"Curiosity"
can be dangerous.
——ドチュっ、ぬぷ、ぐぽッ、
「ッは、あ゛、ぁッ♡♡まっ…ぇ、くら、ぃお、ッッあ、んん゛ッ♡♡」
「ッこれくらい、激しいのも好きだろう?……お前はこっちの方がいいか?」
「ん、あ゛ッッ!?♡♡ぁ、ぐッ!ひ、ぁ、あ゛ッ!!あ、ん…っっぅう゛っ〜〜〜ッッ♡♡♡♡」
感じすぎてしまう浅い前立腺部分を亀頭でゴリゴリと抉るように刺激されたかと思えば、結腸口をひと思いに突かれ、目の前が真っ白になる。
抽挿の度に、中に出された精液とローションが混ざった粘液がアナルから溢れ、既に中身を空っぽにした睾丸や赤く色づいた尻たぶを伝う。
だが、それでもまだ物足りないと言わんばかりに収縮を繰り返すソコは、奥を突かれるタイミングでゴボ、ブチュ、と精液を噴き出していた。
いったい、どれくらいの時間が経ったのだろうか。
結構な長い時間、こうして目の前の恋人と交わっている気がする。その所為かあまりにも絶頂を極めすぎた自身は、勃つことさえままならず、律動に合わせて惨めに震えるだけのお飾りにすぎない代物に変わり果てていた。
「アルカディア。また、上手に受け止めてくれるか?」
「っひ、あぁ゛♡♡っん、も、いら、な…っあ、また…イ、く…い゛ッん、ッ〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ゛♡♡♡♡」
どちゅッ、どちゅッ、と雄が絶頂を迎えるためだけの激しいストロークに、アルカディアはたまらず絶嬌する。
強すぎる快楽に耐えられないとばかりに弱弱しく震える腰をグッと引き寄せられたかと思えば、最奥にぐっぽりとハメられた感覚に、敏感な身体はまた深い絶頂を迎えた。
──なんでこんなことに、なっているんだっけ……?
絶頂を極めすぎた、快楽に浸りに浸った頭では何も思い出せない。
たとえ、このセックスの引き金となった原因が自分にあっただなんていうことでさえも、既にアルカディアの頭の中からは抜けてしまっていた。
というものの、そのきっかけというのは、率直に言えば、彼の些細な「好奇心」であった。
アルカディアは、暇を持て余していた。今日は自分の仕事は無いし武器の点検も先日やったばかりで彼は一人、自室のソファーに腰かけながらもこの手持無沙汰な状況に、悩まし気なため息を吐いた。
「(クラウディオもルカもまだ帰ってこないし……他にやることもない……)」
兄弟は最近仲の良い野良猫の友達が出来たらしく、屋敷の屋根の上で楽しそうにしていることだろう。
何かやるべきことがないかひと通り考えを廻らせてみたが、結局暇を潰す適当なものも思いつかず、おもむろに、アルカディアは目の前に置いていた端末を手に取った。
なんの目的もなく様々なサイトを巡っていると、スクロールのタイミングでうっかりアダルトサイトの広告をタップしてしまった。
決して自分の意思でタップしたわけではないのに…いい加減この仕様は何とかならないのだろうか。
ちょっとした苛立ちを感じながらも画面を元に戻そうと左下のボタンを押そうとしたが、既に例の動画の静止画が映し出されていた。
そこには先ほどの広告に映っていた若い男優が一糸纏わぬ姿で四つん這いになっていた。
流石に、成人向けの動画ということでワンクッション入れてあり、動画も自動的には再生されることはなかったが、アルカディアは何となくこの動画が気になってしまった。
というのも、タイトルと概要欄から察する限り、これはどうやら「玩具責め」、つまりはアナルやペニス等の性感帯を玩具で責められる動画だったためである。
既にアナルで快感が得られるアルカディアは、この男優がどのように責められるのか興味を惹かれたのであった。
動画の再生ボタンを押せば、陰部のモザイクがとれた四つん這いの男優が映った。
彼のアナルには、俗にいうバイブが挿入されていた。
だが、よく見れば、それだけではないらしい。バイブとアナルの縁からはピンク色のコードが伸びており、どうやらバイブの更に奥にローターが挿入されているらしい。
否、またしてもそれだけではなかった。
彼のペニスからも同じピンク色のコードが伸びていた。アナルにローターとバイブが挿入され、ペニスにローターを巻き付けられた状態の男優に、別の男優が近づいた。
そして、アナル内に収まったバイブとペニスに巻き付けたローターのスイッチを入れられた途端、彼は叫ぶような喘ぎ声を上げた。
音量を下げるのを忘れていたため、部屋中に嬌声が響き、アルカディアは慌てて音量ボタンを長押しした。この屋敷の防音はしっかりしているし誰もいないとはいえ、大音量で自身の端末からAVが流れるという事態は流石に恥ずかしすぎる。
音量もしっかりと下げたところで、気を取り直して動画に集中すれば、快感をモロに受けている男優の近くにいた別の男優が稼働して小刻みに震えているバイブの根元を押さえ、直腸の奥をピンポイントに刺激するように動かした。
アナル内のローターが直に結腸口を刺激されるのと同時に、敏感なペニスの裏筋をローターで刺激され、彼は絶叫していた。受容しきれない強すぎる快楽に、彼は断じて「艶やかな」とは言い難い、野太い雄叫びのような声を上げながら海から引き揚げられた鮮魚のように何度も身体を跳ねさせて、終いには射精だけでは飽き足らず、潮を噴いたのであった。
