キッチンに立つその後ろ姿。
アルカディアの大好きな、大きな背中。
しかしアルカディアの目線は背中ではなく、もっと下の方──彼のお尻へと注がれていた。

筋肉質な、小さいもののがっしりとしたお尻。
その大きさや形も、アルカディアにとっては理想的でとても魅力的に見える。
特に腰からお尻にかけてのラインが最高だった。
クラウディオの体は、めちゃくちゃに欲情してしまうほどにエロいのである。
広い肩幅。長い腕。肩から腕にかけての筋肉。加えて手も大きいし当たり前に指も長い。
とんでもない胸筋はふわふわで柔らかくて、顔を埋めると天国みたい。バッキバキに割れた腹筋は一転してガチガチだし、そこからのあの腰周り。そして最高以外の言葉が出ないお尻に、筋肉で張った太腿。何メートルあるんだと言いたくなる長い足。
まさにパーフェクトボディ。
一日中語り続けられる自信がある。
その体にあの顔がついてるの、最早卑怯である。あと声。
顔面と声まで良すぎて、正直どう表現していいか迷うほどだ。
あの顔で低い声で、耳元で囁かれたらそれだけでゾクゾクするし、その声で優しく名前を呼ばれたらもう耐えられない。
体も声も最高だし、あの性格も最高。
意地悪だけど優しくて、甘やかす時はとことん甘くて。
しかもカッコいいだけじゃなく可愛いところもあるんだよ?もうほんとずるいよね。好きすぎて辛い。大好きすぎる。

「…っはぁ〜〜〜〜」

思わず大きくため息をこぼす。
ソファに腰掛けたまま、手で顔を覆って悶える。
やばいなぁ、ほんと大好きすぎるんだよなぁ。
あの歩く世界遺産みたいな男が自分の恋人?冗談だろ。
世界で唯一、自分だけが彼の特別。
そう考えるだけで、体が熱くなるほどの幸福感に包まれるのだ。
あの綺麗な顔が自分だけを見つめてくれること、彼の声を独占できること、彼の手で触れられること──その全てが嬉しくてたまらない。

かちゃん、とフライパンが置かれる音にはっとしてクラウディオの方に視線を向ける。
そろそろお昼ご飯が出来るらしい。楽しみ。
改めて彼の後ろ姿を眺める。頭からじっと眺めて行って、首、肩、背中へ。
そしてやっぱりお尻で視線が釘付けになる。

「(くらでぃおのおしり……)」

アルカディアはごくりと生唾を飲み込んだ。そしてふらふらと吸い寄せられるようにクラウディオの背後へと忍び寄ると、彼の尻に向かって手を伸ばした。
そして遠慮なくがしッと尻を鷲掴みにすると、驚いたのかクラウディオの体がびくりと跳ねた。

「なん…なんだ…」

料理に集中していて油断していたらしい。珍しくびっくりしていた。可愛い。

「ごめん、つい」

「ついってなんだ」

そのまま両手で揉みしだく。やっぱりめちゃくちゃ柔らかい。ずっと触ってられる。最高すぎる。

「こら」

クラウディオのお尻を揉みながら、彼の肩に顎を乗せて首元に頰ずりをする。すると、今度は容赦なく肘が飛んで来てしまった。

「ぐえっ」

「やめなさい」

「はあい…」

渋々手を離すと、クラウディオはフライパンの中身を皿に盛り付けた。そしてテーブルに料理を並べていく。
今日のお昼ご飯はパスタのようだ。美味しそう。
フォークとスプーンを持って、クラウディオを待つ。

「いただきます」

「めしあがれ」

食べ始めると、クラウディオも向かい側の椅子に腰掛けた。そして自分の分を食べ始める。
アルカディアは、そんな彼をじっと見つめる。
食べる姿すら愛おしいと思うなんて重症だとは思うが、やはり好きなのだから仕方がない。
食事中でも色気のある佇まいに釘付けになる。彼は食べ方も綺麗だし、姿勢も良くて見ていて飽きない。
アルカディアはそんなクラウディオを眺めつつ、自分も食事を再開した。



