この日の為に態々取り寄せたといった言葉と共に注がれた酒は、嫌に生温かく粘ついた甘味を感じた。
そして眼前の接待相手の顔に僅かな喜色が見えた途端、クラウディオは心中で大きく舌打ちをした。
──やられた。
そう思った時には口に含んだ酒は、喉元を過ぎて胃の中へと落ちた後で。
下劣な笑みを浮かべて尚も自身を見詰める男に、クラウディオは心中で思いつく限りの罵倒を並べながら手の中の杯を傾けた。
「まだあるんだ。ほら飲んで」
瓶に入った液体が再び杯を満たす。
トプンと揺れたそれは、じわじわと内部から自身を犯し熱を煽っていく。
──ああ、この場にいたのがあの子でなくて良かった。
そう小さな安堵を抱きながら、クラウディオは尚も笑って杯を煽った。
「っ、はぁ、」
明かりをつけることすら煩わしかった。
嫌に荒くなる呼吸と、ズシリと重く鈍く痛む下半身に悪態を吐きながらドアを閉じる。
さっさと抜いて寝るに限ると乱雑に上着を放って、漸く部屋の奥の存在に気づいた。
「…あぁ、来てたのか…」
ソファーで丸くなって寝こけているアルカディアの姿に、クラウディオは呻く様に呟いた。
いつでも部屋に来れるように常に窓の鍵を開けてはいた。
だが、今は何とも間が悪い。
「…」
机上には空になった小さな酒瓶が1つ。間違えて開けてしまったんだろう。
大した量ではないが、下戸とまでは言わずとも酒に弱い彼にとっては中々なアルコール量に違いない。
「おい、アルカディア。起きろ」
ペチペチと頬を叩いても一向に起きないアルカディアに溜息を吐く。
寝ている人間に手を出すほど堕ちてはいないが、燻る熱に耐えられる程の余裕も無い。
もうこのまま、こいつの隣で抜いていいかと無防備に晒された首筋をくすぐれば、声とは言えない吐息が漏れ出した。
「……、んぁ…ぅ、」
「……」
首筋にあった指先が薄いシャツの上を這う。
僅かに膨らんだ突起をなぞる様に円を描けば、ぴくりと身体が震えた。
「…ぁ、…ぁ、ぅ、…」
小さな小さな嬌声が明かりの灯らない部屋に時折響く。
胸から脇腹、それからより際どい所までたどった指先から不意に布の感触が消える。
「……、何だその格好、」
クラウディオのワイシャツだけを身に纏って、他は何も無い姿に溜息を吐く。
よくよく見れば、後ろには確かに慣らした跡もあって、そのことに気づいた途端に瞳の向こう側が鈍く痛むのを感じた。
「……アルカディア、起きろ」
十二分に煽られていた。
このまま突き入れてしまいたいという欲求を残り僅かな理性でどうにか押し留めて、先程よりも強く頬を叩く。
「ひぁ…ん、ぅ、…ぁ、…くら、…う、」
何の夢を見ているかも分からないが、心底楽しそうに笑う子に天井を見上げた。
真っ暗な部屋の筈なのに、視界がチカチカと光って見える。
興奮で痛みすら感じて、ズボンの前をくつろげて息を吐いた。
「…アルカディア、起きろ」
力無く投げ出された両足を抱えて、僅かに濡れた後孔に指を差し入れた。
アルコールのせいか何時もより熱い粘膜を、指の腹で辿り内側から押し広げる様に解していく。
「…ぁ、ぅ…ん…ぁっ、…ひぅ…」
ぴくん、とアルカディアの下腹部がうねる。
元から十分に解されていた後孔は数分もすれば、クラウディオの指を3本も呑み込んでいた。
「…ぁ、…ん、ぅ…」
「まだ起きないのか?」
「…ひぁっ、…」
ずるりと指を引き抜けば、小さな声が上がった。
ひくひくと痙攣する縁に、自身の亀頭を押し付ける様にして息を吐く。
そのまま乱暴に犯したい衝動を無理やり押さえつけて、馴染ませる様にゆっくりとナカに自身を埋めていく。
「…ぁ、ぁ、……ぅ、ん、……、」
焦れったくなる程に時間をかけて漸く、ぱちゅん、と肉のぶつかる音がした。
「ぁっ、ぅ…ひぅ、…」
「っ、…はぁ…」
