「クラウディオ・ハルトマンが理性を飛ばしてセックスしないと出られない部屋」
そう記された紙が乱暴に破り取られ、手の内でずたずたに引き裂かれる。破る行為を念入りに行ったためだろう。クラウディオの手により発せられるビリ、バリ、グシャといった音は暫し続いていた。皺が出来、繊維が割かれ、記されている文字すらも識別不能になる。
この部屋にある唯一の扉に貼り付けてあったその紙は、この部屋の意図、それから今この場にいるふたりが同時に欲している事柄をたった一文にて如実と記したものであったのだが。しかしクラウディオの手によって無残にも破かれる様を、アルカディアが止めることはなかった。
記された文字や、目視したとたん行われたクラウディオの手早い行動に呆然としていたのもある。
突然こんな部屋に放り込まれてあんな文面を見せられ、受け入れられる者の方が少ない。──どんな状況でも怖くなるほど冷静な彼だから少し意外ではあったけれど。
他ならぬアルカディアも中々受け入れられないものだったから、止める気概すらも湧かなかったのだ。
「…出る方法を探すぞ」
「…うん」
そうして、ふたりは探索を始めた。壁も床も、果てには設置されているテーブルや寝具までもが真白い不可思議な部屋の中を。
歩き、手で触れ、目で映して調べながら、アルカディアはまず事の発端がいつであったのかを思い出す。
自身の時間間隔がこの部屋に正しく適応されているなら、この部屋に訪れる前、アルカディアは自室にいた。
次の日は恋人の折角の休みである。
アルカディアの恋人とは他ならぬクラウディオその人だ。
自分が思っているよりも彼は忙しいらしく、自分との時間を毎日必ず作ってくれるが僅かな休憩の最中に顔を合わせることと、休みの日にどちらかの部屋の中でゆっくりと目を合わせることは意味合いも心地も大きく異なることだ。どちらも心の糧になる行為に違いないが、アルカディアとしてはどちらかと言わずとも後者を求めている。
クラウディオも同じだと確信してはいるが、こればかりは彼にゆだねる他ない。
例え彼が口づけや抱擁、それ以上のことを求めていなくとも、ただ近くであの琥珀の瞳が視れるだけで嬉しいとアルカディアは思っている。
大抵は休みの日をふたりはくつろいで過ごし、穏やかに終える。翌週にクラウディオの仕事が立て込んでいなければ、そしてお互いに…否、アルカディアの体力が十分に余っていれば、或いはそういったことに縺れ込める。少しでも疲労が滲んだ仕草を零すと、クラウディオは一切熱のこもった手を出してくれなくなるのだ。
加えて熱い夜に成ったとしても、回数はそう多くはない。多くやったとしても二回が限度である。
クラウディオが丁寧に丁寧に、殊更大切にアルカディアを扱って後に繋がるため、アルカディアの体力的に二回も熟せれば上々といったところだろう。殆ど気絶するように眠りにつくアルカディアを拭い、服を着せ、ベッドを片付けるのは全てクラウディオだ。
そのどれもをありがたいとは思うが、同時に申し訳ないとも思う。もう少し…例えば眠りかけるのを半ば無理矢理に起こして、もう一度と強請ってくれても嬉しいのにと。そんな浅ましい願いを抱いてしまう。
愛して貰っていることは重々に解る。しかし尽くしたい心や愛したい意思があるのはアルカディアも同じことだ。一度くらいは、彼が満足するまで抱いてくれても構わないのにと。そう思う。それで、たとえ壊れてしまってもいいとすら。
しかしながら願いと現実が同時に存在することなど早々在りはしない。アルカディアが心中にて願い、暗にそういった夜を乞えども、クラウディオは心のままに抱こうとはしなかった。
あの日もそうだ。暗い室内に暖かな灯に包まれながらソファに腰かけて、ゆっくりと他愛もない話をした。数時間経った頃にベッドに行き、月の優しい光を帯びるカーテンを傍目にしながら抱き合って、小さな声を幾らか紡いだ。
ベッドの中に入り、寝具越しに互いの体温を分け合っている最中、先に瞼を閉じるのは大抵アルカディアだ。思えばクラウディオが瞼を閉じる瞬間を、アルカディアは朝でも夜でも見たことがない。緩慢とした瞬きを繰り返すアルカディアに、クラウディオがそうっと優しいキスをするのが常のことで。
その日もそうして口付けられた後、優しく抱きしめられ、頭を撫でられる内に眠りについた。明日の朝は彼の寝顔が見てみたいと。そんな願いを抱きながら。
そして目覚めるとこの部屋にいた。
「…大丈夫だ。何か方法があるだろう」
そう言って、クラウディオはアルカディアの頭を撫でる。髪を乱すような乱雑なものではなく、髪を梳くような丁寧で優しい手つきは愛撫というに相応しいものだ。
これはクラウディオとアルカディア、ふたりきりのときにしか得られない愛撫である。きっと同じ組織にいた頃の感覚が残っているのだろう。
そのせいか、先ほどからというもの、アルカディアは撫でられる度に擽ったい心地に陥っている。
ここは不可思議な部屋だ。
この部屋にはクラウディオとアルカディア、ふたりしかいないことは歩き回り調べ尽くしたことからも、そして感じ取れる気配からも歴然としている。誰かに監視されている可能性は拭えない。
しかしこの不可思議な空間で、仮にも性行為を強要されている恋人を気遣わない選択肢はないと判断したのだろう。クラウディオは度々同じようなことを言って恋人としての手つきでアルカディアの頭を優しく撫でていた。
アルカディアとしてはその手も、その心遣いも嬉しい…正直なところ嬉しくて仕方がない。けれども同時に心配も募っていた。
なにせクラウディオがそう何度も撫でる程には、出る手立てが見当たらないのだ。
部屋の中にはふたつ扉がある。ひとつは張り紙があった勝手口、もうひとつは浴室へと繋がるものである。曇り硝子の扉越しに脱衣所が並列されており、その先の浴室は大分広い構造だ。シャワーの他にも、猫足で支えられる広々としたバスタブがあり、なるほどゆっくりと寛げる作りと成っているようだ。シンプルだがデザイン性のある室内である。
それゆえに、整髪剤や体を洗う石鹸の他に、様々な種類のローションが並べられていたことだけが異質であった。
ちなみにほんの小さな通気口によって不思議と換気は成せるが窓は何処にもなく、脱出は出来なさそうだ。
部屋自体は、ほぼ正方形となっている。およそ十畳の空間の真ん中にベッドが置かれ、その近くに小型冷蔵庫や小棚が備えられていた。ベッドからそう移動せずに物を取り出しやすい設置だ。ちなみにふたりで移動させようとすれどもびくともしなかった。
そして何よりの異質は冷蔵庫の中にあった。
冷えた貯蔵室の中には水と食料が揃えられている。それらは一度取り出して扉を閉めると、次に開けた際には取り出され不足した分量が不思議と元通りに整えられていた。ありがたいことだがいっそ不気味にすら思える不可思議である。
異質はそれだけではない。冷蔵庫の中にあった小瓶。「クラウディオ・ハルトマンの理性を一定期間無くさせる薬」と記されたラベルの張られた液状のもの。これが、なによりの異常であった。
[この薬は性的な意味で理性が飛ぶ薬です。暴力衝動や精神不安を誘発させる効果はありませんのでご安心ください]
「………チッ」
舌打ちと共にやや乱暴に冷蔵庫の扉が閉ざされる。
クラウディオにしては珍しい粗暴な行為に、アルカディアは思わずと一度だけ瞬いたものだった。
彼は優雅で丁寧な人間である。舌に乗せる言葉は程度の整ったものであるし、基本的に無暗に他者を傷つける所作はしない。
それだから自身とふたりでいる際に、彼から舌打ちが漏れたことは驚くべきことだったのだ。
自身の胸裏を落ち着かせるためだろうか。クラウディオは深く息を吐いてからアルカディアを振り返った。そのときにも「大丈夫だ」と告げられたものだったが、もう幾度目かになるその言葉の声色には自分自身に言い聞かせるような語調が混ざっていた。
「……………」
「……………」
そうして一通りの探索を終えたとき。ふたりはベッドに座って押し黙っていた。
何処を見れど、耳を澄ませど、歩き回れど部屋から出る方法の切っ掛けすら見つからない。
探索の果てには扉や壁、床に銃や魔法を放ってもみたが傷ひとつ付いていないようだった。
クラウディオの手の甲をアルカディアはそうっとつつく。そうすると掌を向けられ、優しく握り返される。大きな手は暖かい。その優しい温度に後押しをされるようにアルカディアは口を開く。
「クラ、」
「駄目だ」
言いきらぬ内に遮られ、思わずと喉で言葉が詰まる。それでも続けて言わんとしたアルカディアの手を、クラウディオがやや強く握り込めた。縋るような力にアルカディアは再び唇を閉ざしてしまう。
それを眼にて確かめてから、クラウディオはもう一方の手で眉間の皺を揉みこみながら唇を開いた。
「あの馬鹿みたいな薬を飲めば絶対にろくでもないことになる」
「………、…でも」
「アルカディア」
言い聞かせるが如き呼び声に、アルカディアは口を噤む他ない。
代わりとでもいうように不服そうな顔で俯けば、宥めようとするかのように手を握る指先で手の甲を優しく擽られる。こういったところも含めて狡いのだ。この男は。
「この部屋に私たちを入れたのが誰かは知らんが、補填もついてる。この部屋に暫く留まっても支障はない」
「………」
「今はこんな馬鹿な事態に陥って、正直冷静な判断が出来ている自信はないが。今日のところは割り切って寝てみるのも手か?一旦寝て起きれば…また変化があるかもしれない。この部屋にも私たちにも」
「…………」
「…今のところは、それで納得してくれないか?」
提案という割には高圧的でない語調、口ぶり。それから縋るように握られ続けては撫でられる手。それらを受けて顔を上げざるを得ないと感じ得るほどには、酷くクラウディオに惚れている。
視線を擡げて見えた視界に、やや眉尻を下げた琥珀色の眼を持ってこちらを見ているクラウディオを映してしまえば、もう頷く以外に選択肢がないほどには、この男を大切に思っている。
「……………今のところは」
「ああ、それでいい」
言いながら、クラウディオは眦を和らげ、笑みを象ったような唇でアルカディアの頬に口づける。仕舞いに頭を優しく撫でられれば、もう胸裏に合った細やかな不満など消し飛んでしまうのだから己も大概だとアルカディアは心底思った。
「それじゃあ、風呂でも溜めるか。泡風呂にでもしてみるか?」
「うん。普段出来ないことやりたい」
「ああ。休暇みたいなもんだ。楽に過ごそう」
ベッドから立ち上がり、指先を絡めるように手を握りながら浴室へと向かう。最中、アルカディアはクラウディオの額にお返しとでもいうようにキスをした。細やかな戯れだというのに、彼が嬉しげにはにかんで手を絡めてすっかりと握り込んでくるものだから、同じように笑ってしまったのだ。
それだから、アルカディアはこんな休日も悪くないと思った。
思ってしまった。
「アルカディア…。…アルカディア」
瞼を、頭を、意識を揺れ動かすその声にアルカディアは思わずと眉を顰める。
元より、寝起きは悪い質だ。自力で起きたとて暫くは漠然とした意識を持て余す朝を迎えるというのに、他者に無理矢理起こされたとなればその心地は酷いものとなる。
頭がぐらりと揺れるような…小さな視界が膨張したような意識を、何者かは覚まさせようとしているようだ。肩を揺すられていた感覚は、今や頬を軽く叩く感触へと移り変わり、明瞭たる声でもって依然として変わらず名を紡がれ続けている。
アルカディアは頬に触れる手を払おうとして…けれどもそのとき、丁度緩慢とした思考がその声の主が誰であるかを把握して、止めた。代わりとでもいうように、叩く掌へと頬を擦り寄せる。
アルカディアの柔い皮膚に触れる掌は少し硬く、暖かい。大きな手は間違いなく彼の手だ。
そう確信して、アルカディアは自身の恋人を甘えた声音で呼び返す。
「くらう、でぃお……ねむぃ……もっと、ねたい…」
「そうしてやりたいのは山々なんだがな」
聞こえるクラウディオの声は明瞭としている。そうしてやりたいなら願う通りにしてくれ。そう言わんばかりに唸る声を零せば、額に何度か口づけられた後でこつりと額同士が合わさった。
キスをすれば宥められると思っているのだから。そう、拗ねた声音を出そうと思っていたアルカディアの心地は…けれども触れた皮膚の程よい冷たさで霧散する。
気持ちのいい感覚にうっとりと息を零すと、耳の下あたりの首を掌で触れられる。その掌も程よい温度で、なんだか気持ちがいい。
「やっぱりお前、少し熱いぞ」
「ん…っ、ぁ、つ…?」
告げられた言葉に、アルカディアは心地よさに感けて瞑っていた瞼をなんとか擡げる。緩慢とした瞬きをすれば、開いたばかりでぼやけた視界に恋人の面持ちが映った。
表情は普段とあまり変わらないが、よくよくと見つめれば琥珀色の奥側で不安が揺らいでいる様が見て取れる。面持ちを崩すことが下手になってしまった男に滲んだ、精いっぱいの案じる表情だ。
身を案じてくれていること自体は嬉しいが、誰だって恋人にそんな顔をさせたくはない。アルカディアは漠然とした意識を抱えながらもクラウディオに擦り寄る。
「ねおきだから、…だいじょうぶ…」
「………」
起きたてだからだろうか、アルカディアはくったりと力の入らない手を擡げ、自身に顔を寄せるクラウディオの頬に触れてやる。するすると撫でれば、その手を取られて甲の方から握られながら、悩まし気に頬を擦り寄せられた。
寝起きだから。その理由が、クラウディオは腑に落ちないようだ。琥珀の瞳は未だ観察の色を帯びてアルカディアを映し続けている。
「…最近、元気だったからな。発作の前兆なんて今まであったか?」
「んん……だいじょ、ぶ…だから…」
「…解った解った」
言い張るアルカディアをあしらうように言いながら、クラウディオはその頭を優しく撫でてやる。それから宥めるように額や頬、それから鼻先など顔中に口づけた。
優しい感覚が心地よく、アルカディアは緩慢とした瞬きを繰り返していく。絡めて握られたままの手が不思議なくらいに嬉しくて仕方がない。
「起こして悪かったな。もう少し眠れ」
「ん…くら、でぃおも……」
「解った、側にいる」
柔く笑んだ唇から発せられたのだろう声が耳に届くと同時に、隣に誰かが寝そべったために布が擦れた音も聞こえる。アルカディアが音の方へと擦り寄ろうとすれば、それより早く己の体躯が抱き寄せられた。筋肉のある、硬く暖かな胸。背中に回った手が優しく撫でてくれる感覚。全てクラウディオのものだ。
甘えを隠さずに胸元へと擦り寄りながら、アルカディアは閉ざした瞼をそのままに意識を落としていく。次に目覚める時は彼を心配させないでいたい。そう願いながら。
しかし願いは果たされない。
「…っ、……ぁ、は…、っ…ぁ……」
あつい。ひどく、熱い。
知覚する感覚が夢なのか現実なのかわからない。酷く漠然とした意識が穏やかな波のように脳の中で揺蕩って、その全貌を掴み切れない。
ただただ、体中が熱い。それだけが知覚できる。いつもの発作と違う。
酷い熱に魘されているだろうのに、どうしてだかちっとも苦しくない。関節に痛みはなく、皮膚が痛むこともない。ただただ熱くて、熱くて…それが苦しいのだ。
触れて貰えない。それが、酷く苦しくてならない。
「アルカディア、」
「ぁ…ッ♡…っ♡っ……」
聞こえた声にぴくぴくっと震えながら、アルカディアはゆっくりと瞼を開く。
起きたてだからか、それとも熱のあまり滲んだ涙のためかぼやけた視界に映るのは、やはり恋人の姿だ。焦燥に満ちた面持ちのクラウディオに、本来であれば疑念や心配を覚えるべきだろう。
しかしクラウディオを視界で知覚し、その声を聴覚で感じ取る体は、それよりも前に歓びと熱を得る。
嬉しい。クラウディオがいる。見てくれている。声が聞こえる。触って欲しい。欲しい、クラウディオが。
そんな嬉々とした欲求ばかりが生じて、脳を埋めて仕方がない。それにより甘ったるい声…否、もはや喘ぎが零れたとて、恥じらうことすら出来やしない。
「く、らぅ…♡♡…っ♡ぁ…、ぁ……♡」
「アルカディア、私が解るか?」
「っ♡♡くらぅ♡でぃお…♡♡」
「そうだ。解るか、よかっ…」
「ひ、ン…っ♡♡んぅ…っ♡♡」
体温を確かめようとしたのだろう。前と同じようにクラウディオの手が首に宛がわれて…アルカディアは堪らなそうに身を捩った。びりびりとした甘い感覚が背筋を通り、脊髄に響いて仕方がない。腹の奥で甘ったるい重さが増していく。ただ首に触れられただけだというのに。
可笑しい、と微かに残っていた理性がそう呟いて消えていく。
可笑しいだろう。けれど理性や常識、在るべき姿なんてものどうだっていいのだ。
今はただ目の前の男がほしくて堪らない。その少し硬い指先で首筋だけじゃなく、胸も腹も股座も、足先に至る迄触れて欲しい。この柔い肌に赤い跡でも噛み跡でも、なんでもつけて欲しい。全身のあの大きな手に腰を掴まれ、雄の衝動のままに剛直を穿たれて雌と化されたい。そんな淫猥な熱望が、起きたばかりで漠然とした思考に溶け入っている。
「は…ッ♡ァ……♡く、らぁ…♡♡」
喘ぎを抑えることのないまま、アルカディアは陶然として蕩けた眼差しを注ぐ。焦点のぼやけた赤い眼には焦燥に満ち満ちたクラウディオの面持ちが映っていた。
「…………」
性欲の熱に魘される恋人を前にしながら、クラウディオは混乱を募らせつつも努めて冷静に状況を判断していた。吐き出される溜息は角の尖ったものだが、その琥珀の眼はほんの少し色を変えた程度であったのがその証拠である。
アルカディアの様子がおかしくなったのは本日、二日目の朝からだ。
先に目覚めたクラウディオがアルカディアの寝顔を見ながら慈しんでいたところ、穏やかな寝息が徐々に変わり始めた。音も碌に聞こえなかった呼吸音が少し乱れていったのだ。
些細だが確かな変化を怪訝に思い額と首に手を宛がえば、普段の低い体温よりも明らかに高いものがそこにあった。心地よさそうな寝顔には申し訳なく思いながらも一旦起こして…これに随分手間がかかった…反応を確かめると虚ろながらも返事はしっかりとしている。
当人曰く寝起きだからと言っていたが、軽い発作の可能性も拭えない。軽いものであれば今までもすぐに回復したのもあり、未だ眠たげであったアルカディアをもう一度寝かしつけて、そこからクラウディオは見守る体制に入った。
否、それだけではない。彼は十分に可能性を危惧していた。
この部屋が…アルカディアに何事かをしたのやもしれないと、その考えは確かと脳裏にあった。部屋に入れられてからというもの、アルカディアとクラウディオは常に一緒にいたし、眠るときもアルカディアを守るように腕の中に収めて眠った。常軌の人間相手であればまず手出しなど不可能だ。
けれども此度の相手は…正体も仕組みも何もかも不明ときている。冷蔵庫の中に入っていたやけに具体的かつ断定的な薬の件も鑑みると、何が起ころうと不思議ではない。
どうかただの軽い発作であってくれと願いながらアルカディアの手を握っていたクラウディオの思いは、しかしアルカディアの願いと同様に果たされることは無かった。
アルカディアの体はどんどんと熱を帯びていった。最初は発作だろうと予測できた仄かな微熱は徐々に徐々に募り続け、仕舞いには穏やかな寝顔を踏み荒らすほどの膨大な熱へと膨れ上がった。
クラウディオの胸裏は、アルカディアの唇から零れる甘やかな吐息で、ある確信と怒気へと移り変わる。
「(そういうことか…)」
方法は解らないが盛られているのは十中八九、催淫物だ。それをクラウディオではなくアルカディアと差し向けたこの部屋の意図は直ぐと理解できる。
冷蔵庫の中にある胡散臭い薬。あれを飲めと言っているのだ。
つまりは、この部屋の目的を果たせと。
「ふ、ぅ……♡っ…♡ぁ、ぁ……♡ぁ…♡」
ベッドに横たわるアルカディアは、もはや喘ぎ混じりの息を留められないようだ。シーツの上に横たわる体躯は熱く、額には艶めかしい汗が滲んでいる。時折ぴくりと身を震わせてはもどかしそうな息を零す様は苦し気で…どうにも婀娜っぽいものだ。
クラウディオは目を片手で覆い、深く息を吐く。胸裏の奥底に押し込めてある獣が疼く声が聞こえる。それは鼓動と成って全身に巡っている。耳の裏側で囂々と唸る音が酷いほどに聞こえて仕方がない。
クラウディオは今一度、眼前の恋人を見やる。指の隙間から見える恋人は苦し気で、艶めかしく、愛らしい。食ってしまいたいくらい可愛いと、腹の奥から唸りが聞こえる。
きつく瞼を瞑り、クラウディオはいっそ怪訝にさえ思う。これを露わにしろと?