昼食後、二人はソファに腰掛けてまったりとした時間を過ごしていた。
アルカディアはクラウディオの肩に頭を乗せてもたれかかっている。その体勢のまま、端末で動画を見ていた。
しかし途中で飽きてしまい、クラウディオの膝の上に寝転がるとお腹に手を回して抱きつくような体勢になる。そのままそろそろと手を移動させて行き、胸の上で停止した。ふわほわの胸筋をむにむにと揉んでみる。

「こら」

しかしすぐに手をぺしっと叩かれてしまった。すかさずその手を捕まえて大きな手をまじまじと観察する。
そしてその手を自分の頰に当てると、目を閉じてすりすりした。ああ、幸せ。ずっとこうしていたい。

「いいな。手おっきくて」

「そうか?」

「うん。かっこいい」

アルカディアはクラウディオの手に自分の手を重ねて、指を絡めるように握った。大きな手の甲をなぞったり、指先を撫でたりする。大きくて固くて、ごつごつした骨張った手。
これが自分のことをいつも優しく甘やかしてくれる素敵な手なのだと思うと、無性に愛しくなってしまう。
クラウディオはくすりと笑ってアルカディアの頰に手を添えて、親指で目尻を優しくなぞった。そしてもう片方の手で頭を撫でてくれる。
ああ好き。本当に大好き。
アルカディアは体を起こすと彼の胸に顔を埋めた。どんなクッションよりふかふかなおっぱいだ。最高の寝心地である。

「ん〜…ふふ…」

ふかふか。ふわふわ。もにゅん。
​​──あ、やば。
自分の欲がじわじわ溢れてくる。
我慢、我慢。流石にもうこれ以上したら怒られちゃうだろう。
ここはぐっと堪えて──そう思ったはずなのに、アルカディアの手は服の上からクラウディオの胸を絶えず揉み続けている。しかも結構大胆に、下から持ち上げてみたりなんかして。

「…おい」

「うん…」

「うんじゃない」

「んー……」

クラウディオの胸を揉む手つきがどんどんいやらしくなっていく。掌全体で揉みしだいたり、感触を楽しんでみたり。
きゅ、と軽く爪を立てると、クラウディオの体がぴくりと震えた。

「…っん……」

低い吐息混じりの声が耳に入る。
あ、えろ。
そう思った時にはもう手が動いていた。クラウディオの胸を揉みながら、指先で先端をくりくりと弄ぶ。

「んっ……こら、」

手首を掴まれる。が、その力は弱い。
抵抗しているつもりなのかも分からないほど弱々しい力で、アルカディアの手を胸から引き剥がそうとしている。
それが可愛くて、もっと虐めたくなってしまう。アルカディアはそのまま乳首をかりかりと引っ掻いたり親指の腹でぐりぐりしてみたり、色々試してみた。
するとすぐにそこはピンと張り詰めて硬くなる。同時にクラウディオの頰にも赤みが差し、瞳が潤んできた。頰と顎にかけて手を添えて親指で下まぶたを撫でてやると二重の目が細められ、そこに艶っぽい表情が加わった。
ああ可愛い。すき。

「かわい」

ぐっと顔を近づけて彼の耳たぶにちゅっと唇を押し付けると、ビクッと体が震えた。
そのまま舌先でちろりと舐めてみると、また大きく震える。それに気を良くして、舌を耳の中に差し込んだ。
わざとぴちゃぴちゃと音を立てながら舐めてやると、クラウディオの体がびくびくと小さく跳ねる。

