Bad Habit





「……っんぁ、ぁ゛、うッ……」

腰がびくびくと震え、甘い絶頂を迎える。雄としても雌としても、中途半端すぎる熱はアルカディアを消化不良の波に押し上げた。胎を性器と変えるその指は執念深く、肉襞を拡げる。

「アルカディア、挿れるぞ」

潤滑剤は体液と混ざって尻を汚し、ゆったり抜けていく指と共にこぷりと溢れた。激しい絶頂をお預けにされたままの身体は昂り、快楽を求めている。

「っは、ァ……ぁ、ッう、ッは、……♡」

シーツと密着する身体は多少の身動ぎでも疼く熱を溜め込む。それは腰にじんわりと溜まり、アルカディアの余裕をより一層削り取った。

「はっ、ぅ、……ん、ぐっ、ぅっ♡」

肉襞を掻き分け、入り込むペニスに歓喜する。擦り上げていく感覚に浸り、最奥に到達するまでに、二度も絶頂した。

「またイったのか?やらしいな」

「……ん゛ぁ、ちが、ッぁ♡」

快楽を逃すように、思考を流す波を追い払うように、アルカディアは首をふるふると振った。それは幼子のようで、敏感な身体はしかし、鋭利に作り変えられた男のそれだった。

「違う?……何が違うんだ?」

アルカディアの背中にクラウディオの身体が密着し、揺さぶる動きが分かる。解かれた真っ赤な髪は揺れるたびに波打ち、柔らかだ。

「っん、あ゛、あッ、……っ♡」

シーツにへばりつくアルカディアに、腰を擦り付けるように律動する。アルカディアの腰は絶頂のたびに痙攣しているが、押し付けられた体勢では満足に浸ることも叶わない。

「本当に、“違う”?」

アルカディアをシーツに縫い留めるように努める。彼が本当に正気を失うまで、何度でも甘い快楽に沈め続けると決めていた。

「……ッ、っぁ♡ひっ……ん、あ゛……ッ♡」

男らしい両掌が、清らかなシーツに皺を作る。クラウディオのペニスを苦しいほど締めつけ、眼前でばちばちと瞬く光を見つめた。全身が震えている。

「……っふ、」

肉襞に食い締められたクラウディオは息を詰め、間違っても暴発してしまわないように歯を食い縛った。視覚の暴力だ。

「…………っぁ、ッ……♡♡」

肉の食い締めが緩まったのを見計らい、クラウディオは再び律動を始める。今度は激しく。奥だけを責めたてるのではなく、ぽかりと口を開ける性器の全てを、ペニスで愛し尽くす。

「ッあ、まっ…て、イっ、ッた……まって、ぇ゛ッ♡」

余韻に浸る間もなく、新たな快感が与えられ、アルカディアは情けない声を上げた。密着したシーツと擦れるようで、ペニスからはだらだらと体液を流している。

「ん、ぅッ♡……っぁ……ひっ、ぅ♡」

彼は抜ける時の感覚が好きらしい。激しい律動のあわいにわざとゆっくりと時間をかけて抜いてやると、腰を反らせて絶頂した。

「っだぇ、そ…れ、だめぇ゛…♡…んぁ゛、ま、たっ……ぁ゛う♡」

ほとんど獣のセックスだった。いつもなら弄ってやる乳首も、舌を絡めるキスもない。ひたすら孕ませるために腰を揺らす、宛ら発情期の雄。

「駄目なのか?」

裏腹に、奥へ奥へと呑もうとする動きに従う。アルカディアの腰を押し潰すように、クラウディオはシーツに両手をつき、ぐ、と押し付けた。最奥……その先。

「……あ゛、ッぉ、っ…ん、ぅ♡」

開きっぱなしの口から頻りに分泌される唾液を垂れ流す。その姿に、興奮を煽られた。

「ッん゛♡ぐ、ッ……あ゛ッ♡…ぅ…ッ♡♡」

呻きか喘ぎか、判別がつかない。結腸まで押し入れることは、酷い圧迫感があるのだと、彼はいつか語ったことがある。腸壁が再びきつくきつくペニスを締めた。逃すまいとする、雌の本能。

「……っ♡、ひ、ッ…………っ、〜〜〜ッ!!??♡♡♡」

アルカディアの指はあらゆる方向に広がり、引き攣っている。空気を潰すような音と共に、結腸へ嵌まり込む。シーツへ留められていながら、可哀想なほど背中が反り返った。大粒の雫が生まれ、見開いた赤から零れ落ちた。

「はぁ……ッ……」

細かく痙攣する腰を押さえ、クラウディオは射精する。奥に飲み込ませるその動きは、アルカディアが孕むことを望んでいるようでもあった。胎の奥でじんわりと滲む熱に息を洩らす。

