ふわふわと視界が揺れている。
揺れる度にベッドが軋んで、くちゅりくちゅりと水の音が響く。
その音がいやに恥ずかしくて、アルカディアはぎゅうっと目を閉じた。
「こら、こっちを見ろ」
「ひぅ、」
揶揄う様な声と共に下から突き上げられ、衝動的に涙に濡れた瞳を開く。
突然の快感に身体を震わせるアルカディアを、クラウディオは楽しげに見上げていた。
「っ、はぅ…ぁ、あっぅ、…くら、…でぃお、」
琥珀の瞳とかち合った途端、身体の中に埋められたそれを無意識に締め付けてしまい、逃げようのない快感に襲われる。
そのまま倒れ込みそうになるのを必死に我慢して、アルカディアは力の入らない腰を上げる。
ずるりずるりと中の粘膜が擦れて潰されて、その度に甘い声が漏れ出した。
「はっ、…ぅ、…ん、ぁ…ひぅ、」
拙い動きのまま引き抜いたそれを、もう一度自身に埋めようとして、その先の快楽を想像して身が竦む。
けれど躊躇えば躊躇う程、中の粘膜は収縮を繰り返し余計に切なくなって、アルカディアは思わず眉を下げた。
「…ふ、ぁ、…く、らでぃお、」
今日何度目かになる懇願にクラウディオが微笑みを浮かべた。
怯えるアルカディアの為に繋がれた両手を優しく握りながら、クラウディオは囁いた。
「続きはどうすると教えた?」
器用に手を繋いだまま、クラウディオの指がアルカディアの腰をさらりと撫でる。
ほんの僅かな刺激でも、敏感になった身体には耐えられない刺激で。
途端に力が抜けて、ぱちゅん、と肌同士がぶつかる音がした。
「ひ、ゃぁうっ、…はぅ、あぅ…くらでぃお、やぁ…あっ、」
「気持ちいいな、アルカディア」
かぶせるように言われて、どうしようもなくアルカディアは頷いた。
憧れのクラウディオの上に跨って腰を振る様は、滑稽で恥ずかしくて仕方ないのに、心底楽しそうなその笑顔に羞恥も躊躇いもどろどろに溶かされて、ただただ快楽だけに支配されていく。
「あ、う…きもち、い…、んぅ、あ、ぅ……、も…う…、」
「ああ」
「あっぅ、…ぃく、…っぅ、……!」
ぎゅうっと中が収縮し、欲を吐き出す。
途端に強張っていた身体から力が抜けて、かくん、とアルカディアの腕が折れた。
「あ、くら、ん、ぅ、」
「今日もじょうずだったな」
力を失って倒れてきた上半身を受け止めたクラウディオは、ご褒美とばかりにその汗ばんだ頬や首筋にキスを落としてくる。
優しく穏やかな空間の中で、アルカディアは意識をまどろませていた。
甘やかされてるなと思う。
それはベッドの中で特に顕著で、体の隅々まで可愛いがられて、どろどろに甘やかされて溶かされてしまうのが常だった。
頑張ろう頑張ろうと思っても、始まってしまうと気持ちいいことしかわからなくて、ぐずぐずになってしまって、どうしたらいいか分からなくなる。
──クラウディオはちゃんと、気持ちよくなってくれているのだろうか。
それは最近のアルカディアの悩みだった。彼のマイナスの感情を読み取ったのか、ルカが擦り寄ってくるのをぎゅっと抱きしめ返す。
神妙な顔をしてロビーに降りて来たアルカディアの目に、昼間から飲んだくれているシトラスとオーカーの姿が映る。
「そういや最近あの女とはどうなんだ?」
「もう冷めちまって別れたよ、体の相性悪ぃなありゃ。マグロ引いちまった」
「あちゃ〜、そりゃハズレだわ」
2人のそんな会話が耳に入り、アルカディアは聞き慣れない単語に首を傾げる。
彼の姿に気づいたシトラスはこちらに向かって酒瓶を振った。
「お〜ウイスタリア、お前も飲むか?」
「マグロってなに」
シトラスの誘いに首を振り、先程の疑問を素直に尋ねる。
アルカディアからの珍しい問いかけに2人は目を丸くしたあとにんまりと笑みを浮かべた。
「あれだよ、ヤってる時になんの反応もねーこと」