「んっ…う……」

低い吐息混じりの声と、時折混じる小さな喘ぎがアルカディアの脳髄を甘く痺れさせた。
ああもうほんと可愛いなこの人。可愛すぎるでしょ。

「………アルカディア」

「うん?」

彼の声に反応して顔をあげた瞬間、ばちんと頭が弾けた。脳が揺れるほどの衝撃。体が吹き飛んでベッドから転がり落ちた。
でこが痛い。めちゃくちゃ痛い。

「っ悪い、大丈夫か?」

額を押さえながらよろよろ起き上がるとクラウディオは眉を下げて心配そうな顔をしていた。どうやらデコピンされたらしい。

「いたい……」

「悪かった、つい」

そう言って手を差し伸べてくれる。その手を取ると、ぐいっと引っ張られて抱き起こされた。
きっとこれでも手加減してくれたはず。本気でやられたら多分首まで吹っ飛ぶ。

「咄嗟に手が出た。ごめんな」

こちらの顔を覗き込んでよしよしと額を撫でてくれる。その手つきが優しくて心地よかった。
しかしまさかただのデコピンで体が吹っ飛ぶとは。

「だいじょぶ…」

未だに涙目になっているのが自分でも分かる。
クラウディオはよしよしと頭を撫でながら、そっと頰に手を添えてくれた。その手つきもとても優しいもので、思わず頬が緩んでしまう。

「もっとよしよしして」

「はいはい」

そう言って、優しく微笑んでくれる。彼の笑った顔が好きだ。見ているだけで幸せになれる。
そういえば、ちょっと勃ってたのに驚きですっかり萎えてしまった。これは由々しき事態だ。

「くらでぃお〜…」

「なんだ」

「…したいな〜…」

ぼそっと言ってみると、きゅっと彼の目が細められる。その表情も好き。かっこいい。

「だめ?」

首を傾げて上目遣いで見上げてみる。すると、彼は小さくため息をついてから苦笑した。

「全くお前は……」

呆れたような声だけど、優しい顔をしている。これはOKということだろうか?アルカディアは期待を込めてクラウディオを見つめた。



──結論から言うと、ダメだった。
どうやら仕事が残っているらしい。クラウディオがパソコンのキーボードを叩く音がリビングに響く。
休みの日まで仕事しなくてもいいのに。
アルカディアはソファに座って、足をぶらぶらさせながら彼の姿を眺めていた。
仕事中にちょっかいを出すと怒られるので大人しくしているしかない。
しかし退屈である。せっかくの休みなのに、二人でくっついている時間が全然ない。悲しい。

「しゃちょお〜」

「……」

「恋人より仕事選んじゃだめなんだよ〜」

「……そうだな」

クラウディオはパソコンから視線を外さないまま返事をする。アルカディアは少しむくれた顔をした後、ソファに寝転がって手足をばたばたさせた。

「くらでぃお〜」

「…ちょっと待ってくれ」

相変わらず画面を見たまま。
あれ、険しい顔してる。何か面倒事が起きたのかもしれない。クラウディオは眉間にしわを寄せながら、片手で端末まで操作していた。

「……どうしたの?」

「予定外の事故だ」

ちっと舌打ちをして、クラウディオは不機嫌そうに呟いた。
アルカディアには彼の仕事のことはよくわからないが、滅多にない彼の舌打ちが聞けて少し嬉しい。
そのまま電話で部下に何か指示を出し始めてしまった。
大変そうだがつまらないのは事実。だがここで手を出すとデコピンどころでは済まなそう。
クラウディオは凄いのだ。頭脳明晰で、色んな人に頼られて、それが当たり前みたいな顔をしていて。
疲れないのかな。大変じゃないのかな。
アルカディアは彼から視線を外して、のそのそと起き上がった。そのまま立ち上がって寝室に向かう。
邪魔になるかも、そう思って。
だが心配半分、拗ね半分だ。
だって今日は休みのはずなのだ。休みの日までクラウディオを取らないで欲しい。クラウディオだって、休みの日はこっちを優先して欲しいのに。



「…ん゛ん〜…」

枕に顔を埋めて呻く。
あぁ我儘。最悪。むしゃくしゃする。クラウディオのばか。
丸まって毛布を頭まで被る。こうなったらもう不貞寝だ。
アルカディアは無理矢理目を閉じた。