「くら、ぅ……♡…っ♡ぅ……♡」
「………」
苦悩の渦中にある男の名を甘ったるい声が紡ぐ。熱に魘されるあまり零れ出る声かとも思ったが、見れば、熱に塗れた赤い瞳はぼんやりとクラウディオを映しており、どうやら違うようだと知れた。
クラウディオは音もなく息を吐いて、アルカディアの頬へと手を差し伸べて触れる。優しく撫でるように包めば、体をぴくぴく♡と震わせながらも幾らか表情が和らいだ。それでも眉尻は下がり、零れる息も声も艶やかだが苦し気だ。この状況とはいえ、彼は苦しむ恋人を差し置いてまで自身を優先したくはなかった。
「アルカディア、」
「…っ♡ぁっ♡♡…っ♡♡ひ、ぅ…♡」
「……」
クラウディオはいっそう眉間に眉先を寄せる。見間違いや錯覚でなければ、名を紡いだとたんにアルカディアの体躯はびくりと震え、声はますます上擦って、眼はどろりと熱を帯びた。
呼称を紡ぐだけでも法悦を得ている…つまりはそれほどに催淫が回っているということだ。これまでの様子から鑑みるに、放っておけば刻一刻とその周りは酷くなるだろう。クラウディオが薬を飲むことで止まればいいが、部屋の脱出条件を満たさない限り止まらない可能性もある。
クラウディオの苛立ちは募っていく。恋人を苦しめている要因は間違いなくこの部屋の作り主だ。だのにさもクラウディオ自身に責務があるように事を運んでいる。そこも含めて腹立たしいことだ。
するすると真赤い頬を宥めるように撫でながらクラウディオはひとり密かに思案を進めていく。一度抜いてやったほうが楽だろうか。否、時間経過で悪化していくなら手早く薬を飲んで事に運んだ方がいいだろうか。であるなら必要なのはこちらの意思のみだ。
そう、考えを募らせながら眉間の皺をも増やしていく最中。手に擦り寄る恋人から苦しげな声が喘ぎが溢れ出した。
「くら、ぅ…♡ぁ…♡♡でぃっ…ぉ…♡ごぇ、ん…♡っ♡ぁ…♡」
「は…」
「ごめ、…っ♡ぁ♡ぁ…♡おれ、…へん…っ♡…に、…なっ♡♡」
「…っ」
「くら、ぅ…♡♡ほし…の…♡っ♡とまんな……っ♡♡ごめ……っ♡♡」
言いながら熱に蕩ける赤い眼からぼたぼたと涙が溢れ出す。喘ぎ声と成って溢れ出すのを解っているだろうのに、健気な言葉を懸命に紡ぐ様は酷くいたいけでならない。
恋人の健気な姿を前に、クラウディオは己の顔を覆って深く息を吐いた。眉間には皺が刻み込まれ、琥珀の眼には自責の念が色濃く塗られている。それすら、あの赤い目の視界に映れば罪責の糧となるのだろう。
クラウディオは自身を酷く責めざるを得なかった。おそらくクラウディオの悩まし気な面持ちでアルカディアは自責を抱いたのだろう。そんな顔をさせているのは自分だと考えてしまった。驚くことに、アルカディアという人間は熱に塗れてもなお思考と愛情を捨てきれていないのだ。この男が己に対して人並み以上に思慮深く、酷く優しく…そして深く惚れていることを考慮するべきだった。
今更の後悔を溜息と共に心の隅に置き、クラウディオは顔を上げる。その面持ちには苦悩ではなく、情愛が滲んでいた。
悔やみよりもするべきことを優先しなければ。アルカディアは未だ苦しんでおり、おそらく一分一秒と熱は増している。早々にこの状況を打破しなくてはならないが、まずは…畢竟自分の身勝手で泣かせてしまった恋人を泣き止ませねばならないだろう。
「アルカディア、泣くな。私は怒ってないよ」
「…っ♡♡ほん、と…?♡…ぅ♡っ♡おこって、ない…?♡」
「本当。よく見てくれ。怒ってる顔に見えるか?」
「ん…♡みえな…♡かっこいい…♡♡すき…♡♡」
「はは。そうだ、お前を心底可愛いと思ってる顔だ」
「っ…♡♡ぁ゛…っ♡♡ぅ…♡♡す…き…♡♡」
愛欲に蕩けた赤い瞳から零れる涙をひと粒ひと粒と唇で掬い取ってやり、時折唇にもちゅっ♡ちゅ♡ちゅ♡と軽く口づけてやる。そうすれば愛しい恋人はすっかりと面持ちを嬉々としたものに変えて柔く笑うのだから愛しさが溢れるというものだ。
頬を撫でながら米神へと流れ落ちる涙を拭い、そうする間にも顔中にキスをしてやる。欲しがる心地を抑えきれないのだろう。唇に口づければぢゅうっ♡と吸い付いてくるアルカディアの様は愛らしくてならなかった。
「アルカディア、これから私の願いを沢山聞いてもらうと思う。…聞こえてるか?」
「ん、ぅ…♡ん…、ん……♡きく…♡なんでも、する…♡」
「ん、聞こえてるな。…そう、だから先に謝っておく。終わった後もたくさん謝る。悪い。暫くいつも以上にうんと甘やかす。何だって聞いてやるし、何でもするよ」
「ぁ、ぅ♡ぅ゛…♡んん…ぅ…♡」
「だからお前の幸せを願い続けることは許してくれ」
頬を両手で包み、額同士を合わせて、クラウディオはそう告げる。彼の両手は愛しい恋人の頬にあるまま、眼差しすらもその赤い眼を見つめるままだったが、それは祈りの行為によく似ていた。
そうして一度アルカディアから離れて傍らの冷蔵庫へ向かおうとして…けれども、その体躯はベッド上に引き留められる。
クラウディオの項に両手が回されたからだ。それは傷も日焼けもない青白い皮膚を持つアルカディアのものだ。碌に力の入らない両腕はぐったりとしながらもクラウディオを己の元へぎゅうっ♡と引き寄せる。
もはや縋りつくようなその腕の様にやや目を瞬かせたクラウディオは、けれどもすぐに笑みを浮かべて己を求めた恋人の腕を優しく撫でてやる。
まだキスが足りないのだろう。少しでも離れるのが寂しいのかやもしれぬ。そう思うクラウディオの耳に恋人の、喘ぎじみた声が届く。
「くら、ぅ♡っでぃお♡なんでも、いい…っ♡…くら、でぃおに…っ♡な、ら♡なに、されても…いい♡」
舌ったらずな声は懸命に言葉を紡いでいる。熱に浮かされても愛情の深さを亡くせない男の声だ。琥珀色が瞠目する。
「…っ♡だから、♡ぉ、ねが…ぁ♡ぁ♡〜っ♡♡」
クラウディオは思わずと眼前の恋人をきつく抱きしめる。口づけどころか触れ合うだけで甘く震えていた体躯は力強い抱擁にびくびくっ♡と跳ねた。項に回っていた手の指先が震えながらも項を掻き、皮膚に乱雑な白い線を描きながら肩側へと押しやられる。
衣服以外に互いの隙間などない程に密着した体は、己の内側で巡る鼓動という名の高揚をよくよくと聞こえさせた。どくどくどくと布越しにも皮膚へと響く音に、アルカディアは荒い息を喘ぎ混じりに零す。
自身の激しい心臓の音を感じ得ながら、クラウディオは深く深く息を吐く。思わずと自身の腕の中に抱きしめたこの男になにかを言ってやりたくて、結局なにも言えなかったのだ。ただただと抱きしめて、その肩口に情けなく擦り寄ることしかできなかった。抱きしめる腕でひたすらに囲うことしか、そうしてこの体を守ってやりたいと願うことしかできなかったのだ。
「悪い」
抱擁を続けてどれほど時が経ったのかは誰にも分らなかった。この部屋には意図したように時計がなかったし、アルカディアに時間を気に掛ける余裕などあるはずもない。クラウディオならば或いは把握していたろうが、彼は恋しい人を抱擁したときからそういった頭を働かせることを止めていた。彼はどの道捨てる思慮を抱えるより、いたいけなくらいに自分を慕う恋人を感じていたいと思った。
それだから長いようで短く、どれ程経ったのか見当もつかないくらいに分厚い時間を掛けて、クラウディオは抱擁を止めたのだ。そうして最後にひと言だけ告げて、アルカディアの側から離れて行った。
冷蔵庫を開けると、昨日見た様子と変わらない中身がクラウディオを出迎える。飲んだはずの水は補充され、食べたはずの食事も同様だ。その中に佇むひとつの瓶を手に取る。『クラウディオ・ハルトマンの理性を飛ばす薬』と張り付けてあるラベルにて銘打たれた薬物を。
丁度ワインボトルを小さくし、飲み口に繋がる筒の部分をほんの少し長くしたような小瓶だ。蓋はコルクで締められており、クラウディオの親指で弾くように押しやれば容易く開いた。 そして、クラウディオはそれを一思いに煽る。
匂いや触感、確かめられることは数多とあったが、その時間が勿体なかったのだ。アルカディアは今もベッドで横たわり、苦し気に…そして切なげに喘いでいる。大切にしたかったからという理由があるとはいえ、飲むことを先延ばしにしたのは自分だ。巻き込まれた恋人を早くどうにかしてやりたかった。
そうして、変化は直ぐと訪れる。
「…ッ!♡ひ…っ、ぅ…ぁ…?♡」
ガシャンッ。と、そんな音が鳴り響く。思わずといったようにアルカディアの体がびくりと跳ねた。それは淫猥たる思考にさせられてから久しい、吃驚による震えであった。
蕩ける赤い眼はその音の方へと向けられて…そうして目撃する。割れた小瓶の上、粉々になった硝子片の上で立ち尽くすクラウディオを。
「く、ぁ……ぅ…♡……っ?♡」
グシャ、ガシャ、と砕ける音が続けて聞こえる。クラウディオの足が、叩きつけて割った小瓶の硝子片を踏み砕いているのだ。
アルカディアはそれを、ぼうっと見つめることしかできない。
不必要なほど粉々にしていく様には怒りや苛立ちが滲んでいる。それが恐ろしくて、怖くて、好きだと、興奮した。
「…っ♡ぁ、ぁ……♡」
満足するまで硝子を踏み砕いたのだろう。クラウディオは俯いたまま、ふいに顔をベッドの方へと顔を向けた。丁度、目元の部分が乱れた髪の影になっているために表情が解らない。ただいつもは引き結ばれている唇が、今はほんの少し開いていた。それだけの変化だ。しかし、解る。いつもの彼ではないと。
ただならぬ気配、いっそおぞましい程の空気を感じて…アルカディアはぶるりと震えた。息すら薄く吐き出したいと思う程の恐ろしさ、そして熱望だった。
自分がどうなってしまうのかわからない。どうされるのかも。けれどそれでもいいと思えた。この男に無茶苦茶にされるなら、してもらえるなら、その内側にひた隠しにされた欲望を差し向けてくれるなら、なんだって欲しいと願ったのだ。
「、っ♡…っ♡」
クラウディオは一歩、一歩とベッドへ歩み寄る。靴底に付着した硝子片が踏み出す度にパラパラと床に落ち、散らばった。己に近寄るその様をただただと見つめて…アルカディアは思わずと息を呑む。
前髪の影からはみ出た、唯一見えていた唇が、ふっと笑った。
「ッ!♡♡くら、…ぁ、♡っぁ」
背筋から這い上がった寒気と高揚のままに名前を口にして、アルカディアはそれ以上何も言えなかった。その唇が塞がれたからだ。一気にベッドへのし上がったクラウディオに覆い被さられ、両手を縫い留められて、体で体躯を抑えつけるようにして、唇を食べられた。
強引な口づけは皮切りに過ぎない。それを知っていたのに、高揚が、期待が、恐怖が、アルカディアの背中を駆けあがる。
そのどれもこれをも何も発せられないまま、笑う男に唇ごと全てすべてを食い尽くされた。
「ん、ぅ♡」
柔らかな唇同士が触れ合ったというよりは、獣に食いつかれたような衝撃だった。酷く朦朧としていた最中でも感じ取ったあの感覚を、アルカディアはよく覚えている。
唇が触れるのではない。噛みつかれたのだ。閉じていた唇全体を食い尽くすように広げられたクラウディオの口は、ありありと滲んだ意志のままアルカディアの唇を食んだ。
その一瞬といったら、柔い皮膚に歯を立てなかったことが不可思議に思えるほどの勢いであった。クラウディオは、それから唇全体に吸い付き、真赤い舌でべろりと舐めた。それを幾度か繰り返した。
その間、アルカディアはすっかりと固まってしまっていた。眼前に見えたあの大きな口に意識が丸ごと食われてしまったようだったのだ。
彼が呆然と陶然から立ち返ったのは、晒された皮膚に触れた熱の故だった。
クラウディオの手が、ひどく熱かった。
大きな手がアルカディアの後頭部に回り、頬に充てがわれる。
上背だけが高く体は薄いアルカディアと異なり、クラウディオは上背も高く筋肉がついている。自分の体は既に死んでいることを除いても代謝は彼の方が良いに決まっている。
その事実を鑑みれば、低体温のアルカディアの肌にとって彼の肌が熱く感じられるのは当然やもしれぬ。
けれども理性付くで解決しようとする脳裏に反し、きっとそれだけではないと、アルカディアの胸裏は解っていた。
熱い。熱いのだ。どうしようもなく熱くてたまらない。
「ぁ、ぅ♡ふ…っ♡ン、ん…♡んぅ…ん…♡」
普段の低すぎるアルカディアの体温は、いつの間にか体躯に沁み込まされた催淫のために高くなっている。腕を抑えつけていたクラウディオの手がびくびくと震えるアルカディアの手を握り、指の間に指を差し入れて深く絡み合えば、もはや熱が飽和するようだ。体温が溶けあい、互いの境界線が解らなくなる。それを酷く心地いいと思えた。
「ん、ぐ♡ぅ…♡ん♡ぁ…、ぁ♡ん♡んぅ…♡♡」
「ん…、ん……」
いっそ穏やかな胸裏は、けれども襲い来る口づけによって酷く掻き乱される。噛みつくように唇を塞いだクラウディオは、そのまま舌を捻じ込むようにアルカディアの口内に差し入れる。唾液をふんだんに含むアルカディアの舌を捕まえると、自分の咥内へと引きずり出すように啜り始めた。じゅるる♡と淫猥な音が零れ、ついで溢れる唾液がお互いの顎を伝うのも気に留めやしない。
望まれるがまま引きずり出されたアルカディアの舌はクラウディオの歯で柔く噛まれながら舌で啜られ、舐られ、離さないと言わんばかりに絡みつかれて、どうしようもできない。ぞわぞわと背筋を這う快感はひっきりなしに続き、唇の端から甘ったるい声が零れ出る。
嬉しい、嬉しい、そう思うまま縺れさせながらも自らクラウディオの舌に吸い付けば、唇を合わせたまま角度を変えていっそう深く口づけられるのが堪らない。果てには繋いでいた手の一方をアルカディアの後頭部にやってまで深く深く口づけるものだから、もう溺れてしまうとすら思った。
「ん、ぐ…っ♡ぁ…ァ…♡ぅ、ン゛…♡♡」
舌を、咥内を食い尽くされるような口づけはいっそう深まっていく。普段の睦み合う口づけとは違う、情欲の衝動のままに行う暴力的なキスだ。
いっそ苦しいほどのそれを、けれどもアルカディアは求め続ける。自由になった手をクラウディオの項に回して引き寄せると、クラウディオはそれに応えていっそう舌を絡める。後頭部を抑えつける大きな手は熱く、痛みはないが寸とも引くことができないのだ。
舌は吸い付かれ、絡められ、時折甘く噛まれるのが堪らなく良い。上顎をずり♡ずりゅ♡と捏ね回すように撫でられるのが苦しくて気持ちがいい。
「っ♡ぁ…♡ぅ、ん♡ン♡」
口づけの最中…おもむろに、アルカディアの手首を掴んだままだったもう一方の手が離れていく。ほんの少し痛いくらいであったその手が遠ざかっていくのが寂しくて、アルカディアはもう一方の手と同様にクラウディオの項へと回した。
両腕で縋るように抱き着くアルカディアの体を、クラウディオの手が這っていく。晒される鎖骨に触れ、服越しに胸を、それから腹へと辿った指は下腹辺りで留まった。