自身を落ち着ける為に深く深く息を吐く。
起きろ、頼むから、と半ば懇願する様に、自身の下で眠る子の頬を撫でる。
そうすれば途端にくすぐったそうな声を上げて、ナカがきゅうっと締まる感覚に、クラウディオは小さく呻いた。
「…本当に、起きないのか、」
一度腰を引き、少しだけ勢いを付けて戻す。
途端に小さな嬌声が上がって、ナカがうねりそれに煽られるまま、ゆるゆると揺する。
時折良いところに当たれば身体が震えて、徐々に漏れ出す声も大きくなっていく。
「ぁうっ…ひぁっ、…ぁ、ぁ、ぅ、…!」
「…こっちの方が起きるか、お前?」
痙攣する様に震える腰を掴み、引き寄せる。
同時に亀頭の先で押し潰す様に腫れたシコリを抉れば、甲高い悲鳴が上がった。
「っ、ひぁっ、あっぅ、…!?」
閉ざされた赤い瞳が上を向いて、宙を彷徨った。
驚いた様に身体が何度も痙攣して、それに合わせてきゅうきゅうと締め付けるナカに耐えきれず、クラウディオは精を吐き出した。
「ひっ、!ぁ、あつ、…?…ひ、…や、なに…ぇ、…?、やだっ、!」
寝起きと酒のせいで掠れた声に、泣き声が混じる。
中の粘膜にドロドロと吐き出される熱い感触に悲鳴を上げて、逃げようと暴れる手を片手で握り込み涙の浮かんだ目尻に唇を落とす。
「ひぅ、…ぇ、ぁ…くら、ぃお…?」
「ああ。おはよう、アルカディア」
乱れてしまった長い前髪を直してやりながら言えば、途端に強張っていた身体から力が抜けていくのが分かった。
ゆるゆると眉毛が下がり、あぅ、と母音混じりの声が漏れ出す。
「…く、…ら、でぃお、…よかっ、た…」
心底安心した様な声と共に、くてりと無防備に投げ出された身体に堪らなくなる。
「悪い、アルカディア」
「ひぅっ、…ぁ、…?くらでぃお、…?」
はいってる?なんで?と漸く状況を理解した子の頭を撫でて、もう一度腰を引き寄せる。
ぐちゅんと濡れた音がして、途端に痙攣した性器から白濁が溢れるのが見えた。
「ひっぁ、!ぁぅ、ぇ、いっ、ちゃ…」
「ああ、好きなだけイッていいぞ」
「…ぁ、ひぅ、…くら、でぃお…ぁ、あぅっ、!ま、まだ、…あっ、いって、ぅ」
寝起きなのに、快感で潤んだ瞳に眩暈がした。
部屋に響く嬌声と自身の一挙一動に健気に反応する子に煽られて、どうしようもなく興奮していた。
「…どうしようもなくなったら殴れ」
「や、ぁぁあっ…!ひうっ、♡…も、むり、…うぅっ!♡♡」
白や透明の液体でぐちゃぐちゃになったシーツの上で善がり狂う。
何時もより乱雑にベッドに組み敷かれてからずっと休むことなく与えられる快感でもう身体はいっぱいいっぱいで。
頭を振りかぶる様にしながらアルカディアはただただ喘ぐ他なかった。
「も、やぁっ!♡ひぅっ、むり…ぁ、ぅっ…んぅぅ、!♡ぁ…ひ、あっ♡ぁぅ…も、でな、ぃ♡♡」
途端に中の剛直が敏感になった部分を無遠慮に抉って、仰け反りながら絶頂した。
随分前からばかになってしまった性器から少量の精液を吐き出される。
それなのに、クラウディオの動きは止まらない。
「ひっ、♡ぁ、やぁっ、なん、れ♡♡いった、ぁ、いま…いった、のにぃ…あぅぅ♡♡ん、んんぅ♡い、く♡♡」
ビクンッと大きく腰が跳ねて、中の粘膜がきゅうきゅうと中を締め付けた。
途端に中のそれが震えて、自身ですら触れた事の無い最奥に熱が吐き出される感覚に、つま先がぎゅうっと丸まる。
「ひゃぅぅっ、!♡あ、やぁっ、♡♡あつ、…ぁう、あつ、ぃぃ、♡♡♡」
譫言の様に喘ぐアルカディアの両腰を掴み、クラウディオはその身体ごと引き寄せた。
中の粘膜に擦り付けるように亀頭を押しつけて、やがて腰の動きを大きくしていく。
「あっ、♡やぁっ、!…もう、や、むり、…や…いやぁっ!♡いき、たくなっ、も…いった…から…やめ、てっ…」
ガツガツと最奥を押し潰す様に穿つ剛直に、何度目ともなる精を放った。