「……………」

いや寝れるか。無理だ。無理すぎる。
目を閉じると余計なことをぐるぐる考えてしまう。そのせいでまたいらいらする。
苛立ちを誤魔化すようにがちがちと歯を鳴らしていると、寝室の扉が開いた。

「アルカディア」

名前を呼ばれても無視。返事なんかしてやらない。ずーっとがちがち歯を鳴らしてやる。
アルカディアの苛立った時の癖。こうなったらもうしばらくは機嫌が直らない。
クラウディオはベッドの端に腰掛けると、毛布の上からアルカディアの頭を撫でた。そのまま優しく叩いてくれる。

「悪かったな」

全然悪いと思ってなさそうな声色で言われた。むかつく。余計にイライラする。

「……仕事とるの嫌い」

枕に顔を埋めたままぼそっと呟くと、頭を撫でていた手がぴたりと止まった。

「…悪い」

少し間を置いて返事が返ってくる。
その声色からは申し訳なさが滲み出ているような気がした。
でも許さない。今日はずっとくっついていたい気分なのに、クラウディオは仕事を取ったから。

「くらでぃお、きらい」

もう一度呟くと、また撫でる手が止まった。

「悪かった」

今度はさっきよりも少し強めに頭を撫でられる。でもそんなので機嫌が直るわけがないのだ。この馬鹿社長め。アルカディアは心の中で悪態をついた。
クラウディオは一旦手を止めると、ふうとため息をついてから再び頭を撫で始めた。そしてぼそりと呟くように言葉を発する。

「だが」

「……」

「嫌いと言われるのは寂しい」

「……!!」

驚いた。クラウディオがそんなことを言ってくるなんて思わなかったから。
──え、待って、今の可愛いかったんだけど?
思わずがばっと起き上がってしまった。毛布がずり落ちて、クラウディオと目が合う。彼は困ったように笑っていた。

「お前に嫌われるのは悲しい」

「……」

無意識にぎり、とシーツを握りしめた。
ああもうずるい。この人はこういうところが本当にずるい。
いつだって自分ばかり振り回されている気がする。余裕ぶっているところがむかつくし、かっこいいところを見せつけてくるし、そういう所も好きだけどやっぱりむかつく。
アルカディアは彼の肩を掴んで押し倒した。そして上に覆い被さって見下ろすと、きょとんとした顔で見上げてくる。

「アルカディア?」

不思議そうに名前を呼んでくる彼の唇にかぶりついた。そのまま舌をねじ込んで絡める。

「んっ……」

上顎を舐め上げて、歯列をなぞる。舌を絡ませて吸い上げると、くぐもった声が聞こえた。
角度を変えて何度も唇を重ね合わせる。ちゅくちゅくと水音を立てながら貪るように口付けた。彼の口内を味わい尽くすように執拗に攻め立てると、苦しそうに甘い声を漏らすのが堪らない。
最後に強く吸い付いてから離れると銀糸が伝った。

「俺が嫌いになれないの知ってるくせに」

そう言うと、彼はふっと微笑んだ。余裕そうな表情だ。むかつく。

「そうだな」

そう言ってアルカディアの頰を撫でてくる。その手つきが優しくて心地良くて、なんだか甘えたい気分になった。彼の胸に顔を埋めてぎゅっと抱きつくと、背中をぽんぽんしてくれる。それが気持ちよくてつい擦り寄ってしまう自分が悔しいけれど、今は素直に甘えることにした。

「もう終わったよ。だから機嫌直してくれ」

「……ん」

「ありがとう」

頭を優しく撫でられる。それが嬉しくて、彼の胸に顔を埋めたままでいた。
しかしやがてふつふつと欲が湧き上がってくる。先程までの苛立ちも含めて、両手で胸を鷲掴んだ。

「うぉ」

予想外の行動に驚いたのか、間抜けな声を上げたクラウディオが珍しくて、口元が緩む。そのまま服の上から揉みしだくと、彼は困惑した表情を浮かべた。

「なんだ急に」

「俺はいらいらしてるのー」

言いながらかりかりと乳首を引っ掻くと、慌てたように腕を掴まれる。

「こら、やめなさい」

「やだ」

拒絶の言葉を無視してするするとシャツの中に手を入れる。直に肌に触れると、ぴくっと体が震えた。
そのまま脇腹を撫で上げるようにして上へと手を滑らせる。胸の突起を掠めると、彼の口から吐息が漏れた。

