lust and pain




頭部を優しく撫でていた手は、存外なほど軽々しくアルカディアの体躯を抱き上げた。
アルカディアの体は膝の上に乗せられ、胸部と腕の間に抱き包まれる。鍛えられている故に逞しい胸部や腕に纏う筋肉は分厚く、服越しにも仄かに熱さを感じえる。
普段の暖かく優しい懐抱ではない。胸部と背中を締め付けて圧迫し、息苦しさを感じる程に無遠慮な抱擁だ。外の匂いと、仕事を終えたばかりの特有の血の匂い、それから彼の香りとわずかに残る煙草の匂い。それらを強く感じ得る。
鼻腔に満ちていく匂いと力強さに腕が痺れる感覚を覚えながら、アルカディアは恐る恐ると腕を擡げてクラウディオの背中に手を回す。そうすれば抱擁する両腕がぐ…っと力を増し、クラウディオの唇からか細い息が零れた。

「……アルカディア…」

「……クラウ、ディオ……」

首元に顔が埋まり、押し付けられた額が左右に揺れて、ローズグレイの髪が擽るように肌へと触れる。
甘えを隠さず擦り寄られる感覚に、胸と腹の奥が甘い疼きを得て、どうしようもないほど愛くるしいと思うままに呼び慣れた名を呼んだ。

大きな両手が、まるで存在を確かめるようにアルカディアの背中を包み撫で。首元に埋まったままの鼻先が擦り寄るままに深い息を繰り返し。抱擁する両腕が微々とも力を緩めぬまま、どれほどの時間が経ったのか…愛おしさで頭を埋め尽くすアルカディアには定かでなかった。
それだから、クラウディオがアルカディアを抱えたまま体を傾けたときも、その両腕が自分をベッドへ横たわらせたときも、そうして押し倒される体勢に至ったときでさえ、ただただ陶然と眼前にあるクラウディオを見つめる他、何もできやしなかったのだ。

「…っ、ぁ……くら、…ぅ…」

赤らんだアルカディアの頬にクラウディオの手が宛てがわれる。上気した頬にとっては仄かに冷たくすら感じる掌は大きく、心地よく、アルカディアはうっとりと目を細めた。
赤い瞳には愛しい男の眼差しが一心に注がれている。普段は明晰と、それに隠れた優しさが柔く滲む琥珀の瞳は、今は少しばかりぼんやりとしているように思える。宝石のようなその琥珀色は、今や陽光を注ぎ入れたかのように明るく…さも、熱情を孕んだかのような様相だ。
注がれ続けてしまえば心の表皮が焼けてしまいそうなその視線を受けて、アルカディアは恍惚と名前を紡いだ。頬にある手に力なく擦り寄り、その手に全てを委ねることを細やかながら体現する。
意図が伝わったのか…それとも眼差しに込められた熱情のまま行動しているのか、クラウディオは顔を下ろし、アルカディアの唇をそっと塞いだ。

「ん…ん、ん…ぁっ、んぅ…♡」

合わさった時とは裏腹に、差し入れられた舌は随分と欲しがりだ。早々にアルカディアの舌背をなぞるとそのまま絡みつき、じゅぅ…っ♡と吸い付いて絡み合おうと誘う。たったそれだけの触れ合いにぴくっ♡ぴく♡と震えながらも、アルカディアが誘われるままにそろりと舌を伸ばせば、クラウディオは口づける角度を変えて食らうように唇を合わせた。
より深くなった口付けにより舌同士の絡み合いもいっそう深くなる。絡みつくクラウディオの舌に何度も撫でられ、逃がさないと言わんばかりに絡み、それに応えれば唾液を注がれる。与えられるそれをひたすら受け入れ、溢れかける体液を喉に通す。
呼吸器官の一部を強制的に塞がれる息苦しさ、口で行う性行であるかのような激しさに、アルカディアは酩酊をいっそう深めていく。

「ん゛…♡♡ん、ン♡ぅ…♡っ♡…♡んぅ…♡♡」

絡みつく舌の熱さに感じ入る最中、己の体に熱い手が這っていく様を表皮での体感で感じ取る。凶器に触れ慣れた故に熱く硬い皮膚が、大きな掌が、脇腹を覆い包むように触れる。そのまま腹へ、腰へ、下腹部へ、太腿へと撫で下がっていく手つきには明確な淫蕩たる意図を感じられる。
下腹部を熱く疼かせる最中も口付けは止まず、アルカディアは堪らずクラウディオの首の後ろに手を回し、縋るように抱き着いた。
何処にも逃せない快楽を如何にかしようとした果ての行動であったが、高揚のまま口づけを深めることになったため逆効果に違いなかった。

「ふ、ぁ…♡ぁ……♡ん、……♡っ…ぁ!♡♡」

ややあって、唇がようやく離れる。けれども息つく間もなくアルカディアは項を逸らして喉を晒した。
節くれのある指先のひとつが、ちゅぷ…♡と音を立てて蜜壺に入ってきたのだ。ごつごつとした硬い指先を、濡れそぼる後孔はきゅん♡きゅうぅ…♡と締め付ける。
体中の温度が上がり、歓喜する様を如実と感じ取れる。堪らなそうにうねっては締め付ける淫肉を、指先は何よりも感じ取っているに違いない。ずぬ…♡くちゅ…♡とわざとらしく音を立てて入り込んでいく様には明らかな意志が感じられた。

「どろどろだな…」

「…〜っ♡♡…ぁ♡♡ひ…ん…♡ぁ…っ♡♡」

「待ちきれなかったのか?」

「ぁ、ぅぁ…♡〜〜…♡♡う、ん…♡」

ずぷ…♡と続けて入り込んだ二本目の指を、ぬかるんだナカは甘く熱い抱擁でもって歓迎する。泣き所に触れているわけでもない、ただただ中を割開いた指にすら快楽を得るそれはもはや雄膣と称して相応しい程だ。きゅぅ…♡と絡みつく様はクラウディオの指が怒張だと言わんばかりの様であったし。かえって言えば、剛直を強請っているような様相でもあった。

「ぁ…っ!♡ぁ、ぁ♡あ♡…ひ♡〜っ♡♡ぁ♡」

クラウディオはその唇をアルカディアの顔中に落としていく。頬へ、額へ、鼻先へ、下瞼へ、唇へと、好き勝手に口づけを施しながら、唇には愛し気な笑みが浮かんでいるのだ。
その唇は、後頭部を堪らなそうに枕に擦り付け、そうして晒されたアルカディアの喉にまで辿り着く。太陽に嫌われた白い肌へ幾らか触れると、舌で舐り、時に唇だけで柔く食んで血を啜るような真似をした。
戯れるような愛撫すら、今のアルカディアには甘美な快感となる。腰を揺らし、ナカを締め付け、指を更に奥へと誘い込もうとする。はしたない程の誘惑にもクラウディオは愛おしげに微笑んだまま、首筋を愛でながら甘やかな声を紡いだ。
アルカディアは待ち望んだ刺激に子猫が鳴くような媚声を紡いでいた。
しかし、首筋に走った熱によって、その声はいっそう上擦ることとなる。

「あ゛、…っ!?♡♡ッぃ゛♡〜〜…ッ♡」

蕩けるばかりであった赤い瞳が見開かれ、長い睫毛が揺れる。喉が引きつり、びくんっ♡と体が跳ねて、口からは掠れた声が零れた。
咄嗟に口から出た声の通り、首元に走ったのは痛覚である。表皮に硬いものが押し当てられ、貫こうとするかのように沈んでいく感覚。
慌てて視線をやった目下にはローズグレイの髪が見えて、それにより、首元に埋まるのはクラウディオであること…喉を愛でていた彼の唇が、歯を立てて皮膚に噛みついたのだろうことが解った。

「ひ、…♡ぁ、ぁ…♡あ……っ゛♡」

ぐっ…♡ぐ…♡と、突き立てられた歯は己が触れた皮膚を幾度か強く噛む。皮膚に追い縋る歯は食い破るというよりも、甘えや戯れが過度になったような具合を見せていた。
それでも痛いものは痛いはずなのだ。アルカディアの体中が快楽に満ち、クラウディオを求めていなければ…痛覚を快感だと認識するほどに彼を好いていなければ、もしかすれば泣いていたかもしれなかった。

「ぁ…、ぁ……♡ぁ…♡♡」

首元の熱さが遠のき、アルカディアの顔に影が掛かる。口を離しアルカディアを見下ろすクラウディオの眼差しは、先程よりも煌々と輝いていた。高揚を一目で現すその様に、アルカディアは体を熱くさせる。
歓喜と期待に満ちる愛しい人の赤い瞳を見たのだろう。クラウディオの薄く開いた唇からは歯が覗き、眼差しは捕食者のそれである。
崩れた前髪を額に垂らしながら、再び首元へと口元が下がっていった。皮膚を舐められる感覚がして、アルカディアは身を跳ねさせる。先程与えられた、捕食じみた痛みの快楽を思い出しては息を詰め、震える声音を紡ぐ。

「く、ぁう…♡あ、と…つい…、っ♡ぁ、ぁ!♡」

容赦なく皮膚に再び突き立てられた口元は、制止の色を仄かに帯びた訴えをかなぐり捨てる様であった。ぐぅ…っ♡と、白い肌に痛覚という熱が生じていく。先程と同様、それは紛れもなく己の所有印をつけるためのもので…その事実に、アルカディアは思考が溶かされたと思う程に高揚した。
情交の際、クラウディオは決まって跡を付けなかった。
口付けをこれでもかと施し、これでもかと優しく解したナカを、これまた優しく食べられていく彼との一夜は酷く甘美なものだ。
それ程に、クラウディオは手厚く、そして優しくアルカディアを抱く。そこに不満などあるはずもなく、ただただ幸せに浸るのみなのだが、唯一寂しさを感じる点があった。
それが、跡を付けないことであった。
その意図は解らない。そもそもアルカディアが明確な恋心を持っているだけで、ふたりは恋人関係などといった甘い間柄ではないのだ。そう思うアルカディアには、理由を聞けるだけの勇気は持ち合わせていなかった。
故に、朝毎に、綺麗なままで存在する自分の肌を見て、言いようも無い寂しさを募らせていたのである。

「ゃ、ぅ♡っ♡ぁ、ぁ…♡〜…ッ♡♡」

それが今はどうだ。あれ程優しく白肌に触れた指は、唇は、今や獰猛たる獣の如き激しさでアルカディアの体を貪っている。顕となった歯は次々と白肌に跡を付け、その度に沸き立つような歓喜がアルカディアの体に走っていく。
きゅん…っ♡と疼く雄膣にて抜き差ししていた指は、アルカディアが制止を訴える度に泣きどころに触れるようになり、今や快感で黙らせるという意図を隠しもしない様だ。