「(すごく喘いでるけど……なんか気持ちよさそう…)」
率直に言うと、この動画にアルカディアはかなり興味をそそられた。
男優の気持ちよさそうな姿にというより、男優が感じているだろう快楽の強さに魅入られたのである。
たとえ、その彼の快感によがっている姿が台本通りの演技であろうがなかろうが、複数の性感帯を玩具で同時に責められるという状況は、アルカディアにとってはとても魅力的で好奇心がそそられるものであった。
太めのバイブをソコにぐっぽりと咥えながら、普段は自分で弄るにはなかなか勇気が出ない敏感な結腸口をバイブの振動で小刻みに震えるローターで直に刺激される……想像するだけで、腹の奥がじくじくと疼いてしまう。
念のために断言しておくが、彼は今のセックス事情にマンネリを感じているわけではない。彼自身の中に芽生えた、単純な自慰に対しての好奇心が彼にこのような衝動を与えたのである。
つまりは、アルカディアは彼の男優が体験していたようなエクスタシーを自分も体験してみたいと思ってしまったのだ。
アナルの下準備も済ませ、バスタオルの敷かれた自室の床にアルカディアは座り込んだ。彼の横にはバイブと卵型の小さなローターが二つ、それとローションが置かれている。どれも以前にサファイアが内緒でくれた代物であった。
既にズボンと下着を脱いだむき出しの下半身に目を向けると、これから体感するであろう快感の激しさに期待しているのか、すっかり頭を擡げている自身が視界に映った。
最早彼の身体は、髄の奥深くまで好奇心と本能的な欲に支配されていた。
少量のローションを手の平に取り、体内に近い温度になるよう指の腹で軽く混ぜながら温めた後、その温かな粘液を纏わせた人差し指と中指でアナルの縁に柔く触れた。下処理の段階で粗方柔らかくなったソコは、軽く触れただけでくぱ、と口を開け、「早く、早く、」と強請るように収縮していた。堪らず中指を挿入すれば、中の襞は待っていましたとばかりにうねりにうねって、奥へと誘った。
「っ、ん……」
人差し指も続けて挿入すれば、よりアナルが拡がる感覚に、アルカディアの背がふるり、と震えた。それでも性感帯にはまともに刺激が与えられていないのだから、焦れったさに腹の奥はジクジクとひどく疼くし、自身の先端はくぱ、くぱ、と収縮させながらカウパーを滲ませているし、口内からは唾液が溢れて仕方がない。
粘液を纏った指を動かせば、くちゅ、くちゅ、と淫らな水音と共に、その焦れったさが増していった。中を拡げるための単純作業じみた動きに、もどかしいとばかりに腸壁越しから前立腺が疼く。
だが、ここでこの敏感な性感帯に触ってしまえば、玩具を挿入する前に絶頂し、果ててしまうことは目に見えていた。あの快感を最高の状態で味わうためにもそれだけは避けたい。
すっかりと例のAVの虜になったアルカディアは、触りたいという衝動に耐えながらも指を動かし、しばらくすれば、どうにかバイブが挿いるくらいには中も柔らかくなっていた。
だいぶ中も柔らかくなったところで、アルカディアは指をアナルから引き抜いた。
異物が抜かれたソコは、先ほどより赤く色づいており、未だに性感帯に触れられていないもどかしさに尚一層ヒクン、ヒクン、と激しく収縮していた。
「っん……ん、……」
まずは、ローターを挿れなければならない。
小さな卵型の玩具にローションを纏わせ、アナルにあてがえば、柔らかいソコは異物を拒むこともなく、媚肉のうねりに合わせて奥へ奥へと呑み込んでいった。ローターがしっかりと挿いったことを確認し、続いてバイブをアナルの縁に近づけた。
「ん……ひ、ぁ……」
しっかりと慣らしたおかげか痛みを伴うことなく、バイブはすんなりと挿いっていったが、ローターより質量の大きいソレは刺激を求めてくぱ、くぱと収縮するアナルを隙間なくみっちりと埋めた。
「ッひ……ぃ、あ、」
コツン、とローターが結腸口に当たる感覚にアルカディアは小さく喘いだ。
ここを責められるのは恋人とセックスしている時くらいであって、今までは自分で弄ったりすることはなかった。
玩具の硬い先端が柔らかくて敏感な結腸口を刺激する未知なる感覚に、アルカディアは少し戸惑った。あまりにも奥にローターが挿ってしまっているのだ。このまま抜けなくなってしまったらどうしたらいいのだろうか。
そんな不安を感じながらも、アルカディアは腹の奥のもどかしさに、もう後には戻れない状況へと追い込まれてしまっていた。
すっかり勃ち上がっている自身にもローターを取り付け、ひと通りの準備は整った。
あとは、スイッチを入れるだけ。
これから訪れるであろう刺激と快楽を期待してか、口内からは唾液が溢れてくるし、腹の奥の疼きもいっそう痛いくらいに感じていた。
アルカディアは、一つ息を吐くと震える手でバイブのスイッチに触れた。
——カチっ。
「〜〜〜ッ゛ッ!?!?♡♡♡っひ、ぁッ゛ッ??!♡♡♡」
——ヴヴヴヴヴ……
「っあ゛、ぁ゛ッッ♡ッん、んんッ……ん、あッッ♡♡」