「っ……」

「今日、俺が上ね」

くりくりと指で弄びながら、アルカディアは楽しそうに言った。

「今日は俺の好きにする」



「…………」

アルカディアに上宣言されてからどれくらい経ったのか。長い間居心地が悪い。
なぜならずっと、アルカディアに尻を揉まれているからだ。
ベッドに横向きに寝転がり、向き合う形で抱き締められ、スラックスの中に手を突っ込まれた。そのままずっと尻を揉まれている。
正直言って、とても落ち着かない。かなり恥ずかしい。
クラウディオは眉間に皺を寄せながらアルカディアを見つめた。しかし彼は知らん顔で尻を揉んでいるし、なんなら胸に顔を埋めてうっとりしている。
やがてするりと下着の中まで手が入ってきて、思わず体が強ばった。

「っおい」

慌てて声をかけるが、返事は無い。アルカディアは構わず直に尻を揉み始めた。

「……」

ぞわぞわとした感覚に背筋が震える。クラウディオは居心地の悪さとくすぐったさで顔を顰めた。だがアルカディアはそんなの御構い無しといった様子で触っている。

「ん〜」

アルカディアは何かを確かめるように何度も手を動かした後、今度は両手で尻を鷲掴みにして揉み始めた。

「っ」

思わず息を詰める。しかしそれでもなお、アルカディアの手の動きが止まることはない。それどころかどんどん激しくなっていく一方だ。
まるでマッサージをするかのように力強く揉まれているうちに力が抜けてしまいそうになるがなんとか耐える。そんなクラウディオには構わず、アルカディアは相変わらず尻を触り続けていた。もう完全に彼の手つきに遠慮が無くなっているのだが、それを口にする余裕もない。

「いい感触」

アルカディアは満足そうに呟いて、また手を動かし始めた。今度は尻の割れ目に指を這わせてくるものだから驚いてしまう。

「っ、おい」

「んー?」

アルカディアはクラウディオの抗議にも聞く耳を持たず、そのまま指先を滑らせて穴の周りをくるくるとなぞるように動かし始めた。ぞわぁっと背筋に寒気が走る。

「ま、て…」

「ん」

ゆっくり下着の中から出ていった手は、背後でふらふら動いている気配がある。そしてぱきっと何かを開く音が聞こえた。

「……あ?」

まさか、と思った時には遅かった。ぬるりと冷たいものが尻穴に塗りたくられる感覚に息を飲む。そして次の瞬間にはつぷりと中に侵入してきたのだ。異物感にぞわりとすると同時にアルカディアの腕を掴むが、彼は気にせず指を押し進めてくる。

「っ……アルカディア」

「なにー?」

聞き返しながらも手は止めない。浅いところで抜き差しを繰り返していたかと思うと、一気に根元まで突き入れられ、びくりと体が跳ねた。そのままぐりぐりと中を押し広げられる感覚に息を詰める。
無意識にアルカディアをその腕で抱きしめ、縋り付くようにして耐えるが、彼はそんなことお構いなしといった様子で好き勝手に動き回った。

「っ…ぐ……」

アルカディアの指が動くたびにくちゃくちゃと粘着質な水音がした。中をかき混ぜるように動かされ「ぁ」とか細く声が漏れる。アルカディアの首筋に顔を埋めると彼の香りがふわりと鼻腔を掠めた。その瞬間ぞくぞくとした快感に襲われて思わず体を捩らせる。

