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アルカディアがセックスを求めてくれなくなっちゃった。以前は扇情的なコスチュームを着てくれたり、二人でえっちなお道具箱の中身を増やしたり、食べ頃です、なんて言いたげに待っていてくれたのに。
今はクラウディオが誘うと、アルカディアは瞬時に頬を燃え上がらせ、はく、はく、と空気を噛んで視線をさまよわせる。
おびえと期待に張り裂けそうな顔をしてクラウディオを見上げる。
「嫌か?」
クラウディオが頬を撫でながら問うと、アルカディアはだいぶ逡巡してから首を振る。
忖度されているだけかとクラウディオはちょっと動揺したことがあるのだけれど、脱がしただけでアルカディアの陰茎は勢いよく反り返る。
消えてしまいたいです、というような羞恥心にまみれた顔と、刺激を期待する下肢の反応のギャップに、クラウディオはいよいよ深みに嵌まり込んでいることを自覚する。
まさか己が、恥じらっている男の顔に興奮する性質だとは。
「ほら、こっちだ、アルカディア」
クラウディオはベッドヘッドに背中を預けて口を開ける。
その正面にはアルカディアが立っている。ベルトはとっていない。けれど、ズボンのファスナーは下ろされ、下着から引きずり出された性器だけが晒されている。
いつもの「アルカディア」のまま、情欲の証だけがパツパツに膨らみ、クラウディオに見つめられて先端にぷくりと先走りの雫さえ滲ませていた。
「っぅ……」
アルカディアがぎゅう、と目を瞑って、ゆっくりと腰を突き出す。クラウディオの唇にアルカディアの性器の先端がちょん、とくっついた。
それだけで離れてしまうアルカディアに、クラウディオは見せつけるように舌なめずりをして見せた。
クラウディオも同性であるから、ここまで性器が膨らめば刺激を求めて痛いくらいだとわかる。
「もっと。私にお前を味あわせてくれないか」
口調は懇願だが、アルカディアを見上げる目には命令し慣れた男の傲慢さが滲んでいる。
最近、クラウディオはアルカディアの羞恥心を焦げ付かせることに嵌まっている。悪い遊びを覚えたものだ。
「じゃあ、ぁの…せめて目、瞑っ…てて」
このあたりが今の限界だろう。クラウディオは大人しく目を瞑ってやる。と、呆れるほどの間を開けて、唇の間をアルカディアの性器が割り開いた。
「ぅッ♡」
軽く吸ってやると甘い吐息が落ちてくる。
また勝手に引き抜かれてしまわないように、クラウディオはコートの下に両手を差し入れ、ズボンの上からアルカディアの尻を掴んだ。びっくん!と跳ねた素直な反応がかわゆい。
アルカディアの腰を動かし、何度か前後してやる。反り返ったアルカディアの性器はクラウディオの口の中で、上顎に亀頭を擦り付ける。舌にたっぷりと唾液をのせ、痛くならないように裏筋を舐めてやる。
「ッぁ、ゃっ……♡」
やがてアルカディアは自分から腰を振るようになる。
クラウディオの口の中に苦くてしょっぱい先走りが溢れてくる。クラウディオはそれを喉を鳴らして飲み込んだ。さらに搾り取るように唇をすぼめる。
「く、くら…でぃお…」
アルカディアの声が揺れて、くしゃりと髪が緩く掴まれる。かくかくと揺れる腰は止まらない。
クラウディオは喉奥を器用に開き、さらに深くまで飲み込んでやる。
「っぅ゛」
快楽のあまりかくんと抜けそうになった腰を両手で支える。喉頭が亀頭に押されて苦しいが、口の中でビクビクと跳ねていて可愛らしい。
クラウディオは自分から頭を前後させ、アルカディアの性器を吸い、唇で扱く。
べったりと舌を陰茎の裏に這わせ、浮き出た血管を押しつぶし、裏筋を擽る。