スイッチを入れた途端、アルカディアは絶嬌した。
バイブが震えれば、腸内全体だけでなく、その奥に挿れられたローターも自ずと振動するのだ。
つまりはそれと密着した結腸口が刺激されるわけなのだから、たまったものではない。
これはやばい、と本能なのかアルカディアは絶頂に身体を痙攣させながらもバイブのスイッチを切った。
「あ……あ゛っ……ひ、ぅ……♡♡」
振動は止んだものの、アルカディアは未だ絶頂が収まらないのか時折身体をビク、ビクと痙攣させていた。
そのような強すぎる刺激に応えるかのように彼の自身の先端からは、白いねっとりとした雫がポタ、ポタと落ち、床に敷いたバスタオルに染みを広げていた。触らずに吐精すれば、通常の射精よりも余韻は長い。
身体をビクつかせ荒い呼吸を繰り返しながらも、アルカディアはこの強すぎるほどの快感に浸っていた。
バイブを咥えこんだみっちりと拡がったアナルも絶頂をキメたせいか、更に激しくヒクつかせていた。
もし、この時点で快楽の強さに慄いて、或いは満足していれば、後々の事態は免れたのかもしれない。
だが、この時アルカディアは酷く興奮していたし、すぐにスイッチを切ってしまったことを後悔していた。
まだ足りない。もっと気持ち良くなりたい。
一度達したにも拘わらず、まだこの刺激を味わいたいとばかりに自身にも再び熱が溜まりだし、腹の奥もそれを待ち望んでいるかのように貪欲にもキュン、キュンと疼いていた。
「あ……ぁ……♡」
震える手でペニスに取り付けたローターのスイッチに触れる。
カチ、とスイッチが切り替わる音と共に、裏筋に取り付けたローターは忽ち小刻みに震えだし、敏感な箇所をダイレクトに刺激されたアルカディアは、嬌声を上げながら腰をバウンドさせた。
「ッあ゛♡♡ん、ひ、ぃ゛ぅッッ゛♡♡」
快感に震えながらも、どうにかしてバイブのスイッチにもアルカディアは手を伸ばした。
——カチッ。
「〜〜〜 〜〜 〜〜〜ッ゛ッ゛!?!?!♡♡♡♡」
敏感な結腸口をローターの振動でびちびちと叩かれ、それと同時にペニスの弱い箇所も小刻みに震わされ、目の前に星が散る。
身体は自分の意思と反してビク、ビク、と何度も跳ね上がり、その先端からは再び白濁が、メスとしての快感の方が強いためか、さほど勢いもなく吐き出されていた。
「あ、ゃッ、っひ、うう゛ぅ♡♡ッぁ゛、ん、ぁッッ♡♡」
ひたすら嬲られるかのような一方的な刺激に雄叫びのような嬌声が止まらない。気持ち良い。いや、気持ちが良すぎるのだ。
軽い気持ちと単なる好奇心で始めたはずの行為のはずが、喉を反らせてみっともなく喘ぎ、何度も決めた強すぎる本気イキに身体はビク、ビク、と痙攣を止めないし、ペニスからは、ねっとりとした雫が勢いもなくダラダラと零れていた。
身体を支えていたはずの両腕も、力が入らないのか腰だけが上がった状態でアルカディアはひたすらに喘いでいた。
クラウディオ
ふとアルカディアは、恋人の姿を思い浮かべた。
「く、ら…でぃお…♡♡あ、やッ、ひ、ん♡♡」
恋人の名を呼びながら、アルカディアは一方的な快楽によがる。
この場に彼がいて、このはしたない恰好を見られていることを想像するだけで、何かムズムズするようなゾクゾクするような筆舌しがたい感情が胸の内に湧き上がってくるのだ。刺激され続けているはずの腹の奥がキュン、キュンと疼いているような気にもなってしまう。
年上の彼とのセックス事情というものも、恋い慕う者同士のコミュニケーションの一環として行われる至って普通のものであった。
だが、前述したとおり、決してアルカディアはそれにマンネリを感じているわけでもないし、満足していないわけでもない。何度も言うが、これはアルカディアの単なる好奇心が彼の心を揺さぶったせいである。
——アルカディア。
「ッあ、ん♡ひ、ぅぅ♡♡♡くら、ぁ゛ッ♡ひ、お♡♡」
彼の名前を呼ぶうちに、本当に彼がこの場にいるような気分になってしまう。見られている。クラウディオに見られている。
そのように脳が錯覚し、アルカディアは強い快感に襲われ、背をしならせた。
「あ゛、ぁ゛♡♡ッら、ぇ゛、っぃ、く…ぅ゛♡♡ッん゛ッ〜 〜 〜〜ッッ♡♡♡♡」
身体を嬲る快感に堪らず、アルカディアは再び絶頂を迎えた。
だが、その自身の先端からは透明な液体が数滴零れた程度であった。完全に射精を伴わない「メスイキ」に、アルカディアは脱力した身体をガク、ガク、と震わせながら余韻に浸っていた。
「ぁ……♡ッは……ぁ゛……♡♡」
バイブとローターのスイッチは何とかして切り変えたものの、余韻が抜けきらず、身体は思うように動かせない。
スイッチを切るときに体力を完全に使い果たしたのか、涙を拭う気力さえ湧かないのだ。
これからこの後始末をしなければならないのに。
最悪なことに、余韻に痙攣することはできても身体はまったく動かないのだ。
流石にやり過ぎてしまったと後悔した時にはもう遅かった。
——……ア……ディア……。
ああ、まだ彼の声が聞こえる。まだ余韻から抜けられていないのだろうか。
確かにものすごく気持ち良かったけれど、流石にここまですごいとは思わなかった。