急所に程近い…際どい股座から下腹部を、指先がなぞる。さも、いつもこうして犯しているのだというように。
「ぁ♡♡っ…♡ふ…っ♡はぁ……♡」
情欲のままに絡み合うアルカディアの体躯は淫猥たる意図を容易く汲み取り、いっそう熱を上げる。そんなアルカディアを焦らすように、クラウディオの手は指先で幾らか股座を行き来させるとまた上部へと戻っていった。
人知れず疼く腹の奥が切なくて堪らない。もう幾度も雌にさせられた雄膣はひとりでに収縮を繰り返し、衣服の下、汗の滲む下着の内側で後孔をひくつかせいている。
「っ♡ンっ♡ん、ぁ…♡は…♡」
もどかしそうに脚をくねらせるアルカディアを他所に、クラウディオの手は胸部へと辿り着く。その掌は大きく開くと、ぎゅむっ♡と大胆に片側の胸を掴んだ。
女性のように膨らみなどあるはずもない…瘦せ型の為に常人よりも少しばかり肉付きの悪いアルカディアの胸部など、膨らみがあるのかすら定かでない。
クラウディオの手はかき集めたような肉を鷲掴んでは揉みしだこうとし、余った幾つかの指先が時折あばらの段差をこつこつと撫でる。気持ちいいはずがないというのに、激しい口づけの最中だからだろうか。それとも掌の中、指の間で胸のついでのように捏ねられる乳首が法悦を得ているからだろうか。むず痒いような感覚が体中に滲み始めて、アルカディアは思わずと堪らなそうに眉尻を下げる。
「くぁ、ぅ…っ♡ン♡ん…♡っ♡ふ、♡ぁ♡」
もどかしさに制止を求めようとすれど、開く傍から荒々しく塞がれるのだからどうしようもない。逸らそうとすれば咎めるように舌を甘く噛まれて力が抜けてしまうのだ。
ただ胸を揉みこまれるだけで気持ちいいなど普段では考えられないことだが、今は催淫をしとどに与えられている現状と、なにより愛しい男が理性なく求めてくれている。その現状にひどくひどく興奮している。
「ぁっ!♡ひ…っ♡♡ゃ、…っ♡♡」
口づけに溺れ、胸を揉まれてじりじりと歯がゆい感覚に見舞われていた最中。とたん、確かな快感が局部を襲って息をのむ。投げ出されていた両膝を思わず閉じようとすれば、その間に脚が挟まっていることを知った。
局部に走る快感は留まらない。クラウディオの両膝が、そこを刺激しているのだ。ぐり…♡ぐりぃ♡と股座を押しやる硬い膝は勃起しきった陰茎を程よく押し挟み、ひくつく後孔にずり♡ずりゅ♡と布越しに触れる。揉みこまれる胸部とは違う、明確な官能を与えられている。
「ぁ、ぁ…♡♡ゃ、ぁ♡んッ♡♡ぅ♡んっ、んっ♡」
飽和する快感に呼吸の仕方まで忘れてしまうようだ。そうして募る息苦しさのあまり、アルカディアはどれかひとつだけでも免れようとする。
びくっ♡びくっ♡と震える体は碌に力も入らない。それでも、首の後ろに回した手の爪先でかりかりと項の皮膚を掻いて訴えた。唇は絡みつく舌から逃れようと顔ごと逸らさんとした。身をよじって胸を揉む手から逃れようとした。脚は彼の太ももを挟むように両膝を擦り寄せて止めてほしいのだと強請った。
けれども全てが裏目に出る。項を掻く指先が誘いだとでも思えたのだろうか。後頭部に回る手が熱い指先にて同じようにすりすり♡とアルカディアの項を掻きながら、顔を引き寄せて口づけをいっそう深くしていく。
クラウディオの唇は自身から離れようとするアルカディアの唇に追いすがり、ぬぷ♡くちゅ♡と舌で舐めてそのまま差し入れては、引きずり出すアルカディアの舌に柔く噛みついてしまう。
どれほど捩ろうとも体躯は彼の目下から逃れられず、胸を揉みしだく手は留まらない。どころか、細やかながら感じ得ている官能を解っているとでも言うように時折掌で胸の頂を押し転がした。
膝は押しつぶすほどではないはが無遠慮な力で股間を揉みこんだ。水気をはらんだ布地がクラウディオの膝と擦れて淫猥な音を立ててはぐっしょりとした感触を得て、そのときにようやく、アルカディアは荒波に飲まれるような意識の片隅で己が幾度か射精していることを知れた。
「ん゛──…ッ♡♡ん、ん……っ♡ぁ、ふ♡…っ♡んぅ…♡♡」
アルカディアは苦しい呼吸を吐き出しながら、それすら官能だと受け取る己を感じ得る。もう体のどこもかしこもが無茶苦茶だ。ただしたいがままに、されるがままに、無茶苦茶に愛でられている。
「は、ふ……♡ぁ、ぁ……♡ン…ん♡ん、ぁ……♡」
何が皮切りだったのか、食べつくすようにキスをし続けていたクラウディオの唇が離れていく。一瞬、口づけに飽いたのかと考えたが、離れる間際まで名残惜しそうに絡みついていた舌や、離れてからもちゅっ♡ちゅ♡と触れ合う唇の様子、それから仕舞損ねたアルカディアの舌に軽く絡めて吸い付いた舌先の様子からそうではないのだろうと知れた。
息苦しさからか飽和した快感のためか、アルカディアの視界と意識は実に漠然としている。ぼんやりと眼前を映す赤い眼を、クラウディオの琥珀の眼はよくよくと見つめたものだ。
少し距離が開いたために輪郭をくっきりと現した、宝石のような眼に捉えられるままアルカディアは熱い息と喘ぎを零す。クラウディオはそのひとつひとつを掬い取るようにちゅっ♡ちゅむ♡と口づけていた。時折歯を立てて柔く噛みさえするのだ。キスをされ続けて痺れている唇には丁度いいような、酷いような柔く鋭い感覚にアルカディアの体はぴくぴくっ♡と跳ねていた。
「可愛い、かわいいな、アルカディア。かわいい」
何度もそう言いながら、クラウディオは後頭部に回していた手で髪を優しく撫ぜる。それだけを聞き、その手の温度だけを感じ取っていればいつもの彼に違いないと思えたろう。それほどに優しい手つき、優しい声音だ。
「ぁ……っ♡」
違うのだとは、その目を見れば瞭然と解った。普段優しい色味を帯びている琥珀の眼が、今は甚だしい程の熱情を湛えている。爛々と輝く眼はいっそ暴力的なほどに色味が強く感じた。
「可愛い、…かわいい」
覚えたての子供のように…否、水が溢れ出した器のようにそればかりを言いながら、クラウディオの口は下がっていく。唇から顎へ、それから首へ。揺れ動く喉仏にキスをし、びくつく身体を掌や脚にて味わいながら愛で続ける。ちゅっ♡じゅっ♡と太陽にすら触れられ慣れていない白い肌に口づけては時折強く吸い付いて跡を残すことも厭わない。
アルカディアは普段から着込んでいるものの、首元は数少ない晒されている肌のひとつだ。そこに再び所有印を残すことなど、クラウディオは余程のことがない限りしなかった。つまりはあの大きな傷跡以外は無かったのだ。それが無遠慮なほどに施されていく。
「ぁ…っ♡う…っ♡、っ…♡♡」
クラウディオがいつも自分を思い行為を程々に留めていることを、アルカディアは知っていた。
仕事に響く、明日ゆっくり過ごせなくなる、大切にしたい。そういった理由を持って、クラウディオはいつも優しくアルカディアに触れていた。その愛情は酷く優しいものだ。代えがたいものだと知っている。
けれどもアルカディアにはクラウディオの思うままに抱いてほしいと願う心が確かにあった。だって恋人に求められて嬉しくない男がいるだろうか?
けれど、アルカディアが無い性知識を振り絞り誘惑しようと、万全の状態で床につこうと、クラウディオは決まって優しくアルカディアを抱いた。思い詰めたときには、クラウディオは自分に付き合ってくれているのだとすら考えたこともある。理性を飛ばす薬を飲んだとしても、何事も及ばないかもしれないという不安さえ僅かに抱いた。
それだからもはや無理やりの口づけさえひどい程に嬉しかった。制止を呼びかけるなどするはずもない。
それを感じ取ったのか否か…クラウディオはキスを続ける最中、徐に口を大きく開いた。そうして、白い皮膚に歯を突き立てたのだ。
「ぃ゛…ッ!♡♡」
がッ♡と、歯が皮膚に食い込んだ感覚にアルカディアの身体が跳ねる。先ほども散々に唇を貪られたためだろうか。喰いつくされるような錯覚に襲われて、背筋にぞわぞわと危うい感覚が伝っていく。淫猥に塗れて馬鹿になった頭はそれすらも快感に受け取るのだからどうしようもない。
体はただただびくっ♡びくっ♡と震えるばかりで抵抗も碌になく、獲物としてふさわしい態度のままであった。それをいいことに、歯はどんどん深く食い込んでいく。
「ぁ゛、ぁ゛…ッ♡♡ぁ゛…っ♡は、ぁ……っ゛♡」
ぐぅ…っ♡と皮膚を押し込めていく歯は力強く、けれども動きばかりは緩慢としているのだ。もはや痛みまで発し始めたというのに、おかしなことにその緩慢さに何処かしらの優しさを感じ得てしまう。それとも食われる感覚を知らしめている加虐心からなのだろうか。解らない。ただ、この捕食じみた愛撫さえも嬉しく思うほどにこの男に惚れていることがまざまざと分かる。
「ぁ゛ッ!うぁ゛♡♡ぁ゛っ♡〜ッ゛!♡♡」
ぶつッ♡と音が響き、がくんっ♡と身体が痙攣する。皮膚の破れる感覚は衝撃として体中に響き、アルカディアの赤い眼が見開かれた。
叫び出したがった口が開いたが、けれども喉にぶつかった声は掠れた喘ぎしか舌に乗りはしない。
間に入り込んだクラウディオの脚に甘えて擦り寄るばかりであった膝さえびくっ♡と震え、縋るように身もだえた。それにより股座がいっそう押しつぶされて、快感なのか痛みなのかが定かでなくなってしまう。
「…〜っ♡♡は、ぁ゛…っ♡ぁ……♡…ひっ♡ぁ゛ぁぁ…っ!♡ぁ♡ぁ♡ぁ゛♡」
ゆっくりと、クラウディオは皮膚を突き破った歯を抜いていく。
それは最初、混乱のあまりへたくそな呼吸を繰り返すアルカディアを慰めるためかと思われた。
けれど違うと直ぐに解る。彼は己の歯型についた傷口の傍で舌を出し、少しの厭いも伴わずべろりと舐めあげたのだ。
ざらりとした舌で刺激され、唾液が沁み入り、噛み跡からはずくずくと痛みが浸っていく。鉄の匂いが漂うそこを舐め取っていくクラウディオの舌づかいは、さも少量ながら滲んでいく血を少しも逃さないといわんばかりだ。それだけじゃない、クラウディオの口はその真新しい傷跡を愛おしく思うとでも言うように甘く噛みもする。
さも吸血鬼にでもなったかのような苛烈な愛撫に、アルカディアはくらくらと目の前を揺らしてしまう。滲む痛みは舐め上げられる快感に変わり、思わずと浮かんだ涙は快感に浮かされて零れ落ちていく。もうなにもかも気持ちがいい。それを恐ろしいと思う理性すら噛み砕かれてしまった。
「ぁ♡ぁ♡っ♡あ、っ…♡んぅ゛ッ♡♡」
滲む血を舐め、柔く噛み、慰めるような、食べつくすような愛撫をひと通り終えたのだろう。クラウディオは唇を離すと…また首筋へと唇を差し向ける。
今度はあむ、と唇だけで柔く食んだ後、すぐに歯を突き立てた。ぐっ♡くっ♡ぐぅっ♡ぶちっ♡と、ゆっくり皮膚を食い破っていくその口に、アルカディアはただただと震えるしかない。痛みを訴えて下がっているのは眉尻ばかりだろう。蕩け切った赤い眼差しは嬉しい、うれしいと感じ入る。首の後ろに回した手はそのままに捕食者を引き寄せ、そして首は傾けて牙に対していっそう皮膚を晒し、そのすべてがもっと食べてと言わんばかりだ。
それに応えるように…さも当然だといわんばかりに、血濡れた唇は皮膚へと歯を突き立てていく。
「ひ、ぐ…っ♡♡ぁ♡♡ぁ♡♡、ぁ♡♡」
唇で噛み跡を囲い、舌でべろべろと捏ねまわすように幾度も舐る。そうしてこぷっ♡と溢れる血をじゅるるっ♡♡と啜った。
血をひねり出されるような痛覚に体が何度も跳ね、本来ならひどい痛みを伴うはずの加虐に甘ったるい声が溢れていく。痛みなのか法悦なのか、もうわからない程のひどい快感に赤い眼が焦点をなくしていく。
「ぁ゛♡…っ゛♡♡ぁ゛ぁ♡ぉ゛♡ぐ…ッ♡ひ……♡ぁ゛ー…♡♡っッ♡♡」
びくっ♡びくん♡と跳ねては捩るアルカディアの体躯が痛みに悶えているとは、もはや誰をも思わなかったろう。閉じる余裕もない口からは唾液と喘ぎが零れ続け、くねろうとしては抑えつけられる腰は女のように婀娜っぽい。相も変わらず膝で押しやられている局部からごぷっ♡と白濁が溢れ出ているのは一度ではないのだろう、股座の布には染みが滲み始めていた。揉みしだかれる胸すらも堪らなそうに仰け反って、もっとして欲しいと強請っているようだ。
幸いなのか悲惨なのか、クラウディオの手は変わらず無い肉をかき集めて胸を揉みしだき、濡れる股座に気を良くした膝がぐりぐり♡と縦に揺らしては横に揺らめかせもする。唇はじっくりと肌と血を味わうと、また別の箇所へと歯を沈み込ませ、丁寧に食いついていく。
「ぅ゛…♡ぐ、ぁ…♡ぁ……♡ぃ、た……♡♡」
ぶつっ♡と肉に沈んで皮膚を割き、時にはがりっ♡と肌を削っては、零れ出す血を丹念に舐め取っては、怪物であるかのようにじゅるるっ♡と啜る。愛しい人の口から与えられる苛烈な快感により虚ろにさせられた赤い眼からは涙が溢れ続け、痛々しいはずの虹彩には熱が満ちている。痛覚を宣う言葉を象る声は擦れているものの実に甘ったるい。クラウディオの項に回されたままの手は感覚を得る毎にくっ♡と爪先を肌に食い込ませて、強請る爪痕をつけていった。
「ぁ゛……ぁ…♡ひ……ッ♡は、ぁ……♡♡」
ひとつ、ふたつ、みっつ…そんな風に噛み跡が連なり、補食が続いて、アルカディアの息さえ薄くなり始めた頃。クラウディオの口が首元から離れていく。そのまま擡げられた顔がアルカディアの虚ろな眼に映り…彼の背筋はぞわぞわと粟立った。
期待から、寒気から。おそらくどちらともだ。アルカディアの血で濡らした口元をにいやりと笑わせた、酷く煌めく琥珀色の眼を持つ男がただ一心にアルカディアを見つめている。仕留めた得物をこれから食らうような、そんな眼差しに違いない。
けれどもうアルカディアには一寸とすら抵抗の気が起きなかった。恐怖だの理性だのはもう熱さと痛みで殆ど消え失せてしまったし、この男に食い尽くされるなら本望だ。
あの美しい宝石のようだった眼が、荒々しい怪物のように変貌している。それが自分のせいだというのが堪らないくらいに嬉しかった。
「ん、ぅ♡ぅ゛…っ♡ふ、ぅ♡ン…ん゛♡♡」
獣の如き眼が近づいてきたかと思うと、開きっぱなしであった唇を塞がれる。咥内へと無遠慮に入ってきた舌からは鉄の味がして、そういえば血が付着していたのだったと先ほども視覚で得た情報をもう一度知覚した。
「ン゛ぅ…♡♡ん゛♡ん゛〜ッ♡♡ふ、ぁ♡ぐ♡…っ♡」
合わさる唇からは血混じりの唾液が溢れていく。舌の根をぐりぐりと抉られるように刺激され、上顎を撫ぜられ、喉奥まで届かせようと言わんばかりに舌を突っ込まれては、己の血の味を覚えさせられる。さも本当の獣になってしまったかのような口づけにえずくようなくぐもった喘ぎが零れた。
「ぅ、ぁ゛…♡は、ぐ……っ♡は…ぅ…っ♡」
「…うまいか?」
ほんの少しと離れた唇が問いかけた言葉に…表情には出せなかったが、少なからず驚いたのは確かだ。こちらを認識していることに、彼の意識が明瞭としているような錯覚を抱いてしまう。ただ、その期待を言葉にできる余暇はアルカディアになかった。
「まず、い…」
「美味い、本当に。もう一回」
「ぁ、ぇっ、ゃ…っ♡ンぐ…♡♡ん…♡」