大きすぎる絶頂で身体の痙攣は止まらなくて、それなのに尚も与えられる快感に泣き叫ぶ。
何より、一言も話さずに自身を蹂躙する目の前の人が恐ろしかった。
「や、やだ、…おく、やら…ぁ…こわ、い…くら…ぅあ…ひっ!…ゃ、やめ、て…とまって…くら、ぃお、とまって、ぇっ、…」
ついに嬌声に泣き声が入り混じる。
快感で蕩けた赤色の瞳に、怯えと恐怖の色が混ざるのが見えた途端、クラウディオは目を見開いて動きを止めた。
「…っ、悪い、」
「ひ、ぁ…ぅ…うぅ…ぁ、ぅ…くらぅ、ひぐっ、ぁ…く、ら、でぃお…」
「うん、悪い、ごめんな」
汗ばんだ手がアルカディアを引き寄せた。
クラウディオの太ももに乗る様な形で抱きしめられて、とんとんと背中を撫でられる。
「んぁ、…ぅ、…ぁ、ひ、…ぅ…」
「いま抜くから、」
「…ぁ、ぅ、ひぁっ、ぁ…!」
身体を浮かされて、今まで自分の中に埋められていた質量が消えていく。
途端に栓のなくなった孔からだらだらと精液が垂れていく感覚に悲鳴が漏れ出した。
「ん、…辛いところないか?」
「…ぁ、う…くら、でぃお…くらでぃお、」
ふぁ、と無意識に止めていた息を吐き出した。
汗と精液だらけの身体は気持ち悪くて、けれど背中を優しく撫でてくれる手のひらにゆるゆると力が抜けていく。
「あぅ、…くら、でぃお、」
「ん?」
どうした、とクラウディオは優しく問い掛けた。
けれどその呼吸は嫌に荒くて、背中を撫でる手は小刻みに震えている。
何より深い深い琥珀色の中心で大きく開いた瞳孔は、未だにアルカディアを喰い荒らそうと鈍く光っていた。
「…ひぁ、…ぅ、…」
もう碌に感覚も無い筈の下半身が、ずくりと重くなるのを感じた。
無意識に溜まった唾液を飲み込んで、アルカディアは小さく息を吐く。
それから、未だに熱の冷めないそれに触れて腰を上げた。
「っ、ぁ、ぅ…ひぅ、…ぁ、あっ、」
たらたらと垂れる白濁のおかげもあって、今まで散々いじめられた後ろは簡単にクラウディオのそれを呑み込んだ。
粘膜同士が触れる感覚に震えながら、意を決して足から力を抜いた。
「──ぃ、っ、!…ひゃあぅっ!ひぅっ、ぁ、っ!♡♡」
「っ、ぐっ、!」
ぐちゅん、と音を立てて根元まで呑み込んだ途端に、体全体を突き抜ける様な快感に貫かれて、痙攣する様に体が大きく震える。
「ひあうっ、♡…あっ、ぁ…ん、ん、っ、♡♡」
「っ、アルカディア…いま、抜くから、」
「いや、やだ…ひぁっ、ぅ、う…だ、い、じょぶ、だ、からぁ…っ、♡♡」
焦った様にいうクラウディオに何度も首を振る。
力の入らない手で抱きついて、くちゅんと腰を揺らしてみせた。
「ぁ、あ…きもち、ぃ、から…ひゃうっ、♡♡ぁ、ひぁっ、!♡」
荒い呼吸のまま自身を見上げるクラウディオに、アルカディアはふにゃりと笑った。
「くらぃおの、ぁ、…ぅ、すきにして、」
「…、」
視界がぐるりと回って、ベッドに転がされた。
そのまま息を吐く余裕すら与えられないまま腰を強く引き寄せられて、ぐぽりと音を立てて中のそれが奥の奥にハメられた。
「ひ、ぃやぁっ、!!♡♡♡」
バチバチと火花が散って視界が明滅する。
頭が真っ白になる程の快感が畳み掛ける様にアルカディアを襲って嬌声を上げながら身体を震わせた。
「ぁうっ、♡、あっ、ひぁっ!♡♡ぅ、うう、そこ…ひっ…、♡やぁっ、!♡♡」
煽るなとばかりに腹側の弱いところを抉られて、熱いものが中に放たれる。
そのまま押し付ける様に亀頭がぎゅうっとシコリを抉られれば、過ぎた快楽から逃げる様に腰が浮く。
「あぁっ!ひうっ、♡あ、あ、うっ、!♡♡いくぅ、♡♡また、ぁ…いくぅ、!♡ひぁっあっ、!♡♡♡」
両手をベッドに縫い付けられて、覆いかぶさる様に真上から体重をかけられる。