仕事終わりの彼にこんな淫らな姿は見せられない。早く、起き上がって後片付けをしないと——
——アルカディア……アルカディア……。
「……?」
なんでだろう。幻聴のはずなのに、先ほどよりも自分の名を呼ぶ声が鮮明に聞こえてくる。おかしいな……だって、彼は……クラウディオはまだ仕事で家にいないはずなのに——
「アルカディア」
より鮮明に聞こえる彼の声。もしかして、なんて思った時には既に手遅れであった。
「〜〜〜〜っ゛!??く、らでぃお……なんで……?」
あんなに動かなかったはずの身体で後ろを振り向けば、目の前には先ほどまで自身が名前を呼んでいた彼、クラウディオが立っていた。
「何でって…今日は早く帰れそうだとメールで連絡しただろう。…それよりも——」
そういえば、あんな行為に耽っている間は一度も端末を見てはいなかった。恐らく、クラウディオはその時に連絡を寄こしたのだろう。
そんなことよりも——
「(み、見られた……)」
見られた!見られた!見られてしまった!いくら誰もいないとはいえ、自室で自慰に、しかもアナルに玩具を挿れて、本気で喘いでいるといった痴態を想い人に見られてしまった。
先ほどはそのような妄想に興奮していたとはいえ、現実ともなれば話は別だ。
この筆舌しがたい羞恥に、アルカディアはどうすればいいかわからず、「あ……ぇ……」と唇を震わせながらぺたんと座り込んだ状態のままで固まっていた。
嫌われる…?軽蔑される…?こんなふしだらな格好。
あまりの恥ずかしさと酷い恰好をしている自分に注がれる鋭い視線に、目頭が熱くなっていく。
汚いって罵るだろうか。愛想つかされて別れを告げられるのだろうか。
これからおこるであろう最悪なことに、アルカディアはあんなに熱かった身体が寧ろ氷の如く冷たくなっていくように感じた。
何か言わないと…謝罪、経緯、弁明、反省?何か口にしなければ……。
だが、震える唇は思うように動かない。せめて、名前……最後に名前だけでも……!
「く、くらでぃお——」
「アルカディア、」
——私の部屋に行こうか。
そう言った彼の口調は草木を柔く撫でる春風のように非常に穏やかなものであった。
だが、それは、まるで非常に複雑で騒がしい感情を抑えるためのような、隠すためのような表面上のもののようにも見て取れた。
連れてこられた先は、宣言通りクラウディオの部屋であった。
何度も絶頂を決めた身体では思うように力が入らず、思考も上手く纏まらないため、クラウディオに姫抱きの状態で運ばれたのであった。
滑らかなシーツの上に下ろされ、アルカディアは隠せない不安にカタカタと身を震わせ、クラウディオを見上げることもなく俯いていた。
「アルカディア」
名前を呼ばれ、赤く染まった頬に大きな手が触れる。先ほどまで外気に当てられていたそれは、僅かにひんやりとしていた。
「私の名前を呼んでいたな」
やはり聞かれていたらしい。
羞恥と不安と恐怖に、熱くて冷たい身体がわなわなと震えた。
これから、自分はどうなるのだろうか。軽蔑されてしまうだろうか。
そう考えてしまうだけで、涙が溢れてくる。
「ご、ごめ、なさ…あの……おれ、…わ、わか、別れないで……」
言葉を紡げば、それと同時にぽろ、ぽろ、と熱い雫が目から次から次へと零れ、太ももやシーツの上に落ちていく。
嫌いにならないで、と紡ぎながら、堪らず嗚咽が漏れ出していった。
そんなアルカディアを見たクラウディオは彼の思う通り、軽蔑したのだろうか。
いいや、そのようなわけがない。
彼は一時アルカディアの言葉と表情に首を傾げたが、それは、自分がこの愛おしい子を嫌う理由がどこにもないこと故にだ。
そして、そんな純粋な彼の姿を見て、その薄い唇は確かに端が上がっていたのだから。
「アルカディア」
もう一度名前を呼ぶ。穏やかな口調だったはずだが、彼はよほどショックだったのか俯いたままである。
「アルカディア。私を見ろ」
頬に添えた手をゆっくりと顎に添え、自分の方へと視線を向けさせた。
泣き腫らした瞳はいつもより赤く、頬にはいくつもの涙痕が残っている。
嗚咽が収まらない彼の背を撫でながら、クラウディオは、ゆっくりと口を開いた。
「嫌いになんかならないよ」
単純にそう一言だけ伝える。
余計な言葉も複雑な言い回しもせず、クラウディオはありのままの気持ちを伝えたのだ。泣いてパニックに陥っている目の前の彼に、自分の言葉と気持ちが届くように。
少し呆れたような、だがどこかそんな自分を愛おしそうに見つめて微笑むクラウディオに、アルカディアは驚いたように、呆然と彼を見つめた。
「嫌い、じゃない……?」
子供のような舌足らずな返しが、あまりにも可笑しくてクラウディオは思わず肩を竦めて笑ってしまった。
「勿論」
「ま、まだ一緒に居てもいい……?」
「はは、“まだ”じゃないよ。ずっと、いてくれ」
「本当……?」
「私が嘘をついているように見えるか?」
そう問えば、アルカディアは未だに動揺を隠せてはいないものの、「み、えない……」と小さく首を振った。
「そういうわけだ。けど、返信もよこさないから心配したぞ」
──まさか、こんなことになっていたなんて思ってはいなかったけれど……