「んふ、」

アルカディアはクラウディオの耳元でくふくふと笑っている。そのまま耳に舌を這わせてくるものだから、びくんと肩が跳ねた。

「っ、う」

そのままぐちゅりと舌を入れられて舐められる。ぴちゃぴちゃとダイレクトに響く水音に顔が熱くなった。その間もずっと後ろを弄られているせいで頭がおかしくなりそうだ。
アルカディアは時折わざと音を立てながら耳をしゃぶってくるため余計にタチが悪い。段々と呼吸が乱れていき、呼吸が荒くなればなるほど頭がぼうっとしてきた。

「ん、んっ……ぁ」

クラウディオは必死に声を抑えようとするが、漏れ出る吐息を抑えることはできなかった。アルカディアはクラウディオの反応を楽しむかのように耳への愛撫を続ける。そしてもう片方の手で胸の突起を弄ってきたものだから堪らない。両方の刺激に目の前がちらついた。
ぐりぐりと中を押し広げられ、その度にびくびくと体が震える。アルカディアはクラウディオの反応を楽しみながら指を動かし続けた。

「ふ…っあ」

ぎゅううっとアルカディアにしがみつく。彼の体温が心地良い。ぐちゃぐちゃという水音が耳の中で反響して頭がおかしくなりそうだ。

「っ……う」

クラウディオは必死に歯を食いしばって耐えていたが、アルカディアの指がある一点に触れた瞬間、びくっと体を仰け反らせた。

「……ここだ」

「っ…!」

アルカディアはその反応を見逃さず、執拗に同じ場所を攻め立てる。その度に電流のような快感が走り抜けて息が止まりそうになった。

「うぁ、っ……!」

クラウディオは無意識のうちにアルカディアにしがみつく手に力を込める。すると彼は嬉しそうに笑って更に強く抱きしめてきた。その仕草にすら反応してしまいそうになる自分が恨めしい。

「かわいいね、くらでぃお」

「っ…」

耳元で囁かれた言葉にぞくりと背筋が震えた。そして同時にアルカディアの指が一際強く前立腺を押し潰す。その瞬間、目の前が真っ白になった。

「───ッ!!」

声にならない悲鳴を上げてクラウディオは絶頂を迎える。びくんっと体が跳ね上がり、全身が痙攣したかのように震えた。
アルカディアはそんなクラウディオの様子を楽しそうに見つめながら、なおも執拗に同じ場所を攻め立てる。その度にクラウディオの口から悲鳴のような声が漏れた。

「っあ゙、ま……て、!」

絶頂を迎えたばかりで敏感になっている体には強すぎる刺激だ。クラウディオは必死で制止するが、アルカディアの指の動きが止まることはない。むしろ激しくなっていく一方だった。

「待てなーい」

アルカディアはそう言ってクラウディオの首筋に舌を這わせる。それと同時に指を三本に増やし、バラバラに動かし始めたものだからたまらない。

「っあ゛、あッ…うぁ…!」

もはや声を抑える余裕もなく、ただ喘ぐことしかできない。アルカディアはそんなクラウディオの反応ににこにこしながら何度も同じ場所を攻め立てた。

「ひっ、ぅ…!あ゙っ……!」

何度も何度も前立腺を押し潰されるうちに段々と思考が溶けていくような感覚に陥る。脳髄に直接響くような快感に思考が塗り潰されていくようだった。
一度中でイッてしまえばもう戻れない。クラウディオは必死に理性を保とうとしていたが、それも限界を迎えようとしていた。

「うぁ゛ッ…あ゙っ……!!♡♡」

びくんと体が大きく跳ね上がると同時に、頭の中が真っ白になる。一瞬呼吸が止まったような気がした。

「は……ふ…ぅっ、う♡」

アルカディアを抱き締めて彼の服の肩口に無意識に噛み付いていた。彼の細い体を抱き潰さないようにひたすらに気をつけながら痙攣を繰り返す。
ずる、とやっとアルカディアの指が引き抜かれた時にはもう息も絶え絶えだった。