「反応…」
「それよりお前アッシュとどうなんだよ〜!」
「どうって…」
「どうせそんな進んでねぇんだろ!?いいのあるぜ〜」
なんてことを楽しげに言いながらどこからか雑誌を取り出して来ては机に広げる。
【AV男優が教える本当に気持ちいい×××】
そんな大きな見出しと共に女性がそれを咥えたイラストが大きく描かれた紙面は見ているだけで気恥ずかしくて、アルカディアはきゅっと目を細める。
孤児院を転々としていた上に、元々ルカや猫以外に興味を持たないアルカディアは性的なことに疎かった。
クラウディオのことだって、初めて彼が興味と好意を持った人間だ。
ほとんど知らない彼がスムーズに行為など出来るわけもなく、そもそもベッドの上でクラウディオに頭を撫でられるだけで忽ち眠ってしまうのだ。
次の日に「また何も出来なかった」と零すアルカディアに、クラウディオは嫌な顔を一つせず笑って言った。
『お前に色々教えることができると思うと、楽しいから気にするな』
言葉の通り、クラウディオはなんでも教えてくれた。
恥ずかしいことも気持ちいいことも不慣れなアルカディアの為に、彼が怖がらないように優しく手ほどきしてくれた。
じょうずだな、えらいな、と些細なことでも優しく褒めてくれるクラウディオに、アルカディアは子供の様に喜んだ。
「こんなんマスターしたらアッシュだって喜ぶと思うぜ?」
アルカディアの肩に腕を回し、シトラスはにやりと笑った。
「…アッシュが喜ぶ…」
くちゅり、と濡れた音がしてアルカディアの肩が跳ねた。
ただでさえ拙い息継ぎが途端にできなくなって、息が浅くなる。
そんな姿にクラウディオは薄く笑みを浮かべ、絡めていた舌をそっと引き抜いた。
「だいぶキスも上手くなったな?」
「ひゃ、ぁ、…ん、ぅん…」
褒められて、撫でられて、それだけで全身の力がゆるゆると抜けていく。
いつもこうして溶かされて、訳が分からなくなる。
それでも今日だけはと、馬鹿になりそうな頭を懸命に働かせて、アルカディアはクラウディオのシャツの裾を引いた。
「…あぅ…あの…クラウディオ、」
「ん?」
「……お、れも…クラウディオのこと、きもちよく、したい…」
「気持ちよく?」
「あの…おれ、へたくそだと思う、けど……その…だめ…?」
小さな赤い舌を懸命にのぞかせて、アルカディアは首を傾げる。
無自覚な上目遣いとその熱の篭った瞳に、クラウディオは少し黙った後、そっと前を寛げた。
「…無理はするなよ?」
「…ぁ、」
差し出されたそれは赤黒く、自身の物と全く違う物に見えて、アルカディアはごくりと喉を鳴らした。
そろそろと舌を差し伸べて、僅かに濡れた先端に触れてみる。
少しの躊躇いの後、そっと咥えてみれば口の中の確かな質量と雄臭さに眩暈がした。
「…んぁ…ふ…ぁ、ぁ、…んん、」
少しでも気持ち良くなって欲しくて、懸命に舌を動かしてみる。
けれどどんなに覚えた通りにしようと舌を絡めてみても、変なところで息が詰まって、嗚咽が漏れ出る。
頑張れば頑張ろうとするほど焦って、頭がくらくらして、息が上がってしまうアルカディアの様子を見かねたのか、不意に咥内から質量が引き抜かれた。
「……っ…んぁ…はぅ…ごめ、おれ、うまく、」
涙目になりながら見上げた先で、アルカディアはひゅ、と息を詰まらせた。
どこまでも深い琥珀色が細まり、自身を捉えている。
「お前、誰に教わった?」
優しげな問いかけなのに、誤魔化すことを許さない声色に、アルカディアの肩が跳ねる。
バツが悪そうにうろうろと赤い瞳がさ迷って俯いた顔を長い前髪が隠す。
「…あの2人か?」
こくりと小さく頷いたアルカディアにクラウディオは息をつく。
無言の時間が耐えられなくて言い訳をするようにアルカディアは言葉を連ねる。