本心は内に留めるだけにして口に出さなかったが。
耳の端まで赤く染まったアルカディアに可愛いらしさを感じながらも、そんな彼をいたわるように頭を撫でてやる。
汗が滲んだ柔らかい髪は、雨に濡れた子猫のものを想起させた。シーツの上に縮こまっている彼の体勢も相まって、本物の子猫を撫でているような気分になってしまう。
「アルカディア?」
しばらく撫で続けていると、再び落ち着きを取り戻したアルカディアが、頭を撫でている手とは逆の方の裾を恐る恐る握ってきた。自分を不安げに見つめてくる彼の目は泣き腫らした後のためか、赤く充血し、涙の残膜で潤んでいた。
恐らく、彼はクラウディオの指示を待っているのだろう。
玩具が挿入されたままの身体をどうしたらいいのかわからず、この子は自分に縋っているのだ。
なんて愛らしい子なのだろうか。
クラウディオは、自身の口角が自然と上がっているのを自覚した。最早平常心は抑えることはできなかった。もし、こんな愛らしい子の前で仏頂面できる人間がいるのであれば、見てみたいものだ。
「なぁ、アルカディア」
クラウディオは、ゆっくりと彼の名前を呼んだ。その蜜を滴らせるような妖艶な声色は、アルカディアの顔を上げさせるには十分であった。
「この続き、私と一緒にする?」
「くらでぃお、と……?」
魅力的な誘いに、アルカディアはうっとりと瞳を揺らがせながら、ゆっくりと頷いた。
「いい子。私は、素直な子の方が好きだよ」
そう微笑んだクラウディオは、呆けた様子のアルカディアの唇を食んだ。軽く食むだけのつもりが、彼の口内は先程の一人アソビの所為か、泣いた所為か、じっとりを熱を帯びており、堪らず舌を伸ばしてしまった。舌同士が触れ合うと、アルカディアはそれだけで快感を拾ったのかビクリ、と背を震わせた。
「っんぅ……ん、ぁ……」
唇を放せば、よほど気持ちが良かったのか、とろんとした表情でアルカディアはクラウディオを見つめていた。解放された唇も先ほどのキスでぽってりと赤く腫れ、飲み込めきれなかった絡まった双方の唾液がその端を伝っていた。その欲をそそられるような表情に、クラウディオはすべての理性をとばす真似だけはしないように、何とか耐えようとうっすらと笑ってごまかした。耐えている間にもひどく背がゾクゾクと震えてしまう。
「随分とかわいらしい尻尾が生えているな」
「ん……♡ひ、引っ張ら、ないで……」
ふと視界に入ったアナルの縁と棒状の玩具間から伸びる紐。先ほどまでこれを使って自慰をしていたのだろう。ふっくらと赤く色づいたアナルはバイブだけでなく、この紐を付けた玩具まですっかり呑み込んでいることだろう。
クイ、クイ、と軽く引っ張られ、アルカディアは腰をガクガクと震わせた。もう何度も絶頂を迎えた敏感な腸壁は、少し刺激されただけで快感を得てしまう。
「アルカディア」
自分を見つめる年上の恋人は、何か新しい悪戯を思いついたような子供と同じ目で自分を見つめた。
「アルカディアは、さっきはどっちのスイッチを入れていたんだ?」
まるで子供に聞くような尋ね方だ。恥ずかしさに答えられず、持続する快感に腰を震わせていると、バイブとローターを咥えたアナルの縁を指でなぞられ、その刺激に堪らず結合部分からローションを噴き出してしまう。はしたない水音が、アルカディアの羞恥を更に煽った。
「こっちのローター、随分と奥に入っているな。このままスイッチを入れたら、お前はどんな風に啼いてくれる?」
「へ……?」
間抜けな自分の声だけが静まり返った部屋に響く。彼の手には既にローターのリモコンが握られていた。
このままスイッチを入れられたら……先ほどの快感を思い出し、腹の奥が疼き、背が震え、口内から唾液が溢れてくる。ローターを取り付けられたままのペニスは、最早勃つことさえままならないのか、ふるふると小刻みに震えているだけであったが、期待していることはクラウディオにバレバレなのだろう。
「そんなに欲しい?」
耳元で囁かれ、腹の奥の疼きの一つひとつが重くなる。
「……少し触っただけで気持ち良くなってるな」
「あ……あ……」
クラウディオの言う通りだ。快楽を想像してただでさえ疼いて堪らないのに、少し触られただけで中が勝手にうねってローターやバイブを締め付けてしまう。気持ちいい。だけど、それだけじゃ物足りない。
「アルカディア、どうしようか?」
目の前でスイッチを見せつけられる。アルカディアの返事を待っているのだろう。時折スイッチの出っ張りをカチッ、カチッ、と爪に引っ掛けていた。その音がする度に、電源が入ってしまうのではないかと身が強張る。
けれども、自分がどこか期待したような恍惚な表情を浮かべていることは目に見えていたのだろう。そんな自分にクラウディオは目を細めて妖艶な視線を向けていた。その彼の表情やしぐさにアルカディアは頭の血が沸騰しそうなくらいには興奮を覚えた。そして、喉を一つ鳴らした後、ゆっくりと口を開いた。
「……、て」
「ん?」
自分で強請ることに対する恥ずかしさに、思った以上に声が掠れてしまう。向けられる視線が更に熱を感じさせる。
「す、スイッチ……っい、入れ、て……」