そう言って、唇が再び塞がれる。ぐちゅっ♡と入り込んだ舌が上顎から喉奥を撫でつけるようになぞり、舌に残る血の味を染みこませようとする。咥内へと滲んでいく鉄の味にアルカディアはクラウディオの項に回っていた手から一方を肩にやり、そのまま押しやろうとするが…もう力の入らない手では甘えるように縋る仕草と成ってしまう。
それに応えるようにクラウディオは口づけを深めて、口の中は酷い味で満たされた。眉間に皺を作り、真赤い頬に涙をこぼすアルカディアに言い聞かせるように、クラウディオは己の唾液を送り込む。深く合わさった唇では振り切ることもできやしない。
血の味がする愛しい人の唾液をこくこくと従順に喉へと通していけば、あの大きな手が褒めるように頭を撫でて…それだけで嬉しく、伴って気持ちよくなるくらいにはこの男が好きだった。
「っ、はぁ…ッぁ…♡ぁ…♡ひゅ…ぅ゛……ッ♡」
「うまいか?」
「ん…っ♡ん…っ♡♡ぅ…っ♡おいひ、からぁ゛…♡♡」
「だろう。じゃあもう一回」
「ぁ゛♡♡な、れ…っ♡んぅ゛…っ♡ぅぅ゛…♡ン♡♡」
にんまりと満足げに笑ったクラウディオは何度も何度も味合わせるための口づけを施す。歯のひとつひとつを意識してなぞり、舌の根から先までを撫であげて、散々に絡みつけば上顎へ、喉へと届かんとするように舌先を押し込む。
そうして舌も唇も痺れ、鉄の味をただ飲み干すしかなくなりながらアルカディアは気づく。これは意思疎通なんかじゃない。ただ与えられ続ける、先ほどと同じ加虐じみた口づけだと。
「っ…♡は……っは…♡ひゅ…♡ぁ……っ♡ぅ…♡へぅ…っ♡」
「かぁわいいな、お前は…」
「…ッ♡♡ン…ぅ……っ♡」
頭を撫でられ、愛でる言葉を紡がれて歓びを得てしまうのは、この男に雌にされたことを体が覚えているからに他ならない。腹の奥が疼き、伴って淫猥な歓びが体中に滲んでいく。酷い口づけをされたというのに容易い体躯だ。
しかし己を自嘲する暇など無く、クラウディオの手は頭部から降りて少しと耳を擽り、血の滲む噛み跡が散らばった首筋を辿って、辿り着く。自らにより散々揉みしだいた胸部へと。
「は、ァ♡……ふ…っ♡」
先ほど愛撫された故だろう、アルカディアの胸部はその頂きの形を現しており、未だ纏う衣服を押し上げて存在を主張している。ぷっくりと膨れたその頂にクラウディオの親指が優しく触れると、それだけで体躯はもどかしそうに身を捩って胸を揺らした。
無意識だろうがなんとも厭らしく揺らめく様にクラウディオの口から笑みがこぼれる。
「揺れてる」
「んっ、ぁっ、…ッ♡」
「ここ、気持ちいな」
「…っ♡じら、すなぁ…っ♡」
親指が擦るように、けれども優しく胸の頂をはじく。そのまま捏ね回すのかと思えば、衣服の上からは見えないだろう乳輪の部分をすりすりと円を描いてなぞり始めた。
ただでさえ衣服越しの刺激は鈍いというのに、何処か柔く甘ったるさがある。悪戯だが着実に官能を募らせていく愛撫に思わずと声をあげれど、クラウディオは楽しそうに笑むばかりだ。その笑んだままの唇でアルカディアの唇に触れ、宥めるように軽く舐めては口づけるのだから意地が悪い。アルカディアもアルカディアで、甘やかす口づけが嬉しくて多少の機嫌が直ってしまうのだが。
「んっ♡ん…っ♡…っぁ、ぅ…♡」
「もっと欲しいのか?」
「っ…♡ん…♡ほし、…ぁ♡」
囁かれる言葉にまた熱が上がってしまう。これは催淫の効果などでないとは明白だった。
クラウディオは二つの指で浮き出る乳首に触れる。摘まむことはせず、ただただ添えるばかりだ。そうして微かに触れるまますりっすりっ♡と上へと擦る。
望み通りの光景を錯覚させるだけのもどかしい感覚にアルカディアの口からは掠れて上擦った声が零れた。
「っぁ♡ぅ…っんぁ…っ♡♡あ、ふ…♡♡」
「胸で気持ちいいの、癖になってるな。かわいい」
「っ♡…っ♡♡」
指がほんの少し乳首を挟み込んでは、くりくりと捏ねるように柔く擦り合わせる。すり潰す様を思わせる、相も変わらず焦れったい感覚にアルカディアは絶え絶えと息を零した。法悦に酩酊する意識の中、アルカディアは一種の反抗じみた衝動で口を開く。
「くら、でぃお、が…♡した、から…っ♡♡ぁ…♡♡」
「ん?」
「ん…っ♡くらぅ、でぃぉに…、されるのすき…♡…っぜんぶ、すき♡♡ぁ♡ぁ…♡…っん♡」
高鳴る鼓動に伴って赤みを増した唇が白状を紡ぐ。舌ったらずな声は内心にわずかと湧いた苛立ちをちいとも現せていない。弁明はただ甘ったるい言葉と成り、いっそ強請る声にさえ受け取れた。
はふ、と懸命に息をするアルカディアに対し、クラウディオはぴたりと動きを止めた。手は依然として乳首を柔く挟んだままであり、焦ったいことに変わりはない。眉尻を下げ片目を細めながら、アルカディアは首を傾げる。
止まっていたクラウディオはやがてゆっくりと頭を下げ、アルカディアの鎖骨の間に額を落とした。
そうして微かに肩が震えたかと思えば声が溢れ出る。実に愉快げな、笑う声が。
「はは、……っ」
感情が溢れ出している声だ。堪らないと言った笑みだ。湧き出る感情を持て余す震えである。すり…と擦り寄る額の感覚を鎖骨に感じ得ながら、アルカディアの背筋に粟立つ感覚が走っていく。
クラウディオは感情を抑えることが癖付いている男だ。そんな彼がほんの少しこぼす愛情…己を見つめて和らぐ眦や、普段より少しばかり体温が高いことが握ってようやくわかる手、共に居る際に多く溢れる口元のほんの少しの笑みなどを、ひとつひとつ拾っていくことに喜びを得るのがアルカディアの密やかで大切な日々のひとつであった。
それだから、こんな風に笑みをこぼすなど考えられなかったのだ。
大声ではない、アルカディアの耳に届く程度の声だ。けれども甚だしい激情を抱えた笑みに、息が詰まる。恐ろしいほどの笑みが正しく恐ろしく、そして期待が沸き立っていくのはパンドラを手に入れた人間の性なのだろうか。
そうして面を上げた男の、その顔にある眼差しを見て、アルカディアは己の本能が正しかったのだと知る。
猟奇的でさえある、煌々とした琥珀がそこにあった。
「アルカディア、…かわいいな…本当に可愛い…」
「っ♡ひ、♡ぅぁ…っ♡♡」
「こっちは手じゃないと嫌か?」
「っ…ぁ♡♡」
クラウディオは再び顔を少しばかり下げると、胸の頂に口元をやった。そうして真赤い舌をべろりと出し、布を押し上げる乳首に添わせる。
あの舌に、舐めつくされる。口付けと同じように荒々しく丹念に食べられてしまう。官能の予感にアルカディアが息を呑めば、クラウディオは口元を楽しげに笑ませたままに目をも細めた。
時折ちゅっ♡ちゅっ♡と軽く口付けながら啄むように少しと吸いつかれ、否応なしに増させられる淫らな期待により赤い眼がいっそう熱を帯びていく。
「お前が嫌だと泣くくらい舐め尽くしてやりたい。さぞ可愛いだろうな」
「ぁっ♡ぁ♡ひ…ぐ…っ♡」
「そうしたら咥えてしゃぶってやる。思いっきり啜ってやる。ああ…噛んでもいいだろうな。お前、痛いのも好きだろう。な?」
「ぁっ♡ぁ、♡ひ♡は、ぅ…っ♡ぁ゛、ぁ…♡」
「アルカディア、へんじ」
「ひゃ、ぁ゛♡ぁ♡ぁ゛〜ッ!♡♡」
浮き出る乳首の影に添えるだけだったクラウディオの唇がかぱりと開き、見えた歯によって乳首に噛み付く。ほんの一瞬だけ…しかしその一瞬、確かに思い切り噛みつかれ、ぐりぃっ♡と歯によって捏ねられた衝撃は酷いものだった。
びくっびくっ♡と体躯は大仰に跳ね、口からはしとどに喘ぎが溢れ出す。欲情を孕み切った目から熱い涙がひと粒と零れ落ちた。
散々に焦らされた体躯には相当の法悦だったのだろう。たった一瞬により齎された余韻に震えながら、アルカディアは催促されるままに縺れる舌で言葉を紡ぐ。
「ひゅ、ぁ♡すき、♡す、きぃ♡♡」
「どれがだ?ちゃんと言え」
「っ♡♡ぜん、ぶ…♡ぁっ♡ぅ♡ぜんぶ、♡…ッす、き♡」
「全部じゃわからん」
「は…ッ♡♡ぁ♡ぅっ…♡」
クラウディオはこれみよがしに乳首の側で口を開いてみせる。先程味わった、甚だしく痛ぶられ放り出されるような快感を思い出しアルカディアの喉がひくつく。そうして泣き声のような喘ぎ混じりに白状していく。
「かむ、のも…♡すする、のも…っ♡ぁ、ぅ♡いたいの、もすき…♡ぜんぶ、すき♡くら…でぃお、なら…ぜんぶ♡らい、すき……っ♡」
「はァ゛ー…可愛いなお前は…」
「ぁ゛…っ♡ぁ、ぁ…♡」
感情の滲み切った愛撫の声にアルカディアは腹の奥が痺れていく快感を感じ得る。痺れきって脱力し、クラウディオの頸からシーツへ落ちた手を堪らなそうに顔へとやって下手くそに隠そうとした。
けれど快感が溢れ切った意識では自分がどこを隠したいのかすら解らない。加えて自身を容易く雌にする男により手は易々と絡め取られてシーツに押し付けられ、蕩け切った顔は晒されてしまう。
獰猛な眼差しを携えたクラウディオはアルカディアの赤い唇に口付け、それから顎へ、首筋へと下がっていった。そうして胸へと辿り着いた男の口に、そこから這い出た真赤い舌に、腰椎が浮つくような感覚を覚えた。いっそ心地が悪いとすら錯覚しかねない快感の挙動に呼吸が揺らぐ。開きっぱなしの唇から荒い息を零しながら、アルカディアは喉に這いずる衝動をぼたぼたと溢す他なかった。
「くら、ぁ゛、でぃお♡も、やだ…♡じらすの、や゛…っ♡ゃだぁ…♡♡」
ぐずるような声音で喘ぎアルカディアは強請る。ひと粒ひと粒と流れ落ちていく涙も合わさって、もはや駄々を捏ねるが如き様だ。
クラウディオはそれを、爛々と浮かぶ眼にてそれを映し込んでいた。胸部に擦り寄り上目遣いに目をやり続けるまま、喉仏をごくりと鳴らして溢れ出した唾液を息ごと飲み込む。その眼差しといったら、いつまでも見やっていたいと言わんばかりの姿であった。
けれども…衝動が勝ったのだろう…強請られるままにクラウディオが飢えた口を胸の頂にしゃぶりつくのに、そう時間は掛からなかった。
「ひっッ♡♡〜ッ!♡♡ぁ゛♡♡ぁ゛ぁ♡♡ぁ♡♡ひ、ぁ゛ぁあ♡♡」
布越しに…布を隔てていることすら気に掛けられないと言わんばかりにしゃぶりついた唇は胸部に浮き出た乳首をすっかりと囲い、唾液の滴る舌を這わせてはぐじゅるるる♡と思い切り啜っていく。びくびくびくっ♡と跳ねる体躯が少しでも逃げることを許せないのだろう、アルカディアの手を優しく握っていたクラウディオの手は脇から背へと回っており、肩甲骨の間を押さえつけて胸を自身の口から逃さないようにしていた。
服が汚れることなど一寸も気に留めない苛烈な責め立ては一枚を隔てていると言うのに甚だしく気持ちがいい。そしてそんな唇が一枚向こう側にあることが酷くもどかしい。
アルカディアは頸をのけぞらせ、口を開け、脚を震わせては、手で片側の胸元にあるクラウディオの頭を押さえている。それ以外には何も出来ない。力の抜け切った手は強請るように、止めようとするかのようにクラウディオの髪をくしゃりと握らんとしたが、事実どちらをしたかったのかなど、法悦に塗れた意識ではもう解らなかった。
もう何をも解らないまま、衝動のまま、アルカディアは喘ぎを溢れさせる口を賢明に動かす。
「ゃぁ♡♡ふく、や、ぁ♡や…っ♡ぁ♡あ♡おねが…ぁ♡くら、ぃ…おッ♡♡」
「は…っ♡はァ゛ー…ッ」
「ぁ…っ!♡ぁ、ぁ♡ぁ♡…っ♡♡」
強請られるままに、クラウディオの手はアルカディアの衣服の裾を掴むと、そのまま上に押し上げて胸部の素肌を晒した。まるで引き裂かれるが如く勢いのある暴き様に、アルカディアの胸裏が危機たる悦を抱く。
唐突と晒された赤みを帯びている肌が寒さを感じるより前に、クラウディオは今一度胸の頂へとしゃぶりついた。
「ッぁ♡♡あ♡〜っ♡♡…っ♡ぁ゛♡ぅぁ♡ぃ…っ♡♡」
あられもない声を溢れさせるままアルカディアはびくびくびくぅ♡と震えてしまう。ようやく訪れた直接的な刺激に体が歓喜するのを留められない。
クラウディオは唇で乳輪を挟み、べろ♡ぐちゅっ♡と舌で頂を舐り回される。かと思えば舌で桃色の粒を押さえつけながらじゅるるるっ♡と啜りつく。唇で乳首を挟み込んでくちゅる♡じゅるるっ♡と啜り続け、果てには歯でくに♡と噛みつきながら啜った。そのどれもが衝動的に行われているとは、必死に抱きこむ手と唇の様子でよくよくと判った。
丹念で激しい捕食じみた愛撫にアルカディアは酷く感じ入った。思わずと立てた膝は快感を得る度にクラウディオの腰にぎゅうっと抱きつき、そうしてはすりすりと甘えて擦り寄るのを留められない。腰がびくついては揺れるのを留められず、緩く食い込んだまま止まっていたクラウディオの膝に自ら股座を押し付けてしまう。
強請る腰つきを感じ取ったのだろう。クラウディオは止まっていた脚を動かし始め、膝の先で再び股座を押し込んでやる。高揚し切っているためだろうか、その動きは先ほどよりも無遠慮で、幾度も達し濡れぼそった股座をこれでもかと押し潰される感覚にアルカディアは悲鳴じみた喘ぎをこぼした。
噛みつかれる乳首といい押しやられる股座といい、時々少し痛いくらいだ。けれど、痛いのすら気持ちがいい。
「ん゛…っ♡♡…っ♡ぁ…♡ぁ…っ♡」
びくっびくっ♡と合間無く身悶える体躯は上から覆い被さるクラウディオの股座や胸部、頬や額に擦れて乱雑に熱を分け合っていく。
クラウディオは唇を離すと、背へと回してその体躯を抱いていた手の内、一方を残して、もう片方を胸部へと滑らせた。
アルカディアのふたつある胸の頂の中、一方は唾液で濡れぼそりながら赤みを帯びており、さも果実のような甘露の様を晒している。けれどもう一方は未だ濡れてもいない、ただ自身の体温により桃色に染まるばかりだ。
「ひ…っ♡ぁ、ぁ…♡」
クラウディオの唇が彼自身の舌によって舐られる様が見える。ただ横たわる他何をも出来ないまま、アルカディアは思わずと息を呑んだ。舌なめずりをする獣の瞳孔が何処に差し向けられているかなど、もはや明白であった。
「んぁ゛ッ♡♡ぁ゛ッ!♡♡ぁ♡ぅぁ♡♡…っひ♡ッぁ゛♡♡」
じゅるる…っ♡と音を立てて、もう一方の乳首も真赤く熱い舌に食べられていく。片側と同じように丹念に舐めしゃぶる舌の様は獰猛としているのに不可思議なほどに愛情が滲んでいる。食ってしまいたい程に可愛いのだと、そう言わんばかりの苛烈な愛撫だ。
淫らな声を零し続けるアルカディアの様は蕩け切ったものだ。もうなにもかもが快感に塗れてしまったような、そんな心地が、意識が続いている。けれどそんな彼に更なる法悦が襲い来る。
「ぁ゛、あ…!?♡♡…ッ!♡♡…っ♡♡ぁ♡あ♡ひっ♡ぁ♡♡」
唾液塗れになった片側の乳首にクラウディオの指が触れたのだ。濡れそぼった胸の頂は摘まもうとすれどつるりと滑ってしまう。それを楽しむかのように、クラウディオの指はふたつを持って乳首を挟みつるつると滑らせていく。勃ち上がった乳首を扱き、時折きゅっ♡ぎゅむっ♡と強く挟み込む、クラウディオの少し硬い指の腹にアルカディアはいっそう翻弄されていく。