「ぁ、♡あ♡♡あ、ひ…っ♡ぅ…う…♡…〜っ♡ぁ、ぁ……ッ♡♡」

ぐちぐちぐち…っ♡とふたつの指の腹が掻く様にして泣き所に触れる。今までの割り開くような手つきではない。雄の意思を持った指は苛烈な愛撫を成していく。
立て続けに襲い来る快楽に、アルカディアの腰はびくっ♡びくびくっ♡と跳ね、唇からは堪らず舌が出た。過ぎたる快楽により赤い瞳から涙が零れ出しても、指は止まず、口も止まらない。歯型をつけ、雌のしこりをこれでもかと愛でて、その身は己の獲物なのだと教え込んでいく。

「ぁあ、ぁ♡ひ、ン…っ♡く、ぁぅ…っ♡く、ぁ♡♡あ♡ぃお♡ぁぅ…っ♡」

襲い来る快楽に気をやってしまえば、アルカディアはこうも身悶えなかったろう。けれど淫蕩を望む体は意識を保ち続けたまま、ナカにはいる指の感覚も、皮膚を食い破ろうとする歯からの痛覚も如実と拾い上げていく。
例えば、真白い皮膚は幾度も突き立てられる歯の硬さをすっかりと快楽であると認識し、二度噛まれた箇所が訴える余計な痛みと熱でさえ褒美のような甘美だと神経に覚え込ませる。
例えば、もはや達し続けている雄膣はぎゅうっ♡ぎゅぅぅ…♡♡と指に甘く縋りつきながらも、そんな己を強引に押し開く指先の強引な様も、節くれの目立つ関節がぐちゅぅ…♡と肉筒を擦り上げる様も、そうして雌しこりを掻く爪先が普段より少し伸びていることすら感じ取って、更なる法悦を抱擁する。
雌の快楽に歓喜した腹の奥から腸液が溢れ、火照り切った肉筒に垂れ続けていく。それは節くれのある指でかき混ぜられて、ぐちゅ♡ぬぢゅ♡ぬぽ♡ぐちゃぁ♡と淫猥たる音を立て、アルカディアの鼓膜までをも犯すようであった。
そうして、もはや体中が性感帯にでもなってしまったのか、あの皮膚の硬い手で腰を撫でられるだけで痺れるような悦が身に響いた。

「ぁ〜〜っ♡♡♡あ、〜っ♡♡ぁ、あ♡ぁ♡…っ゛♡ひゅ、あ♡♡あ♡うぁ♡♡」

アルカディアは舌を仕舞うことすら忘れ、泣きじゃくるような喘ぎ声を溢れさせる。けれども体は欲望に忠実だ。過ぎたる快楽をひとつも零したがらず、両脚を開いて股座を晒し続けている。

「あ…っ♡♡ぅ……っ♡…♡っ……♡ぁ、ぁ…♡」

そうして、捕食の口が下腹部にまで至ったとき。クラウディオは中を愛で尽くしていた指をずるぅ…♡と音を立てて抜いた。彼はナカの火照りでふやけた指先をおのれの口元へやると、そのまま躊躇いもなく舌を這わせ、纏わり付いた愛液を舐めとっていく。
いっそ下品にすら感じ取れるその光景を、アルカディアは食い入るように見惚れていた。赤い舌が情欲の証を掬い取り、そうする最中にも琥珀の眼が自身を見つめ続ける姿。それが、己の欠片ですら漏らさず食い尽くそうとする獣の姿だと理解していた。

「甘いな…」

爛々とした光を宿し続ける琥珀の眼が僅かと細められ、指先を舐め終えた唇がただ一言感慨を紡ぐ。零れた声音のひと欠けにも怪訝や嫌悪は含まれておらず、その端々にまで愛欲が滲みきっていた。

「ぁ、ぁ……♡♡…っ♡♡ぁ、…♡」

あまりに蠱惑的な姿を前に、アルカディアは腹の奥を疼かせる。もう何もないはずの雄膣がきゅん…♡きゅん♡とひとりでに収縮し、濡れそぼる後孔が熱を欲しがってひくついた。
クラウディオは目線を目下へやると、脇腹に刻まれた己の噛み跡へと舌を這わせる。まだ真新しいそこを慰めるように…否、更に愛でるように口付けると、そのまま下腹部へも舌先を伸ばす。
なぞるように舐られれば、それだけで真下にある腹の奥が愛されたがって酷く疼いた。
あまりの快楽、あまりの渇望に、アルカディアは口を閉じることも忘れ、舌先を出したまま荒い息と微かな喘ぎを零して、その光景に見入ってしまう。

「〜〜…っ♡♡…っ♡ぁ、ぁ…♡くら、ぁ…でぃお…♡♡」

脱力し、ぴくっ♡ぴくっ♡と跳ねることしかできないアルカディアの片脚を軽々とひとつの手で擡げると、クラウディオは見せつけるように噛みついた。
そうして刻んだ仄赤い噛み跡にすら舌を這わせた雄を前に、アルカディアは唇から媚声を溢れさせる。

「くら…でぃお…♡…っ♡…ぁ♡……♡♡く、ぁ…ぅ……っ♡♡」

心臓の音が耳の裏側でどくどくと音を立てている。体中の皮膚という皮膚が熱く茹だっており、その下に通る血流と共に快楽がめぐっているように、どこもかしこも気持ちがいい。
快楽に溺れた体感は、けれどもアルカディアの意識に漂うことしかできなかった。彼の思考を埋め尽くすのは、ただただ目の前にあるクラウディオだけだ。愛しいと思う。好きだと感じる。あまりに、あまりに愛おしくて、如何にかなってしまう。大好きで堪らない。もっと、そう、もっと愛して欲しい。そんな想いばかりが溢れ返って、それは数多の言葉だろうのに、口に出るのは教えられた彼の本当の名前のひとつばかりだ。
呂律も回らない舌ではそれすら満足に紡ぐことが出来ず、たどたどしさを悔いる余暇すら有りはしない。ただ、ただ愛しい。口から出るのはそんな呼び声ばかりだ。

「く…ぁ…♡ぁ…♡くら…、ん…♡ん♡んぅ…♡」

呼び声ばかりを紡いでいたアルカディアの唇は、クラウディオの唇によって塞がれる。片手で擡げていた脚を腰ごとそのまま抱え込んで前屈みとなったため、アルカディアの腰から背中はベッドから少し浮くこととなった。
そうして重なり合った唇は先程よりも幾分か優しいが、それでも深い口付けには変わらない。分厚い舌が我が物顔で咥内に入り込み、アルカディアが力の入らない舌先でそれを歓迎する。健気な迎えを褒めてやるように…何より愛で尽くすように深く絡みつけば、じゅるるる…っ♡と甘く、ほんの少し強く唾液を啜られた。ちゅっ♡ちゅうぅ…♡とアルカディアが懸命に返そうとすれば、その舌を甘く噛まれながら舐られ愛でられる。
熱く茹だるような口づけに、アルカディアは涙に濡れた目を堪らなそうに細めた。それが悲しみの水気でないことは、恍惚とした赤い瞳を見れば誰もが理解できることであった。

「…♡ぅ、ぁ…♡ぁ……♡ン…♡♡あ…♡は、ぁ…♡…ァ゛…っ!♡♡」

息苦しくなる程のキスを与えられ、唇がほんの少し…唇の先を触れ合わせたまま舌だけを抜きとった後。喘ぎ交じりの熱い息を繰り返していたアルカディアは、びくっ♡とその身を震わせることとなる。
下腹部から渡ったあまりの痺れが快楽であることは、認識するよりも前に体感が理解していた。見開かれた眼が遅れてそちらに視線をやれば、その様を視覚でも認識して、感覚はますます助長されることとなる。

「ぁ…ッ♡♡…っ!♡♡ぁっ♡♡う…ぁ……♡♡ぁ…っ♡♡」

ずり…♡ずりゅぅ…♡と、猛々しい怒張が後孔に擦り付けられていたのだ。最適な角度を模索するようなものでも、愛らしい悪戯じみた愛撫でもない。ただただ己の存在を知らしめるようにして擦り上げている。
求めていた雄そのものを宛がわれ、期待にひくついた後孔の具合はひどいものだ。ナカはきゅん…♡きゅん…♡と甘くうねっては収縮して甘イキを繰り返す。入口である後孔はちゅ…♡ちゅうぅ…♡♡と己に触れる剛直になんとか縋ろうとしてひくついた。腹の奥はあまりの飢餓感に傾倒して、愛液を雄膣へ、その入口へだらだらと垂らし続ける。
アルカディアはただ眼を見開いて、その光景に釘づけられる。熱く反り立った剛直が、赤黒い欲望が、己の雌孔をずりゅ…♡ずりゅ…♡と撫で擦る様を。あの大きな手が逃がさないとばかりに腰を掴んでいる様を。そうした、まるで挿入を思わせるような光景を。瞳に焼き付けていく。

「あ、ぁ゛ぁ……ッ♡♡ぁ♡あ♡ッ♡〜…っ!♡♡や、ぁ♡やら…っ…♡くぁ、でぃお…っ!♡♡こえ、やだぁ♡や…ッん♡んぅ♡ん、ん♡♡」

高揚と切なさが入り混じり、瞳から涙を溢れさせていた最中。その顎を指で掬われ、泣き声のような喘ぎを零していたアルカディアの唇が今一度口付けで塞がれる。喉から溢れ出る媚声は唇の端や息継ぎの間に零れ、後は唾液と共にクラウディオの舌でもって舐め取られていった。
優しく深いキスとは裏腹に、股座に注がれる愛撫は実に悪戯が過ぎるものだ。鈴口から零れる先走りを塗りつけ、愛液と混ぜ合わせながら、けれども亀頭はそのままナカに入ることをしない。悪戯にずりゅぅ…♡と通り過ぎると、雁首の段差で後孔を引っ搔き、それもずりゅ…♡と音を立てて通り過ぎていく。
血管の浮いた竿を何度も擦り付けてはまた雁首に戻り…逞しい雄が繰り返すあまりの焦れったい愛撫をひたすらに感じ取ることしかできない。
ひどい、ひどい、と何度も思うというのに、口付けは相も変わらず甘ったるく、絡みつくクラウディオの舌を噛むことすら叶わなかった。