耳や目元まで熟したリンゴのように真っ赤に染め上げながら、「気持ちが良いこと」を乞う。そうすれば、クラウディオは静かに目を細めて微笑った。
「いい子だな」
そう耳元で囁かれ、「あ、ぁ……」と羞恥からなのか、或いはこの先の快楽を期待してなのか、アルカディア自身でさえもよくわからないまま、彼は涎に濡れた真っ赤な唇を震わせていた。
「それなら、お前が望んだとおりこのスイッチを入れようか」
クラウディオの指がリモコンのスイッチに触れる。目の前で見せつけられたその瞬間が、アルカディアにとってはまるで、この火照った身体の所為で自身の時間の感じ方がとうとう狂ってしまったのかと思うくらいには、ゆっくりとしたものに感じた。
あぁ…来る…来てしまう
——カチッ。
「〜〜〜〜〜ッ゛ッ゛!!?♡♡♡」
スイッチが切り替わる音と共に、身体全体を凄まじい電流が駆け流れる。
「〜 〜〜 〜ッぁ、あ゛っっ!♡♡♡」
突然目の前が何度も真っ白になり、ガクン、ガクン、と身体が何度も大きく震えた。
後ろ手を付いていたものの、背をしならせ痙攣を繰り返す身体を支えることはできず、アルカディアは半狂乱に叫びながらシーツに倒れこんだ。
その拍子に、後ろで結っていた髪が解け、シーツに広がったそれがパサパサと音を立てる。
小刻みに振動を繰り返すローターは直に結腸口をブルブルと刺激し、そこから来る快楽に歓喜しうねる媚肉はバイブを締め付け、幹の出っ張りが前立腺を押し上げる。
そのようなキャパシティを越えた快楽にアルカディアは絶嬌し、全身を痙攣させる。
「ん、出さずに上手にイケたみたいだな」
「ッひ、ぃあ゛ッッ♡っら、め…うご、かさな、っあ、あ゛〜〜ッ゛!?!♡♡♡」
ローターのスイッチはそこでオフに切り替わったものの絶頂を極めたばかりでただでさえ敏感なのに、クラウディオはバイブの根元を指で掴んでぐちゃ、ぐちゃ、と抽挿をし始めたのだ。熱をもった腸内を満遍なく掻き回され、アルカディアは喉を仰け反らせて喘いだ。
この展開にはクラウディオも興奮を覚えていたのであった。
それまでのセックスの時に見せていた、しおらしくも、与えられた快楽には頬を染めるような、初心な表情が抜けていなかった愛らしい恋人が、今こうしてアナルに玩具を咥えこみ、その快感に叫び喘いでいるのだ。
足はもう力が入らず、意味を成さない母音を発している口からは舌が覗いている。
「聞こえるかアルカディア。お前の中の音」
そう言って、クラウディオは先程よりもゆっくりとバイブを抽挿させる。腸内の刺激は緩くなったものの、その分淫らでねっとりとした水音が結合部から鳴り、アルカディアは恥ずかしさに身体に力が入ったことでバイブを締め付けた。
「っい、や、ぁ……」
自分の中で鳴る水音に、アルカディアは弱々しく何度も首を横に振った。
「それとも、お前は“こっち”の方が好きか?」
「ッッ゛?!?♡♡ッあ゛、あ゛、あ゛!!♡♡♡」
中をゆっくり掻き回されていたかと思うと、突然奥にバイブを押し込められ、敏感な結腸口を叩くようにガツガツと激しく抽挿され、濁った喘ぎ声が止まらなくなる。
「気持ちいいな、アルカディア?」
「ッあ゛、ぁあ゛ッ♡♡っは、あぅ♡はげし、んんぁ゛ッッ♡♡」
結腸口を直に刺激される快感にされるがまま足を開き、腰を浮かせてヨがってしまう。抽挿のリズムは一定なのにも拘わらず、身体は不規則にビクン、ビクン、と痙攣するのは絶頂が近いせいだろう。
「ッひ、ぃ、あ゛あ゛ぁッッ♡♡っぃ、く♡♡ッん゛ぁ、っ〜〜 〜 〜ッ♡♡♡」
もう何度目かわからない絶頂に、アルカディアは声にならない嬌声を上げると、大きく背をしならせた後に、ベッドに深く身体を沈めた。
余韻から抜け切れていない彼の汗でじっとりと濡れた乱れた前髪をかき上げてやり、その唇にクラウディオは優しく口付けると、赤く腫れた舌が弱々しくも伸びてきた。その可愛らしい強請りに応えるかのように、自分も舌を差し出してそれに触れる。熱い。
その熱にもっと触れていたいと、角度を変えてもう一度食めば、飲み込めきれなかった唾液がアルカディアの口端から顎を伝った。
そのまま食い締めているバイブをずるりと引き抜けば、敏感な身体はそれだけでも快感を得てしまうのか、くぐもった喘ぎ声と共にゾク、ゾク、と身を震わせていた。バイブが取り出されれば、その反動で括約筋が緩み、奥に挿いっていたローターも自ずと抜けていった。
「……っは……ぁ、んぅ……」
未だに絶頂の快感が残っているのか、開いた脚を閉じることも忘れ、時折ビクン、ビクン、と身体を震わせ、小さく喘いでいた。下腹部が痙攣する度に、散々弄られ口が開ききったままの赤く熟れたアナルがヒク、ヒク、と収縮を繰り返し、彼のその卑猥な姿にはクラウディオも思わず喉を鳴らした。
「……?く、ら……でぃお……?」
力の入らない身体をころり、とうつ伏せに返され、アルカディアは目を白黒させる。
「アルカディア。まだ寝るなよ」
ふと後ろから肩を掴まれ、耳元で囁かれる。
「まだ、私はお前を抱いていないだろう?」
掠れた色っぽい声と共に、自身の下半身にクラウディオが重なる。
「〜〜〜っ゛っ?!」