「ぁ…♡あ♡ひ、ぁ…っ♡ひ…っ♡♡ん……っ♡♡あ♡ぁぅ゛…っ♡♡ンんぅ♡♡っ♡ッぁ、あ♡ぁっ♡♡ぁ゛ッ♡♡ぅ〜っ♡♡ぉ゛♡ぁ♡」
くに♡くり♡と舐られる乳首を舌で押し潰されたかと思えば、もう片側はくり♡ぐりっ♡と爪すら立てて捏ねられる。べろぉ♡と乳輪ごと桃色の粒を舐めれば、もう一方では大きな手が広げられてすっかりと掌に覆われた乳房が揉みこまれた。
膝に押し潰される股座は変わらず、背中に回り逃さないと言わんばかりに抱き寄せ続けている手の力強さも変わらない。気持ちがいい、気持ちがよくて堪らないと、アルカディアは体を震わせることしかできない。
「ひ、ぐ…♡ぁ゛…♡♡ぁ…♡は、ぁ…っ♡♡」
がくがくっ♡と膝と腰が幾度目かの痙攣を得た頃。すぼめた唇で目一杯に吸い付きながら顔を引き、そうしてちゅぱ♡と音を立ててクラウディオの唇が乳首から離れていった。口で散々に食い尽くされ、指で愛でつくされた乳首は両側とも赤く火照っている。濡れぼそる淫らな様はいっそ愛らしくもあった。
「は…ッ♡は……ぁ゛…っ♡…ぅ゛……っ♡」
丁寧に丹念に愛でられ、幾度も幾度も達した故だろう。赤い唇から呼吸と共に零れるアルカディアの声は少々掠れていた。彼はぴくっぴくっ♡と軽く跳ねながら体躯をベッドに降ろしきりながら、くったりと枕に頬を寄せる。
緩慢と瞬きをする様は今にも眠りにつきかねない姿だ。体中を巡る熱と疼きがなければ、彼の意識はほんの数秒で夢をも見ない眠りの中に落ちて行ったろう。度重なる絶頂により得た疲労感と充実感を舐るような熱で逆撫でされ、辛うじて開き続ける瞼が重たげに抱えている。蕩け切り、焦点の合わない赤い眼は目の前が何処なのかも定かに出来ないと言った具合に漠然と虹彩に映る光景を眺めていた。
そんな草臥れ切ったアルカディアの体躯がぎゅうっ♡と、強く抱きすくめられる。
「かわいい、アルカディア。本当にかわいい……かわいいな…」
両腕を背中に回しぎゅうっ♡と音が出そうなほどに抱擁を成しながら、クラウディオはすりすりとアルカディアの肩口に額を擦り寄せた。熱く強く収められ、愛でる言葉を囁かれて、何度も果てた体が性懲りもなく熱を帯びる。全くもって、甚だしいほどにこの男が愛しい。愛しくて仕方がない。
「く、ぁぅ…ぃお…♡す、き…♡すき……♡」
「は…っ♡アルカディア……」
「ぁっ、ぁっ♡ん、ぐ…♡♡す…っ♡き…っ♡♡ぁァ゛♡♡」
湧き出る熱情のままにアルカディアが舌ったらずと愛情を紡げば、クラウディオは荒い息を吐き出して擦り寄っていた肩口へと噛みついた。思いきり立てられた歯はまたもや皮膚を破り、幾つも刻まれた噛み跡と同じように血を流していく。唇を宛がい、舌で舐って血を啜られる。その痛みが既に快楽と成る程、頭は熱でいっぱいに満たされていた。
「ぁ…っ♡♡ぁ゛、ぅぁ、ぁ…っ♡ん、ぅ…♡♡ぁ…♡…──ッ!?♡♡は、ぇ…っ?んっ♡ぁ?、ぁ…っ?♡」
そうして喘ぎを零す最中、唐突として臀部に襲った快感にアルカディアは息を呑む。虚ろな赤い眼が丸みを帯び、見開かれた白目の上に浮かんだ。
「ぁ…っ♡♡ッ♡は、ぅ…っ♡ゃっ♡なに、…っ♡♡」
ぎゅむ♡ぎゅっ…♡と、臀の肉が揉みしだかれている。噛まれる快感に感じ入る最中、背中に回っていたクラウディオの手は、いつしか下部へと降りて行っていたらしい。元よりそうまで大きくはないアルカディアの臀部を、クラウディオの手は容易く衣服越しに包み込んで揉み込んでいた。
掌を目一杯に広げているためだろう。臀のあわいにまで及んだ指先が時折後孔の個所を掠める。服の内側で雌の喜びを得てひくついていた入り口は、己をも愛でられたくていっそう淫猥に震えた。
「なん、…っ♡…っあ♡ゃ、ぁ♡あ♡」
臀部を愛でられることはこれまでにもしばしば在った。在ると言えど、共寝する際、他愛なく戯れている最中にクラウディオの手がなんとなしに揉んだり。「ここまで薄い」と、アルカディアの肉がついていないことを指摘する際に示すため揉まれたりといった多少の機会だ。情事中に掴まれるなどそうなかったし、こうも強く、官能を呼び覚ます手つきで揉まれるなど有りはしなかった。
「ぁ♡は…っ♡ぁ…っ♡ん…♡ひ…っ♡ぁ♡ぁ♡…〜っ♡♡」
思わずと零れた惑う声は、けれども全て喘ぎへと変わってしまう。一度臀部から離れた手が、手早く衣服の合わせ目に突っ込まれて服の内側に潜り込み、直に臀部を揉み始めたからだ。そうしてさも女の胸を堪能するかのような手つきで揉みしだく手の先が、時折雌孔を掠める挙動が故意によるものだと解るくらいに臀部を愛でられ続る。
はふ…と息を零しながら、アルカディアはぐずる声を零す。散々焦らされた腹の奥はもう酷く熱く、疼いて仕方がない。
「あ、ぅ…っ♡なか…♡さわっ、て…っ♡♡…っ♡」
「ん…?…どう触って欲しい…?」
「ひっ、ぐ…♡ぁ、ぁ♡う…ぁっ♡♡ぁ♡♡」
掌を広げ臀部を揉みこむ手の、その指先が、これまでよりいっそう意図を持った。ずりぃ…っ♡♡と、指の腹と爪先でもってひくつく雌孔をなぞる。オスイキもメスイキも散々に味わったアルカディアの股座はぐっしょりと濡れており、その際に尻のあわいに垂れ落ちて衣服に吸い取られなかった精液を指先で取ったのだろう。クラウディオの指は白濁で濡れており、そのまま後孔をたっぷりとなぞるのだ。
ずり♡すりっ♡と濡れた指の腹で入り口をなぞられ、爪先が時折つぷっと入ろうとするかのような動きをみせる。そうしながら臀部は揉まれ続ければ、もう臀を揉まれるだけでもじりじりとした快楽を得ると言うものだ。
クラウディオの肩口に顔を押し付けながら、アルカディアは蕩け切った眼から熱い涙を零す。気持ちがいいのに焦れったい快感に全身を蝕まれてしまったようだ。もう目の前の男に愛でつくされることしか考えられない。
「っ♡ゆ、び…っ♡ぁ…♡ねもと、まで…いれて♡ほし…♡♡いいとこ…も、おくも…♡♡」
「いいとこって何処にあるんだ?ちゃんと言っておねだりしてみろ」
「ぁ゛ぅ♡♡ぅ…ッ♡…〜っ♡♡ぁさいとこ、の…おなか、がわ…♡ぁ♡ぁ♡そこ、ぐりぐり、されるのすき…♡♡」
「ぐりぐりするだけでいいのか?それだけ?」
「ちが、ぁ♡♡っ♡はさんで、こねるのも…っ♡とんとん、さ…れるのもぉ…っ♡♡ぜんぶ、すき…っ♡♡くらでぃおにされるの、ぜんぶ…っ、だいすき…♡♡」
「かわいい。そのいやらしいとこ、めちゃくちゃにしていいのは指だけか?他はダメ?」
「や゛、ぁ…っ♡♡やだ…ぁ♡♡ぁ゛♡っ♡くらでぃお…の、ぜんぶ、ほしっ♡めちゃくちゃ…にして、ほし…♡♡」
「ぁ゛ー……可愛いな本当に…」
「ひ…っ゛♡♡ぁ゛っ♡♡♡」
臀のあわいの奥側、ただ掠めるだけであった秘められた場所へ明確に指が入り込む。
ついに触れて貰える。そう歓喜に打ち震えた体は…けれども再びもどかしさに見舞われることとなる。後孔に触れた指が、一向に中に入ろうとせず…宛がうままぐりぐり♡と雌孔入り口を擦り始めたために。
「〜っッ♡♡♡ぁ゛♡♡ぁ゛!♡♡や、ぅ♡♡やだ♡♡ぁ…ッ♡♡あ゛♡なん、れ…♡♡」
「かわいいな…アルカディア…」
声をあげて項をのけぞらせ、堪らなそうに後頭部を枕に擦りつけたまま首を振り乱すアルカディアに対し、クラウディオは意を介さない呟きを零す。可愛い、可愛いとひたすらに紡ぐクラウディオの眼は懇願するアルカディアを確かに捉えているのに、平然と愛情に満ちた微笑みをし続けるまま決して行為を止めようとしないのだ。いっそ恐ろしくも思える程、今のクラウディオは自身の欲求を満たすのに容赦がない。
ぐちぐちぐち♡♡と掻き乱すように雌孔を擦る指は止まらず、期待と渇望に腹の奥底から沸き上がり背筋を這う快感と欲求も留まらない。はく、と下手くそな息をしようとしたアルカディアの口からは泣くような喘ぎが零れるばかりだ。
「ゃ゛♡ぁ♡ゃだ…っ♡♡ほし…ッ♡くら、でぃお♡♡ほしい…♡♡んあ♡♡ぁ♡」
「かわいい」
「くぁ゛ぅ♡♡おねが…♡♡お、ねが…ッぁ♡♡ぁぐっ♡♡…っ♡♡ぉねが…い…っ♡いれ、て…♡♡おねがい、だからぁ…っ♡♡」
アルカディアは涙が零れるままクラウディオの胸元に擦り寄り、ぐずる喘ぎでもって必死に懇願を紡ぐ。腹の奥の疼きはいよいよ酷く、焦らされた分の欲求が溢れかえっている。羞恥や遠慮など理性的な行為全てをかなぐり捨てて、腰がかくかくと揺れて自分から指を迎えたがるのを留められない。
だのに、クラウディオの指がそれに合わせて引くために恋しがる指先の欠片すら少しもナカに入りはしないのだ。
先程散々に懇願を述べて、今もこんなにも求めているのに。与えられない苦しさから胸裏が子供じみた感情で塗れていく。催淫により理性を潰されたアルカディアは、それを素直に口に、そして顔に出していく。
「くら、ぅ゛…ッ♡♡ぅ゛…、ぁぅ゛っ♡ん…っ♡♡く、ぁうぅ…♡♡くら、ぅ…でぃお♡♡」
「あぁ…泣いてしまった…、はは…かわいい」
「ぅ、ぇ゛…ぐ…♡ぉ、ねが……♡くら…でぃお♡♡っ゛…♡す、き…っ♡」
ついに大粒と成った涙をぼたぼたと零しながら、アルカディアは必死にクラウディオを見上げて強請り続ける。
健気やいじらしさを湛えて越えた必死な面持ちをじっくりと見つめながら、クラウディオはひと粒ひと粒と流れる涙を口づけて掬い取ってやっていた。それでも拭いきれない涙を愛しそうに琥珀の眼へ映しながら、大きな手で頭を撫でる。
何処までも優しい手つきはアルカディアにとってひどく心地がいい。けれどもう頭を撫でるだけでは誤魔化しきれない情欲が体中に溢れ出している。
そうしていっそう涙を流すアルカディアの眼前から、ふとクラウディオが姿を消した。
「ぁ、ぇ…っ、♡くら、でぃお…っ?♡く、ぁ……っ」
琥珀色と眼差しが合わない視界に胸裏の不安が膨れ上がる。あんなにも後孔を苛めていた指もない。彼はどこに。過ぎた我儘に飽いてしまったのだろか。
とたんに冷たい感覚が渦巻く思考にアルカディアの喉からはか細い声が漏れ出す。
「そう泣くな。アルカディア、ほらここだ。ちゃんといるよ」
泣き出す一歩手前といった具合の声音に気付いたのだろうか。端からそう離れるつもりはなかったのだろうか。クラウディオの姿は直ぐと、涙が滲む赤い眼に戻ってきた。彼は愛しそうに、零れかけた涙が浮かぶ眦に口付けてやる。己に笑いかける恋人が再び映った赤い眼が心底嬉し気に細められた。
そうして顔中にキスを落とすクラウディオの唇をアルカディアは快く受け入れていく。時折自らもその頬や鼻先に唇で吸いつきながら愛しそうに恋人の名前を紡ぐ。
最中、先程苛められた後孔に何かが…そう、何かが触れて、アルカディアは息を呑んだ。
「ん、…っ、…っ?ぁ、…ぁ……?」
びくっと小さく体を震わせ、アルカディアは一度二度と睫毛を震わせる。硬いものだ。硬い何かが後孔に宛がわれている。クラウディオの手の皮膚は少し硬いが、けれどもこうも明確な硬さではない。彼の片手はアルカディアの腰をしっかりと掴んでいて、臀のあわいに触れる手の甲の関節の感覚からしても…もう片方もおそらく後孔付近にはあって、アルカディアの体に触れているのだろう。では尚更、一体何が。
不可思議に首を傾げるアルカディアの後孔に、硬い何かがずぬ…と少しばかり入り込む。「ひ…っ」と情けない声を零したアルカディアの、そのナカに、思い切り何かが吐き出された。
「っ、ぁ゛ッ!?♡ひ、ッぁ゛…〜〜〜ッ♡♡♡は…ぅ♡♡ひ、ぐ……〜〜ッ♡♡は、あ……っ♡♡ひ、ぅ……♡♡ぅぅ゛……っ♡♡」
びゅぶっ♡♡びゅるるるっ♡どぷぷっ♡♡空気が潰されながら押し出されるような、濁った感覚が混じる音だ。臀のあわいで聞こえたその音と同時に、アルカディアのナカに何かがぶちまけられる。液体のように冷たく、しかしどろりとした粘度のあるものだった。
勢いがあった故だろう、そこそこ奥側まで飛び散ったその感覚に、アルカディアはびくびくっと震えた。逃げようと引き気味になった腰は、けれどもクラウディオの手により押さえつけられている故に少しも離れることが出来ない。
その何かが最後まですっかりと吐き出し終えるまでアルカディアの腰は捉えられていた。
「は、ァ……♡ぁ……、は……っ♡ぁう………、♡」
ぷちゅっ♡と音を立てて何かが離れたところから、とろり♡と吐き出されたものが溢れ出る。臀のあわいを伝ってシーツへ落ちていこうとする粘度のある液体は、熱いナカから出てきたとはいえ温められ切ってはいない。どちらかといえば冷えに傾いたぬるい温度を皮膚に感じ、アルカディアは朦朧と息をつく。何が自身の中に入り込んだのかを確かめようと身を捩る。
けれどもそれより前に、どろりと何かが垂れる後孔へと…今度は触れ慣れた指先が入り込む。
「ぁ゛ぅっ♡♡ぁ、ぁ♡ん…〜っ♡♡」
皮膚の固い、爪の切り揃えられた指先は容易く熱い肉の中を進んでいく。どろりとした液体が滑りを加えているためだ。それにより、ぶちまけられたのがローションだと察せられた。
「ぁ♡ぁ♡あ♡ゆ、び…っ♡ぁ…♡♡ぅぁ♡ぁ〜っ♡♡」
「ぎゅうぎゅう締め付けてくるぞ。欲しがりだなアルカディアは」
言いながら、クラウディオは足元に置いていたチューブをベッドの外に放る。行儀の悪いことである。放り投げられたチューブは筒の部分がぐしゃぐしゃに潰れていた。思えば昨日探索した際、チューブ型ローションがサイドテーブルの棚の中にあったような気もする。
だがそんなことは全て、どうでもいいことだ。それよりも今は注視すべきことがある。
ようやく、あの指が疼き続けていたナカに触れてくれた。少し硬い皮膚に、節くれのある指に、どこまでも夢中になっていく。
「あっ、ぅ…♡くらでぃお…が、くれな…から…っ♡っ♡ぁ、あ、あ♡♡」
「悪かったよ、お前があんまりにも可愛くてな、許してくれるか?」
「っう♡ん♡…っ♡おねが…もっと…っ♡♡ほし…♡おねがぃ…っ♡♡」
「ほんっと可愛いなお前」
「ぁ♡あ♡あ♡…ぅ…っ♡…っ♡♡」
背中に手を回し、すりすりと胸元にすり寄っては縋るように抱き付くまま、アルカディアは己のナカを犯す指を甘受していく。
クラウディオは逞しい腕で縋りつくアルカディアを抱きすくめ、口元の傍にある頭にすり寄っては何度もキスをしつつ指を動かしていった。ぎゅうっ♡と指を抱きしめて歓迎する雄膣を擽るように丁寧に割り開いては奥へと。そうすれば甘ったるく上擦った声音が溢れる。
それを耳にしたのだろう、クラウディオが舌を舐めずった。いかにも眼前に大の好物があるといったぎらついた面持ちだ。幾度食べても飽きはしない。そう言わんばかりの狂暴たる顔をしている。アルカディアは他ならぬ、この男に雌にされた。故にその指は、この男は、雌の弱いところをよく知っている。
「ひっッ♡♡♡ぁ゛♡♡ぁ♡あッッ♡♡」
腹側の膨れたところ、先ほど自らの口で述べた雌になってしまう弱い箇所を指先で擦られ、堪らず首が反る。晒された喉仏に舌を這わせられ、首元に散々と噛みつかれた体躯は脳裏で警鐘を鳴らす。その、己の危機を知らせるドクドクといった内を巡る魔力の音すら快感に変換されてしまう。