「…っぁ♡は、へ…ぅ♡♡ぁ、♡ゃあ♡ぁ…♡♡」

「可愛い…かわいいな、アルカディア」

縋りつくアルカディアの舌を宥めるように舐めて啜りながら、クラウディオの唇が僅かと離れていく。そのまま頬へ瞼へと口づけられる感覚を甘く受け取りながら、アルカディアは子猫のような鳴き声を零した。陶然とした眼差しは下がった眉尻を伴って、眼前の男に渇望を訴えている。
対して、赤い瞳に映るクラウディオは心底愛おし気に微笑むまま鼻先にキスを落とした。

「何故嫌なんだ?ちゃんと言ってみろ」

「ぁ…っ♡♡ッぁ♡あ♡あ♡ひ、♡んぁ…♡♡」

赤い眼が泣きたそうにしようと、クラウディオの意思は変わらない。それは揺れる腰を鷲掴んだ手からも明らかだ。視線は反らされないまま、手の力も緩められないまま、剛直は後孔に擦り付けられ続けている。
どころか、雌孔にちゅっ♡ぢゅ…っ♡とキスをするように亀頭を押し付ける始末である。ほんの少し腰を揺らせば容易くナカに入り込むだろうそれは、けれどもその直前で身を引き、その身を擦り付ける行為に没頭し始める。
素股にすらならないその行為は張り詰めた欲望とて辛いだろうのに、クラウディオは止めようとしない。どうしても、アルカディアの口に強請らせたいようだ。
アルカディアは涙をぼたぼたと零しながら、眼前の琥珀色を縋るようにして見つめ続ける。普段のクラウディオであれば、涙のひと粒でも零そうものなら直ぐに手を止め、優しく撫でてくれるだろうのに、今はその欠片もありはしない。
それでも、注がれる眼差しは普段通りの優しさと熱さを孕んでいて、クラウディオそのものなのだと理解できてしまう。それがどうしようもなく愛おしい。

「ぁ゛♡♡ぁ…♡く、ぁぅぅ…♡♡おねが…っ♡♡なか、ぁ♡んぅ♡ぁ゛♡♡ぁ♡♡やぁっ♡もお…やだぁぁ♡♡お、く…ぅ…っ♡おく…まで、いれ、て…っ!♡ひ、ぁ♡ぁ♡ぜん、ぶ♡ぜんぶ…♡ほし…っ♡あ♡ぁ♡あ♡」

身も蓋もない渇望を口にするのに、もはや羞恥を纏う余暇などありはしなかった。ただただ、この愛しい男の欲望が欲しくて堪らない。これでもかと示された熱の存在を…己を雌に墜とす雄の存在を、もはや膣と化したナカはこれまでの情交でよくよくと解らせられているのだ。メスイキを覚え込まされたナカは擦り付けられるだけだというのに…否、噛まれているときから、指で愛でられていたときから甘く達し続けている。もはや我慢など出来るはずもなかった。
思考に浮かんでは脳を茹だらせていく熱望を口にしながら、アルカディアはクラウディオの首の後ろに手を回していた。幾度も達した後の脱力した腕では抱き寄せることもできやしないが、縋ることは辛うじて出来る。そうして喘ぎ交じりの呼吸をしながら、甘ったるく上擦った声音で懸命におねだりを紡ぐ。

「おねが、ぃ…♡くぁう…♡くあでぃお…♡♡」

快楽に塗れたはしたない面持ちを愛しい人に晒す羞恥さえ抱けない。そんなアルカディアを見つめながら、クラウディオはやはり、心底愛おしそうに微笑み続けた。
クラウディオは薄く笑んだままの口元で零れ続ける涙を掬い取り、舐め取り、そうして顔中にキスを落としていく。
優しい愛撫にくぅ…♡と甘く喉を鳴らしながら、けれどもアルカディアは舌ったらずに強請り続ける。もはや口付けだけで誤魔化される渇望ではなかった。

「アルカディア…いい子だな、本当に…」

「ぁ…ぁ…♡♡…っ、あ♡ぅ、ぁ♡ぁ、ぁ、ぁ……♡♡」

囁かれる睦言を甘受していた最中。ずぬ…♡と、股座に熱を感じ、アルカディアは息を飲む。すっかりと熱く濡れ切った後孔に、熱い熱が押し当てられている。先程のように悪戯と口づけるのではない。ずぬ…♡ず…♡くちゅ…♡と、己の矛先を定めようとする動きだ。後孔はぐぷ…♡と音を立てて亀頭のつるりとした表面を咥え込もうとひくつき、先走りと腸液が厭らしく混ぜ合わさった。それをすげなく振り切るのではなく、むしろちゅっ…♡ちゅぅ…♡と犯すことを宣言するように怒張は隙間なく触れ続ける。
雄膣が、腹の奥が、酷く歓喜し打ち震える。目が見開かれ、浮かぶ赤い瞳がクラウディオを映し込む。
愛欲を注ぐ琥珀の眼は、今や眼光というに相応しい輝きを湛えており、本能を丸出しにした獣そのものであった。

「あ…っ♡♡ぁ…♡♡…っ♡くら、でぃ…お…っ♡♡」

「アルカディア、顔…見せろ。そう、そうだ…あァ…いい子だな…」

「…っ♡♡…〜♡♡っ、ぁ♡ぁ…♡♡…っぁ…♡♡」

酷く甘い囁きと共に啄むような口づけが何度も落とされ、そうしてあやすようにしながら、クラウディオの片手が枕を取った。もう片方の手で細腰を掴み浮かせると、その下に枕を差し込んで、腰をその上に乗せてやる。
狙いが定めやすくなったのだろう。少し離れただけで寂しがる後孔に、むちゅ…♡ぬちゅ…♡と愛液を塗りつけるように亀頭で口づける。白いクッションの上でぴくっ♡ぴくっ♡と揺れる細腰をクラウディオの両手が掴み直し、逃がさないようにする。傍で深く息を吐いた呼吸音がして、アルカディアはか細い喘ぎをしとどに零した。

「あ、ぅ…♡…っ♡あ、ひ…ぅ…♡♡ぁ、ぁ、ぁ……♡♡」

期待に濡れ切った眼差しが命じられた通りに己の雄を映し続ける。赤い瞳でさえ体現する健気な様に、クラウディオは微笑みを深くして見つめ返した。
そうして、優しい眼差しとは裏腹な音が落とされた。

「あ゛…ッ!♡♡あ、あ♡あ…♡あ゛、あ……!♡♡あ!♡あ゛♡♡あ゛…ッ♡♡〜〜…ッ゛!!♡♡う、あ…♡♡♡」

ぐ、ちゅぅ…♡♡ずちゅ♡ぬち♡ぬぢぢ…♡♡と、淫猥たる水音を多大に零れ出しながら、怒張が後孔へと入り込んでいく。押し当てられた亀頭を易々と迎え入れ、エラの張った雁首をぬぼ…っ♡と音を立てて歓迎し、硬く張り詰めた竿を次々に呑み込んでいく。
きゅう…♡ぎゅぅぅ♡きゅん…♡♡と、火照りきった雄膣は腸液を纏いながら待ち望んだ雄を抱きしめ、縋りつき、剛直はそんな雌肉をずりゅ♡ずりゅりゅ…♡と容赦なく擦り撫でる。
逞しい怒張がただただ雌肉を撫でるだけでも酷いほどの快感で、亀頭が雌しこりに触れたときなど殊更酷いものであった。ごりゅ♡ずり…っ♡と容赦なく擦り通る亀頭や雁首により、深い甘イキを幾度も味わっていた雄膣は更に深い絶頂を刻み付けられる。
びくっ♡びくんっ♡と跳ねる体や腰はあまりに甚大な快楽を逃したがっているようにも見えたが、けれども腰をしっかりと鷲掴んだ両手はその力を緩めることなく、手心など露程もかけないまま己の欲望を埋めていく。
とぷ…♡♡こぷ…♡とアルカディアの陰茎からは勢いもないまま白濁が垂れ出し、自身の腹を汚す。実に情けない射精だが、気に掛けることなど出来るはずもない。アルカディアは己の瞳が涙を零していると認識すらできないまま達し続ける。

「あ゛―――ッ♡♡♡あ――――…ッ♡♡♡あ♡♡あ♡♡ぁ゛♡♡は…ぁ゛♡♡――――っッ♡♡〜〜〜〜…っ♡♡♡ひゅ、ぐ…♡♡ぁ゛…♡♡♡う…ぁ、ぁ〜〜〜…ッ♡♡♡」

ずりゅ♡ぐちゅ♡ぐ、ちゅ♡♡と、跳ねる体を押さえつけて欲望は奥まで入り込んでいく。そう性急な訳でも、酷く緩慢な訳でもない。ただ、怒張は達し続けるナカに気遣うこともなく、一寸も止まることなく、行き止まりまで辿り着いた。

「〜〜〜…♡♡ぁ♡♡あ…♡あ…♡♡♡は、ぅ…♡♡〜〜っ♡♡ん、ぅ…♡♡あ、ふ…♡♡ぁ…♡ぁ…♡ぁ、う♡ぁ…♡〜〜♡♡♡」

どくん…♡どくん…♡と、ナカに埋まった剛直が息づいている。脈動している。アルカディアは甘くうねっては抱擁する雄膣によって、それをよくよくと感じ取ることができた。淫肉はきゅん…♡きゅぅ…♡♡と隙間なく絡みつき、竿にびきびきと浮いた細かな血管すらも感じ取れるようだ。
自分の中にクラウディオの欲望がある。あれほどまでに望んだ欲望を与えられている。その事実を知らしめられ、アルカディアはきゅうぅ…♡と甘ったるくナカを締め付けた。

「ぁ…ぁ…♡ひゅき…♡く、ぁぅ…♡すき…♡だいすき…♡♡ぁ…♡♡ぁ…♡ん…っ♡んぅ…っ♡」

歓喜に満ちるまま、思いのままに好意を紡ぐ唇に口づけが注がれる。舌を絡め、唾液を与え、はたまた啜られる口付けはあまりに心地良く、アルカディアはきゅん…♡とナカを甘くうねらせた。
キスのために前屈みとなり、そのためより深く埋まろうとした怒張の先端がぐ、ぐ…♡と行き止まりを強く舐める。或いは先走りを擦り付けるようなその動きに、精子を待ち望む腹の奥は甘く熱く疼いた。

「ん、ん…っ♡…♡ぁ、ン♡ん゛ぅ…〜〜♡♡」

けれども怒張がずるぅ…♡と後退し始めたことにより、奥の窄まりと鈴口は引き離されることとなる。
折角与えられた怒張が抜け出ていく感覚に、アルカディアは耐えられなかった。自ら舌を絡めて口づけを深くしながら、じゅぅ…♡と舌に吸い付いて離れ難いと強請る。雄膣はきゅうぅ…♡と収縮して剛直を引き留めようとした。
しかし怒張はそれに構うことなく、ずりゅ♡ずるる…♡と引き下がっていく。寂しがる淫肉を雁首の段差で掻き、言い聞かせるようにしながら入り口へと抜けていく。

