朝起きたら目の前にクラウディオがいて、それを実感する度に凄く幸せな気持ちになる。
今日は自分の方が早く起きた。自分で言うのもなんだけど、珍しいことだからちょっと嬉しくて頬が緩む。
クラウディオはいつだってかっこいいけど、寝顔は綺麗で可愛いと思う。いつもより幼く見えるような気がする。なんてことを考えていたら、ふいに触りたくなった。起きちゃうかもしれないけど、でも触りたい。そう思ったら止まらなくて、伸ばした手でクラウディオの頬に触れてみる。触れた先から温かさが伝わってきて、なんだかくすぐったかった。
綺麗な肌。クラウディオは本当に綺麗でかっこよくて、なんだか困る。一緒に、傍にいるだけでどんどん好きになる。クラウディオはいつも、自分にはこの人しかいないって思わせてくれて、それがたまらなく嬉しくて幸せだった。
「…クラウディオ」
名前を呼んでみても起きる気配はない。
疲れてるんだろうか。仕事も忙しいみたいだし。なのにいつも、わざわざ自分との時間を作ってくれて、それがクラウディオの負担になってないか少し不安だった。
だけど、今日はクラウディオは休みみたいだから一日ゆっくりできる。
「……」
起きるまで待ってようか。クラウディオ、起きたらすぐご飯食べるかな。
手さぐりで探し当てたクラウディオの端末の画面に表示されていた時間は八時三十分。
自分はともかく、クラウディオはちゃんと朝ご飯を食べたほうがいいと思う。
冷蔵庫の中何があったかな。食パンと、卵とハムとチーズ。トマトと。キャベツと。
そういえばホットサンドが食べてみたい。前にクラウディオがホットサンドメーカーを買ってくれたから、それを使ってみたい。
「…」
──起きるか。
そう自分に言い聞かせるようにして、じっと目の前にあるクラウディオの寝顔を見つめる。綺麗。かっこいい、かわいい。好きだ。愛してる。
そんなことを考えながら、クラウディオの額にキスをした。
起きませんように気づきませんように。
「朝ご飯出来たら、起きてね」
なんて言ってベッドから出ようとした瞬間、強い力で腕を引かれて目を瞬かせた。そして気が付けば、しっかりと目を覚ましている様子のクラウディオが自分を見おろして笑っている。
もしかしなくても押し倒されてる?視界に入るのは、楽しそうな表情のクラウディオと真っ白なシーツだった。
「…クラウディオ?」
無意識のうちに呼んだクラウディオの名前。いつから起きてたのって聞けば、さっき、なんて簡潔な答えが返ってくる。
「お前にキスしてもらって目が覚めた」
そう言葉を零すクラウディオはなんだか嬉しそうで、柄にもなく胸がときめいてしまった。
「アルカディア」
「…なに?」
「私からもしていい?」
なにを、と聞き返すより早くクラウディオの唇が額に触れた。ちゅっていうリップ音と柔らかい感触に目を見張る。びっくりして心臓の音が聞こえてきそう。
動けないでいる自分をどこか満足そうに見おろしてクラウディオは何度も何度も額にキスをする。
くすぐったいし、恥ずかしい。だけど、逃げられない。嬉しくて幸せで、胸が詰まる。
──ああ、違う。
流されてる場合じゃなくて、ご飯。
「…クラウディオ」
「んー?」
「…朝ご飯──んうっ…」
食べないのって聞こうとしたら、どういうわけか口を塞がれてしまった。目を細めて笑ってクラウディオはうんとかあとでとか凄く適当な返事をする。もしかして、ベッドから出る気ないのかも。
そんなことを考えながらされるがまま大人しくしていると、ふいに名前を呼ばれた。クラウディオは頬に唇を落として笑みを深くする。
「今日はずっとこうしていたい」
「…へ」
「ベッドの中でごろごろしてすごそうか」
「……めずらしい」
そう呟いてみたら、こっちが動揺するくらい綺麗に微笑まれた。
クラウディオがしたいっていう事には逆らわない。休みなんて久しぶりだし、たまには一日中ごろごろするのもいいかもなって思うのはクラウディオがそれを望んでいるからだ。
起き上がる様に伸びをしてクラウディオの唇に自分の唇を重ねれば、目の前で綺麗な瞳がぱちりと瞬いた。
「クラウディオがそう言うなら」
「本当?」
「うん」
頷けば、また額にキスをしてくれる。クラウディオは嬉しそうに笑いながら頬を撫でてくれる。それが気持ちよくて、目を閉じそうになる。このままだと二度寝に突入してしまうかもしれない。だけどクラウディオが今日はベッドの中で過ごそうって言ったから、寝ても文句は言われないと思う。
頬に触れていた手が今度は頭を撫でて、クラウディオの声が俺の名前を呼ぶ。
ホットサンドメーカーはまだ使えそうにない。