「はぁ……っ、は…♡」

肩で息をしながらぐったりと脱力する彼に、どうしようもなく欲情する。前髪が乱れて目元を隠し、赤くなった顔は扇情的だった。
すり、と目元を親指で拭ってやると、彼はゆっくりと目を開けてこちらを見つめてくる。その瞳は蕩けきっており、どこか焦点が定まっていないように見えた。

「…ぁ…」

ぴく、と指先が震え、小さく声が漏れる。まだ余韻が残っているのか時折体が跳ねていた。

「くらでぃお、俺の事見える?」

頰に手を当てて、顔を覗き込むようにして問いかけると、彼はぼんやりとした表情のまま小さくこくりと首を縦に振る。
こんなクラウディオ、なかなか見れない。普段、どんな時でも気丈で毅然とした態度を崩さない彼が、こんな風になっているなんて誰が想像できるだろうか。いや、できないだろう。アルカディア以外誰も知らない姿だ。その事実に胸が高鳴った。

「くらでぃお」

名前を呼びながら頰に口付けると、彼はふるりと睫毛を震わせて目を閉じる。どうやら半分意識を飛ばしているみたいだ。

「かわいい」

ちゅ、ちゅと顔中にキスを落とす。その度に小さく声を漏らす姿が愛おしくて仕方なかった。普段の彼なら絶対に見せてくれない姿だ。
もっと見たいと思ったアルカディアはごろりとクラウディオの体をあおむけにするとシャツをたくし上げて胸元を晒す。そのまま指先で胸に触れた。先程散々弄ばれたせいか赤く腫れ上がってぷっくりとしている乳首に触れられてぴくりと震える手や足を見て笑みを深める。
普段からクラウディオが下になることは本当に滅多にない。だからこそ、彼は中の刺激に存外弱い。本人は認めようとしないが、アルカディアは知っている。
こうしてほとんど意識を飛ばしてしまうのもそれ故だ。普段とは違う状況下だからか、クラウディオの体は敏感になっているようだった。
ぐったりとして力の抜けた体を、アルカディアは優しく撫でながら手を下に滑らせていく。脇腹から臍を通り過ぎ、下腹部の辺りを円を描くようにして撫でると「っ、ん」と小さく声が漏れた。
そのまま太腿に手を這わせて内腿の際どい部分を執拗に触れるか触れないかというところで撫ぜる。もどかしい刺激に身を捩らせる姿がなんとも可愛らしい。

「くらでぃお」

耳元で囁いてやるとぴくりと反応を示す体。それすらも愛おしくて仕方がない。

「ねぇ、くらでぃお」

もう一度名前を呼ぶと、ゆっくりと目が開く。その瞳にはいつもの凛とした光はなく、ぼんやりとした様子でこちらを見つめていた。それがまた可愛らしく思えて仕方がないのだ。
クラウディオはぼんやりとしたままアルカディアを見つめているが、何をされているのか完全に理解していないようだ。ただされるがままになっている。

「くらでぃお、俺のも触って」

アルカディアはそう言いながら自分のズボンの前を寛げた。そこから現れたものは既に大きく膨らんでおり、血管が浮かび上がっているのがわかる。
だがもう意識はほぼないし、そもそも今のクラウディオは指先一つ動かすのも億劫な状態だ。
アルカディアは結局諦めて、彼の胸に自身を擦り付けた。

「くらでぃお、おっぱい貸してね」

返事はないが、了承を得たことにしてそのまま腰を動かし始める。クラウディオの胸の突起が擦れるのが気持ちいいのかアルカディアは夢中で動いた。

「っ、ん……」

時折漏れる吐息混じりの声を聞きながら夢中になって腰を振る。やがて限界を迎えたアルカディアはびゅく、と勢いよく精を放った。白濁液がクラウディオの顔にかかる。

「あは、くらでぃおに顔射しちゃった」

アルカディアは悪びれもなく笑って、そのまま彼の胸にもかかったものを指で掬って塗りたくる。完全に意識を飛ばしてしまったクラウディオは倒れるように目を閉じた。

「かわいいな〜…」

タオルで彼の顔や体を拭ってやりながら、アルカディアは満足げに呟いた。
しかしこの端正な顔に、アルカディアが出したものが付着しているというのはなんとも背徳的な光景だ。
こんなことをしたら怒られるだろうが、たまにはこういうのも悪くはないだろう。
アルカディアはそんなことを考えながら、クラウディオの体を綺麗にしてやるのだった。