「ん、ぁ…♡ゃ、ぁ♡や…♡♡ぁ♡あ♡ひ…ッ♡♡ぁ゛…っ!♡♡うあ…!♡♡♡」

唇をも離れていき、あまりの寂しさに涙を浮かべながら懇願を紡ぐアルカディアは、けれどもすぐにその喉を快楽に晒すこととなった。
ごちゅ…ッ♡と音を立てて、怒張が再びナカへと突き入れられたためだ。入り口まで抜け出ていた亀頭が切なく収縮していた雄膣を掻き舐め、勢いよく奥まで埋まっていく。あまりの快感は衝撃じみたもので、アルカディアはあられもなく喘いだ。

「ぁ、ぁ…♡あ…っ♡♡あ、あ♡う…♡ぐ、っ♡まっ…ぁ♡〜〜〜〜…っ゛!♡♡あぁああ…!!♡♡♡」

しかし、眼前が真白に染め上げられる法悦に浸る間もなく、怒張はもう一度ずりゅりゅ♡と抜け出ていく。今度はもう、抜け出ていくなどとは考えられない。これは矛先が埋まる前兆なのだと理解した体は期待に跳ね、許容範囲をとうに超えた快楽に唇は待ったを掛けようとしたが、怒張はそれを聞く間も無くどっちゅ♡と再び己を叩きつけた。
そもそも挿入られただけで屈服し切った雌孔は、力強い突き込みに幾度も法悦を抱き、そうしてキツく抱き締めるナカを雄は容赦なく掻き分けて強く愛で擦る。それはまさしく犯すというに相応しい有様であった。

「あ、ぁ、ぁ〜〜…っ!♡♡♡ぁ゛〜〜〜っ♡♡ら、ぇ…!♡こぇ…♡あ、あ…ッ♡ひ…ぅ♡いく♡♡い…ぐ…♡♡らめ…っ♡や、ぇ♡♡」

「…もう何度も達してるだろう。何だ、もっと欲しいのか」

「あ♡あ♡♡あ♡ち、が…ぁ…っ♡あぁあッ!♡♡〜〜っ♡♡」

脳が焼き切れるような快楽に身を震わせながら、必死に制止を求めたアルカディアをクラウディオは見つめ続けているはずだ。しかし零れ落ちる涙を前にすれどもその微笑みは崩れず、むしろ愛しげに深まり、更に重く腰を打ち付け続ける。
雄としての己を刻み込むようなその動きは、普段のクラウディオからは考えられない情交だ。あれ程優しく、割れ物を包むように大切に一夜を終える男が、こうも荒々しい欲を露わにしている。疲弊続きの日々が堰を切ったのか、はたまた夢だとでも勘違いしているのか。定かではない。

「ひ、ぁ♡♡あ゛♡あ♡あ♡ぁ…っ♡♡ひゅ、…ぅ♡♡…っぁ♡あ、ぁ♡♡」

けれどもアルカディアは、決して嫌ではなかった。堪らない心地であった。どれ程強く欲を叩きつけられようとも、彼ならば構わないのだ。
というのに、打ち付けられる欲はこの身を道具のように扱うそれではない。むしろこの身に自身の雄を刻み込むような動きなのだ。まるで自分のものだと知らしめるような重さである。
それは注がれる眼差しからも明らかであった。目の前にあり続ける琥珀の眼は、終始愛おしいものを前にした瞳で…いつもと同じ眼差しで、己を映し続けている。それだから、首の後ろに回した手を離すことができなかった。

「ここ…奥に、出してやろう…。たくさん…」

「ひ、ぃ゛…っ♡♡ぁ♡あ♡♡〜〜…っ♡♡あ、ぁ♡あ♡♡ふ、…ぁ…っ♡♡」

脇に抱えていた脚がぐ…っと胸部に押し開けられ、更に深く怒張が沈み込む。ぐりゅぅ…♡ぐり♡と、亀頭が窄まりへと押し付けられる。とちゅ♡とちゅ♡と小刻みに叩き、これから種付けることを知らしめられて、アルカディアの唇からは歓喜にも恐れにも似た鳴き声が零れ出た。
告げられた宣言とそれが嘘ではないと指し示す怒張に、ナカはきゅん…っ♡と甘く深く果てて雄を抱きしめる。腹の奥は今か今かと待ち望み、痺れるほどに疼いて、愛液をしとどに溢れさせて怒張を濡らした。

恐れにも似た期待が脳に浮かび、アルカディアの身がふるりと震わせる。ただの回顧は夢想を作り出し、それは予感と伴って脳に法悦を与えた。
そうして、危惧するために浮かんだのだろう思考は快楽へと移り変わる。

「は、ぅ…♡だ、して…♡♡ほし…っ♡いっぱ、ぃ…♡♡っぁ♡♡ぁ、ぁ゛…♡おにゃか、ぁ…♡♡ぅ…♡♡♡〜〜っっ…♡♡」

クラウディオの首の後ろに回した手になけなしの力を込めて抱き寄せる。殆ど真上から落される腰に脚を回し、必死に縋りつこうとする。アルカディアの腹と未だスーツを纏ったクラウディオの腹部が触れ合い、裸体と布地に挟まれたアルカディアの陰茎は情けなく潮を吹いた。スーツをはしたなく汚してしまうことに構いもできず、アルカディアは強請る。後孔はぐっぽり♡と怒張を咥え込み決して離そうとしたがらなかった。快楽に塗れながらも自身を見つめ続ける赤い眼差しを、琥珀色は確かに見て取っていた。

「いい子だ」

「ぁ…〜〜ッ!♡♡あ♡あ♡あ゛ッ♡ひ、ぐぅ…♡♡ぁ♡ぁ、ぁっ♡♡あ…〜〜〜っ♡♡♡」

どっちゅ♡ごちゅ♡ずちゅ♡と剛直は雌孔に突き込んでいく。達し続ける雌肉でもって自らを扱き下ろし、性感を高めていく。殆ど真上から腰を下ろし、行き止まりまで欲望を叩きつけては、ここに種付けてやるのだと教え込んでいく。
猛々しい雄の猛攻に対し、アルカディアは逐一官能を受け取っていた。立て続けに襲い来る甚だしい快楽に、普通の人間であれば危機感を抱いたやもしれない。けれど常人より頑丈な体はその全てを歓喜し迎え入れており、アルカディアはそれが何よりも嬉しかった。クラウディオの全てを受け入れているような感覚がして、酷く嬉しかったのだ。

「アルカディア、アルカディア。可愛い、アルカディア」

幾度も幾度も愛しそうに名前を紡がれ、時折皮膚に歯を立てられ、アルカディアは赤い眼から涙を零す。その全てに呼び返したかったが、あいにく開いた口から出るのは喘ぎ声だけだ。
その代わりに首の後ろに回した手は決して離さなかったし、眼差しをそらさずクラウディオを見つめ続けた。それを受け取るように琥珀の眼が細まり微笑むものだから、堪らなかった。

「あ♡♡あ…っ♡♡ん…♡♡ん♡んぅ…っ♡♡」

「ん、ン……っ、ん」

眼差しが惹かれ合うようにして…それにしては随分と強引に唇が合わさっていく。喰らいつくように己の唇を塞いだクラウディオの口を、アルカディアは必死に舌を伸ばして歓迎した。実に健気な舌先をクラウディオは容赦なく絡めとり、吸い付き、愛で尽くしていく。
そうしながらも剛直は止まらないのだ。腹の奥から響く衝撃にも似た快楽と、息苦しいほどの口づけ。どちらも味わい、アルカディアはじわじわと頭を真白に染め上げていく。その最中にも自らの雄膣の中でぐ…ぐ…♡♡と膨らむ剛直の様を感じ得て、恍惚と目を細めていく。

「は……っ…出すぞ……ッ」

「ん、ぁ♡ぁ、ぇ♡♡…っ♡ぁ♡♡あ♡あ゛♡♡おにゃか、いっぱい…ほ、し…♡♡」

キスが終われども舌を仕舞い忘れたまま、アルカディアは舌ったらずに射精を強請る。どっちゅ♡ごちゅ…ッ♡♡と、怒張は行き止まりに辿り着く度にねっとりと先走りを塗り付け、また引き下がっては突き込み、大きさを増す自身を雌孔に奉仕させていく。

「あ♡♡あ♡あ…っ♡…っ、あ゛…!♡♡ひゅ…ぐ…♡♡〜〜…っ♡♡あ、ぁ♡♡あ♡♡〜〜〜…っ!!♡♡♡」

それが幾らか続き、亀頭が窄まりにぐぅ…♡♡と押し付けられたとき。クラウディオの口がアルカディアの首元へと噛みついた。ぐ…っ♡と歯が立てられ、痛みという快感が体中に駆け走る。
喰らい尽くされる。
そんな体感が身を襲って、アルカディアは歓喜のまま絶頂を迎えた。ぎゅうぅ♡とナカが収縮し、淫肉に包まれた剛直がどく…っ♡と脈打ち、一寸。
どく…っ♡♡と、欲望が溢れ出す。

「ひッ♡♡♡ぁ゛…♡♡あ♡♡あ♡♡あぁぁあっ゛!!♡♡♡ぁ〜〜〜〜♡♡♡」

びゅる…っ♡どく…♡どくどく…っ♡と、腹の奥に向けて白濁が打ち付けられる。勢いのあるそれは窄まりを犯し越えて奥へと流れ込み、疼き続けていた雌の部屋をしとどと濡らしていく。
甚だしい熱が己の核へと注ぎ込まれる感覚に、アルカディアは悲鳴じみた喘ぎ声を上げた。普段感じ得る体感とはまるで違う。力強い雄により丹念に雌へと堕とされた体には過ぎたる快楽だ。
あまりの快楽に思わず腰を引き逃げようとすれど、細腰はクラウディオの両手で捉えられたままびくとも動きやしない。むしろ逃げようとした様を感じ取ったのか、両手はぐ…っと力を込めていっそう強く己の元へと引き留めた。どうあっても逃げられはしないと解らせられて、アルカディアはそれにも感じ入った。