「ぁ、ひっ、ぅ、ん、ッ……あ♡」

シーツの上でアルカディアの手が暴れ、皺だらけの白を掻き乱す。背を駆け上がる電流のような雌の快感と、腰に重く溜まる雄の快感の両方を受け、アルカディアの頭には霧がかかり始めた。

「アルカディア、まだ寝るなよ」

ぼんやりと空を見るアルカディアの頰を軽く叩き、腰を揺らす。響く水音が耳を犯した。ぐずるように頭を横に振るアルカディアは、涙でいっぱいの赤い瞳で、クラウディオを振り向いた。

「……っんぁ゛♡く、ら、ぅあっ♡あ゛、ぉ゛……ぅ♡♡」

ぐぶ、ぐぷ。結腸に亀頭を収めたまま、奥で細かく動く。泡立った精液がペニスに絡みつき、律動をより滑らかにした。

「ぁう゛♡っん、ぐ♡ぉ、ぁ゛…♡…ッか、ふっ♡…ひ、ッぅ♡♡」

結腸口はぐっぽりと亀頭を咥え、出し入れをするたびに舌で舐められているような快感が走る。クラウディオは半ば浸るように、アルカディアの制止を気に留めず激しく突き上げた。

「んぁ゛っ♡っあ゛、っん、ぅ、っひっ♡」

「まだ出来るだろ?」

上半身を密着させ、囁く。そのまま耳朶を噛んでやると、アルカディアは小さく喉を鳴らした。無意識に腰を揺らすその姿が酷く淫靡で、ごくりと唾を飲み込む。浮かぶ笑みは欲の象徴だ。この男を、貪り尽くしたいと。

「っぁひ、う゛ッ……く、んぅ゛ぅっ♡」

結腸口を責めるだけでは満足ならず、次第に大きく揺らし始める。抜けるぎりぎりまで腰を引き、奥まで一気に突き上げた。やがて泡立つ白濁が外に溢れ出て、太腿を伝ってシーツに落ちた。

「ぁえ゛っ♡ひっ、い゛、ぐっ…♡…っんぐ、ぅ、ッ……♡♡」

アルカディアのペニスはシーツと擦れたせいで微かに赤くなっている。そのひりついた痛みすら快感に変換され、今やだらだらと精液と混ざり合った先走りを流し続けるだけだ。

「……っは、ァ゛……ぅあ、っあ♡ぃ、ぐっ、ぅっ♡」

抱きしめるような体勢で腕を回したクラウディオは、アルカディアの口へ指を入れる。いつもの口付けがない代わりにと、口内をぐちゃぐちゃと掻き混ぜた。

「んぐっ、ん゛っ、ん、ぅ……♡」

指が入ったことにより口が開き、しかし鈍った喘ぎが溢れる。忙しなく息をするアルカディアの体力はもう底を尽きようとしていた。

「…………アルカディア」

アルカディアの喉に腕を回すと、引き寄せる形で絞め上げる。突然のことに目を見開くアルカディアは、その瞬間の突き上げにより、思考の輪郭を曖昧に暈された。

「……っは、ァ゛……っ、はっ、ぇ……?♡」

ゆったりと締められ、酸素が確保出来なくなっていく。それでも責めに比例して口から零れる喘ぎ声は、限られた酸素をどんどん奪っていった。脳が警鐘を鳴らす。

「……っ〜〜〜〜、ッ!?!?♡♡♡」

前立腺を押し潰し、奥を突き上げた途端、アルカディアは声にならない声を上げて潮を吹いた。軽いパニックと潮吹きの快感が混ざり合い、何も分からない。胎の中で弾けた熱を感じながら、視界がぼけていくのを受け入れた。

「っか、はっ、っはぁッ、っあ゛、」

意識が飛ぶと自覚した時、気道が解放される。これでもかと入り込む酸素に噎せ返り、必死に呼吸を繰り返した。

「……はぁ、っは、ぅ……」

腸壁の痙攣が落ち着くのを待ってから、クラウディオは負担をかけないよう、ペニスを抜く。ぎくりと反応したアルカディアも、もう一度致すだけの体力はなく、それきりベッドに伏したままだった。

「気持ち良かった?」

先刻までの熱はどこへやら、クラウディオは性欲など無縁であるとでもいうように微笑みを浮かべている。シーツには激しい跡が残っていたし、首には若干の違和感があった。

「…くび、やだ」

「ふ、悪い。ついな」

笑いながらくしゃりと頭を撫でられる。彼の返事に文句を言うことすら億劫で、アルカディアは未だぼろぼろと流れ落ちる涙をそのままに再びベッドに伏す。微睡むには身体の状態は悪すぎたが、起きていられるだけの余裕もなかった。

「…ばか……すぐ…いじわる、する………」

眠気に攫われかけの意識を何とか引き留め、途切れ途切れの言葉を発してアルカディアは眠りに落ちる。

「……可愛い」

暖かい濡れタオルを手に、クラウディオは思わずくすりと笑った。