​​──クラウディオが起きない。
もう夕ご飯時だ。お腹がすいた。
だけどクラウディオが起きてくれないとご飯が食べられない。

「くらでぃお〜?」

つんつんと頰をつついても起きない。
完全に熟睡モードだ。どうしようかな、これ。

「おーい」

ゆさゆさと体を揺すってみるが、やはり起きない。彼の腕を掴んで思い切り引っ張り起こしてみる。筋肉ムキムキなのと意識が無いせいでめちゃくちゃに重いがなんとか座らせることが出来た。

「……ぁ?」

そこでやっとクラウディオの意識が戻ってきたのか、ぼんやりとした表情でアルカディアを見る。その目はいつもの鋭さは微塵も感じられず、どこか蕩けたような色をしていた。いつもはきりりとした目元も今はとろりと垂れ、今にも閉じてしまいそうになっている。

「おはよぉ〜。もう夜だよ」

そう言って頬をつんつんとつついてみると、彼は鬱陶しそうにその手を払った。そしてぼーっとした顔でこちらを見つめている。まだ状況が理解できていないようだ。

「くらでぃお〜?わかる?」

「……ああ」

意識が戻ってきたようで、彼は少し伸びをしたかと思うとゆっくりと瞬きをする。その目は段々といつもの感じに変わっていったが、まだ思考はぼんやりとしているようだ。眠いんだろうなあと思いながらアルカディアは彼の頭を優しく撫でてやる。

「俺お腹すいた」

「……お腹すいた…?」

「うん。7時過ぎてるよ」

「……………そうか…」

それだけ言ってまた動かなくなってしまったクラウディオだが、徐々に現状を把握してきたのか表情が険しくなっていく。

「……お前」

「んー?」

思い出したのかもしれない。不機嫌に拍車がかかった顔をしている。
ちょっと、まずいかもしれない。

「…挿れてないよ」

「……みたいだな」

「うん。指だけ、ね」

「……」

クラウディオは眉間に皺を寄せて黙り込んでしまった。相当怒っているらしい。

「だって、くらでぃおがあんまりにもかわいいから」

「……ふざけるな」

「ほんとだよ。それに元はと言えば仕事選ぶくらでぃおが悪いもん」

「………」

ふんっとそっぽを向いてみる。アルカディアだって少しやり過ぎたかもしれないが、クラウディオだって悪いと思う。

「……アルカディア」

「なに?」

だけど優しい甘い声で名前を呼ばれてしまえば、胸が踊ってしまう。悪いな、って言ってよしよししてくれるかも!と思って彼の顔を覗き込むと​​──。

「ぎゃんっ」

ばちんッと音がしてベッドから転がり落ちた。この感覚と痛みは記憶に新しい。デコピンだ。
しかし昼間より明らかに力が強かった。
首が持っていかれるかと思ったし、額はじんじんと痛む。

「いっ、たぁ…!」

「ふん」

鼻で笑われた。酷い男だ。アルカディアは涙目になりながら恨めしげに彼を睨むが、クラウディオには全く効かないようだ。

「……何が食べたい」

「………お肉」

「わかった」

クラウディオはベッドからゆっくり降りて、床に座り込んでいるアルカディアの額をよしよしと撫でてから寝室を出て行った。

「……」

しばらくぽかんとしたあとぼんっと顔が赤く染まる。
あぁずるい。ずるい男だ。
こういうところ、本当に勝てない。

「はぁぁ〜〜……」

あぁすき。だいすき。
アルカディアは深くため息を吐きながら、自分の額をさすったのだった。