ♡ん、く……〜〜〜ッ♡♡」

声にならない声を上げながら絶頂を迎えたアルカディアの中がうねるようにして痙攣し、搾り取るような動きを見せる。
耐えきれず中に精を放つと、その感覚にも感じるのか、再び甘い声を上げて身悶える。

「あ…ぁ……♡♡ん、ぅ…♡」

クラウディオの匂いと温かさに包まれて迎える絶頂は格別だった。
この瞬間が何よりも幸せだと思えるほどに、アルカディアは目の前の男を愛しているのだ。
優しく頭を撫でてくれる手も、耳元で聞こえる甘く低い声も、全てが愛おしくて堪らない。

「…もう終わる?」

「んん…やら…くらでぃお…♡」

まだ足りない。もっと欲しい。
甘えるように擦り寄りながら腰を揺らすと、ぐちゅりと音がした。一度吐き出して少し柔らかくなったはずの陰茎がまた硬度を取り戻しつつある。

「……可愛いことをしてくれる」

嬉しそうに笑ったクラウディオがアルカディアの頬にキスを落とす。

「…おれ、うごく…」

それだけ言ってゆっくりと動き始めるアルカディアだったが、やはり快楽を求めるように動けば自然と激しくなってしまうもので、結局最後は貪るように腰を振ることになる。

「ぁ♡ぁん♡ぁっ♡ふあ♡♡」

先程よりも激しい水音と肉同士がぶつかり合う乾いた音を聞きながら何度も果てるアルカディアは、もう何も考えられなくなっていた。
ただただ気持ち良くて、愛しい男との行為に夢中になるばかり。

「は、ひゅっ♡あ、ぁっ♡あ、んっ♡」

クラウディオに縋り付きながら腰を振るアルカディアが可愛らしくて、つい意地悪をしたくなる。

「アルカディア」

「んっ♡んぅ…?……んっ!?んむっ!♡」

名前を呼ばれたかと思えば、いきなり唇を奪われて驚くアルカディア。
それも束の間、すぐに舌を差し入れられて口内を蹂躙される。

「んっ…んんっ…♡んぅ…っ…ん…!♡♡」

歯列をなぞられ上顎を舐められ、舌を絡め取られて吸われる。
両頬を手で挟まれているため逃げることも出来ず、為す術無く与えられる刺激を受け入れるしかない。
びくびくと震えたアルカディアの手がわけも分からず抵抗するようにクラウディオの腕を掴む。
しかし、そんなものは何の意味も無くて、むしろ逆効果でしかなかった。

「ん、ん……〜〜〜〜ッ!!♡♡♡」

ごつ、と奥を突かれて呆気なく達してしまったアルカディアの中が強く締まる。
あまりの快楽に一瞬持っていかれそうになったが、なんとか堪えてそのまま突き上げると、口の中でくぐもった喘ぎ声を上げたアルカディアの身体が大きく跳ねた。

「ん、ん♡んん…ッ♡ん、ん……〜ッ♡」

びくびくと身体を震わせて連続でイき続けているアルカディアは、キスをされているせいで呼吸がままならず、苦しさから涙を流す。

「ぷはッ……!」

ようやく解放されたアルカディアが酸素を取り込もうと大きく息をする。
しかし、そのタイミングで突き上げられ、また口付けられた。

「​​───……ッッ!!!♡♡♡」

今度は声すら出せずに達したアルカディアは、がくがくと脚を痙攣させながら白濁を零していた。

「ん、ん……〜〜〜〜〜〜……!!!♡♡♡」

もうずっと絶頂が続いている状態で、気持ち良いという感覚しか無い。
頭が真っ白になって、何も考えられない。
身体が熱い。溶けてしまいそうだ。

「は、ひゅ…ッ♡ぁ…♡は、は……ッ♡」

ようやく口を離された時には息も絶え絶えで、焦点が合っていない瞳からはぼろぼろと大粒の涙を流していた。
がくがくと全身が痙攣していて、力が入らない。
ほとんど意識を飛ばしている状態だというのに、それでも尚、快楽を求めてしまう。
アルカディアの顔がそれはもう気持ちよさそうに蕩けているのを見て、ぞくりと背筋が粟立った。

「……アルカディア」

名前を呼ぶと、虚ろな目でこちらを見つめてくる。
ああ、可愛い。本当に可愛い。
こんなにも淫らに乱れる姿を見られるのは自分だけなのだと思うと、優越感が沸いてきて止まらない。
もっと見たい。もっと感じさせたい。

「ぁっ♡ま、って……いまだめぇ…♡」

制止の声を無視して腰を動かせば弱々しく首を振りながら逃げようとするアルカディア。
だが、力の入っていない体ではそれは叶わない。
いやいやと首を振っているのに、中を締め付けてくるのだから堪らない。