「あ♡ア♡あ♡♡す、きっ♡♡…っ、だい…すき♡♡あ♡♡♡」
「ここ、ぐりぐりされるのだぁいすきだもんな?」
「ンっ♡んん゛ぅ♡♡すき…っ♡すきぃ…っ♡♡ぁ゛、あ♡♡は…ぁう♡」
いつの間にか二本目を差し入れていたクラウディオが、爪先でくりくりとしこりを撫でる。アルカディアが揶揄するような意地悪な手つきにさえ感じ入りながら、けれど更にと懇願すれば、指は徐々にしこりへ触れる範囲を広げていく。爪先から指先、そして指の腹で、雌の鳴きどころをずり…っ♡ずり…っ♡と擦っていく。
「あ、ぁ゛♡♡あッ♡♡っ♡ひゅ、ぐ…っ♡♡ぁ゛♡♡あ♡ッん♡♡」
びくっびくっ♡と身を捩るアルカディアは再びクラウディオの胸元に額を寄せて。縋るように身悶える。
少し硬い指の腹がぐり♡くり♡ずり♡と雌のしこりを撫で愛でるのが堪らないほどに気持ちいい。ぎゅうっ♡ぎゅっ♡と収縮する雄膣をもうひとつの指が掻き分けるようにし、同じように前立腺へと辿り着く。二本の指が丁寧にしこりをなぞったかと思えば、次にふたつの指は挟むようにしこりを囲い、くりくり♡と挟んで揺さぶるように愛で始めた。
もはやナカの刺激だけで甘イキを繰り返していたアルカディアの性器が、ごぷっ♡と白濁を溢れさせる。クラウディオに縋る様に抱き着く体躯はがくがくと震え、逞しい腕がその体躯を逃さないと言わんばかりに己の中に収めていた。
「あ゛♡♡あ♡♡ぁ゛、あう…っ♡にゃ、か…♡♡す、きぃ…っ♡♡」
「ふ、じゃあこれは?」
「ぅ…っ♡…っぁ゛♡♡♡あっ♡あ♡♡そぇ…もすき♡♡…っん♡♡あ♡あ♡♡」
言いながら、三本目の指が差し入れられる。二本の指でそうっと挟んではくびり出していた雌のしこりを、三本目の指で上から押し潰すように撫でてやる。何処にも逃げ場のない法悦に腰の奥が痺れ、頭の中も目の前も真白になっていく。
「ぅ…っ♡♡く、ぁ゛ぅ、ぃお♡♡♡」
背中に回っていたアルカディアの手が力を無くしてベッドに落ちていく。それでもアルカディアは額で逞しい胸元に擦り寄っては縋り、恋しい相手を見上げ続けた。眼差しが合わさったクラウディオは、その様を愛しそうに目を細めて見つめ続ける。
快楽による涙で滲む視界にて、そのどうしようもなく愛しい笑みに見惚れていれば、アルカディアの腕がクラウディオの手に捕まれる。そうしてそのままクラウディオの首の後ろへと回された。
いっそう近くなった熱い体温と汗の滲んだ肌がどうしてかひどく心地よい。そんな淫蕩が満ちている。
「ん♡♡ん♡ぁ、ん♡ふ…っ♡♡」
「ん……」
熱情が満ちた瞳が絡み合い、惹かれ合って口づけへと結ばれていく。唇が触れ合い、自然と開いた口の中へと互いの舌が入り込んだ。
甘ったるく絡み合いながら咥内を犯される間、ナカを愛でる指の執拗さも変わらない。喘いで呼吸のしづらい体躯に熱情的なキスは息苦しいというのに、アルカディアの赤い瞳は酷くよさそうに笑んでいる。
「んっ♡んぅ♡ん♡ん゛♡ぅ…っ♡♡〜っ♡♡ぁ、ぅ♡ん、ん♡♡」
キスを続けるまま後孔に入り込む三本の指はその激しさを増していく。爪先や指の腹で捏ねるようにしていた様が、一転して指の抜き差しの幅を大きく、そしてしこりに触れる勢いが強まっていく。じゅぼ♡じゅぼ♡と乱暴で淫猥な音が立ち、先程ナカにぶちまけられたローションが掻き混ぜられてきゅうきゅう♡と指を咥え込む後孔の縁に白いあぶくを作り出していた。
「ん、はは…とろとろ。指、そんなに気持ちいいか?」
「ふ…ぁ…っ♡♡あ♡あっ♡♡きもちぃ…っ♡♡きすもひゅき…っ♡♡」
「呂律回ってないぞ、かわいい」
「あ♡あ♡あ♡っ♡♡ひっ♡♡ぁ゛♡〜〜っ♡♡ん゛〜ッ♡♡」
ほんの少し離れた互いの間を銀の糸が繋ぐ。クラウディオが相も変わらず愛しそうな色を帯びた琥珀の瞳にて真近い恋人を見つめているのを、アルカディアの赤い瞳は同じように見つめ続けているものだからよく解った。時折アルカディアの唇から出る仕舞い忘れた舌を戯れるように絡め取られる。優しい戯れにすら甘ったる官能が募っていく。
そうしながらも、器用なことに指は動きを緩めないのだ。根元まで挿入されては指先まで引き、また根本まで埋められる。そんな激しいストロークの最中、指先は時折器用にしこりを抉るように引っかき甚だしい官能を作り出す。
耐えがたい快楽にアルカディアはほぼ無意識の内に擦り寄るクラウディオの首元を噛んでいた。
時折下瞼に涙を滲ませながら、歯を立て、襲い来る快感に耐えようとする。碌に力の入らない顎では、先ほど散々と自分にされたように歯で皮膚を突き破るなどできはしない。
しかしクラウディオの高揚は煽れたらしい。彼は指でいっそう厭らしくナカを苛めながら、唇をアルカディアの耳に寄せる。そうして真赤く染まった耳たぶに歯を立てた。
首元に跡を付けたときのように深く沈めることはない。耳輪の柔らかな縁をこりこり♡と悪戯に噛み、熱い舌でべろりと舐る。耳の溝に舌の先を差し入れくりくり♡と擽るようにしながら、時折耳の穴にも舌を差し入れる。ぐちゅ♡ぐちゅ♡といった水音が響き、頭の中が淫猥に満ちていく。
「ん゛♡♡ぅ♡んぅぅっ♡ぁ♡は…っ♡ん♡♡ぁ〜〜っ゛♡♡」
体中に、頭の中にすら与えられる法悦に、首元を咥えていたアルカディアの口は歯すら立てられなくなった。唾液塗れになった皮膚を唇で咥えては喘ぎを零す。目の前がチカチカと点滅する感覚がひっきりなしに続き、その度に快感に溺れて行った。
そうして幾ら経ったのだろう、クラウディオの指がずりずりずり…♡とアルカディアのナカから後退していく。雄膣のひだを一枚一枚なぞりあげるように引き下がり、ついには後孔の縁を引っかいてちゅぼっ♡と抜けていった。
「ぁ……ッ♡ぁ、ぁ……ぁ…♡は…っぁ…♡ん…♡ん……っ♡」
愛でる指先がなくなり、散々指で苛められた雌孔は咥え込むモノを欲しがってひくついている。しとどに与えられた法悦の余韻は長い。
その余韻に暫しと包まれ続け、ぴくっ♡ぴくっ♡と震えながらアルカディアはクラウディオの胸元に擦り寄った。荒い息を甘ったるく吐き出しながら、ちゅぷ♡ちゅっ♡と己の唾液で濡らした首元に口づける。
「アルカディア。食べるならこっち」
「ん…っ♡♡ふ、ぁ♡ぁ……♡ん、ん…♡♡」
「そうだ、いい子。ん…」
耳元で囁かれ、顎をくするぐるように撫でられてアルカディアは顔を擡げた。そうして灯りの強い琥珀と出会い、引き寄せられるように唇を合わせる。ちゅっ♡といかにも嬉しいと言わんばかりに唇に吸い付けば、それを褒めるように顎を撫でられる。
さも愛猫を愛でるような手つきだ。それが嬉しくて愛しくて仕方がない。
「ぁ、ん…っ♡ん…♡っ、ぁ…♡」
「っ、♡あぁ…もうぐしゃぐしゃだな、服」
「んぅ…?ん……♡ぅ…♡」
「たくさんイったな、可愛い。偉いぞ」
「っ♡♡ん、ぁ…♡ぁ…♡♡」
「お前は私に褒められるのが好きだな。本当に可愛い…」
「ぅぁ…っ♡ぁっ♡♡は、ぅ……♡」
蕩け切った赤い瞳が細まり、くったりと力を無くしてアルカディアはクラウディオの胸元に額を擦り寄せる。そうすればクラウディオの手が汗に塗れた赤色の髪を撫でて…そのまま背筋へと流れて行った。
ほとんど脱げていた寝具や肌着をすっかりと脱がせてくれる。彼自身の衣服も脱げば、互いの衣服が汗や精子で塗れてすっかりと酷い有様であることを知れる。それが言うまでもなく行為の激しさを物語っていた。
「ん…っ…くらでぃお♡…ぎゅってして…」
「ん…幾らでも」
首の後ろに回した儘の腕で縋りつき自ら抱き着いているというのにアルカディアは更にと熱を強請る。単なる我儘をクラウディオは快く頷いてアルカディアの背へと腕を回した。要望通りにぎゅうっ♡と優しく強く抱きしめ、頬を擦り寄せて抱擁する。
火照り切った体躯はただの空気にすら冷たさを感じ、背中側は少し寒かった。けれどクラウディオの胸板と密着する腹側は暖かい。火照った素肌同士で触れ合う体感が心地よく、アルカディアは思わずと気の抜けた息を吐く。
「は、ぁふ…♡は……、ぁ…♡…っ♡」
「アルカディア。もう食べていいか?」
「ぁっ…♡ぁ、ぁ♡ん…っ!♡」
言いながら、性急にベルトが解かれる金具音がし、アルカディアの股座に熱い塊が押し付けられた。いきり勃った剛直が臀のあわいをずり♡となぞりながら挟まり、エラの張った亀頭が後孔をずりゅっ♡と舐めるように触れる。
「お前のここに突き入れて、奥まで犯しつくしていいか?」
「ぁ♡あっ♡♡っ♡♡ぁ…っ♡♡いっぱい…っ♡♡おくまで、ほしぃ…っ♡♡」
アルカディアはかくかくと腰を揺らし自らも後孔に亀頭を押し付ける。ずりっ♡ずりゅっ♡ぷちゅっ♡と亀頭が縁を引っかいてなぞる感覚が気持ちよくて仕方がない。たったそれだけでもびりびりと痺れる様な快楽が募るのに、これがナカに入ればどうなるのだろう。
「くらでぃお…ッ♡♡はゃく……♡♡」
「ん…挿入るぞ、アルカディア。ああ…可愛いな…かわいい…」
「ぁ…ぁっ♡♡ぁ!♡あ♡は、ぁ゛♡♡っ…♡♡♡ぅぅ…ッ!♡♡♡」
ずぷ…っ♡と亀頭が後孔へと入り込む。ただなぞっていた時から…否、その前の前戯のときからきゅんっ♡きゅん♡と期待し歓迎して収縮していた入り口を、ナカを、怒張はずぬ♡ずぷ…♡と味わうように割り開いていった。
いつもの体を気遣う慎重さではない、ただただ肉体を貪る緩慢さにアルカディアは頭の裏側から熱がいっぱいになるようだ。びくっ♡がくっ♡と震える体は逞しい腕に抱き込まれて胸板に押し付けられ、ちいとも身動きが出来やしない。
特に耳元で囁かれる睦言がいけない。鼓膜を震わせる熱い息と声が脳を痺れさせ、体が、心が、なにもかもが、いっそう快楽に堕ちていく。
「く、ぁぅっ♡ぅぁ♡あ♡ぃっ♡♡んぁッ♡♡」
「ッあ゛ー……熱いな…」
「すき…っ♡くらでぃお♡♡すき…っ♡♡ぁ♡あ♡っ♡らいすき…っ♡♡」
「ん…私もだ。…ここ私の形になるくらいしような」
「ぁ♡♡ぁ゛♡♡する…っ♡ひ、ぅ…♡っ♡した、い…っ♡♡ぁ…っ♡くら、でぃおの…にして…っ♡♡」
「今想像して軽くイッたろ」
「んっ♡♡ん…っ♡♡いっ、た…ぁ…っ♡♡っぁ♡あ♡ん…♡ん♡〜っ♡ふ…っ♡♡…ぅっ♡♡」
「かわいいなほんとうに」
手では愛しそうにアルカディアの頭を撫でて、唇が何度も口付けながら、クラウディオの怒張は奥へと進んでいく。その歯が時折首元を甘く噛んで来るのがアルカディアはひどく好きで、噛まれる度にきゅうっ♡と切なげに抱きしめていた。
怒張をナカに挿入れている当人故、それを誰よりも感じ取っているのだろう。絡みつく雄膣の熱い肉を感じ得てひどく愉快そうに、そして嬉しそうに笑みをこぼすクラウディオの口元がいっとう好きだとアルカディアは思った。愛の故に、自分を食いつくす雄の笑みが。
「ぉ゛ッ♡ぁッ♡♡あ♡あ♡そ、こぉ…っ♡♡♡ぁ、あ♡〜っ♡♡」
「ん…っ、ここ、気持ちい?」
「ひゅ♡♡あ♡あ♡き、もちぃっ♡♡ぁ…っ♡♡ひ♡♡ん…っ♡♡♡」
指で散々に愛でてもらえた前立腺を亀頭がなぞる。それも、挿入の苦しさを紛らわせるために快感を与える動きではない。そもそも挿入だけで法悦を得ているのだ、紛らわす必要など欠片もないことは、熱い肉に包まれる怒張の持ち主であるクラウディオなら如実と知れているだろう。
つまりは雌のしこりを撫でては抉り亀頭をこれみよがしにぐりぐりと押し付けるのは、ただただひたすらに官能を高めるためだけの行為に違いない。
容赦なく与えられる快楽に、アルカディアはぎゅうっ♡とナカを締め付けて雄膣を抱きしめる。熱く、甘ったるく、そしてきつく抱きしめる淫肉にクラウディオから思わずといったように熱い息が吐き出される。
「ッ、はあ゛……すごいな……」
「っぁ゛♡♡〜っ♡♡ぁ、ぁ…あ♡ぉ♡♡あ♡」
抱きしめるまま、思わずと言ったように耳元で紡がれたクラウディオの言葉に堪らない快楽が滲んでいく。前立腺を抉る硬い剛直が己のナカで白い欲望を吐き出す瞬間を思い描いて、きゅんっ♡ぎゅうっ♡とナカが期待に収縮した。
甘ったるくきつい締め付けに耐えるためだろう。クラウディオの眉間に幾重かの皴が細かく刻まれて、アルカディアにはそれすら愛しく思える。
「はは、また締まった。中出し欲しいか?」
「あっ♡♡あ♡あ♡♡っ♡ほし♡♡…っ♡♡なか、ほし…ぃっ♡♡おねが…っ♡♡…っ♡♡」
こくこくと、アルカディアは何度も頷き強請る。クラウディオとアルカディアの性行為は基本的に優しく甘く、そして安全性を重んじるものが殆どだ。それはアルカディアの意向というよりも、クラウディオの意志によるものだった。
受け手の負担。性行為の経験が少ないアルカディアへの配慮。何より、恋人を大切にしたいというクラウディオの胸裏などから生まれた意志である。
アルカディアはそれが嬉しくて、同時に少し寂しくもあった。腹の上に白濁を吐き出される度、あのまま一番奥側に出してもらえればと願ったものだ。理性も知性もぐしゃぐしゃになった際はそれを強請って泣きもした。ぼたぼたと泣いて懇願するアルカディアを撫でて口付けて宥め賺すのがクラウディオの後処理のひとつになった日もある。
それほどに願って、それほどには渋られたことだった。クラウディオは負担を配慮しているのではなく、嫌なのかもしれないとすら思っていたほどだ。
けれど、理性をなくし本能と願望のままに突き動かされる彼が思わずとそう呟いたということは、つまりは彼も望んでいたということで。
そう思って、アルカディアは嬉しくて仕方がなかった。体中の熱がまたもや増していく。頭の中が悦と嬉々と欲望とではち切れそうになる。それに伴って、ナカはぎゅうっ♡と甘く焦がれる締め付けを強くする。
「いい子、たくさん犯してやるからな」
「〜〜っ♡♡ぁ♡♡あ♡♡ひっ♡♡あ♡あ♡あぁ♡♡」
とちゅっ♡ぐちゅっ♡ごちゅっ♡とすっかりと熱くなったローションをかき混ぜ、熱い雄膣に擦りつけるようにしながら剛直は奥へと入り込んでいく。前立腺を嬲っていた亀頭が抱き付く蜜壺を割り開いて先へと進み、代わりとでも言うように、美味しそうに加え込む入り口を擦っていた竿が前立腺を押し潰す。随分大きなクラウディオの怒張はただ挿入るだけで雄膣を埋め尽くし、イイ所にぶつかるのものだ。それ故に感じる圧迫感すらも気持ちがいいと、アルカディアは好んでいる。
「ぉ゛…っ♡♡ぁ、ぁ、ぁ♡ぁ゛…っ♡あ…ッ♡♡〜〜…っ♡♡」
そうして、こちゅっ♡と。幾度かのストロークを繰り返し挿入を続けていた怒張が奥側に辿り着く。ずっぽりと入り込んだ甚だしい熱の感覚に、アルカディアは息を詰まらせて声もなく歓喜の喘ぎを垂れ流した。
脚がぴくっ♡と微かに震えてシーツの上を泳ぐ。雄膣は奥の窄まりに辿りついて留まった怒張を歓喜し抱きしめている。それによりイイところに当たるのか、もはや何処も彼処も気持ちがいいのか、アルカディアの体躯はぴくぴくと震えて、血色のいい唇が感じ入る声を零す。