「ぃ、くっ……」
言い忘れると降りれなくなるほど絶頂させられると仕込まれたアルカディアは、快楽に震える声でエクスタシーの到来を告げる。
お返事の代わりに、クラウディオは口中全体から空気を抜く。
バキュームフェラでアルカディアの腰骨を震え上がらせる。
「んぁ゛──っ♡あッ!?」
とうとう尿道を精液が駆け上がるという一歩手前で、クラウディオはぱ、と唇を性器から引き剥がした。
突如放り出されたアルカディアの性器はぷるんぷるん、と揺れながら逸らされた絶頂に切ない涙をこぼしていた。
「あ、ぇ…?」
「まだ、出していいと言っていないだろう」
さあ、シャワーを浴びようか、とクラウディオはベッドから立ち上がる。
「な…で…」
アルカディアはイきそこねた唾液まみれのちんちんを晒して、へたへたとベッドにへたりこんでしまった。
シャワーブースでは泡のついたクラウディオの手に体中を撫でさすられ、泡まみれになった身体でクラウディオを洗うよう命じられた。
泡まみれのアルカディアの身体がおずおずと押し当てられ、こすりつけられるのに、クラウディオは上機嫌で喉を鳴らした。
きちんと言いつけ通りできれば、クラウディオは背骨がバターみたいに溶けてしまいそうなキスをして褒めてくれる。
アルカディアがお尻を洗われることに泣きじゃくって抵抗したのはもうずいぶん前だ。
今じゃアルカディアは、洗ってもらって綺麗になったことを見せつけるように自分で薄い尻たぶを割り開く。
「今晩も、よくできたな」
クラウディオがローションで濡らした指で、よしよしと前立腺を撫でてくれるからだ。
アルカディアはひとしきり、撫でてもらって快楽を得た。けれどこちらも、絶頂する前に引き抜かれてしまう。
前も後ろも物足りない。
切なさに震えるアルカディアを抱きしめ、自分だってガチガチにした陰茎をアルカディアの下腹に押し当てる。
下腹部に性器が当たると、いつもこんな所まで挿入されているのかと、改めてアルカディアがおののく。けれど、その手はクラウディオの背中と亀頭に添えられ、恋人の熱い身体をそっと撫でる。
セックスは、自分が自分でなくなってしまうくらい怖いことだとクラウディオに教えられた。
同時に。
「アルカディア」
彼の熱に煽られて、コンポートにでもなってしまったかのように気持ちの良くなることだとアルカディアは学んだ。
大好きと百の言葉を贈られるより、アルカディアに触れるクラウディオの血の熱が彼の気持ちを物語る。
──だから、怖い。
愛されているのは分かるのだが、やがて頭からぱくりと食べられてしまいそうなのだ。クラウディオの体温の意味を漸く悟ってから、アルカディアは彼をエッチに誘わなくなった。危ない。
だが、陰茎はびきびきと血管を浮き上がらせ、皮の中からまろびでて、膨らんだ先端の割れ目からトロトロと透明な雫を漏らす。
身体が、苛めてって、言う。
アルカディアは自分で自分の膝裏をかかえ、なにもかもをクラウディオに差し出すポーズで震えていた。
脚の間で絵筆が前後している。穂先には絵の具ではなく、アルカディアがお漏らしした先走りとローションがたっぷりと塗りつけられている。
穂先は鈴口で先走りをすくい取り、亀頭にまんべんなく塗り込んだあと、カリ首の段差を辿って裏筋をコショコショする。
「っぅう……っ♡」
アルカディアはもどかしい性感に喉を搾る。
膝が閉じてしまわないように、ぎゅ、と抱えた腕に力を込める。
一度でも扱いて貰えれば気持ち良く射精できるのに、してもらえていない。