「ぁ、あの、…おれ、へた…だし…飽きられたら…やだ、から…その…」
「…」
「……くら、でぃお?」
形のいい指がそっとアルカディアの唇を撫でる。
「口、開けて」
短く端的な命令に、アルカディアは素直に従った。
ぱかりと、無防備に開けられた口を見てクラウディオは口角を上げる。
「ん、いい子だな。そのまま舌伸ばして、そう…そのままゆっくりだ」
そっと、陰茎が口に差し込まれる。
歯を立てないようにおずおずとそれを迎え入れれば、優しく頭を撫でられる。
「苦しくないか?ん…上手だ」
「…あん、ぅ、あ…あぅ、あ…」
クラウディオに言われるままに、裏筋やカリの部分を舐めてみるとそれは大きく脈打った。
それが嬉しくてしかたなくて、もっともっとと舌を伸ばしてみせる。
そうするとクラウディオはこらと僅かに眉を顰めて、腰を引いた。
「少し覚えられたか?疲れるから今日はもうおしまいだな」
「…でも、おれ…まだ、」
「ん?私はこっちがいい」
「ひうっ、」
言い募るアルカディアを諭す様に、先程まで丁寧に解された中をかき混ぜられて、小さく喘ぐ。
「やぁっ、あぅ、ぁ、あ…っ、くら、でぃお…」
浅い所を指で引っ掻くように摩られれば、途端に快楽で頭がいっぱいになる。
それでもまだできるだろ?とばかりに腰を撫でられて、アルカディアは体を震わせながら上体を起こした。
「…く、らでぃおっ、…手…つな、いで、」
「勿論」
初めての時に教えられた通りに、そっとクラウディオの上に腰を下ろす。
時折、いいところに当たっては動きを止めるアルカディアを促す様にクラウディオは繋いだ手を握る。
何度かそれを繰り返した末に、ぱちゅんと水音がして、アルカディアは熱い吐息を漏らした。
「ひゃぅ、…ぁ、ぁぅ、ん、はぅ、…あ、あ…んぅ…やぁ、」
先程までいやという程高められた身体は快感に貪欲だった。
自身の中に埋まったそれをぎゅうと締め付けたり、ぐちゅぐちゅと生々しい音を立てながら腰を動かしてみる。
そうすれば、まるでそれに応える様に、とんとんと下から突き上げられてしまい、どうしようもなくなってしまう。
「やあっ、ひぅ、…ぁ、う、…い、く、いっちゃっ、…!っぁ、」
身体全体がこわばって、性器からぴちゃりと白濁が飛び出した。
「ひぅ、…ぁ、あぅ、ふ…」
「じょうずにイけたな?」
未だ快感に震えるアルカディアを見て、クラウディオは優しく言った。
そっとクラウディオの手が伸びてくるのが見えて、アルカディアはうっとりと目を閉じた。
──ほめて、くれるのかな、
そんな僅かな期待に身体の力を抜いた。
だからこそ、
「〜〜〜ぃっ、──!!?」
どちゅりと、肉のぶつかる音がして、身体の最奥を、容赦なく真下から突き上げられた衝撃に声にならない悲鳴を上げた。
「っえ?ぁ?ぁ…な、…に?くら、でぃお…なに…」
何が起こったのか訳も分からず、震えが止まらない自身の体に呆然とする。
クラウディオの手はいつの間にか腰に回っていて、気づいた時にはベッドに転がされていた。
「お前は初めてだからな、ここ」
「ひッッ〜〜〜っ!」
先程と同じ衝撃に悲鳴を上げた。
快感などと言う言葉が生温いと思える程の衝撃が、アルカディアの体を駆け巡り蝕む。
知らない、こんなのは知らないと、無意識に頭を振るアルカディアを見下ろしながらクラウディオは言う。
「こっちは教えたが、奥はまだ早いと思ってたんだよ」
「ひっ、!…や、やだ、おさな…で、…あッ、そこ、や、やだ…ひっん、あう、…!」
未知の感覚に戸惑う体を、たたみかける様に攻められて涙が溢れる。
初めての時からいじられ可愛がられ続けたそこは、今では立派な性感帯で、身を捩って逃げようとすればするほど快感が溜まってどうしようもなくなってしまう。