ぐちゅ、と開いたアナルに熱く、硬い先端が擦りつけられる。それがクラウディオのものだとわかった瞬間、アルカディアは顔を赤らめながらも、下腹部をひどく疼かせた。
こんな状態で挿れられたら、気持ち良すぎて失神してしまうかもしれない。
だが、既に恋人とのセックスでの快楽を期待している身では、アルカディアは拒むことはできなかった。
「アルカディア、息止めるなよ。奥まで咥えられるだろう?」
「ッあ゛、ぁッ♡っん、ひぅ……!っくぁ、ぅ、ぃお、っんん……♡」
ズチュ、ズチュ、と腰を進められ、柔らかいアナルは亀頭部分を容易く受け入れた。熱くて硬くて、それなりの質量を兼ね揃えたものに、下腹部が痛いほど激しく疼き、中の襞が奥へ、奥へと強請るようにうねる。
「はぁ、…すごいな」
「っあ、ぅ゛……ん、ぁ゛っ、あ、ひ……♡」
中を押し拡げられる感覚だけでも、身体はいっぱいいっぱいなのに、耳元に当たるクラウディオの吐息に、アルカディアはゾクゾクと身を震わせた。あまりにもアルカディアが感じているせいか、媚肉の搾り取るような締め付け具合に、クラウディオも時折、詰めていた息を荒く吐き出していた。
くぽん。奥の奥にクラウディオのものが当たる感覚に、アルカディアは彼のものを全部受け入れたことを察した。
敏感な奥の口を先端が刺激し、ビリ、ビリ、とした下腹部の快感に喘ぎ声を漏らしかけた瞬間、身体がそのままふわり、と浮いたのだ。
「〜〜 〜 〜〜 〜ッ゛ッ゛?!?♡♡♡」
ぐちゅんっ。
浮いたと思った身体は、ベッドサイドに腰を掛けたクラウディオの膝の上に座らされる。
挿入されたまま体勢を変えられたのだから、先ほどまでよりも、奥に先端が挿いり込み、アルカディアは声にならない嬌声と共に背をしならせた。
「ッあ゛、ぁあ゛ッ!?♡♡っふ、ふか……ひぃ、ぁ゛っ??♡♡ッあ゛、ぁ、ら゛ぇ♡♡や、ぁ、やだぁっ!!♡♡」
太腿を割り開かれ、M字型に脚を大きく開いたまま、所謂背面座位の体勢に、アルカディアは激しい羞恥を感じた。
というのも、ベッドサイドで交じり合う彼らの目の前には大きな姿見が置かれていたからだ。
大きく股を開いて雄を咥えているアナルも、勃つこともままならずただただ律動に合わせてふるふると惨めに震えているペニスも、強すぎる快感に涙と涎でぐちゃぐちゃになった顔も、ツンと勃った赤い乳首も、自分が隠したくて仕方ない部分がすべて自分にもクラウディオにも見えてしまう。
「アルカディア、見えるか?……お前が締め付けてくる」
そう耳元で囁かれ、アルカディアは言葉で表された自分の痴態に、羞恥を感じ、更にきつくクラウディオを締め付けてしまう。
「……ああ、ふふ、また締まった。私に言われて感じた?」
耳の奥に響く、掠れた小さな笑い声。それにさえもアルカディアは感じて下腹部を疼かせてしまう。
快感に身を捩らせば、クラウディオの前に胸を差し出すような格好になり、言うまでもなく突起の先端を口に含まれた。唾液を纏った舌で舐められたり、ちゅう、とわざと音を立てて吸われたり、奥を突かれる快感とも相まって、アルカディアはただただ喘ぐしかできない。
「やあぁ……っ、ゃだ、ぁぁ゛っ……っん、んぅぅ……ひぃ゛、やだ、やぁぁっ…」
「……じゃあ、こっちか?」
そう胸の突起から唇を放し、最早雄としての機能を果たしていない、繰り返す甘イキにピクピクと震えるだけのペニスの先端を、ぐちゃ、ぐちゃ、と音を立てて擦った。
「ッッひぁっ!?♡♡ッや、こっちも、だめぇぇ゛!や、やらぁっ♡♡」
もう勃つこともままならないが、絶頂を極めすぎた故に敏感な性器は擦られて、痛いほどの快感を覚える。
痛いのに気持ちが良い。
律動の快感とは相反する感情に、アルカディアは混乱したままよがった。
「ッあ゛、ぁ、あ゛♡♡ッや、くらぃおッ、ぁぅあ゛♡♡ッやら、イく、ぅッぁ゛ああ゛♡♡♡」
身体はひとりでに何度も小刻みにガクガクと震え、長く続く強烈な快感に脳内でいくつものスパークが鳴り響く。
すごく、すごく、怖いほど、気持ちが良い。
ふる、ふる、と惨めに震えるだけのペニスからは、精液でもカウパーでもない透明な液体がそれなりの勢いで噴き出していたし、絶頂を極めたての敏感なアナルはキュウ、キュウ、とクラウディオを締め付けていたのだから、自身の良いトコロをそれとなく刺激され、腰が勝手にヒクついてしまう。
「ん、ぁ……は、ぁ……」
絶頂の余韻に浸っていると、座っている体勢からベッドに降ろされる。
終わったのかとアルカディアはぼんやりとした意識の中で思ったが、中のものが抜かれる気配もなく、未だに一度も絶頂を決めていないソレはかなり張りつめていて、質量も熱も増していた。
挿入したままだったため、脚を自分の意思で閉じることはできず、そのまま膝裏を押し上げられる。腰が動かされ、そこからぐちゅ、とひどく粘着質な水音が溢れた。
「く、ら…ぃお…?」
アルカディアは、長く続く快感に震えながら彼の方を向く。
その瞳は確かにいつもの通り琥珀色のはずだが、どこかギラギラと燃えているような、自分が感じている蕩けるような熱ではなく、その奥で燃え盛っているような……そんな余裕のない熱を孕んだクラウディオの瞳に、アルカディアは見つめられていた。