途端に更に深い場所を抉られて、中が大きく痙攣した。
「あっ、まっ、♡♡…ひうっ!あぅ…ん、んっ♡♡ぁ、また、ぁうぅ♡…んあぁっ、!♡くあ、ひぅっあっ、くあぃお、んぅ、♡♡」
あやすようにクラウディオの唇で口を塞がれた。
何時もよりずっと熱い舌に上顎をくすぐられて、舌の根元から先までを舐め上げられて、ビクビクと身体が震えていく。
「んぅ、ぁゔぅ、っ、んぅっ、!」
ばちゅん、と肉同士のぶつかる音がして、一際大きな火花が散った。
少し遅れて腹の中を熱い飛沫が満たすのを感じて、アルカディアは熱い吐息を漏らした。
「…ぁ、ひ、…ぅ、ぅ、」
頭に霞がかかった様で、ふわふわした。
涙腺も口も全部が緩まって、涙とも涎ともわからないものがシーツを汚す。
ベッドの軋む音と共に、横に転がった人の温もりと汗の匂いに頬を緩ませて、意識を手放した。
遠くで軽快な給湯器の鳴る音がした気がした。
途端に日光が瞳を差して、うぅと唸ってみると足音が近付いてきた。
「起きたか」
「…くら…でぃ、お、」
自身を覗き込む様に見るクラウディオを呼ぶ声は酷くひび割れていて、他人事の様に聞くに耐えないと思った。
「身体、辛くないか?」
「……ん、ない、…」
ゆっくりと首を振って体を起こす。
そんなアルカディアの背中を支える様にしながらクラウディオはそうか、と呟いた。
そしてそのまま朝日でキラキラと輝くグレーの髪が揺れて、頭を撫でられた。
「…クラウディオ?」
「悪かった」
端的で静かな謝罪に息が止まった。
昨日の事を言っていると理解はしても、目の前の人に謝罪をさせている事実にたまらなくなって、アルカディアは声を上げた。
「や、やめてっ、おれは、全然…」
「…」
未だに煮え切らない様な顔をするクラウディオに眉を下げる。
「ほ、本当に大丈夫…。ちょっとは…驚いたけど…その、」
自身を見下ろす充血した瞳と、汗ばんだ手のひら。
『っ、アルカディア…!』
少しだけ掠れた声で名前を呼んでくれた事を思い起こして、赤くなる頬を抑えながらうっとりとした様な声で言う。
「余裕のないクラウディオ、その…ちょっとかわいかった…」
「お前なあ…」
呆れ混じりな溜息が吐き出された。
それでも未だにその手はアルカディアの背中に添えられていて、とんとんと優しく撫でてくれている。
「…本当に痛いところは無いか?」
親指の腹で目尻をそっと撫でられる。
腫れてしまったなと眉を下げる姿に、ゆるゆると首を振った。
だって、ほんとうに、辛いことも痛いことも何もなかった。
クラウディオに求められることはなんだって嬉しい。
何よりこの身体は人間よりもずっと頑丈なのだから。
それを一番よく知っているのは貴方なのに。
「…」
「…どうした?」
微笑むアルカディアに、クラウディオは問い掛ける。
それでもぽかぽかと胸の内から生まれる感情のままアルカディアは笑って言った。
「やさしくされるの、うれしい」
何言ってるんだってまた言われるかもしれないけれど。
綺麗に着せられた服だとか。
汗も精液の匂いもしない綺麗なシーツだとか。
台所からするちょっとだけ甘い香りだとか。
あれもこれも目の前の人の優しさだって分かるから、どうしようもなく頬が緩んで仕方なかった。
「…」
クラウディオの手が頬に伸びる。
その眉は少しだけ顰められていて、何か変なこと言ったかなあなんて、思っていた。
「当たり前だろう、好きなんだ」
「……へ?」
何とも間抜けで、ばかみたいな声が漏れ出した。
どくんどくんと鼓動が高鳴っていく。
「愛しいやつを大切にしたいって思うのはおかしいか?」
「………、ぁ、ぅ、」
綺麗な綺麗な青空に真剣な顔で覗き込まれては、もうどうしようもなかった。
ぎこぎこと上手く動かない首を振って、アルカディアは呻く様に呟いた。
「…ぉ、おかしく、ない………」