「でも今の感じだと良さそうだな。すぐ気持ち良くなれるから頑張ろうな?」
言っている意味がわからなかった。
こんなに震えて、おかしくなりそうなのに、どこまでも楽しそうに笑うクラウディオに、アルカディアはすがりつく様に問いかける。
「あっ、あぅ、なん、で?…だって、さっき…じょうず、って…」
「ん?あぁ、上手だったよ。でもそれはそれだ」
赤色の瞳に溜まった雫が拭われた。
優しげな手つきのまま、クラウディオの指がアルカディアの下腹部へと到達する。
「うまくやらないと飽きられる、か」
くるりと臍の下を撫でられた。
そんな些細な刺激にすら身体を震わせるアルカディアにクラウディオはそっと囁いた。
「二度とそんなこと思えないようにしてやろう。覚悟しておけよ?」
どうしてこんなことになったのか、わけがわからなかった。
「ひ、ああぁっ!♡い、やぁあ…っ!も、むりぃ…!むり、ゃ、だっ…はい、らなぁっ…やぁあ♡」
「こら、逃げるな」
「、ひっ…うぅぅ♡♡」
大きすぎる快感から逃げようとシーツの上を這いずれば、楽しげな声と共に腰を掴まれて引き寄せられる。
その際にお仕置きとばかりに、シコリを押し潰すようにして摩られれば、アルカディアは大きく背中をのけぞらせ喘ぐ他なかった。
「ゃうっ!♡ぁぅう…ひ、う、ぁッ♡♡」
何時もなら快感に震えるアルカディアの為に優しく声をかけて、落ち着くまで待ってくれる筈なのに。
びくんびくんと痙攣の様に震えて泣きじゃくっても、恥も外聞も投げ捨てて止まってほしいと頼んでも、クラウディオはただ笑うだけで、それが怖くて辛くて、何度も何度も許しを請う。
「むりぃっ、…ひいっうっ♡あう…ぅ、!♡ぃ、やらあっ!♡やだ、や、だ…ぅあっ、ごめ、な、…っごめ、なひゃっ♡ゆるひ、」
「だぁめ」
楽しげな声と共に、暴れる腕を捕まえられシーツの上に縫い止められる。
決して逃がさないと言うかのように、真上から体重をかけられれば、既に体内に埋まっている肉棒が更に奥へと突き刺ささる。
ごりゅ、ごちゅと、容赦なく最奥を潰すその熱さと質量に内臓が溶ける様な錯覚を覚え、アルカディアは泣き叫んだ。
「やあぁあっ、!!♡…っ、ひぃ、あっ、…!やら、あああっ♡♡ひぅ、っ…も…むり、ぁう♡♡やぁっ!ぅ、でなぃっ、でにゃいっ♡いきたくな……〜〜っぃ、ゔ!♡♡♡」
何度も無理やりイかされた性器は既にばかになっていて、クラウディオに突かれるたびにぴしゃとぴしゃと水の様な精液を溢れさす。
壊れた水道みたいだなと揶揄う言葉にすら反応して、再び達してしまうアルカディアをクラウディオはただ笑って揺すっていた。
「お前なら出来るだろ?ほらがんばれ♡」
「い、やああっ!♡もう、やらあっ♡…むりい、ぅ♡や、っぁ、やだ…やら…♡こわ、ぃっ、…ひぅっ♡♡っ、な…で…っ、にゃんれっ♡やらあ、♡♡や、だって…ぁうっ、いっ、てる…のに♡なんで、なんでぇ♡」
「本当はゆっくり教えようと思ってたのに、お前は欲しがりさんだなあ。勝手にいろんなこと覚えてくる前に、教えてやらないと、なあっ、?」
ずるりとゆっくりと引き抜かれた筈のそれが、勢いよく戻ってきて奥を叩き潰される。
そのまますり潰す様に肉壁を抉られれば、途端に目の前で火花が散った。
「〜〜ひ、ぃっ、!!?♡♡♡」
「お前は悪い子だな?」
「ひ、うぅっ!っ、あ゛♡♡♡…っ、やら…いきたくな…っ!♡やめ、て…ぇぅっ…ひぅ、こわ…い、やっ…だぁ♡あっ、あッ♡♡っひ♡♡…い、ぐ♡♡♡」
「こんな時でもイクって言えるのは偉いな。ご褒美にこっちも触ってやろう」
「あ゛っ、ぅ〜〜っ♡♡」
使い物にならなくなった性器の鈴口に爪を立てられて、アルカディアは善がり狂う。
自分ではどうしようもない快感の波に頭も身体もめちゃくちゃにされて、訳がわからなくなる。
