Whim
信じてもらえないかもしれないが、出来心だったのだ。
初心で恥ずかしがり屋な年下の恋人。
そんな子が、きもちいいことが好きになるように優しく丁寧に丁寧に教えてきた甲斐もあって、最近少しずつ慣れてきて。
それでもちょっといじわるをしてしまえば途端に余裕がなくなって縋り付いてくるのも可愛いと思っていたのだけれど。
『堅物のお前さんにプレゼントだ』
サファイアが振った小瓶を、手にとってしまう位にはクラウディオもまた、ただの男であったようだった。
小瓶に入った薄桃色の液体。
トロリと粘性のあるそれを眺めながらクラウディオは考える。
この手のものは相手に盛るまでが大変なわけだが。
何せ相手は自身に懐いてやまないアルカディアである。
「髪乾いた」
「ああ」
トプン、と桃色がマグカップの中に垂れた。
それを無造作に混ぜて、クラウディオは何ともない様な顔で振り返る。
「飲むか?」
「ん、ありがとう…」
湯上がりで血色のいい頬をしたアルカディアはマグカップを受け取った。
ソファで何の疑いも無くこくこくと飲むアルカディアの横に座り、自身の膝に乗ってきたルカの頭を撫でる。
「ルカもそろそろ風呂に入れないと駄目なんじゃないか?」
「ん〜…そうなんだけど…風呂嫌いだから入れようとすると喧嘩になる…」
「風呂でも喧嘩するのかお前達」
「だって………ん、」
不意にくぐもった声が聞こえた。
もぞもぞと両足が擦り合わされて、膝を抱える様に座り直すアルカディアに、クラウディオはほくそ笑む。
それでも暫く気付かないフリをしていれば、徐々に落ち着きのなさが増してくる。
は、は、と短かな呼吸が聞こえてきた頃、ついに耐えきれなくなって、クラウディオは口を開いた。
「アルカディア」
「は、え?」
無防備な右手を捕まえて、アルカディアを見やる。
「お前、手握るの好きだろう」
「…ぇ、」
「うん?」
「す、好き、だ…けど、」
「そうだよな」
あの、クラウディオ、と戸惑った様に声を上げるアルカディアを無視して、細い指を絡め取りくすぐってみる。
そうすればアルカディアは体を震わせて、顔を赤くした。
「…っ、…あの、くら…うでぃお」
「ん?」
「ひぅっ、」
ぎゅうっと手を握り込めば、隣から息を呑む音が聞こえてきて、込み上げてくる笑いを必死に押しとどめた。
最後のダメ押しとばかりに、繋いだ手を口元に持ってきてそっと名前を呼んでやる。
「…アルカディア?」
ぽ、ぽ、ぽ、と可愛い子の頬が真っ赤に染まる。
それでも肝心の言葉は言わずに黙っていれば、ふるりと唇が震えた。
「あ…の…きもちいこと、して…ほしい…」
小さな小さなおねだりに、クラウディオは笑って繋いだ手を引いた。
火照った身体に指を這わせる。
焦らす様にくるりくるりと円を描いてからそっと胸の頂に触れると、アルカディアの身体が小さく跳ねた。
「ひゃっ、…ぁうっ、…んぁ…やぁっ、」
薬のおかげか普段よりも早くぐずぐずに溶けて、桃色に肌を染めながら喘ぐアルカディアに笑いが込み上げる。
指先で引っ掻いてふっくらと膨らんできた突起に息を吹き掛ければ、アルカディアはぐずるように声を上げた。
「や、…ぁ、くらでぃお…っ、や、だ、ぃゃあっ…!」
「ん?気持ちよくないか?」
クラウディオの問い掛けにアルカディアはふるふると首を振った。
快感とは別に羞恥で真っ赤に染まった顔が可愛くて、どうした?と態と優しい声色で問い掛ける。
そうすれば、ぱくぱくと口を開いては閉じてを繰り返した末に、アルカディアは掠れる様な声で呟いた。
「………な…なか、…さわって…ほし、」
ぽろりと赤い瞳から雫が溢れて、震える手がクラウディオの手に絡まりそっと下へ引いた。
何処までも拙いおねだりに、クラウディオは上がりそうになる口角を必死に抑えながら下着に手を掛ける。
「今日のお前は随分とわがままだな?」
「…っ、ぁ、ごめ、ひゃうっ、!」
乱雑に下着を取り払って、後孔に指を突き立てた。
ぐにぐにと中を潰しながら囁けば、それを非難ととったのか悶えながらアルカディアが縋り付く。