けれどそんな具合でも、怒張と攻める手腕がようやく止まった今、まともな息をしようとはしているらしい。そしてこれまで幾度も達したためだろう。涙で濡れた長い睫毛はくったりと下瞼に沿わされており、緩慢と…けれど心地よさそうに瞬いていた。
息を整えているのはクラウディオも同じだ。ぎゅうぎゅう♡と締め付けている雄膣は熱く心地よく、うっかりと欲望を吐き出しかけるのをぐっと堪えているような深く息をつく。忍耐のため眉間に刻まれた皴やぐっと瞼の閉ざされた目元、奥歯を噛み合わせて息を吐き出す表情。それらをアルカディアが目に映す度、ナカはぎゅうっ♡と怒張に甘く抱き付いてくるのだ。そうして更に眉間へ皴が募り…そうした淫猥たる悪循環を必死に耐えている。
「ぉ、く…っ♡♡おく…っ♡♡ぁっ゛♡♡ぁ♡へぅ…ッ♡」
「っ…本当、ここも好きだなぁ…」
「ん…っ♡すき♡♡おく…っ♡っぁ♡ぁ♡おかさ…れてるって、おも、ぇ…る…♡♡だい、すき♡♡♡」
「へぇ…、いつも、そんなこと考えてたのか?」
「っ♡♡んぅ…!♡う、ん…♡くら、でぃおに、おかされるの…♡♡うれ、し、……♡♡っァ♡♡ぁ♡♡」
「かぁわいいな…かわいい…♡かわいい奴」
「〜ぉッ♡♡ァ♡ぁっ、あ、ぁ♡♡んぁ、あ♡♡」
耳元で甘ったるい声を注ぎ込まれ、奥側をこつ♡とちゅ♡こちゅ♡こんっ♡と叩かれる。熱烈に窄めて吸い付く雄子宮への入口を解す叩き方ではない。怒張の先端はただただ己の雌を愛でるために、可愛がるために小突いているのだ。
ようやく深い息を手にした体躯をほんの少し苛めるような愛撫に、アルカディアの体は容易くぴくっ♡ぴくっ♡と跳ねて熱を上げていく。雌孔の入り口は剛直をぎゅうっ♡と抱きしめ、ナカと同じように抱きついては竿に浮き出る血管まで感じ取っていっそうきつく絡み付いた。
少し小突いては少し離れて…またこちゅ♡とぶつかる先端に、窄まりは恋しそうなキスを何度も交わす。熱いナカの熱烈な歓迎に煽られたのか、怒張は徐々に揶揄るような小突きを雄膣を犯すストロークへと変貌させていく。
「たぁくさん、犯してやろうな」
「〜っ♡♡♡ぁ゛♡♡ぁ゛あ♡♡」
「あ、ナカ、ぎゅってしたな。嬉しい?かわいい」
「ぁ♡♡ァ♡♡うれ゛、し…っ♡♡♡ん♡♡♡」
喘ぎも唾液も零しながら、アルカディアはこくこくと何度も頷く。それに答えてやるようにクラウディオは腰を用いて怒張を使い始めた。ずちゅっ♡と後退してはずちゅっ♡と奥を叩き、ずぬぬ…♡と引いては押し込む間隔を次第に大きくしていく。時折ぐりぐりっ♡と奥の行き止まりに先端を押し付けられることがとりわけ気持ちがいい。
「ぁ、あ…あ♡く、ぁぅっ♡♡ぁ♡あ♡〜っ♡♡くぁ、でぃお…♡♡あ♡あ…っ♡」
「かわいいな、アルカディア♡…アルカディア…っ」
「ひゅぁ…ッ♡♡あ゛♡あ♡♡くぁ、でぃ…っお♡♡ぅ♡♡んっ♡あ♡♡」
熱い声音で何度も名前を紡がれて雄膣を犯されれば、既に募り切っている官能がいっそう増していく。どろりそろりと蕩けるような意識でひたすらに名を紡いでいれば、胸の辺りで鋭く甘い感覚が走りアルカディアはくぐもった声をあげた。
「んんぅっ♡ん、ぁ♡や…っ♡♡らぇ…っ♡♡」
「ここはこんなに締め付けてるのに、か?素直じゃない口はどこだ?」
「は、ぎゅっ…♡ぁ♡あ♡ごぇ…っ♡♡ぁ♡っ♡きもち…っ♡♡すき…っ♡♡もっと…っ♡♡」
ふたつの胸の中央でぴんっ♡と勃起した赤い粒を指で摘ままれ、アルカディアは甘い声で白状をさせられる。ぎゅうっ♡ぎゅ〜っ♡と引っ張られ、白状したとたんに指の腹でこすこす♡と撫でるように押し潰され、すっかりと性感帯に育て上げられた乳首は腹の奥にまで痺れる様な快感を伝えた。
視界は涙で滲み、耳は高揚の為にぼやけた音が鳴り、鼻は精子の臭いだか薬の匂いだかが混ぜこぜになった室内の空気にやられてしまっているというのに、与えられる快感だけは如実と拾い上げるのだ。
伴って、ナカはぎゅうっ♡と締め付けを増し、甘えるように抱擁をきつくする。己を犯す怒張の形をいっそう感じ取って、それだけでも気持ちがいい。
「ぁ、ぁ♡あ♡ひっ、ぅ♡んぁぁ…っ♡あ、あ♡」
クラウディオはストロークの幅を大きくしながらも、その速さを増そうとはしなかった。ずちゅっ♡と押し込まれては、ずぬぬ…♡とエラの張った雁首で内壁を抉って引いていく怒張の動きは一定としている。己の快感ではなく、己の雌に雄の形を教え込むことが先決だといわんばかりにナカを優しくゆっくりと、しかし確実に己を刻み込んでいく。
「ぁ、ぁ♡あっ♡♡ぅ…っ♡♡くぁ、でぃお♡♡〜ぅぁっ♡ぁ♡きもちぃ♡♡ふ、ぁ…♡ぁ♡」
「ちゃんと私の形を覚えようとしてる、偉いな」
「ぁ、あっ♡♡〜〜っ♡♡♡お、ぼえぅ…っ♡♡ぁ♡ふ♡ぅ…っ♡♡くらでぃお♡っの…かたち、になぅ…っ♡♡あ…っ♡♡」
怒張はついに入り口まで抜けていき、そこからゆっくりとずちゅちゅ…♡ずぬ…♡と奥の窄まりまで突っ込まれていく。ゆっくりと己の形を教え込んでいく怒張を、アルカディアのナカは歓喜しぎゅうぎゅう♡と抱きしめ続けて従順になろうとした。
刻一刻と媚薬が追加されているのか、それとも官能を高められているからか、アルカディアは何か言葉を告げられても羞恥や驚愕など抱けない。いっそう高揚を煽られて卑猥にもナカの締め付けを甘ったるく増させていく。
「はっ♡ぁ…っ♡♡ぁ♡…っ♡ふぁ…っ♡♡ぁ♡」
熱い舌によってべろりと乳首を舐られ、大きな手で腰を掴まれながら緩慢とナカを犯される。体中に官能が満ちていき、それは時折溢れて弾けるが…その動きが優しいために甚だしい絶頂とはならない。甘イキを幾度も繰り返して震える雄膣を剛直は嬉し気に味わい尽くしていく。
「ぅ…ぁ…ッ♡♡ぁ、ぁ、あ♡あう…っ♡♡ぁ♡…っ゛♡♡」
優しいとは物の言い様で、ただただ刻み付けて味わうための動きは自分本位そのものだ。そうしてついには、アルカディアはぼたぼたと泣き出してしまう。両脚をクラウディオの腰に回して引き寄せ、自分から深くした挿入に「ぁ゛っ♡♡」と項を反らしながら、けれどもすぐにクラウディオへと視線を向けて懇願を紡ぐ。
「くぁ゛ぅでぃお♡♡ぉねが…っ♡♡もっと…♡っ♡ぅ、ぁ♡♡んっ、ぅ♡♡ひど…く…して…♡♡」
「アルカディアは酷い方が好きか?」
「すき…っ♡♡すき♡♡やさし…のも…♡ひどい、のも♡♡くら、でぃおに…っ、されるの…♡♡らいすき…♡♡」
「なるほどな。はは、かわいい」
「あ♡…っあ♡ぅ……っ♡ひどいの…して…っ♡♡くらでぃお、の…好きに…っ♡ん…っ♡♡」
項に回った手で抱き寄せ、脚でぎゅう…っ♡と腰を引き寄せてアルカディアは強請る。赤い眼は官能に蕩け切り、唇からは真赤い舌が垣間見えて酷く淫猥だ。脚で引き寄せた腰に擦り寄るようにずり…っ♡と緩く腰を動かしては息を詰まらせて甘く喘ぐ姿などは実に淫らである。
クラウディオはその様子をすべからく受け止めて、嬉しそうに笑んでやった。寄せられるままに腰を押し付け、閉じきらない唇に軽く舌を捻じ込んで咥内を舐る。そうして相も変わらず愛おしそうにアルカディアを見つめて、優しい声音で囁いてやる。
「お前の腹の中、たぁくさん犯していいんだな?ここ」
「ひっぁ゛♡♡」
クラウディオの指がアルカディアの下腹をなぞる。陰毛の生えた箇所から臍の下までを人差し指がこれみよがしになぞりながら、耳元で囁かれた声音は甘ったるい。官能を刺激する仕草と声に、火照り切っていた体躯はいっそう熱を上げた。
締め付けを増すナカの具合でそれが手に取るように解るのだろう。口元に浮かべる笑みを深めながら、怒張を奥側まで挿入したまま、クラウディオは手と口だけを動かす。
「今みたいにゆっくりじゃない。お前のいいところも奥も、思いきり擦って突いて…お前がどれだけ鳴いても止めてやらない」
「〜ッぁ♡♡ぁ゛、ぁ♡♡」
こすこすこす♡と下腹の辺りを何度も掻かれ、甘い声音が囁かれる。それは紡がれた挿入の様を思わせ、アルカディアの脚がぎゅうっ♡といっそう腰に絡みついた。真赤い唇から同じように赤い舌がはみ出て、仕舞い忘れるまま喘ぎが零れる。
ただ皮膚を撫でられているだけ、それだけだのに、熱に浮かされた頭は勝手に想像を繰り返す。雄膣に入り込んだままの怒張がそれをいっそう助長させる。
「あー…あと…そう、ここ…子宮。ここも愛でてやろうな。入り口を何度か小突いて…閉じてるところがひしゃげるまで捏ねる。それで一番奥まで挿入てやる。結腸ぶちぬかれるの、好きだろ?なあ?」
「ぉ゛♡♡ぁ゛♡♡ひゅ、ぐ…♡〜っ♡♡」
指が辿り着いたのは丁度腹の奥側だ。子宮と、雌のように称されたそこを皮膚の上からぐり…っ♡と押される。内側を押し潰す程強くはない。しかし捏ね回して刺激を与えるくらいには確かと揉み込まれた。加えて、ナカに埋まったままのクラウディオの怒張がこつ♡こつ♡と奥の窄まりを小突くのだ。
告げられた通りに愛でられ、過去に受けた甚だしい快感を思い出させられて、アルカディアはびくっ♡びくっ♡と体を跳ねさせては堪らなそうに喘ぐ他ない。雌の喜びを思い出させられ、赤い眼をいっそうどろりと蕩かせ、欲情し切った眼差しを注ぎながら、抱擁するクラウディオに強請る声をあげた。
「すき…っ♡♡らいすき♡♡くぁでぃお…ぜんぶ、ほしぃ…♡♡すき…♡♡」
「お前のこと雌にするんだぞ?いいのか?」
「いい…ッ♡♡からっ♡♡くぁぅ、でぃお…っ♡♡ぜんぶ…♡♡…ぇ…っ♡♡ぁ゛♡♡ぉ゛あ、あ゛…っ!゛♡♡あ゛…ッ!!♡♡」
ずりゅりゅ♡どちゅ♡♡パンっ♡♡と、濁った水音と弾ける音がほぼ同時に鳴る。両者の体の間…つまりは局部から発せられたその音が、クラウディオが己の怒張を引き抜き、今一度と挿入し直した音だとはもはや明白であった。
先程のような緩慢とした動きではない。勢いよく打ち付けられた剛直にアルカディアの赤い眼が見開かれる。それを一瞬見つめて、クラウディオはアルカディアの体躯を抱きすくめた。ビクッ♡ガクガクッ♡と痙攣する体が抱き込まれ抑え込まれる。逃げ場のない熱く強い抱擁にアルカディアはいっそう法悦を得た。
それだけではない。抱きしめられたことにより、アルカディアの陰茎が互いの腹の間に挟まったのだ。自身の濡れた腹部とクラウディオの硬い腹筋に擦れて刺激される。ナカをど突かれた甚だしい快感も合わさって、その擦れすら酷い法悦と成ったらしい。
ぷしゃっ♡♡と、もう白濁を零さなくなって久しい先端からはそんな音を立てて液体が溢れ出した。アルカディアの腹や胸だけでなく、密着したクラウディオの腹にも触れたのだろう。皮膚が濡れた感覚に少しと目をそちらにやったクラウディオは…けれども直ぐににんまりと笑って今一度ときつくアルカディアを抱きしめた。打ち付ける腰の激しい動きを止めないまま。
「ハメ潮吹いたな?はは…かぁわいいやつだな…♡」
「あ゛ッ♡あ♡♡っ♡♡ひっ♡♡ぁ♡あ♡♡はげ、し…ッ♡♡〜〜っ♡♡♡」
パンッ♡パンッ♡パンッ♡ごちゅ♡どちゅ♡ごちゅごちゅごちゅ♡♡そんな具合の激しい音が室内に響く。臀部と股座の皮膚がぶつかる音だ。熱くなり切ったローションや先走りでぐちゃぐちゃのナカを容赦なく怒張が穿つ音である。
アルカディアは、もはや訳が分からなかった。頭が真っ白になるような快感がひっきりなしに身と頭を襲い、もう何をも考えられない。さざめきのような耳鳴りが続いて音も濁ってしか聞き取れぬ。開きっぱなしの口から自分がひたすらに喘ぎを紡いでいることすら解らなかった。あんまりの快感に首を横に振ることも、体を暴れることもできない。ただただ抱擁されるまま、怒張がぶち込まれるままを受け止める他ない。
「はあ゛…すごい締め付けだな…。私に乱暴にされるの、本当に好きなんだなお前」
「あ♡♡♡ぁ♡♡ッ♡♡らぇっ♡♡いっでう♡♡ぁうぅッ♡♡♡」
「さっきから何回もイッてるだろ」
「あ゛♡♡ひ、ぃ゛♡♡ぉ゛ぁ♡♡あ♡あ゛ッッ!♡♡あーッ゛!♡♡」
叫ぶような喘ぎを零す他ないアルカディアを抱きしめるまま、クラウディオの動きはいっそう激しさを増していく。ぎゅうっ♡ぎゅっ♡と絶頂の締め付けにうねる雄膣を強引に割り開いて奥まで突き刺し、ごつっ♡ごちゅっ♡と結腸口にまで打ち付ける。血管が浮き出る程に勃起した剛直は硬度や角度など申し分なく、自分を強請った恋人を雌に堕とし込んでいくことに余念がない。
「ぁ゛…ッ、は…っ…ここ…、奥、ぶちぬいていいか…?」
「っ…!!♡♡あ、あ゛ッ♡♡っ゛♡♡ぉ゛…っ♡♡あ゛ッ…♡♡」
ぐりっ♡ごりっ♡と打ち付けていた亀頭を奥の窄まりに添わせ、丹念に捏ね回す。閉ざされているそこを解す確かな感覚と、こじ開ける意思を明らかにする感触にアルカディアは思わずと戦慄いた。
しかし背筋に駆け上がるのは恐ろしさだけではない。期待と嬉々。それらが綯交ぜになった震えが体躯を包んでいく。
「いいな…ああ…アルカディアは私のものだ」
「ぁ゛♡♡ぁ…♡♡くら、ぅ…ッ♡♡ひ、ッぐ♡♡あ♡あ♡♡ん゛〜ッ♡♡」
アルカディアの返答を聞かぬままクラウディオはそう呟き、行為を続けていく。ぐりぐり♡♡ぐりゅっ♡♡と結腸口を捏ねられ、突き抜ける酷い快感にアルカディアは名を呼ぶことすらまともに出来やしない。
跳ねる体を逃がさないと言わんばかりに抱きしめ続ける腕も、耳元で聞こえる熱い息も、ぴったりと触れ合った胸部から聞こえる鼓動の激しい音も、全てが酩酊を作り出す。自分か、彼か、それともこの淫猥たる香りが立ち込める室内か…もうどこが熱いのか解らないまま行為は続いていく。
「ぁ゛♡ぁ、ぁ…っ♡♡ひ…っ♡♡ぁ♡♡あ、ぉ…っ♡♡」
「…っ、ぁ゛………」
「くぁ…でぃ、お♡♡す…き…♡♡ぉ゛♡あ♡♡すき…っ♡♡ひっ♡ぁ゛、あッ♡もっと…♡♡」
「……〜〜ッ!」
アルカディアはもはや碌に力の入らない腕と脚で今一度とぎゅっ♡と抱き寄せ、すりすりと擦り寄りながら懸命に声を紡ぐ。強請る声音は甘く、擦り寄る手足は優しい。耳元で直接注がれる懇願にクラウディオの琥珀の眼がいっとう色を増すのが見えた。
かっと顔中がいっそう赤みを帯び、体躯を覆い抱いていた腕が僅かと…アルカディアの体を壊さないように僅かとだけ力を増す。額が落ちるようにアルカディアの肩口に押し付けられ、乱れた息が吐き出された。ナカを穿っていた怒張が一度ぴたりと止まる。
「ぁ、ぁ…♡く、ぁぅ…♡♡くぁ、でぃお……♡♡」
「……、………」
互いの熱い息遣い、呆然と名を紡ぐアルカディアの甘い声だけが室内に落とされた時間がどれほどあったのだろうか。
それは絶頂の余韻を味わうアルカディアの瞼が重くなりかけたとき、体内にどちゅっ♡と響いた音によって皮切られる。ぎゅっ♡ぎゅぅぅ♡♡とうねるナカを突き破る。怒張が前立腺を擦り、奥の窄まりに亀頭がぶつかる。それが幾度も幾度も容赦なく繰り返される。
「お゛ぁ!?♡♡ぁ゛、あ゛ッ!?♡♡♡〜っ!?♡♡うあっ♡♡♡」
「…アル、カディア…ッ!」