だのに、陰茎の中にはプロステートチップが入り込んでいる。長さ三センチ、幅は5ミリほどの樹脂でできた、おうとつのある薄い板で、尿道の中に埋める器具だ。
前立腺に到達すると尿道をみっちりと満たして、括約筋の収縮で内側からコリコリと弱点を苛む。尿道プジーと違って入れたままでも射精ができるし、扱いても中を傷つける危険はない。
「あ、ぅ、いく、い…く……」
そう、射精できるのだが。さっきから筆でしか撫でてもらっていない。それでも繰り返されれば射精することもできるのに、いきそうになると刺激は終わってしまう。
「じゃあ、ここまでだな」
「くら……ぃお、おねが、い……いかせて……」
アルカディアはもう何度目とも知れない懇願を漏らした。いくって言わないで絶頂したらきっとお仕置きされるけど、いくって言ったらいけなくなる。
「いいや、まだ。もっとお前の声を聞かせてくれ」
「ぅあっ……」
しゅるり、と離れていった筆を追ってアルカディアの腰がかくかく揺れるが、クラウディオはもう少し堪えなさいとアルカディアの脚を撫で撫でする。
「っぅ、ぅう……!」
アルカディアはもどかしさに震え上がる。
撫でてくれる手は優しい。クラウディオを見上げれば、情欲を滲ませた目でアルカディアを見つめている。
大開脚したその中心で、唇と同じ色をしたアナルがひく、ひく、と切なく震えている。
射精感が引くまで、筆はこの貪欲なお肉の輪をたっぷりとローションをのせてなで回すのだ。
「うぁ…あ…ぅ」
アルカディアの唇からどうしょうもない声が漏れた。穂先がほんのわずか、パクパクしている粘膜に埋まり、ローションで濡らしただけで出て行った。
「っん、ぅう、ううっう〜〜!くらでぃお、じゃなかっ、たら…こんなのっ……絶対、許さないぃっ……!」
真っ赤に熟れた唇から恨み言が漏れ、クラウディオは気持ちよさそうに笑った。
「お前に許してもらえると格別の喜びがあるな」
「あぅッ!」
クラウディオの指がごく、浅く、アナルへ埋まった。
それだけで粘膜全体がきゅうう♡と収縮し、快楽を貪ろうとした。
もう、アナル全部が前立腺みたいな感度になっていることをアルカディアが実感し、愕然と目を見開いた。しかし、指はすぐに抜けてしまう。
代わりに、射精感の引いた陰茎が再び絵筆になで回される。
「も、っもう、やだっ……!それ、やだぁ……!」
クラウディオの手の中で性感が研がれていく。
いや、いや、と言いながらも、お利口なアルカディアは膝裏を持つ手を外さない。
もう陰茎全体の感度が異様に上がっていて、柔らかな絵筆の毛の一本一本が知覚できるようだった。
絵筆の先が、プロステートチップから伸びる糸を垂らした鈴口にチョリ、と埋まる。
「んっぅううっ……♡」
ぞぞぞ、と甘い痺れが背筋を駆け上がり、括約筋がきゅうっと締まってプロステートチップを前立腺に食い込ませた。
頭がくらりとくるような絶頂の予感に腰骨が震える。
アルカディアの脳裏に、このままイッちゃいたい、という欲が溢れた。
射精したらごまかしようがないけれど、ナカイキだったらバレないかもしれない。焦らされすぎて目の前が潤んできてるのだ。
──イきたい。イきたい。
「っふ、う、……ぃ、く……」
ぽろり、ととうとうアルカディアのまなじりから涙が一粒転がった。
これまで丹念に躾けられてきたアルカディアは、ほとんど反射的にいく、と口走っていた。さあ、とすべての刺激が止まってしまう。
「あ、やっ…やだぁっ」
ぷるん、ぷるん、と陰茎を揺らしながら、アルカディアが泣き言を漏らした。
「お、ねがっ…お願いっ、も、なんでっ……!なんで、イかせて、くんないのっ……」
もどかしさに全身を真っ赤に染め、足指を丸めて、すべてをさらけ出しながらアルカディアが懇願する。