「ゃ、だぁ♡いま、だめ♡♡あっ!♡♡」

嫌だと口にしながらも自ら腰を動かすアルカディアに興奮しないはずもなく、何度も最奥を突き上げれば、きゅうっと中のモノを強く締め付けて絶頂を迎える。

「あ、ぁ……ッ♡♡あ…♡♡ん…♡」

ぴくん、と小さく身体を揺らしながら余韻に浸るアルカディアは、完全に理性を失っていた。

「ん…♡ん……♡♡」

うっとりとした表情で甘えるように擦り寄ってくるアルカディアにそっと口付けると、嬉しそうな顔をする。
もうすっかり蕩けた様子で、されるがままに口付けられて、甘い声を上げる。
唇を離すとアルカディアが小さく息を吐いて、ゆっくりと瞼を閉じ、ぎゅっと抱きついてくる姿が愛おしくて堪らない。

「…は…♡ぅ…♡」

緩く絶頂が続いているらしく、時折小さな声で喘いでいる。完全にクラウディオの体にもたれかかってぐったりとしているのに、無意識なのか腰だけは動いている。

「…大丈夫か?」

「だいじょぶ……」

ぽんぽんと頭を撫でたあと、アルカディアの腰を持ち上げゆっくり引き抜くと、それにさえ感じるのか「ぁっ…」と切なげな声を出す。

「んっ…ぁぅ……♡」

ずるずると抜けていく感覚が気持ちいいらしい。甘い息を漏らすアルカディアの頭を抱き寄せる。

「ふゃ、ぁ♡」

ごぽりと音を立てて抜けた陰茎と共に先程中に出した精液が溢れ出て、クラウディオのズボンを汚した。

「…シャワーを浴びようか」

「ん…」

よろよろとクラウディオの膝の上から立ち上がろうとしたアルカディアの腰を引き寄せ、そのまま抱え上げる。

「ひぁっ!?」

突然のクラウディオの行動に驚いたアルカディアだったが、落ちないように慌ててクラウディオの首に腕を回して抱きつく。

「…あとで晩酌に付き合ってくれ」

「…ん、夜更かししようね」

くすりと笑ったアルカディアがそう言うと、クラウディオは満足げに笑って浴室へと足を向けた。



カラン、とグラスの中の氷が溶けて音を立てる。
クラウディオは自身の膝に頭を乗せて寝息を立てるアルカディアの髪に触れながら、酒を煽っていた。
テーブルの上には空になったボトルが何本も転がっていて、酒に強いはずのクラウディオも少し酔いが回っているようだ。
相変わらず子供みたいな寝顔だな、と思わず頬が緩む。ぐりぐりと頬を撫で回してやるとゆっくりと瞼が開き赤い瞳が現れた。
ぼんやりとしたまま何度か瞬きをしたアルカディアは、ごろんと仰向けになった後、目の前にいるのが誰かを認識するとにへらと笑う。

「くらでぃお」

幼子のような舌足らずな口調で名前を呼んで、両手を伸ばしてくる。どうやら抱きしめて欲しいらしい。
要望通りに抱きしめてやるとくふくふと笑いながら胸に頬ずりをしてくる姿が可愛すぎてどうにかなりそうだ。
このままベッドに連れて行ってしまおうかとも思ったが、もう少しこの時間を楽しむことにした。

「アルカディア」

「んー……?」

「眠い?」

「だいじょぶ…」

もぞもぞと起き上がったアルカディアはテーブルの上のグラスを手に取る。氷が溶けてほとんど水になってしまったそれをちびちびと飲んでいるアルカディアは、どこか気怠げで色っぽい。

「くらでぃお何飲んでるの」

「ウイスキーだよ」

「おれにもちょーだい」

「ああ」

持っていたグラスを手渡してやると、ごくごくと一気に飲み干してしまう。

「おいしかった」

「そんなに喉乾いていたのか」

「ちがうよ」

そう言ってボトルに手を伸ばすアルカディアからそれを取り上げて、コップに注ぎ自分の口に含む。
そのまま口移しで飲ませてやれば、こくり、と小さく喉が動いた。
楽しそうに笑ったアルカディアが、再び唇を押し付けてくる。

「……」

至近距離で見つめ合っていると、するするとアルカディアの手がクラウディオの胸元をまさぐってきた。

「……誘ってるのか」

「さそってるよ」

そう言いながらもアルカディアは服を脱ごうとはせず、ただ触ってくるだけだ。
焦れったい。
今すぐ押し倒してしまいたい。

「アルカディア」

「なあに」

「お前が欲しい」

「だめ」

「誘ってるんじゃないのか」

「さそってるよ」

「じゃあいいだろ」

「だめ」

「……どうしても駄目なのか」

「だめ」

そう言って微笑んだアルカディアは、クラウディオの膝の上に乗って首に手を回す。
ちゅっと触れるだけのキスをして、にこにこと笑っているアルカディアに、クラウディオは大きなため息をつく。
これでは生殺しだ。