「やぁっ、ぁ…ぅ、わがまま、いって、…ごめんなさ…ぁ…ひゃあっ…っ!そこやらっ…ゃぁっ、ゃ…!」
「今日は随分とイくのが上手だな?…ほら、もう一回」
欲を吐き出して収縮した中をこじ開ける様に弱いしこりを抉る。
そのまま指の腹で摩ったり、入口を爪で引っ掻けば、アルカディアの身体は面白いくらいに震え始める。
「ひぃっ…!やだ、やらぁっ…ぁ、う…っ、いった、いった…のにぃ…ぁ、ぁ、…あぅ、…くら、とまってっ…、とまって…ぇ…ゃっ…い、く…ぅ、!」
過ぎた快感から逃げるように、ぎゅうっと両腕を縮こませてアルカディアが果てる。
最後にくるりと指で中を摩ってそっと引き抜けば、とろりと透明な液が溢れ出した。
「…あっ、ぁ、ぅ、…う、…ぁ、ふ、」
小さな小さな刺激にも健気に反応して震える子の頭を撫でる。
途端にへにゃりと表情を緩ませる姿に、クラウディオは否応もなく加虐心を煽られるのを感じた。
ポケットから取り出した小瓶の栓を開けて、そっと傾ければ、とろりとした桃色の液体は何の抵抗も無く後孔へと垂れていく。
「ぅ…ぁ、ん…く、ら…ぃお?」
「ん、こんなものか」
不思議そうに見上げるアルカディアに何も言わず、たっぷりと薬を飲み込んだ後孔をかき混ぜる。
先程よりも穏やかな快感にアルカディアが身を委ねようとした時、不意に瞳が見開いた。
「ぁ……!!!?」
アルカディアの腰が大きく跳ねる。
「…?ぁ、なに、…?ぁ、あつ、…ぇ…?」
体の奥底からじわりじわりと広がる熱に、アルカディアは体を震わせる。
自身の体の変化についていけず、怯える様にしてクラウディオを見上げて息を呑む。
「ぁ…ぅ…あつ、…くらでぃお、…、?」
「ん?」
何処までも楽しそうな笑みが返されて、アルカディアの喉奥から掠れた悲鳴が漏れ出した。
「ひぅっ…!やぁっ…♡ぁつ、…い…っ、くら、ぃお…ぁっ♡やあっ…!やら、ゃ、ぅ…っ、…あっ、ぁうぅっ、いぅ…!♡♡」
ぎゅうっと中が収縮し、クラウディオの指を締め付ける。
途端に指先が熱を帯びて敏感になったしこりを潰して、突き抜ける様な快感に襲われる。
「ひゃっぅ…!♡♡っ、い、くっ…♡またっ…ぁっ…♡ぁっ…!あっ♡ぃ、やあっ!♡♡」
背中をのけぞらせながら吐き出した精液は、既に水の様に薄くなっていて、アルカディアの下半身を濡らした。
それでも身体の中に溜まった熱は消えることがなく、アルカディアはあつい、あついと譫言のように繰り返す。
「…ぁ、あぅ、♡…ぃ、あつい、…あつ、…くらうでぃお…、ぁぅ…おなか…あつい、」
「熱いだけ?」
クラウディオの問い掛けに、アルカディアはひゅっと息を詰まらせた。
無意識にじくじくと熱を孕んだ粘膜がクラウディオの指を締め付けてその刺激に身体をくねらせる。
確かに気持ちいいはずなのに、身体はもっとその先の快楽を求めていて。
「ぁ、あつくて、……さみしぃ、…おなか、さみし、…ひぅ…ぁ、…くら、ぃお…」
熱の帯びた吐息のまま、小さく小さく、アルカディアは呟いた。
おなか、くらうでぃおのでぐちゃぐちゃにしてほしい
啜り泣く様な甘い声が部屋に響く。
「やあぁあっ!♡…あぅ、やらっ♡まっ…!ぁっ、あ…いっ、く…とまって…ゃぁっ…やらやら♡とまってぇ!♡ぁ、あ、ぁぅぅ♡♡」
大きすぎる快感に怯える様に体を震わせて、アルカディアの手がクラウディオの肩を掴む。
大して力の入っていない指先がどうにも意地らしくて、わざと腰の動きを緩慢としてみせれば、赤い瞳からぽろりと涙がこぼれ落ちた。
「ぁっ…あぅ、やぁ…!くら、ぃお…なん…で…ちが…もっと、おく…、おくの…ひぁっ!やっ♡♡…ぁう…やらやらっ…♡そこ…おくやらぁっ…♡♡」
「欲しいって言ったりやだって言ったり私を翻弄して楽しいか?やらしいな」
「やぁっ…!いわな…で♡♡、あぅ…ぁ、あっ!また、いく…っぅ、い、く…からぁっ…!」
揶揄う様に耳元で囁けば、アルカディアは弱々しく首を振って快感に悶える。
「でも仕方ないな、お前は気持ちいいのが大好きな悪い子だもんな?」
