Eudaemonics
眠気が覚めてゆく。
黒い水みたいな闇から自然と浮上。
意識が明るみに出ると共に、リベリオはゆっくりと目を開いた。
最初に認識した色は白。
ぼんやりとした視界が輪郭をあらわにすると、それがシーツだと分かる。
リベリオは意識を取り戻す意も込めて小さく呻いた。
「………んー…」
気怠い。
なかなか鈍い覚醒は睡眠時間が足りないからか。
時計を見ると6時。今日はとくに予定もない、ありがたい日。
焦る必要もないリベリオは、のんびりとした動作で寝返りをうった。
薄れる闇に比例して、意識はだいぶハッキリしてきている。
そして次に目に入ったのは、白に埋もれる真っ赤な髪。
──るかくん。
リベリオは確認するように、その名を小さく呼ぶ。
当のアルカディアは反対側を向いており、寝息はその白に吸収されていた。
規則正しい呼吸に上下する、白い身体。
昨夜は少し無理をさせた、気がする。
アルカディアを自分の家に泊まらせてこれさいわいにと、イロイロと。
おかげでリベリオの身体は比較的軽い。
意識が重いだけだったようで、いまや完全に目覚めている。
それに比べて、どうもアルカディアの負担の方が大きいらしい。
挿入する側にしかなったことのないリベリオには分かりかねるが、その疲れは今もわずかながらに感じ取れる。
寝息は静かだ。呼吸の刻みさえなければ死んでいるかのように。
リベリオはおもむろに身体を起こしてアルカディアに近付く。
這いずるような動きに衣擦れの音がしたが、アルカディアに起きる気配はなかった。
リベリオはそのまま覗きこむように、上体を軽くあげる。
昨夜には涙やそのほかで濡れていた長い髪も顔も、今は半分が、シーツにうずめられていた。
固く閉じられた瞳。
おそらくシーツの白の映るせいか、赤みのない面貌。
真っ赤な髪とのコントラストが、目に焼き付いた。
それは世界に明度を与えるようで、リベリオの目覚めもいよいよ明らかなものとなる。
実に眩い朝だ。至福とも言い得るのだろう。
手を滑らせるように触れた肩は、むきだしだったせいか、少し冷えていた。
──そう、今は昨夜と正反対。
夜ではない朝。
濡れていた身体は乾き、熱かったもの全ては嘘のように。
リベリオはそして、しまったと思う。
思い出せば、必然。
朝とあっては、余計に。
勝手で抗えない熱が、身体を巡るのに気付いて、後悔した。
当然それは秘密裏に処理すべきことだ。
アルカディアは寝ていただけで、何もしていない。
リベリオが不覚にも勝手に劣情を煽られただけ。
だがしかし、リベリオはアルカディアを一瞥。目を少し泳がせた後はもう、止まらなかった。
おもむろに白いその背を抱き締めて、うなじへキス。
手をさまよわせ、この朝にすら溺れるために。
この後、気付いたアルカディアからの攻撃をどうやって流そうかと、白い首元を舐めながら考えた。
──アルカディアへの、おはよう代わりの言い訳。
「ルカくんといられる朝に、少しだって一人でなんていたくないだろ?」
とか。