「おねがっ……!イかせて、お願いぃ…」
クラウディオはゾクゾクと快楽に痺れながらアルカディアの足首を掴んだ。
丸まった足指の間に舌を突っ込む。
「んひぅっ!?」
こそばゆさと性感が入り交じったようなざわめきにアルカディアが跳ね上がった。
クラウディオの舌が足指の間を行き来する。
「な、なんっ、ちょ、やっ…め、くら、ぃお、…や、だっ……」
慌ててアルカディアが脚を引いたり顔を引き剥がそうとしたりするのだが、脚はびくともしないし、顔には腕が届かなかった。
「やめ、てっ…!」
最悪の予感にアルカディアが叫んだ。
アナルがひくり、ひくり、と蠢くのだ。
もう、これでもいいからイッてしまいたいと言うように。
アルカディアは足指を丸めるくらいしか抵抗ができなかった。しかし、そんな指もクラウディオの両手で割り開かれれば抵抗できない。
「ふっ、ッぅ、ぅう、ぃうっっ……ッ!」
親指と人差し指の間を舌先でチロチロと擽られ、アルカディアは下腹にぎゅうっと力を入れて枕を握りしめた。
イきたかったけど、足指舐められて絶頂したら、いよいよ戻れない所に連れて行かれそう。
我慢して、我慢して、とうとう、アルカディアの陰茎からタラタラ〜と精液が漏れ出てきた。
射精の快楽がないまま、刺激に耐えかねて精液が溢れてくる甘出しだ。
「なに…これ、やだっ……出て、ぅ……ッ…ね、え、くらぃおっ、からだ、へんっ……ッ!」
イッてないのに射精してる。
アルカディアの足指を咥えて、クラウディオが愉悦を浮かべて笑ったのが伝わってくる。
本当にこの男、美しい顔で産んでもらったことをご両親に感謝すべきだ。かっこよくなけりゃ許さない。
「これ、やっ……、やだ、ぁあっ…イか、せて、ちゃんと、いかせて…よぉっ……」
足指の刺激はこそばゆく、快楽と言えなくは無いが到底絶頂できるものではない。
アルカディアが本格的に泣きを入れた。気持ち良くビュービューしていないのに、お漏らししているから精液のストックが無くなっていく。
物理的に、射精したくてもできない身体に変えられていく。
バキュームフェラまで食らっておいていけなくて、絵筆にさんざん焦らされたのに出せなくて、じれて焦れてたまらなかったのに、こんなふうに射精できなくなっていくなんて。
「いや……いやぁ、あ……!ちゃん、と、イかせて……ッ!」
すすり泣いたアルカディアの足首を、クラウディオが優しげに撫でた。
「なら、これをどうされたいのか、言ってみろ」
クラウディオの指が、ひくんひくんと蠢いていたアナルをツン、とつついた。
それだけでアルカディアの背中に甘い電流が走る。
「は……♡」
「ねだって、くれないのか?」
つん、つん、と指がアナルに触れる。
射精できなくても、中イキできる。けれど、クラウディオが求めている言葉はそれではないだろう。
アルカディアは見開いた目でクラウディオを見上げた。
チェス盤を前に、あとはアルカディアの「参りました」を聞くだけの時と同じ顔をしている。
はく、とアルカディアの唇が震えた。
「挿、れて……」
「なにを?」
「……ッ、」
ぎゅう、とアルカディアの眉が寄った。目をそらしたら満足してくれないのが分かっていたから、クラウディオの目を睨んだ。
「くら、でぃおの、……挿れて、イかせて……」
屈辱と羞恥に頭の中がグラグラ揺れる。
クラウディオがそれはもう満足そうに瞳を優越感でいっぱいにしてアルカディアを抱きしめた。
ああ、と頷く声のなんと弾んで、可愛らしい。
本当に、クラウディオでなければ殺してる、とアルカディアは広い背にせめても爪をたてた。