「ひうっ♡♡…やっあ、ごめんなしゃ…っ、ぁ…ぁ、くらう、…ぃっ…やあっ…!ま…た♡またっ、…やだやらぁ…いく…♡♡」
ぴくぴくと震えていた性器から弱々しく精液を吐き出して、アルカディアは涙を溢した。
緩くなってしまった口からは透明な涎が垂れていて、真っ赤な舌が見え隠れする。
その赤に引き寄せられた。
「っう…?くらぃお、…?にゃに?…んぁっ…、んぅ、」
「はは、熱いな」
口内を指でかき混ぜれば、小さな舌が指先に当たり、ぐにぐにと押してみる。
そうすれば熱い舌が遠慮がちに指に絡まって濡れた音が聞こえてきた。
「美味しい?」
「…?ぉ、いし……、」
何度も絶頂して、回転の悪くなった頭でアルカディアはぼんやりと頷く。
快感で何もわからなくなって、されるがままな子供。
それでも自身の一挙一動に健気に応えるのだから堪らない。
「ぁ…ぅ、…くらぃお…?なに、それ…なに…」
「口閉じてろ」
素直に口をつぐんだアルカディアの唇に薬をまとわせた指を当て、そっと横に引いた。
桃色の液体が唇の上でてらりと光る。
まだ舐めるなよと言って唇で塞いでやれば、アルカディアの肩が小さく跳ねた。
それでも唇を舌先でとんとんと突いてやれば、教えられた通りに小さく口が開かれる。
「…んぅ、くら、…ぁ、う…ん、ん、」
力の入らない舌の付け根を押して、逃げる舌先を捕まえる。
ちゅ、ちゅ、と音を立てながら互いの唾液を行き来させているうちに、こくん、と嚥下の音がした。
「んぅ、ぁ、…あま…?〜〜っ♡♡♡ぁ、ひゃうっ♡…やあっ…!♡なにっ…♡♡」
「…はは、相当キツいなこれ」
ずぐりと下半身が重くなるのを感じながら、クラウディオは小瓶を放った。
「ひうっ、、…ぁ、くら…ぃお♡♡ぁ、ぅ、おっきいのやら♡なんれ、きもちい♡…きもち…からやらぁっ、!♡♡」
「…いい加減煽ってるという自覚を持てお前は」
「っ、、ひゃあっっ!♡♡♡」
快感から逃げようとする腰を掴み、抉る様にしこりを押しつぶしてやると悲鳴に近い嬌声が上がった。
「んぅうっ、、はふっ、…ひゃ、ぁ…♡…、ひうっ、あ…くらぃお、きもち、…おく、もっとほし…♡きもちいの、ほし、っひぅ、…やらやらそこ、おさないで…やらぁ!♡♡」
「嫌、嫌ばっかりでどうすればいいかわからんな。自分で動いて私に教えてくれ」
思い切り腕を引いてベッドに倒れ込んだ。
途端に上下が逆転して、アルカディアがクラウディオに跨がる様な形になる。
ぐちゅん、と肉同士がぶつかる音がして、赤い瞳が大きく見開いた。
「〜〜っひ、ぃぃぅっ、!!♡♡ぁ、やぁ…♡ふか、ぃ、ぅあ…っ!ひぅ、ぁ…こわ、ぃ、やだ…やらぁ♡い、く♡いく…♡」
「怖いって言いながら腰振って。気持ちいいの間違いか?」
「ゃうっ、…あぅ、ごめ、なさ…っ♡♡きもち…きもちい…、くらぃお、ひゃっあ…♡いく…、また、いく…♡♡」
きゅうきゅうと後孔が収縮して、触ってもいない性器からはぷしゃりと透明な水が吐き出された。
「後ろだけでイケて気持ちいいな?」
「きもちっ、…ゃぁ…ぅ、きもちい、ん、ぅ…
…〜っ、ひぃ…ぅ、うぁッ!?♡♡」
一際大きな悲鳴が上がって、アルカディアの身体ががくりと傾いた。
突然の強い締め付けにクラウディオの顔が歪む。
「っ、…大丈夫か?アルカディア」
「…?ぁ、、…?ぁ…なに…?なんれ、やら…ぐるぐる、する…やあっ…!っ、いきた、…い…のにぃ…」
確かにイッた筈なのに、何も吐き出せない身体に泣きじゃくる。
腹の中に溜まった熱からどうにか解放されたくて、反応のない自身をぎゅうっと握り込む姿にはっとして、クラウディオは上体を起こした。
「っ、アルカディア、とまれ」
奥歯を噛み締めて泣いて喚く子を抱え直す。ひくつく背中を撫でながら虚な瞳を覗き込んだ。
「こら、アルカディア。いい子だから手を止めろ」
冷たくなった手の甲に自身の手を重ねる。
くすぐる様に指先を撫でると、ぴくんとアルカディアの体が跳ねた。
「ひ、ぁ、あ…く、ら…ぃお?…ぁ、ひぅ、」