「あ゛ッ!♡♡あ…〜〜ッ!♡♡あ゛♡あ♡あ♡あ♡〜ッ♡♡♡」
ごちゅっ♡どちゅどちゅどちゅ♡♡と穿つ剛直は奥側に辿り着く度、ぐりぐりぃ♡♡と押し付けては結腸への入口をこじ開けようとする。先走りをこぼす切先は舐るようにして弁を押し潰した。
他でもないクラウディオ自身にそこを破り開かれた経験のある窄まりは、催淫も相まって痛みなど感じる訳もなく。襲い来る快感は甚だしく、アルカディアは必死に逃げようと身を捩るが、その全てが抱擁によって抑え込まれてしまう。
「お…ぐ…ッ♡♡うあ゛、ぐ♡あ♡♡ぅ♡♡♡っ♡♡ひ…ッ♡♡ぁ゛♡♡あ♡♡♡ぁ゛♡♡♡」
「はっ……アルカディア…」
「あぅ゛♡♡♡〜ッ♡♡ぁ、う゛ぅう♡♡ぁ♡♡あ♡ひ、ぎゅ♡♡ぉ゛♡♡〜〜ッ!♡♡んあッッ♡♡♡」
もはや悲鳴のような喘ぎ声を溢れさせながら、アルカディアはただただと快楽を受け止め続ける他ない。生理的に溢れる涙で視界が濁り、不安定な視界は奥側までぶち抜こうとするクラウディオの怒張を五感でいっそう感じさせた。
どちゅ♡♡ごっちゅ♡♡と音を立てる怒張に、アルカディアの体躯はもはや陥落しかけている。亀頭に深い口付け強請られ続ける結腸口が、徐々に徐々に開き始めている。
「ぁ゛あッ!♡♡ぁ♡♡あ♡♡♡お、く♡♡ひ…っ♡♡♡ぁ〜ッ♡♡♡」
「アルカディア…わかるか?お前の奥…吸い付いてくる。欲しがり屋だな…」
「〜〜ッ♡♡♡ぉ゛♡♡あ♡♡あ〜〜ッ♡♡」
ぐりぐり♡♡と亀頭が甘えるように擦り寄り、ぐちゅぅ♡♡と結腸口がそれを受け入れる。クラウディオはそのまま腰を揺すって亀頭で窄まりをほじり、捏ねて、そうして徐々に徐々にと深まっていく最奥での口づけに酩酊が深まっていく。
「あぅ♡♡く、ぁ゛、でぃ…お♡♡♡〜〜ッ♡♡ぁ♡♡ぅ…ッ♡♡♡」
「……ッ」
守るように縋るように、互いに抱きしめ合い、腰だけを使って性行を続ける。どちゅ♡♡ばちゅ♡♡ぐりっ♡♡パンッ♡♡パンっ♡♡ごちゅっ♡♡ぐりぐりぃ♡♡と音が続き、その合間を破るようにひっきりなしに溢れる喘ぎが宙に散らばって、暫く。
ごっ、ちゅ♡♡♡と、ひときわ大きな音がアルカディアの体内に響き渡った。
「ッ!?♡♡ぁ゛…〜〜〜〜っッ!!♡♡♡ぁ゛あ〜〜〜〜ッ!!♡♡♡お゛♡♡♡あ゛あ♡♡♡〜〜〜〜〜ッ゛っ!!♡♡♡」
散々に押し潰された結腸口がぐぽっ♡♡と音を立てて亀頭を受け入れる感覚。ひしゃげた弁を雁首がなぞり上げて嬲る感触。がくがくと震える体を微々とも逃がしはしない逞しい腕と体。それら全てが脳を見たし、なにをも考えられなくなる。頭が真白となる。思考を擲つ。もはや眼前すら認知できない。
「ぁ゛…!?♡♡♡ッ゛♡♡ぁ゛あぁあッ♡♡ぁ♡♡ア♡♡あ〜〜ッ♡♡♡ふ、ぁ…♡♡♡」
ぷしゃぁっ♡♡と、腹筋に挟まれていたアルカディアの性器から透明な液体が撒き散らされる。腹や胸部が濡れていく感覚を皮膚にて感じ得た。潮…厳密にいえば小水であり、漏らしたことに相違ないのだが、そんなことを気にする余暇など互いに有るはずもない。
そうして、びゅるっ♡♡♡と。
「ッ゛!!♡♡♡ぉ゛♡♡ひあ゛ッ♡♡♡ぁ、ぁ、ぁ…♡♡〜〜〜っ♡♡♡」
「ぁ゛、ぐ…ッ!」
結腸に入り込んだ亀頭から少量の白濁が吐き出される。にゅるっ♡♡びゅく♡♡こぷぷ…♡♡と、さも漏れ出したと言わんばかりの射精はかろうじて僅かで留まった。
収縮を繰り返す熱い雄膣、亀頭を甘くきつく咥え続ける結腸口。それらによってもたらされる快感を、腹筋に力を込めて懸命に堪えたのだろう。クラウディオは眉間に深く皺を刻んで目を瞑り、その唇からは暫く息を詰めた声が漏れ出していた。
ややあって、歯を立ててまで引き結ばれていた口が開かれる。荒い呼吸が吐き出され、唸るような声音も共に溢れ出す。
「ぅ……ッ!は、ァ゛ー……ッ」
「ぁ…〜〜っ♡♡ぁ…♡♡ッ♡♡ぁ…つ、ぃ…♡♡♡」
「ぁ゛……ッ!…っッ♡」
血管の浮き出る硬い怒張の熱さだけではない。こぷり♡と吐き出された少量の精子の熱も、一番奥側に感じられる。従って、出されたのだと知れて、アルカディアは口元に笑みを浮かべた。
碌に言語化も出来ないまま心底嬉し気に赤い目が細められ、ナカはきゅうっ♡と甘い締め付けを増す。中出しの歓びだけではない。半ば強引に開かれた最奥にただただと怒張が入り込んでいるだけで気持ちが良くて堪らないのだ。
クラウディオも、それが堪らなく気持ちが良いに違いない。なにせ射精を耐えたところに襲い来る雌の抱擁だ。クラウディオの眉間に皺が刻まれ、いっそ苦し気な呻きを零す。
そうして、それに応えてやるように…これ以上我慢ならないというように、怒張が再び水音を放ち始めた。
「ぁあ゛ッ♡♡♡らぇ♡♡まっぁ゛♡♡あ〜〜〜っッ♡♡♡♡あ♡♡あ♡♡あ゛〜〜〜〜ッ♡♡♡♡」
「はぁ゛ー……ッ!、ぁー…ッ゛」
「ん゛、〜〜〜ッ!♡♡♡♡ぁ、ぁ〜〜〜ッ♡♡♡あ゛♡♡ぐ…♡♡♡ゃぁああッ♡♡♡」
ぐぽぉ♡♡ずちゅっ♡♡ぐぽっ♡♡ごぷっ♡♡と、腰が小刻みに動き、亀頭が雁首で結腸の入り口を捲り上げながらからほんの少し抜け出ては、エラの張った逞しい雁首でもう一度弁を押し開き再度奥へ入っていく。
ただ亀頭を扱き抜くたったそれだけの動きが酷く気持ちが良くて仕方がない。耐え難いと思えど次々に襲い来る攻めは留まらず、アルカディアはぼたぼたと涙を流しながら甚だしい法悦に身悶えるしかない。
「あ♡♡あ♡♡ぁ♡♡らえ♡♡あぅ♡♡うぅ♡♡♡らぇ、やめ…♡♡♡あ゛♡♡ひ、ぐ♡♡♡」
「ん…っ、…っ、犯されて…きもちいいか…アルカディア?」
「あ゛♡♡♡ら、ぇ♡♡♡あ♡あ♡♡い…ぐ♡♡♡…イ…く♡♡♡」
「本当に、お前は可愛い…♡」
「〜〜っッ!♡♡♡ぁ゛ぁぁ♡♡♡ぁ゛♡♡♡あ゛〜〜ッ♡♡♡」
びくんっびくんっ♡♡と跳ねる体躯は抱擁に呑まれ、耳元で甘ったるく囁かれる。そうしながらもナカは怒張により攻め抜かれ、酷いくらいの雌の喜びを得続ける。生理的に流れる涙は口づけて掬い取られて、苦しいのか気持ちがいいのか解らないというのに嬉しいことだけが確かだ。
「ん♡♡♡んん♡♡ん、ん♡ぁ、ふ♡♡〜っ♡♡ん♡♡んぅ〜〜♡♡♡」
そうして唇同士が合わさり、口づけられ、舌同士が絡み合う最中。クラウディオの手がアルカディアの腰を掴み、クラウディオの腰がぐぷっ♡♡ずるるる…♡♡と怒張を抜いていく。終わったなどと思うはずはない。その手も腰も、おそらくあの琥珀色も、ただただ狙いを澄ましているだけだと解って、アルカディアはびくっ♡と震えた。勘づいたところで逃れることなどできやしないのだが。
「っ、ぁ♡♡くら…ッ♡♡♡まっ、ぁ…♡♡ぁ゛♡♡♡〜〜〜ッ゛!!♡♡♡」
どちゅっ♡♡♡パンッ♡♡♡と音を立て、入り口まで後退した怒張が最奥まで一気に貫く。
亀頭が雄子宮まで入り込む挿入に戦慄く暇はない。剛直はずりゅりゅりゅ♡と雁首のエラで火照る肉を掻きながら抜けていき、またパンッ♡♡と同じように最奥まで穿っていく。速く激しい、串刺しにするような挿入が達し続けている体躯を滅茶苦茶に犯していく。
「んぁあ゛あ♡♡♡あ♡♡あ♡♡ぉ゛♡♡あッ♡♡♡」
「ん……また泣いてるのか?…かわいい…」
「ちが、ぁ♡♡〜〜っ♡♡♡やめっ♡♡こわれ…ぅッ♡♡こわ…れ、から…ぁ…!!♡♡」
「…、…はは…」
アルカディアは力なく首を横に振る。制止を呼び掛けているのにも関わらず、その様子はさも胸元に擦り寄り甘えているようだ。それを知ってか知らずか…クラウディオは小さく微笑んで汗の滲む長い赤色の髪を頬で撫でると、アルカディアの耳元へ唇を寄せる。
「壊してやるんだよ」
ごちゅっっ♡♡♡と、体中に音が響く。腰を掴む手の指先が皮膚に沈み、逃げようとするかのように震える体躯を抑え込んだ。
開きっぱなしの口から舌が出て収まらなくなり、見開き丸くなった赤い眼に、己を覗き込んで見つめている琥珀の眼が映る。アルカディアに覆い被さるそれは背後の照明から逆行を受け、爛々と獰猛に輝いていた。
「〜〜〜〜…ッ♡♡♡は、ぎゅ…っ♡♡♡ぉ゛ぁ、あ♡♡♡あ゛〜〜ッっ♡♡♡♡」
「かわいい…アルカディア、可愛いな…」
「らぇ♡♡ら、めッ♡♡あぁあ♡♡っ♡♡♡あ♡♡あ゛♡♡♡あ♡♡」
「こわれたお前もきっと可愛い…かわいい…好きだアルカディア、かわいい…」
言いながら、クラウディオは己の欲望を打ち付けていく。キツく甘くうねるナカの具合、最奥が種付けを欲しがる締め付け、そして赤く火照る体躯が跳ねる様。それら全てが高揚を煽る。
それらを引き出すための腰つきは激しく、射精にこぎつけるためのものだ。アルカディアにとっては苦しいほどの快感だが、脱する術はどこにもない。言葉通り壊れるまで…もしかすれば壊れても離すつもりのない手が腰に、体躯が傍に、そして眼差しが眼前にある。
「く♡♡ぁ゛う♡でぃお♡♡ぁ、っ♡♡♡ぁ♡♡くぁぅ…ッ♡♡♡ぁ♡♡」
「アルカディア…、そろそろイく……ッ、」
「ぁっ♡♡ぁ…っ♡♡♡ひ…っ♡♡んぅ♡♡ゃ、ぁ♡♡♡ぁぁあ♡♡」
ばちゅっ♡♡ごちゅっ♡♡と出入りする怒張がびくっ♡と震えているのが包み込む雄膣にて感じ取れる。射精を思わせる震えにアルカディアは怯えるような言いぶりをするのに、その赤い目は期待に満ち満ちて眼前の男を映していた。
手で腰を掴んでは己の腰を振りたくり、全身を揺さぶられるアルカディアの胸部へ汗を落とす。そんなクラウディオへ、アルカディアは枕の横へ落ちて久しい手を差し伸ばした。
「ぁ゛♡♡ぁ♡♡ひゅ、ぁ♡♡♡くあ、でぃお♡♡♡ぉ、ねが…ッ♡♡ぁ♡♡あ♡♡ぎゅっ、て、し…て…っ♡♡♡」
擡げられる間もひっきりなしに震え、今にも崩れ落ちそうな手がクラウディオの頬に触れる。
健気な手の様子に気づいたのだろう。クラウディオは琥珀色の瞳を丸くさせて、瞬きもせず己の恋人を映した。
それから何処か自嘲気味に片眉を歪めると、その手に頬を擦り寄せる。男の口元に微笑みが浮かんで、深い息が吐き出された。
「お前は…本当に……」
「ぁ、う…♡♡ぁ、あ♡♡…っ!♡♡ぁ、ぁ♡♡♡」
腰から手が離され、背中へと回って抱き寄せられる。密着し感じ取る体温はひどく熱く、聞こえる心臓の音も大きなものだ。皮膚で感じたその感覚に、アルカディアは深く安堵を抱く。動く幅の大きなピストンから一転、最奥を愛で回す動きに変わった怒張を甘く締め付けて互いに絶頂へと高まっていく。
「あ…っ♡♡♡い、く♡♡あ♡♡あ♡♡くら♡♡♡ぁ、ぅ…ッ♡♡♡」
「…ッ、アルカディア…」
「ん♡♡んぅぅ♡♡ひ…ぅっ♡♡♡あ♡♡あ♡♡くらでぃお♡♡♡」
縋るように抱きしめ合い、快感と熱と愛情に溺れていく。シーツの擦れる音も聞こえず、ただただ息遣いと鼓動だけが感覚を満たしていた。最中。
「ァ゛…っ、ぐ、ぅ……ッ!」
「ぁ♡♡♡ぁ゛ッ♡♡♡」
どびゅっ♡♡びゅるるる♡♡びゅくっ♡びゅうぅ♡♡と、雄子宮に入り込んだ亀頭から熱いものが吐き出される。先程のように零れる吐精ではない、勢いのある射精だ。どくっ♡どくっ♡♡と脈打つ度にびゅるっ♡びゅっ♡と溢れ出していく白濁は雄子宮の壁にぶつかり、そのナカ全てを満たしていく。
「〜〜〜っ゛!!♡♡♡ぁあ、あ、ぁ♡♡あ♡♡♡ぅ♡♡♡ひ、んぅ♡♡♡」
注ぎ込まれる白濁の熱さ、犯し尽くすといった勢いに、アルカディアはたまらず身悶える。びくんっ♡♡♡びくっ♡♡と跳ねる体躯は、大きな手により腰を掴まれたままだ。怒張の先端は雄子宮に入り込んだまま、最後の一滴まで出し尽くすといわんばかりに種付けを成していく。
「ぁ♡♡ァ♡♡♡ひ、ぃ…ッ♡♡♡ぁあ、ぁ♡♡♡あ♡♡〜〜〜ッっ!!♡♡♡♡ぁ、あ゛ぁ♡♡♡ぁ…っ♡♡♡」
種付けられる感覚で雌の喜びを得た体躯は何度も跳ねて、雄膣は怒張をぎゅうっ♡♡とキツく抱きしめ続ける。そうしてナカがぎゅうっ♡♡ぎゅ♡♡きゅうぅ♡♡と締め付ける度に、剛直はびゅるっッ♡♡どぴゅっ♡♡ごぷっっ♡♡と白い種を吐き出した。白濁は最奥を容易く満たし、雄膣までにも流れ込む。
「ぅ、ぅ…♡♡っ…ぁ…♡♡〜〜っ♡♡♡ぁ〜〜…っ♡♡♡っ♡♡ぁ、♡♡ぁ、つ…♡♡♡」
こぷ…♡と、最後の一滴を垂れるように注ぎ終える。犯し尽くすような勢いがひとまず留まり、アルカディアは深く息を吐こうとした。けれども快感の余韻は痺れるように全身へと広がるまま、そして体躯は赤く甘く跳ねる皮膚を保ったままだ。脚ですら、ぴくっ♡ぴくんっ♡と小さく跳ねてシーツの上を泳いでいる。なにせ腹の中が熱い、熱くて仕方がないのだ。それが心地よくて、嬉しくて、気持ち良くて仕方がない、
「アルカディア、アルカディア」
「ん、♡♡ぁ、ぁ♡くあ、ぅ…ぃお♡♡♡く、ぁぅ…♡♡」
額同士がこつりと合わさり、頬に触れる程近い息遣いが感じ取れる。甘く優しい声音で名を紡がれれば、アルカディアも甘ったるい声音で舌ったらずに名を紡ぎ返した。それから唇にちゅっ♡ちゅっ♡と口付けが落ちて、時折舌も軽く絡む、悪戯に啄むようなキスが続く。
「ん、ぁ…♡♡ふ…♡ん♡♡ん…♡♡ぁ〜っ♡♡」
甚だしい法悦にまみれた脳裏が細かな口付けをひとつひとつと受け取って、その優しさと甘さに促されるまま漠然とした意識へと揺蕩っていく。瞼が重さを帯び、幾度も絶頂した故に疲弊した体躯は眠る為に移ろっていく。口付けながら、真赤い唇は穏やかな呼吸を紡ぎ始め、とろりとした赤い眼がただただと眼前の愛しい男を映して…。
そうして、心地の良い穏やかな眠りにおちようとしたとき。
ぐりゅっ♡♡♡、と。
「ひ…ッ♡♡ぁ、あ゛…!?♡♡♡ぉ゛♡♡あ、ぁッ♡♡♡♡」
ナカに埋まったままの怒張が、最奥の縁をなぞりきるように回し込まれる。ぐりゅぐりゅ♡♡と捩じるようにぬぽぉっ♡と結腸口から抜けた雁首が、ぐちゅんっ♡♡と勢いよく再び穿たれる。ぐりゅっ♡♡ごりゅっ♡♡と腰を回しながら埋められ、白濁で満ちる雄子宮を掻き混ぜるように攻め立てられる。
眠りかけた身体を起こすには十分で、絶頂を得た体にはいっそ酷なほどの快感が甚だしく襲い掛かっていく。
「あ、う♡♡ぁ♡ァ〜♡♡♡あ〜っ♡♡♡ッ、な…で…ぇ♡♡♡」
叩き起こされるようにして過ぎたる快感を与えられ、アルカディアは思わずと幾度目かの涙を零しながら懸命に問いかける。あんなにも出したのに、どうしてこんなにも硬いのか。どうしてこんなにも、こんなにも甚だしく、そして酷いのか。そう、言葉にならぬまま赤い眼差しで必死に訴えて…その眼に答えが映る。
ぽたぽたとらしくもない汗を己に垂らす男を、牙を見せて笑む口元を。そしてその琥珀の眼が酷く高揚と色づいて己を映す様は、寸分の狂いなく己を食い尽くさんとするものだと。
「かわいいな、アルカディア」
舌を舐めずった男の唇から溢れたのはたったのひと言であった。そのひと声で、アルカディアは解った。今はこの夜が、気の遠くなるほどに続く始まりに過ぎないのだと。クラウディオという男が今までに相応かつ驚嘆たる忍耐を持ち合わせていたのだと。自分達はパンドラの箱に閉じ込められてしまったのだと。今更気づいたのだった。