「あ、ぁ…っ♡♡ぁ♡♡あ♡♡〜〜〜〜…っ♡♡♡あ…ひゅっ♡♡♡あ゛♡♡あ゛♡ぅあ〜〜〜〜ッ!!♡♡♡」

注がれる精子は普段よりも量が多く、濃い。最愛の男の精子だ。それを一心に受けて、アルカディアはどうしようもなかった。
びくっ♡びくっ♡と身体が跳ねて、甘ったるい音ばかりが口から溢れ出る。赤い瞳は快楽に蕩けきり、愛欲ばかりを浮かべて法悦に浸った。
それが歓喜の様だとは誰が見てもわかったろうが、それを目に移すのはクラウディオの他に誰をもいなかった。

「ぁ、ぁ…♡♡あ゛…う…♡♡♡あ♡あ゛…っ♡ん、ぁ♡ん…♡♡ん♡」

「ん、く……、ん…ン…」

陶然と喘いでいたアルカディアの唇へ、柔い感覚が落ちる。ちゅ…♡くちゅ…♡と唇を食まれ、舌で咥内を舐め取られる。
先程よりも幾らか優しい口付けに、アルカディアは更に快楽を滲ませながらも自ら舌を出した。思考を飛ばし、もはや絡めることもできないそれを、クラウディオは自ら絡めとって甘く啜ってやる。
愛でると言うに相応しいその口づけに、アルカディアはきゅうぅ…♡と中を締め付けて甘イキを続ける。まるで搾り取るようなその締め付けに剛直は悦び、ぐりゅ…♡ずり…♡と残滓まで塗り付けると言わんばかりに奥側へ擦り寄った。
雄の本能を露にした細かな動きに、アルカディアは口づけるままびく…っ♡びく…♡♡と身を甘く跳ねさせ続ける。

「ぁ、…は…♡♡ぁ、…ぁ…♡♡ぁ、ぅ…♡♡ふぁ…♡ぁ…♡♡♡」

ちゅ…っ♡と音を立てながら唇が離れていく。すっかりと欲望を出し終えたのだろう。同じ頃合いに怒張もずるりと雄膣から抜けていき、アルカディアは切なさと余韻に小さく震えた。
クラウディオの首の後ろに回していた手も力を失い、熱い体と共にぐったりとベッドに横たえてやる。白いシーツの上で震える体はどこもかしこも仄赤く、所々が体液で濡れており、淫蕩に満ちていた。か細い声を零しながら、アルカディアはなんとか目線を眼前へと…己に覆い被さるクラウディオへと向ける。

「は……、は、ァ――……」

クラウディオは額をアルカディアの首元に擦りつけた後、ぐっと身を起した。真上から伸し掛かる脚や体躯がなくなり、アルカディアの脚がくったりと伸ばされる。それを脇に抱えて優しく撫でて…アルカディアはその手つきにさえ甘く震えた。
クラウディオは自らの服へと手を掛ける。
ジャケットとベストのボタンを片手で外していく指先は何処となく荒く、なんとも煩わし気な様子だ。そうして手早く全てを外し終えると、両手でバッと胸を開くようにそれらを脱ぎ去る。
とたん、むあ…っ♡と蒸れた汗と滲んだ香水の香りが広がり、アルカディアはきゅぅ…♡と後孔をひくつかせた。ネクタイを解き、白いシャツの首元のボタンへも手を掛けると、クラウディオはひとつ息をつく。暑かったのだろう。米神から首筋にかけて汗が一筋と伝っており、それはなんとも酷く煽情的であった。

「アルカディア」

「…っ♡♡ぁ…♡♡ぅ…♡♡…っ゛♡く、ぁ、でぃお…♡♡」

ジャケットをベッドの外へと放ったクラウディオは、再びアルカディアへと身を屈める。先程感じた匂いを更に近くに感じ、その心地よさにさえ甘い快楽を感じ得る。
顔を寄せ、頭を撫でながら額や鼻に口づけていくクラウディオに、アルカディアは甘ったるい声で名前を呼んだ。それがキスを強請る声音だと理解したのだろうか、それとも元より唇にもキスを落とすつもりだったのだろうか。クラウディオは今一度唇を優しく塞いでやった。

「ん…ふ…♡♡ん…♡♡ぁ…♡すき、すき…♡♡っ♡くぁぅ…ぃお♡♡すき…♡♡」

「…アルカディア、いい子だ…可愛いな…」

先程のように首の後ろへと回し、抱き縋りたいのだろう。白いシーツの上でぴくっ♡ぴくっ♡と跳ねるアルカディアの手を、クラウディオは自らの手で握ってやる。指股に指を差し入れて深く繋ぎ合わせ、指先で手の甲を撫でる。
甘く優しい愛撫に、アルカディアは湧き上がるままの好意を惜しげもなく口にし続けた。そんな唇を啄んでやりながら、クラウディオも同じように愛撫の言葉を紡ぎ続ける。
酷く優しい情事の終わりだ。まるで夢のようで、このまま覚めて欲しくない。そう思う意思とは裏腹に、アルカディアの瞼は次第に重みを帯びていく。口づけを受けてうっとりと続ける瞬きが間隔を長くし、声を紡ぐ舌が縺れ始める。そんなアルカディアを許してやるとでも言わんばかりに、クラウディオは顔中に柔いキスを落とす。
そうして、優しい愛を受けながらアルカディアは眠りに突こうとした。
しかし、ぐ、ちゅぅ…♡と。

「…っぁ!?♡あ♡あ゛♡♡あ♡♡〜〜〜…ッ゛!!♡♡♡」

ぬぢゅ…♡ずちゅぅ…♡♡と、股座から重苦しい水音が立つ。腹の奥から垂れ出した精子と愛液が零れていた後孔は、零したことを咎めるように再び剛直によって塞がれている。怒張は先程と同じく深く深く埋まっていき、絶頂の余韻に満ちていた雌孔は唐突な快楽に吃驚と打ち震えた。

「あ、あ゛ぁっ♡♡ぁ♡♡あ♡♡〜〜〜っ♡♡♡ひぁ゛…ぁっ…♡♡」

腹の奥への入り口は先程浴びた射精の快感を覚えていたようだ。精子を与えた亀頭がごちゅ…♡と音を立ててぶつかると、奥の窄まりはちゅうぅ…♡♡と堪らなそうに鈴口へと吸い付き、精子を強請ってはしたなく媚びた。
アルカディアは目を見開き、眼前に吃驚を訴える。何故。どうして。ああも出したというのに、どうしてこんなにも熱く、硬いのだ。

「ずっとだ…ずっと…」

アルカディアの脚を抱え直しながら、クラウディオは言葉を零す。幾らかの前髪がほつれて額た米神に垂れ落ち、その合間から隠しきれない眼差しが見える。丸まった赤い眼に映る琥珀色は爛々と輝き続けており、その熱情は先程よりも深く、確かと煌き続けている。

「お前が欲しかった。アルカディア。足りないんだ、まだ…もっと、お前が欲しい」

紡がれた言葉は確固としたものだ。呂律は正しく回り、語調も普段の通りで、粗暴なものはどこにも見当たらない。
しかしその声音は、酷く熱いものだ。
耳から入り、鼓膜を揺らして、脳を満たすようなその熱情に、アルカディアは息を忘れて胸を締め付ける。亀頭が叩く腹の奥を熱くさせ、どろりと愛液を垂らしてしまう。きゅん…♡きゅん♡と甘くうねるナカの具合は、胸の奥から沸き立った感情に実に忠実だ。

「くらでぃお…♡♡」

アルカディアは唇を柔く綻ばせ、眦を垂らす。愛欲に蕩け切った眼差しは、もはやクラウディオしか映していなかった。

「もっと……♡」



月が上りきった夜空の下、カーテンの向こう側、窓辺のひと隅にて、杜鵑草が花開いている。夏を告げ知らせる鳥と同じ模様を湛えた花弁で天を見上げている。水は、花瓶の中を美しく泳ぎ、花に過ぎたる程の栄養を与えている。

「ぁ…っ♡♡あ、ぁ゛♡…っ♡ん、ぐ…♡♡ふ、ぁ♡ぁ♡あ♡♡」

美しい窓辺とは裏腹に、室内には淫猥な音が落とされ続けていた。ずちゅ…♡ぐちゅ♡とちゅ♡とちゅ♡と続く音は、夕暮れ過ぎからベッドの上に横たわり続けている。そこから零れ出る喘ぎ声も同様だ。
紡ぎ続けていた故に喉を傷めたのだろう。聞こえる声は所々掠れており、どことなく疲弊が滲んでいた。

「ぅ゛、あ♡♡ぁ♡ァ♡ひ、う…っ♡♡へぅ…う…♡ぁ♡あ…♡♡ぁ〜〜…♡♡」

それでも紡ぐことを止めないでいる理由は、実のところ明白だ。なにせ快楽に対する歓喜が、それらを遥かに凌駕している。上擦った音は更なる快楽を求める声音であり、喉の肉に擦り付けたような濁りを帯びる声音も与えられる快感により絞り出されたものである。
もはや自力では仕舞うことのできなくなった舌を真赤く見せながら、アルカディアはそんな声を紡ぎ続ける。声により生まれるのは意味を持たない母音ばかりだ。思考さえ、もはや多くのことを考えられないでいる。
己の身に襲い来る快楽と、それから目の前に映る愛しい男。度重なった快感…そして今も続く快楽は、人間らしい思考力を失わせ、それ以外には認識すらもできなかった。

「は、ぁ…♡ぁ……♡ん、く♡ん、ん…♡んぅ♡ん…〜〜〜♡♡」

薄暗がりに煌き続ける星のような眼差し。初めて会った時より随分と優しく、熱い色をした琥珀色。見つめていた瞳が近づいてきたかと思えば、顔に影が掛かり、唇に柔い感触が触れる。そうしてぬるりと舐られる感覚が咥内に訪れて、アルカディアは自分が今キスをされているのだと知れた。

「ん、ぅ♡♡ん〜…っ♡♡ぁ、ふ…♡♡ん、♡ん゛ぅう…♡♡」

クラウディオの髪が、アルカディアの顔の周りを覆い隠す。真夜中の、それもカーテンで月光も遮られた室内だ。ただでさえ薄暗い視界がいっそう暗がりを増し、互いの眼差ししか見えなくなる。
快感と、愛欲とで煮詰められた赤い瞳は、己ばかりに一心と注がれる眼差しをただただと受け入れている。世界にふたりだけしかいないような錯覚を覚えて、それすら幸せだと思えた。

「…っ、く♡♡、ぁ…♡っ゛…♡ぅ…♡♡」

腰を打ち込み続けるクラウディオの額から汗が伝い落ち、ぽつりと頬を叩いた雫の感覚にさえ愛しさを感じ得ていた。
最中。アルカディアは声を上げる。
喘ぎを紡ぎ慣れた咥内は舌ったらずに名前を紡ごうとし、殆ど失敗していた。それでも口にしなければならない。腹の奥が、否、体全体が、熱い。酷く熱くて、火照りきっている。初めて感じ得る体感だが、本能的に悟ることはできる。
これは、よくない熱だ。