「ああ、目があったな。手、握ろう。お前好きだもんな?」
「…ぁ、ぅ…?すき…す、き、…て、にぎるの、すき…」
小さく震える指先がクラウディオの指に絡まって、それをそっとすくい上げる。
「上手だなアルカディア。かわいい。いっぱい頑張ってくれてありがとうな?」
「ぁ、ぅ…、ぁ…ん、すき、…くら、…ひぁ、」
もう碌に頭も回っていないだろうに、褒められてることはわかるらしい。
途端に頬が緩まって、ふにゃりと笑う子に笑いかける。
引き攣る様だった呼吸も徐々に落ち着いて、鼻先を繋いだ手に押し当てる姿が、懸命に甘える子供の様に見えて堪らなくなる。
「はふ、…ぁ…う、くらぃお……、」
「ああ」
大丈夫、怖くない、とわかるようにぎゅうっと手を握ってみせる。
そうすれば途端にアルカディアの体から力が抜けて、小さな小さなおねだりが聞こえてきた。
「くら、…くらぃお、まだ…、ぐるぐる、する……たす…けて…くらぃお、」
「もう少しだけがんばれるか?」
そっとベッドに押し倒しながら問い掛ける。
途端に白い頬が赤く染まって、小さな頭がこくんと振られた。
「ぁ、ぅ、…がんば…れる…」
「辛かったら言えよ?」
怖くないように、怖がらせないように優しく揺すれば、小さな喘ぎ声が上がる。
「ぁ、あ…ん、ぅ…ひゃぅ、…ぅあ、っ、あ、」
ゆるゆると良いところに当てると、ぽろりと涙が零れ落ちた。
途端に縋るようにこちらを見上げてくる姿が可愛くて少しだけ強く、中を抉る。
「ふ、あ、あ、ぅ、…ひっ、くらぃお、くら…ぃお」
「大丈夫だよ、アルカディア。見てるから。」
「っ、ぅ…ひゃぅっ、…あ、…ぁ……」
繋いだ手にぎゅうっと力が込められて、やがて解ける。
脱力した体の中に精を放って、夢の国へと旅立った子の頭を撫でた。
「じょうずだったな。ありがとう」
何度も言うが出来心だったのだ。本当に。
「アルカディア、悪かったよ」
抱き締めたルカのふわふわの毛並みに顔を埋めたまま動かないアルカディアの頭を撫でて、クラウディオは何度目かの謝罪を口にする。
すると漸くふわふわから頭を上げ、顔を真っ赤に染めた子が泣きながら叫んだ。
「クラウディオのばか!ばかばか!」
その際にベッド脇に置かれた小瓶が目に入ったのか、アルカディアはぴゃっと再びルカの毛並みに顔を埋めてしまう。
ルカは泣いている原因がクラウディオだから大丈夫、とでも言いたげに呑気にアルカディアの腕の中で心地良さそうに欠伸をしている。
目を覚ましたアルカディアが自身の痴態を思い出してぼろぼろ泣くものだから、洗いざらい説明することになったのだが。
それからはずっとこんな様子で、クラウディオは息を吐いた。
やりすぎたなあとは思う。
毎度毎度かわいい反応が返ってくるものだからついつい苛めてしまうけれど、傷つけたいわけじゃないのだ。
人一倍繊細で、頑張りやさんだから。
恋人の時くらい甘やかしてやりたいと思う。
ただ、少し甘やかすと途端に骨抜きになって善がる姿に堪らなくなって、やりすぎてしまう悪癖はどうにも治せそうにない。
自制心には自信があった筈なのに、どうしたものかなあと頭を悩ませる。
「…難しいもんだな」
完全にただの独り言だったのだけれど、ふわふわに埋めた頭がびくりと動く。
今までで一番悲痛そうな顔をした子が顔を上げ、遠慮がちに袖を引かれた。
「…い、嫌に…なった、…?」
「…ふはっ」
あまりの自信の無さに、大丈夫かと心配になる。
クラウディオのこととなると直ぐにこれだ。
だからこそ、可愛くて仕方なくてついやりすぎてしまうのだ。
「ばか。お前が思ってる以上に、私はお前のことが好きだぞ」
「…ぇ、?…ぁ、あの、くらうでぃお…」
「惚れ直したよ」
袖を掴む手を取ってぎゅうっと握り込んだ。
緊張して血の気がなくなってしまった指先に体温を移すようにキスをして、囁く。
「また楽しもうな、アルカディア」
ひぃと小さな悲鳴が上がった。
けれど繋がれた手が解かれることはなくて、その様子にクラウディオは眉を下げて笑った。