あたたかい。
雲の上を歩くような、夢の中にいるようなふわふわとした気分で、そう思う。
ぼんやりと目を開ける。夢と現実のはざまが曖昧で、今何しているんだっけ、と考える。

「……っ?んっ、あ、ぅ、……?♡」

体をゆっくりと揺すられるような感覚とともに、穏やかな快楽が与えられ、無意識に甘い声が漏れる。きゅう、と指先が胸に抱えた枕を握りこむ。その上から、手を包むように握られた。
とん、とん、とゆっくりと中を揺すられる感覚がするたびに、きもちいい、きもちいい、と体が訴える。

「ん……♡」

あたたかい。
後ろから毛布のような、湯につかっているような、とてもあたたかいものに包まれている感覚がして、それがひどく安心できるものだと、体が知っていた。全身の力が抜けたまま、ただされるがままに、シーツとそのあたたかさに挟まれて、アルカディアはとろりと目を潤ませた。

「は……ぁ、う……?あ、……ん…ぅ…♡」

きもちいい。あたたかい。
とろとろとした思考のままのアルカディアの頭を、ゆっくりと撫でられる。

「アルカディア」

背後から愛しそうに名前を呼ばれ、うなじにキスを落とされる。ちゅ、ちゅ、と何度もふれるだけの唇がくすぐったくて、小さく痺れる快楽があって、身じろいだ体を撫でられた。
どうやら自分がうつぶせになっていることを、ようやく遅れて認識する。後ろからクラウディオに抱き込むようにされているのも。中に埋まったあたたかさの正体がクラウディオのものであることを体が再認識して、熱い吐息が漏れる。

「ぁ……、くら、でぃお……」

耳になじんだその声に、鈍い頭で後ろを振り返る。
とても、愛しそうにアルカディアを見つめている目と合う。深く、大切なものをみるような瞳の色。
綺麗だな、と思う。アルカディアの見つけたものの中で一番、綺麗だと思うものが、その色だった。ずっと鋭く、影が濃くなってしまったはずのそれが、今はとても、穏やかに、優しくて。
あたたかいから。
ふと、目の奥が熱くなる。きっといま、涙を流しても、快楽のそれと区別はつかないだろう。

「意識を飛ばしていたな、大丈夫か?」

黙ったまま見上げるアルカディアに、クラウディオが問う。
とりあえずこくりと頷けば、もう一度優しく頭を撫でられる。そのまま、目元を拭うように優しく触れられ、きもちいい、と思いながらすり寄れば、くすくすと笑われた。

「……アルカディア、眠いならやめるが」

海の上にただようように、随分とのろまになった思考のアルカディアに、クラウディオがもう一度聞いてきた。

「……ん、くら、でぃお」

「ん?」

何度もイかされて朦朧となったらしい事実を認識してもまだ、体はまどろみの中にいるようだった。疲労感はあっても、まだ、行為がここで終わってほしくないと素直に思う。
アルカディアの返事を待つようにじっと見つめてくる視線にあわせて、力の抜けた手を、ぎこちなく首元に絡ませる。汗で滑って、髪の毛に絡ませた指を軽く引けば、意図を察したのか臨んだのか、唇がすぐにアルカディアのところに降りてきた。
嬉しそうに目を細めて、薄く開いて受け止める。

「ん……♡」

半開きの唇の隙間にぬるりと熱い舌が侵入する。肌も、手も、舌も、どこもかしこも熱い男だ。

「まだ…ぁ…ん…ぬかな、で……」

キスの合間にそうねだって、舌を差し出せば、間近で満足そうに笑う気配がする。

「くらう……、あ、んぅ……」

「かわいい」

ちゅ、ちゅ、と音を立てて舌を吸われ、男の体温と与えてくる快楽にどこか安堵しながら受け止めていれば、ゆっくりと中の動きが再開される。

「あっ、あ、……っ?♡は、ぁ……、」

意識を飛ばす前までの、互いを支配するような激しい動きではなく、ゆっくりとあやすように奥をつかれる。相手を、自分を気持ちよくするための動きに、全身がたまらなく震える。クラウディオから与えられる全部が、アルカディアを気持ちよくさせて、それを幸せに思う。

「あ、ぁ……、ぅ……」

「アルカディア、きもちいい?」

「う、んぅ……それ、すき……きもち、ぃ……」

「……そうか」

閉じられなくなった口から、唾液とともに、思ったままの言葉が零れ落ちていく。後頭部の髪に唇を寄せて、短く返された三文字は、とても、嬉しそうだった。

「あ、ぅ……、ひ、ん……っ♡」

快楽でぴくぴくと跳ねる体を、クラウディオの体全部で抱きしめられる。少しだけ深く、はやく動かされる腰は、アルカディアがゆっくりと頂点に達するのをやさしく促してくれる。

「アルカディア、かわいい」

愛しそうなこえだった。幸せそうなこえだったから。
吐息が耳にかかって、体温も、においも、全部がすぐ間近にあって、

「……ッ♡」

全身にゆっくりと走った快楽に、足のつま先を丸めて、シーツを握りしめて、ぴくぴくと体を小さく震わせながら、達する。

「あ、……うっ♡は、ぁ……、」

快楽の尾が引いて、パチパチと目の前で光が弾けて。クラウディオのものを切なそうに締め付けてしまって、気持ちよくて、息が上手くできない。
キスがしたい。
朦朧とした意識でそう思いながら、涙でぼやけた視界で見上げれば、すぐに唇が塞がれる。アルカディアの呼吸のペースにあわせて、舌はやさしく甘やかすような快楽だけをくれる。
あつい。きもちいい。

「くら、ぅ……、」

口端からだらしなく零れ落ちた唾液を、舌で拭われる。

「うん?なんだ、アルカディア」

声も、唇も、撫でてくれる手も、体も、中も全部。今は自分を甘やかすためだけにあるようだ、と。
そう思うのはおかしいのに、おかしくて、それでいいやと思ってしまって。
眉根を下げて、へらりと笑ってみせれば、穏やかな瞳がぱちりとまたたいて。おんなじように、緩められた。

「くらうでぃお、のかお、みて、したい」

口にしてから。
初めてそう言ったような気がして、なんだか今更のような気もして。
とても、嬉しそうに笑うクラウディオの姿に、取り繕うのも面倒になって。
力の入らない手で、彼の手を握る。
遅れてやってきた羞恥心を早々に溶かしてもらうべく、その熱い唇を求めるように、名前を呼んだ。