「アルカディア…可愛いな。…どうした?」

愛おしむために体を撫でていたクラウディオの手が、アルカディアの頬をなでる。大きく、すっかりと熱くなった皮膚の硬い掌だ。
アルカディアはうっとりと顔を寄せて、恍惚と閉じかけた瞼を、けれども必死に開いた。思考を放棄しようと、瞼の裏の暗がりに満ちる熱情が訴えている。けれども、駄目だと頭の隅で告げる何かがいる。しかしどうにも上手く聞き取れない。

「…っ♡ぁ…♡…♡♡ら、ぇ……♡」

「…うん?」

「う、ぁ♡♡あ♡…っ♡らぇ…♡これ、いじょぉ、は…♡ぁ…♡ぁ、あ…!♡♡あ゛♡♡♡あ♡♡ひ、ん…っ♡♡ん゛♡♡」

舌を縺れさせながら告げれば、ごっちゅ♡どちゅ♡ぐちゅ…♡♡と、少しばかり強く腰が打ち付けられる。先程までの蕩かすような優しい愛撫ではない。聞き難い言葉を黙らせるような、そんな快楽だ。
もはや爪先まで力の入らない体は、抵抗など出来やしない。暴力的な法悦にびくっ♡びくっ♡と震えながら、それでもと唇を開き続ける。

「ゃああ…っ♡ぁ♡あ♡ぁ゛♡♡…ッ゛♡やめ、ぇ…♡♡ら…め…っ♡♡らぇ…♡♡あ゛♡ぁ、ぁあ♡ぁ♡も、…♡〜っ♡らぇ……っ♡♡」

「アルカディア…駄目じゃないだろ?……こんなにも…私に縋っているのに?」

「ぁ゛…♡♡あ゛ぁ〜〜…っッ♡♡♡あ♡♡ぁ…っ♡♡ぉ゛…♡♡ぁ゛、ぅぁ……ッ♡♡」

ずるぅ〜…♡♡と、埋まっていた怒張が見せつけるように抜かれていく。ねっとりとした緩慢さで蜜壺から竿を露にしていく剛直の様はひどく淫蕩たるものだ。雁首がごりゅ♡ずりゅゅ…♡♡と淫肉を搔きながら後退したために、ただでさえ果て続けていたナカはびくびくぅ…♡♡と甘く震えて更なる法悦を得た。
幾度と悦を極めても緩みきらない様は、まさしくギフテッドの体と言うに相応しいのだろう。体は相も変わらず雄を美味として受け入れ続けている。抜けていく怒張にねっとりと抱き着いては自身の元へ帰ってくるように縋りつく姿など、クラウディオの言う通り駄目などと言えたものではなかった。
それでも、否、だからこそ、駄目なのだ。快楽を受ける度…つまりは毎秒折れ掛ける意思を必死に保って、アルカディアは喘ぎ声と共に否を紡ぎ続ける。

「だ、め…っ♡♡ぁ、ぁ…♡あ゛〜〜〜…ッ♡♡♡〜〜〜〜…っ♡♡ぁ゛♡♡あ……♡♡♡らぇ…♡…っ♡♡ゃ、ぇ……♡♡」

「…アルカディア…理由は…?」

「ふ、ぁ…♡あ゛…♡♡あぁぁ…♡♡ぁ゛〜〜〜♡♡♡あ゛​​──……ッッ♡♡♡」

ずぷぷ…♡♡と抜けていった怒張が再び奥まで沈み込み、雄膣を喜ばせる。悦に浸りながら、それでも否を紡ごうとするアルカディアを前に、クラウディオは問いを投げかけた。
悲しげな面持ちとは裏腹に、その腰つきは容赦がない。ずっちゅ…♡ぐちゅ…♡♡と緩慢に抜き差しを繰り返す剛直は、答えなければ止める気はないと言わんばかりの様だ。まるで黙らせるような気概さえ感じさせるその強引さにすら、雄を咥え慣れた雌孔は悦として受け取った。
頬を寄せ、唇を寄せ、そうして甘えるようにして顔中に口付けていくクラウディオを、瞼を閉じて受け入れてしまいたいと思った。
けれど、と、アルカディアは唇を開く。この一線は超えてはならないものだと、本能的に理解していた。

「ぅ…♡…っ゛♡♡…ぁ、たま…ぁ♡おかし…っなぅ♡くら、でぃぉ…の♡♡もの、に…っ♡…っぁ…♡♡な、っちゃ…ぅ゛…♡♡から…♡」

腹の奥が酷く熱い。どくどくと脈打ち痺れるように甘く疼くそこは、クラウディオの精子をたっぷりと含み食べている。手足が絶えず痙攣を繰り返し、その身がどれだけ快楽を与えられたのかを如実と示していた。
法悦の喜びに満ち満ちた赤い瞳はさも夜のように深い色をして、クラウディオを見詰めている。薄く涙が浮かぶ視界はぼんやりとしながらも、愛しい男ばかりが映っていた。
煌々とした琥珀色はアルカディアに注がれ続けている。暗がりの中でひとりでに輝くそれは獲物に狙いを定めた獣に違いなく、人に恋をした星に違いなく、今にも溢れ出さんとするその熱情が更に熱く深くなる様は、目の前にいるアルカディアだからこそ見て取れていた。己を射抜くその眼差しにさえ、見惚れていたのだ。
故に、ごっちゅ…♡♡と。

「ぁ゛………ッ♡♡♡♡…〜〜〜〜〜ッっ♡♡♡っ♡♡ッ゛♡♡〜〜〜…ッ!!♡♡♡」

体から重々しい音がしたとき、同時に体中を縛った甚だしい快楽により、アルカディアは目を見開くことしかできなかった。泣き声とも呻きともつかぬ喘ぎが、押し出された息と共に唇から零れ出る。

「あ゛♡♡あ♡♡ぁああ♡♡♡ふ、あ゛♡♡ひゃ、ぐぅ…ッ♡♡♡ぁ♡♡あ♡♡♡あ゛〜〜〜〜……っ!!♡♡♡♡」

腹の奥が攻め立てられている。幾度となく行為を交えて尚猛々しい剛直がほぼ真上から振り下ろされ、ぬかるんだ雌孔を突き刺したのだ。
ごっちゅ♡どっちゅ♡と酷く重い音ばかりが体に響き、なにより腹の奥へと響いていく。熱く膨れた亀頭が幾度も口付けた窄まりを噛み付くようにして舐めしゃぶり、そのまま奥へ強引にぴったりと嵌らせたかと思えば、腰を揺らしては捻り、ぐりゅ♡ぐりぃ♡と捏ね回す。
雌の入り口に深く深くキスをされた体躯はびくっ♡びくびくっ♡と幾度も跳ね、悲鳴じみた声を上げて、もはや腰を捻り逃げようとする。
しかし膝裏を押さえつけては股座を開かされ、体全体を使って真上から抑えつけられた獲物が逃げられるはずもなく。ごん…っ♡ぐりゅ♡ぐりぐりゅ…♡♡と腰を強く押し付け、雌の入り口を抉じ開けるように捏ね愛でられて、ただでさえ快楽漬けにされた体が剛直により躾けられていく。

「ぁぁあぁ…ッ♡♡あ♡…っ♡♡ひ、ぃ゛…♡♡〜〜…っ♡♡♡ぁ♡♡あ♡♡ぁ゛ああ♡ぁ〜〜〜〜…っ♡♡♡」

もはや出すものなどとうに無い陰茎がぷしゅ♡と弱々しく潮を吹き、たらたらと透明な液で自らの腹とクラウディオの白いシャツを汚す。
そしてシャツ越しに硬い腹筋を押し当てられ、アルカディアの陰茎は更にぐにゅぅ…♡と優しく押し潰された。こぷ♡ぶぴゅっ♡と透明な液体が押し出されて垂れ出していく。
雌の口を嬲り抉られる凶暴な快楽と、雄の象徴による情けない法悦に、雄膣はきゅうぅ…♡きゅん♡きゅん♡と甘く強く震え続けている。
そのように、剛直を迎え入れるように包み、飲み込もうとする雄膣。亀頭に捏ねくり愛でられる雌口。渇望する腹の奥。愛する男を受け入れようとする体。その全てが、クラウディオを欲していたのだ。
故に、男の強欲を受け入れるのは必然のことであった。

「ひ……っッ!♡♡ぁ♡♡あ…ッ!♡♡〜〜〜…っ♡♡か、ひゅ…ッ♡♡♡…〜〜〜〜〜ッ♡♡♡♡ぁ゛……〜〜〜ッッ!!♡♡♡あ♡あ♡♡ア♡♡♡あ、ぁア゛ああ♡♡♡あ〜〜〜〜〜っ♡♡♡♡ぁ〜〜〜〜……っ♡♡♡♡」

がぽッ♡♡ぐぽ♡♡と音が鳴り、クラウディオの腰が一段と深く沈み込む。雌口を執拗に舐っていた亀頭がその口内へと入り込み、アルカディアの体全体がひどい快楽に襲われた。
雄膣は強く甘く収縮を繰り返して己を犯す怒張に縋りつき、特に突き破られた雌口はきゅぅぅ…っ♡♡と亀頭を締め付ける。ぷしゅ♡ぴゅるっ♡とアルカディアの陰茎が先端から弱く飛沫を上げ、そのまま白だか透明だかの液体を垂れ流していく様はまるで壊れてしまったようだった。
そうして、びくんっ♡びくん♡びくっ♡♡びくっ♡♡と甚だしい絶頂に跳ねる体は強い抱擁によって微々とも逃げられず。ぴんと跳ねた足が幾らか大きく震えた後、微かに震えながらぐったりとベッドに落ちていった。

「アルカディア、お前は」

見開かれた赤い瞳に映るのはただひとつ。己を犯した男の姿。己が愛し、体を明け渡した男の姿。彼が、輝く琥珀の瞳を己に注いでいる様。

「私のものだろう」

凶暴であり、強欲であり、酷いほどの愛欲だ。それは差し向けられた快楽からも、眼差しからも、そして紡がれた声音からも明らかであった。
全てが遠くなる世界の中で、その声だけが不思議なほど鮮明と聞こえていた。