「ねぇくらでぃお」

「なんだ?」

「えっちしたい?」

「当たり前だろ」

「でもだめ」

「……もう知らん」

呆れたように呟いたクラウディオは、アルカディアの腰を掴むと、ソファに押し倒した。

「あっ!だめ!」

アルカディアは咄嗟にクラウディオの体にしがみついて、足を腰あたりに巻き付けてきた。
まるでナマケモノの赤ちゃんみたいだ。可愛い。

「離せ」

「今日はだめ」

「さっきしたんだから駄目もクソもあるか」

「あるもん」

ぎゅうぎゅうと力を込めてくるアルカディアに、クラウディオは小さく息を吐く。

「どうして駄目なんだ?」

そう問いかけるとアルカディアは途端にもごもごと口篭り、声にならない声をあげているクラウディオは不思議そうに首を傾げた。

「ん〜…その……さっき…の…」

「ん?」

「あの……」

クラウディオの胸に顔を埋めて動かなくなったアルカディアのちらりと見えた耳は真っ赤に染まっていて、それがなんとも言えず愛おしくて、そっと頭を撫でてやった。

「ゆっくりでいい。話してくれないか?」

優しくそう言えば、暫くの間を置いて、ゆっくりと口を開いた。

「……さっき…腰……あの…」

「腰?」

恥ずかしいのかぐりぐりと額を押し付けて、未だ言葉にならない音を発しているアルカディアの背中をぽんぽんと叩いて、続きを促す。

「……ふり、すぎ、…て……いたい……」

蚊の鳴くような声で言ったアルカディアの言葉を理解するまでに少し時間がかかってしまった。
確かに先程のセックスでアルカディアは自分から腰を振りまくっていた。そのせいで腰を痛めたらしい。

「……」

「だから……もう…だめ……」

煙が出そうなほど真っ赤になったアルカディアはクラウディオの腕の中で顔を隠してしまった。可愛すぎるだろう。

「………ふっ」

思わず吹き出してしまったクラウディオに、アルカディアが真っ赤な顔のまま睨みつけてくる。

「わらわないでっ」

「悪い」

「ばかっ」

ぽかりと軽く殴られたが、痛くも痒くもない。むしろ可愛いくらいだ。

「確かに、さっきのお前は随分激しく腰を振っていたからな」

「うるさいっ!」

逃げ出そうとしたアルカディアを閉じ込めてクラウディオは楽しそうに笑う。相変わらず顔を真っ赤にしながらじたばたと暴れる姿は可愛らしい。

「マッサージでもしてやろうか」

「やだっ!絶対へんなことする」

「はは、しないよ」

「うそつきぃ」

クラウディオは爽やかに笑いながらリビングの電気を消してアルカディアを抱き上げると、寝室へと足を向けた。
寝室までの道中も不満たらたらのアルカディアにくすりと笑って、ベッドの上に放り投げる。

「わぅっ」

「まぁ、もういい時間だから寝ようか」

「ねむたくない」

「もう3時だ」

ばさりとアルカディアを覆うように布団をかけると、彼はもぞもぞと目元を覗かせた。
隣に潜り込むクラウディオをじっとその赤い瞳が追いかけてくる。

「どうした?」

「…寝るの?」

「寝るよ」

「ほんとに?」

見上げてくるその瞳が何かを訴えかけている。
きっとそれは無意識で、だからこそタチが悪い。

「なんだ?」

「………しないの?」

「何を?」

そう問い返せばアルカディアはうろうろと視線を動かした後、ほんのり顔を赤くしながらクラウディオを見上げた。

「…まっさーじ」

にま、とクラウディオの口角が上がる。
やだ、なんて言っていたくせに、結局して欲しいんじゃないか。

「してほしいのか?」

「んん…べつにぃ…」

恥ずかしいからか素直になれないらしい。アルカディアはわざとらしく寝返りを打って背を向ける。そんなことをしても、期待しているのがバレバレなのに。
ぎしり、とスプリングを軋ませて覆い被されば、びくりとアルカディアの肩が跳ねる。

「どうする?やめるか?」

「……いじわる」

「意地悪じゃない。お前が嫌ならやらないよ」

「……やだ」

そう言ってこちらを向いてきたアルカディアは拗ねた子供のように唇を尖らせていた。
そしてゆっくりとクラウディオに抱き着き、甘える猫のような仕草で頬ずりをしてくる。

「まだ寝たくない」

「…つまり?」

「えっちしたい」

「ふは」

ストレートなお誘いが面白くてつい笑ってしまった。
ムッとしたのか、アルカディアは何度もクラウディオの肩口に頭突きを繰り返す。

「腰痛いんじゃなかったのか?」

「痛いけどしたいもん」

アルカディアの両足が先程のように腰あたりに絡み付いてきて、下半身が密着する。

「くらでぃおのせいだよ」

「私のせいか」

「うん。優しくして」

「善処しよう」

クラウディオの肩口から顔を上げたアルカディアは、それはもう嬉しそうに子供のように笑っていて、それを見たクラウディオは、あぁ、こいつは本当に馬鹿だな、と思った。
こんなに幸せそうな笑顔を見せられて、我慢できる男がいるわけがないじゃないか。