手も足も力が入らないのにびくびくんと腰が震えて、中が収縮し、その刺激でまたイく。
自分の身体なのに全く制御できずイき狂うしかできないことが、どうしようもなく怖くてたまらなくなって目の前のクラウディオに縋り付く。
そうすれば、精液と汗の匂いに紛れたクラウディオの香りに安堵してしまって、瞳からぼろりぼろりとさらに涙が溢れた。
「…いっ、ぁ、…ひぅ、ぁ、…や、…くら…ぃお…くらでぃおっ、…ひぅ、…ひ、ごめ、なさ、…ごめ、」
「……」
本格的に泣き出してしまったアルカディアに、クラウディオは小さく息を吐く。
それから言い聞かせる様に囁きながらアルカディアの目元や頬にキスを落とす。
「…可愛い、可愛いなアルカディア。もう二度と、勝手に覚えたりしないな?」
「っ…!しなっ、しな…い、ぅ、…も、しな…あ、う」
「ああ、えらいな」
かぶりを振って否定すれば、クラウディオは優しく頭を撫でてくれた。
慣れ親しんだ感触に途端に体の力が抜けて、更に涙が溢れ出す。
「ぅ、えぅっ…ひぅ…ぅ、」
「ほら泣くな。気持ちよかっただろう?」
「きもち、きもち…い、…すき…すき…くらでぃお、だいすき、」
涙を舐めとられて優しく撫でられて、漸く解放されたと安堵する。
うわ言の様に繰り返すアルカディアに、クラウディオは笑って、そして言った。
「ああ、私も大好きだ。じゃあ、今度は一緒に気持ちよくなろうな?」
「ぇ、…?ひ、ぃ、や…、やだ、」
言葉の意味を理解した途端、アルカディアの顔が青ざめた。
ぼろりと大粒の涙が零れ落ちる。
それが恐怖によるものか、快感によるものか分からないままアルカディアは悲鳴を上げた。
どうしてこんなに可愛いんだろうなあと思う。
「ぁ、…あぅ、♡♡…ぁ、あ、♡」
何時も雄弁に思慕を訴える赤い瞳は快感だけに染まりきってポロポロと涙を溢す。
先程まであれ程騒いで泣きじゃくっていたのに、今ではまともに言葉も話せなくなって、ただ揺すられるがままだ。
『おれ、へた…だし…飽きられたら…やだ、から…』
覚えのない稚拙な技術に対して湧き上がった怒りは、その見当違いな言葉のお陰で呆れを通り越した何かに変わった。
一度消えたら戻ってこないのが常なこの世界で、目の前の子は必ず自分の元へ戻ってきた。
自分の思い描く“強さ”にみるみるうちにたどり着き、気付けばあっという間に横に並び、自身に懐いて猫のようにまとわりついて来る。
そんな可愛い奴、飽きるわけもない。
真っ新なものを自分の色で染めるのが好きな性質なんだと思う。
勿論、下心も十二分にあった。
『イくときはイくって言わないと駄目だぞ』
『自分で乗って動いた方が辛くないだろう?』
少し考えたら恥ずかしくておかしなことばかりなのに、自身の後ろをついて回る可愛い子は、何も疑わずに従った。
少し触れただけでふにゃふにゃになって、クラウディオ、くらうでぃお、と教えてやった本当の名前を繰り返し体を震わせて縋ってくる。
そんなの可愛いいに決まってる。
「ほらぎゅうってしてみろ」
「んぁ…?ぁ、あ、ぎゅっ、?ひゃうっ、やぁあっ、♡♡」
もう碌に力も入らないくせに、言われた通りにしようと健気に締め付けてきて、そのせいで更に気持ち良くなって泣いてしまうのだから、堪らなくなる。
ずれた努力も、哀れに思える様な健気さも、呆れる程の愚かさも結局、可愛いに集約されてしまって、深みにハマったなあと思う。
「じょうずだな、アルカディア。きもちいいよ」
それでも、自身の下で快感に溶けながら嬉しそうに擦り寄って喘ぐ子を見ていると、何だかそれもいいかとクラウディオは思う。
「本当に可愛いなお前は。なぁルカ」
兄弟が泣き叫ぶ姿を怒るでも慌てるでもなくじっと見ていた猫のような魔獣は、クラウディオの言葉に同意のようににゃあと短く鳴いた。