「…っ♡…♡……ッ♡♡ぅ゛、……っ♡♡お、ぇ…♡くら…でぃお、の……♡♡」

快楽に溺れた赤い瞳が笑みを成し、唾液に濡れた唇が愛おしげに震える。頬はすっかりと赤く色づき。快楽に打ち震える体の全てがこれを歓迎した。

「ひ、あぁ゛あ♡あ♡♡ア♡♡ん゛♡♡ぁ、ぁ…ッ♡♡ぁ♡あ♡♡ふ、ぁ♡♡あ♡♡ぁ、ぁあぁ〜〜〜〜…っ♡♡♡」

ずちゅぅ♡♡ぐぷ♡ごりゅ♡♡ずっ♡ずんっ♡♡と、腹の奥で重苦しい快楽が音を立てる。結腸口という雌の輪に嵌まり込んだ亀頭が自らを小刻みに揺らし、そこすらも丹念に愛で始めたのだ。
ぬぽ…っ♡と抜ければ、すぐにずぬ…♡と舐め回しながら入り込み、雌口に嵌まり込んだままぐに♡ぐりゅ♡ずにゅぅ♡と捏ねる。
その輪ごと雄子宮を揺らすような愛でぶりに体は甚だしい悦を得、アルカディアはあられもない喘ぎを上げた。

「ぃ゛…っ♡♡♡〜〜…っ♡♡ぁ♡♡あ♡♡ふ、ぁ♡♡ひ、ぅ…っ♡♡ん゛あ♡♡あ、ぁ…♡♡くあ、ぃお…♡♡ひ、ぁ♡♡あ♡♡く、ぁ…っでぃお…っ…!♡♡♡」

雌口により扱き下ろし、雄膣によって包み愛された怒張はどく…♡どく…♡と脈打ち、その大きさを増していく。その脈打つ感覚が、膨らむ熱の様子が種づけの予兆なのだと、アルカディアは覚え込まされた。
先程までの快楽に抗おうとしていた様は粉々に散り、ただただ快楽を、愛欲を享受しようとする健気な雌の姿に、クラウディオは僅かに目を細めて、優しく微笑んだ。

「あぁ…良い子だ、アルカディア。アルカディア…良い子だなお前は」

「〜〜っ♡♡く、ぁぅ♡♡く、ぁ♡♡あ♡♡あ♡♡あ゛♡♡〜〜…っ♡♡くぁぅ゛でぃお♡♡♡」

ぐち♡ぬちゅ♡と最奥を捏ね回し、時にずりゅりゅッ♡♡と一気に抜けては、ごっちゅ♡ずちゅ♡と真上から叩き込む。優しい声音とあまりに激しい挿入、相反した愛情をアルカディアはただただ陶然と受け入れた。
脚にも腕にも力が入らず、けれど抱擁を成したくて近くにある彼の手を指で掻けば、当たり前のように絡め握られる。節くれのある指にすら腹の奥を熱くさせながら必死に縋り握れば、打ち付けられる怒張が大きさを増したような気がした。

「アルカディア…」

「っ♡♡ッ♡くぁう…っ♡♡♡ぁ゛♡♡ひ♡〜〜っ♡♡ぅ、き…っ♡♡ひゅき…♡♡…っっ♡♡あ♡あ♡♡あ♡♡♡」

ぐちゅぅ…♡♡と窄まりに嵌まり込み、その身を潜り込ませた亀頭が雌の輪を舐め回す。ぐにゅ♡ぐりゅ♡♡と愛おしそうに捏ね愛で、絶頂を迎え続ける雄膣にぎゅう♡ぎゅう♡揉み込まれながら、小刻みに淫肉を擦り撫でる。
そうして、自身の雌を喜ばせながら、怒張が仕舞いにずんっ♡♡とより深く押し込まれたとき。ずぷ…♡と、雁首のエラが肉の輪を超えた。雌の入り口が雄によって塞がれ、逞しい亀頭が核へと立ち入った。
それと同時に、どくっ♡♡と、その熱望が強く脈打った。

「ぁ゛♡♡あ♡♡♡…〜〜〜〜〜ッっ!!♡♡♡♡〜っ♡♡あ♡♡ぉ゛♡♡〜〜〜〜ッ♡♡♡ひ、あッ♡♡あ――――ッ♡♡♡」

ごぷ♡♡どぷ♡びゅるる♡♡♡と、あまりに多くの欲望が雄子宮へ直接注ぎ込まれる。勢いのある白濁が子宮の壁にぶつかり、どぷ♡とぷ♡と腹の奥を満たしていく。これまでに注がれた白濁も相まって、白濁は小さな淫蕩の部屋を容易く埋め尽くした。
雌口は収まりきらない精子を逃がそうとして、けれども亀頭がずっぷりと入り込んでいる為にそれは不可能となる。それは明確たる意思の体現であり、歴然たる雄の欲望だ。どうあっても孕ませるのだと解らせようとする様だ。
精々、微々として漏れ出した残滓じみた精液が亀頭を濡らす程度で、重く白い欲望はアルカディアの腹を膨らませていった。下腹部が少し盛り上がり、その中に入る雄の象徴を、そしてそこから吐き出された精子の影を見せる。

「ん゛――――…ッ♡♡♡♡んっ♡♡ぅぁ♡♡あ♡♡あ、ぁ♡♡♡ふ、あ、ぁ…ぅ…♡♡♡」

愛した男に犯し尽くされ、体が雌に堕ちない訳がなかった。体の皮膚という皮膚が熱い。腹の奥など、もう酷いくらいに熱いのに、どうしようもなく甘いのだから不可思議だ。
そうして体が跳ねていることも、口が声を上げていることも理解できない。頭が真白で掻き消されている。涙をぼろぼろと零し続けながら、赤い瞳は愛しい男ばかりを見つめ続けた。

「ぁ゛……♡♡♡あ、ぁ………っッ♡♡♡ひ、ぅ゛…♡♡♡ぁ♡♡ァ♡♡ぁァぁあ…♡♡♡〜〜〜〜…っッ♡♡♡ぁぁ〜〜〜〜〜…っ♡♡♡♡」

長く重く続いた射精の勢いが落ち着いていきながらも、剛直の強欲さは留まることを知らない。法悦を迎えた己の震えが収まりかけると、クラウディオは腰をゆっくりと揺らして、ぐ…ちゅ…♡と怒張を雄膣に擦り付け始めた。
亀頭を最奥の雌の輪に嵌まり込ませたまま、そこから抜けない程度に怒張が身じろぐ。きゅぅぅ…♡♡と悦のまま食い締め付ける雄膣を、ずりゅ…♡ず、りぃ…♡♡と小刻みに…己を知らしめさせるように緩慢と擦り上げ、更に雄子宮へ入り込もうとするかのように腰を深く落として、とちゅ…っ♡♡と重く亀頭を擦り付ける。
多量に吐き出した精子を染み込ませるような、とぷ…♡と緩く流れ続ける精子の残滓までをも塗り付けるような、仕舞いまで雄の本能に忠実たるクラウディオの様に、アルカディアは酷く悦を抱く。ただでさえ深い絶頂が続いた体は、更に絶え間ない甘イキまでも孕み、もはやどうすることもできなかった。

「…っ、ぁ゛♡♡♡ぁぁ、ぁ…♡♡♡♡ぁ…♡♡あ​​─​​──…♡♡♡♡」

「アルカディア、……私の、アルカディア…」

ただただ喘ぎを零す他ないアルカディアの体躯を、クラウディオの両腕が抱きしめ続ける。大きく熱く、そして力強い手は、快楽にぴくっ♡ぴく…♡と震えるアルカディアの体躯を少しも離そうとしなかった。
耳元で甘やかな呪縛が囁かれ、首元に熱い捕食の官能がひとつふたつと続いていく。とろりとろりと、涙をあふれさせ続ける赤い眼が細められ、いっとう柔い笑みを浮かべる。
体中に満ち満ちる熱。美しい琥珀の瞳。彼の声以外には何をも拾い上げない耳鳴りが酷く、それだけしか感じられない。それだけでいいと思った。それだけで、もう死んだっていいと思えた。



酷く緩慢と瞼を擡げた。こうも穏やかに目覚めを迎えたのは、随分と久方ぶりのことであった。
小鳥の鳴き声が幾らか聞こえる様を、ぼんやりと認識できる。上擦る声音の間隔が不定期であるのは、それが二羽分のものだからであろう。互いに餌を与え合っているのだろうか。
軽やかな音色を耳に通すまま、クラウディオは暫しの間、眼前を映していた。

体全体に充足感を感じ得ながら、クラウディオは首を横に倒す。
草臥れた白いシーツの中、自身の隣に、見慣れた青年が横たわっている。

「……アルカディア……」

このまま眠る彼を眺め続けていたい。クラウディオは願うようにそう思った。けれども、そうも言っていられはしないと理性が糾弾する。
後処理もほどほどに二人とも気絶するように眠ってしまったのだ。まずは体を清めてやるべきである。ふたり分の体液で汚した白い肌を少しでも清潔にしてやりたい。深く噛んでしまったところはギフテッドと言えどさすがに治りきっておらず、薬を塗ってやらねばらない。
それから草臥れたシーツを変えて…はたまた、アルカディアの部屋に連れ立ってもいい。そして、暖かな食事を与えるべきである。
今日一日は立つこともできないだろう。全てを抱き抱えて、彼の望みは何でも聞いてやらなければ。
思考の通り、クラウディオは腰を上げ、風呂場へと赴こうとした。アルカディアを包めるくらいのタオルはあったろうか。棚の中を思い出しながら、思考にて必要な物を回顧し整えていく。

「、…くぁ…、…ぅ゛……?」

けれども、その体はベッドに留まることとなる。隣から発せられたひとつの声、愛しい声によって。
それは掠れていたが、愛しい人の声であると直ぐに理解できた。朝の弱い彼を起こす際、掠れを帯びた声はよく聞いていたし…それより程度はひどいが、けれども近頃で耳に馴染んだ声だ。聞き間違うはずもない。
クラウディオは実にゆっくりとした動作で一度背を向けた背後…ベッドを振り返る。
未だ草臥れたシーツを絡めて横たわるアルカディアは、その美しい赤い目をぼんやりと開いていた。そして焦点の定まりきらない眼差しをクラウディオばかり注いでいた。

「…アルカディア」

クラウディオは擡げかけた腰をベッドに落とし直し、身を屈めてアルカディアを見つめる。
彼の、目覚めたばかりの眼差しはどこか恍惚としているようにも見えて、昨夜の記憶が脳裏を掠めた。あられもなく喘ぐ彼。なまめかしい体を貪る自身の獰猛さ。

「体の具合は、どうだ?」

「……ん、……?」

「…どこか…いや、何処も痛むと思うが、特に痛む部分はあるか?」

「ん………ぅ…」

「………」

目覚めたばかりだからか、それとも体に滲んだ疲弊の色が強いためか、未だ漠然とした意識の中にいるのだろう。アルカディアは実にぼんやりとした返答を繰り返す。

「悪い、やり過ぎたな」

手を差し伸ばし、大きな手のひらで彼の頬を包む。そうっと宛がわれた掌は頬の柔さを感じ取る。その柔さがあまりにも愛おしくて、クラウディオには自身の手の中にある人が割れ物のように感じられた。
触れて、少しでも怯えられれば、今後触れることは最小限に留めようとさえ考えていた。
けれどもクラウディオの予想とは裏腹に、アルカディアは容易くその手を受け入れる。どころか、酷く心地よさそうに目を細めると、その口元を柔く綻ばせた。
まるで笑むような…否、明らかに微笑みを浮かべるその面持ちは、ほんの少しではあるものの色づきを良くしたようにすら思える。

「…くらうでぃお………♡」

掌に頬をすり寄せ、柔く微笑んだ唇で呼び名を紡ぐ。使い果たした喉で音を紡ぐのは辛いだろうに、それでも愛おし気に音を発する様は実にいたいけで、あまりにもいじらしい。
怯えや恐れなど欠片も感じられない姿を前に、クラウディオは人知れず息を詰めた。胸の裏側がひどく熱く、滾るような血が全身に巡っていくのを感じる。
クラウディオは触れていた手で柔い頬を包むまま、その指先で仄赤い白肌を撫でてやる。そうすればうっとりと笑みを深める赤い瞳は童子のように素直で、けれど童子とは言い難い魅惑的な赤色でもあった。

「今日はお前の好きなことをしようか。仕事も断る。なんでもしよう」

「ん……ん………」

「だからなんでも言ってくれ。とりあえず、シャワー…を……」

そうして、指先で戯れるように触れていた最中。あまりに心地のいい触れ合いに感けていた体の腰を再び擡げようとした途上。クラウディオは自らの掌で感じるその肌に違和感を感じ取る。
寝起きだからだろうとばかり思っていたが、けれども、それにしても、肌が暖か過ぎる気がする。否、もはや熱いと言っていい程に。

「…アルカディア、お前…熱いんじゃないか?」

「……ん、ぅ…?」

問いに対し、アルカディアはぼんやりと瞬くのみだ。元より、彼は寝起きが悪い。クラウディオは普段から、朝は起こすのに苦労するという蜜を吸っていることから、この漠然とした応対もそのためかとばかり思っていた。しかしそうとは言い難いのではないか。
ふと脳裏に浮上した疑惑を胸に、クラウディオはいっそう身を屈ませる。自らの額をアルカディアの額に沿わせると、なるだけ衝撃を与えないように、こつり…と優しく触れ合わせる。
鍛えているだけあって、クラウディオの基礎体温は平熱からやや高めといったところだ。反対に、アルカディアは長らくの栄養不足も相まって基礎体温が平熱より少し低い。額を合わせて体感した彼の体温が熱いものであれば、概ね熱があると見ていいだろう。
正確な計器とは言えまいが、この場は迅速な状況把握が優先だとクラウディオは判断していた。

「……ん、…」

しかし、アルカディアはその意図を理解できなかったようだ。というよりも、把握するだけの思考力がないといったところだろうか。もしかすれば宵口の記憶が強く残っているのやもしれない。
アルカディアは近づいたクラウディオの唇に、自らの唇をちゅ…♡と触れ合わせた。先程よりも眼差しが近くなった様を、愛し合う様相だと感じ取ったのだろう。ちゅ…♡ちゅ、ぅ…♡とクラウディオの唇に吸い付く様はいとけなく、実に愛らしい。
思惑と異なるとはいえ、拒絶する所以も感情も有りはしない。クラウディオは自らも唇に吸い付いてやると、舌で優しく舐ってやった。
そうすると、アルカディアは喜んで舌先を伸ばす。その舌にやんわりと自らの舌先を絡めてやりながら、時折唇でぢゅ…っ♡と強く吸い付いてやる。頬を撫でていた手で頭を撫でてやれば、随分近くに見える赤い瞳がとろりとろりと意図もたやすく蕩けていった。

「ん……、ん……」

「ん…♡ん…ぅ゛……♡…ふ、……♡」

甘やかな口づけを幾らか繰り返した後、クラウディオは唇をそうっと離していく。キスを好む青年がごねるように舌や唇に吸い付くため、髪を梳くように撫でてやりながら、幾らか唇を啄むように口付けてやる。
そうして宥めてやりながら、クラウディオの眉間に皺が寄っていった。
撫でた頭、合わせた額、そして絡めた舌先や、少し舐めた咥内。それらから感じ取れた体温は、普段の彼よりも明らかに高いものであった。

「……熱があるな」

「…♡ん、ぅ……」

「無理をさせたからか…、…魔力の暴走も考えられるか…?」

「……?く、ぁ……ぅ…?」

「医者に診せた方がいいな…、…いや、この辺の医者に見せたところでか…」

知恵熱じみたものか、はたまたギフテッドならではの異常であるのか。今までにない彼の不調にクラウディオの思考が埋め尽くされていく。それぞれの予想に従ってこれから執るべき行動を選択肢としてあげていく。
そうして海となった思考を抱え、眉間にいっそうの皴が寄り始めたころ。己の皮膚に触れた感覚で、クラウディオははたと意識を眼前へと戻した。
酷く弱々しくあったそれは、己の手元から感じ取れる。見れば、ベッドに置いていた自身の掌に白い指先が触れている。ほんの細やかではあるが小刻みに揺れるそれは、おそらくクラウディオの手を撫でているつもりなのだろう。
手の持ち主たるアルカディアに目を移せば、その眉尻は下がり、不安げに揺らしながら眼差しをクラウディオへ注いでいる。先程までの愛おし気な、心地よさそうな面持ちは曇り、気遣わし気な面持ちがそこにはあった。
クラウディオは思わずと、穏やかな色をした琥珀色を細める。思考に耽った自身を叱咤しながら、愛しい青年の頭をもう一度優しく撫でてやる。
眉間の皴が解け、熱くも優しい眼差しが注がれることを見て感じ取ったのだろう。アルカディアは嬉しそうに柔く笑むと、頭を撫でる手に弱々しくも擦り寄った。
この青年のことを、クラウディオは得難いと思う。この罅割れた体を引きずるような草臥れた日常に、これでもかと花を与えてくれる人だと思う。この柔く心地いい花弁を、永遠に自分の元に留めておきたい。夜に紡いだ欲望はクラウディオの本心に違いなかった。

「……とりあえず、体は清めるべきだな」

「…ん…♡……ん…」

「シャワーの用意をしてくる。少し待ってろ」

「ん……、…?」

そう言って、クラウディオは今度こそベッドから降りようとする。離れ難い青年から手を離し、名残惜しくも背を向けて、浴室へ向かおうとする。頭に先程組み立てた行動を整然と脳裏に浮かばせる。
まずは着替えとタオルを用意して、簡素ながら浴室を洗おう。そう、この先の行動を予期していた頭は、けれども再び当惑で埋め尽くされることとなった。それはやはり、背後から聞こえた青年の声によってのことだった。

「ゃ、…っ、…く、ぁ゛でぃお……っ」

耳に触れた声は濁っていた。酷使した喉をそれでも使い、それほどまでに溢れ出た感情で濁らせながら、回りきらない呂律を使い必死に紡いでいる。それが泣き声であるとは、明らかなものであった。
クラウディオは背後を振り返り、アルカディアの元へ再び身を屈める。今自身がしようとしていたことなど全てを放棄して、目の前の愛しい人に全ての意識を傾ける。
アルカディアは泣いていた。赤い眼からぼたぼたと涙が溢れていき、透明な雫は瞼や頬、米神に伝い、シーツを濡らしていく。眉尻は垂れ下がったまま、睫毛が濡れていく様は実に悲壮な様だ。
あまりの落涙を前に、さすがのクラウディオも動揺する。自身が無体を働いた時にも、このような泣き顔は晒していなかった。なにが彼を泣かせているのかと、酷く当惑していた。

「くぁ…ぅ…っ、くら、ぅ…でぃお…、ぅ、く…」

「どうした?何処か痛むのか?」

「ふ、ぅ…っ、ぅ゛……くら、でぃお………」

先程と同じように、クラウディオは泣き続けるアルカディアに手を差し伸ばす。美しい赤い瞳から悲痛に涙が溢れ出る姿が耐え難く、両手で頬を包み、指先で撫でるようにして涙を掬い取ってやる。
急に痛み始めたのならば、やはり医者を呼ぶ方が先決だろうか。思考を慌ただしく整理していく男を前に、けれども、泣き続ける青年の唇から言葉が零れ出た。

「いかな、で……」

その頬に伝う涙と同じように、その言葉は溢れてきた。なにもかも、普段の彼からは予想だにつかない姿だ。
思いもよらない声であったが、掠れた声音、濁る音は、それほどに感情が募っている証に違いなく。それが今ばかりの感情でないことは、なんとなしに理解できた。
今までの宵時も、朝も、常から、彼は同じことを思っていたのかもしれない。自分が帰ってくるまでの間、ひとり待つ彼はどんな顔をしていたのだろう。帰らない日もあった近頃は特に…心を許せる人間も、彼が大好きだった唯一の家族も居ないこの大きすぎる屋敷の中で、どんな心地で夜を過ごしたのだろうか。
クラウディオは口を噤んで、静かに息を吐いた。筆舌し難い感慨はただ呼吸となる他なかったのだ。胸を握り潰されるような感覚を甘んじて受け続けながら、アルカディアの唇へ口づけを落とす。両手は頬を包むまま、酷く優しい指先で、幾らでも涙を拭い続ける。

「ぅ、うあ……っ、やだ……やだぁ……くらでぃお…くらでぃお…っ、いかな、で………」

「…悪かった、悪かったよアルカディア」

「く…ぁ゛…ぅ……っ、ひ、ぅ゛……くら…ぅ…ぅう…」

「大丈夫だ、大丈夫だから。そんなに泣くんじゃない」

浴室で体を拭ってやるべきだ、食事を用意しなければならない、医師を呼ぶことも視野に入れなければ。
そういった、脳裏に連なる予定の全てを放棄し、アルカディアの隣に横たわる。普段より少しばかり熱過ぎる体躯を強く抱きしめて、離さないように抱擁し続ける。
腕の中で泣きじゃくる彼が弱々しくも縋りつく感覚を胸に感じて、胸裏の痛みはいよいよ酷くなった。愛おしい痛みだと、思った。

「どこにもいかない、ずっと一緒だ」