「アルカディア、悪い。もう少し、付き合ってくれるか?」
そう言って腰を動かされ、またぬちゃ、くちゅ、と結合部分から水音が響く。余韻に震えている自分を思いやってのゆっくりめのストロークは、次第にペースを上げていき、ガツガツと奥を的確に突いてくる激しいものへとなっていく。
「ッぁあ゛っ!♡♡っひ、ひぅ、…ぅ…っおく、ッん、ひ、っあ゛ぁあ゛♡♡」
「っ…アルカディア…」
クラウディオも絶頂が近いのだろう。奥を突き上げるように腰を動かしながらも、眉を下げて、苦しそうに喘ぎながら時折、自分の名前を何度も何度も呼んでいる。
クラウディオの陶器のような滑らかな白い肌に赤はよく映える。
自分だけが見られる特別な色。
少なくとも、今の自分にしか見ることができない、自分だけのクラウディオの色。
そう感じるだけで、なんだか身が震えてしまう。
「ッッ゛!?♡♡ぁ゛、ぁ、…ひぅ…♡」
「…そんな可愛い顔で見つめないでくれ」
下腹部同士がぱちゅ、と密着し、亀頭が最奥の、結腸口に挿いり込む。
快感に甘イキを繰り返す中、ドク、ドク、とクラウディオのものが中で脈打つ感覚に彼の絶頂が近いことをアルカディアは悟った。
「……っアルカディア、中に出してもいいか?」
ぐり、ぐり、と亀頭で敏感な結腸口を擦られ、アルカディアも再び限界が近かった。
それでも、こくこくと首を縦に何度も振りながら、「な、なか…ほし…い♡♡」と快感に痺れる舌でそう伝えた。
「〜〜〜〜〜〜〜〜ぁ゛、あッッ゛♡♡♡」
中を満たす熱さにビク、ビク、と腰が震える。
奥に出され、それに興奮と歓喜を覚えた中は、奥まで突き入れているクラウディオを最後まで搾り取ろうときつく締まり、襞をうねらせる。
クラウディオのもので満たされている。その多幸感は、計り知れない。
アルカディアは、中に出された刺激ではじけた快感に喘ぎながらも、クラウディオのもので満たされたという胸の中を渦巻く多幸感と昂ぶりに、身体全体をわななかせた。
「愚かな考えだとは思うが、こうしてお前に私の匂いを付けてやりたい。私のものだとわかるように」
腸内に溜まった精液をより奥にとどまらせようと……或いは、腸壁に自身の精液を彼の内部に刷り込んでいるかのような、まるで動物が己のテリトリーや所有物に臭いを付ける「マーキング」を連想させるかのようにクラウディオは緩く、しかし、しっかりとその胎内を刺激するように腰を揺すっていた。その行為と彼の言葉に、アルカディアは興奮を覚え、身体をゾクゾクと震わせた。
「く、らでぃおの、もの……?」
「嫌か?」
そんなわけがない。アルカディアは、何度もブン、ブン、と首を横に振る。その彼の必死さには、クラウディオも思わず笑ってしまう。
「ふふ、はは。悪い、冗談だよ。お前は、私のことが大好きだからな」
そう言って、彼は自分の下でリンゴのように紅く染まった年下の恋人の額に優しく口付けた。塩辛いのはこの濃厚なセックスでたくさん汗をかいたからだ。
「(ひとまず今日は終わりにして、後始末をやるか……)」
流石に彼も疲れただろう。
正直クラウディオ自身は物足りなさを感じているが、アルカディアに無理をさせるような真似はしたくなかった。
後片付けはそんなに急がなくて平気だろうとクラウディオは一人考えながら、アルカディアから腰を引こうとした。
「……っ、おっと」
そう思った束の間、何かが自分の腰を引き寄せ、抜こうとしていた自身が再びアルカディアの奥めがけて挿いり込む。
それがアルカディアの両脚だとわかる前に、クラウディオの腰は逃がさないとばかりにしっかりと固定され、自身を咥え込むアナルがキュウ、キュウ、と媚びるように締め付けてくるものだから、クラウディオは突然の快感にうめいた。
「くらでぃお…っ…お、ねがい…おなか、まださびしい……あと、」
——おれ、もっとくらうでぃおのものになりたい
そう言って、アルカディアはクラウディオの首に手を回し、その唇を食んだ。
舌同士が触れ合い、くちゅ、じゅる、と淫らな水音が響く。
酷く興奮しているのか、クラウディオの舌を欲のまま舐りながら腰を揺らし、クラウディオを再びその気にさせようと誘惑しているようであった。
いくら理性を取り戻していたとはいえ、このようなアルカディアの拙いながらも淫らなアピールに、クラウディオは再び下腹部に熱が溜まっていくのを感じた。
「……随分と可愛いお誘いだな」
「んぁ、くらでぃお……、すき……♡」
「……アルカディア」
開かれた膝裏を痛いほど押し上げられ、クラウディオのものが深く挿いり込んでくる。
動いた衝動で中の襞がソレを締め付け、ぐちゅ、とローションと中に出された精液が結合部分から滲み溢れた。
「煽ったのはお前の方だよ。もう泣いて許しを請いても最後まで付き合ってもらうからな?」
「っう、ん……くらでぃお、の、いっぱい……っ…ほし、んぁぅ、くらぃお、すき、…すき…♡」
再開された緩い律動に喘ぎながら、アルカディアはその瞳にハートを浮かばせて見えるほどの恍惚とした表情でクラウディオ自身を強請り、その律動に合わせて腰を揺らす。
「(…これは、少々痛い目に遭わせた方が良いか)」
彼の淫らさにクラウディオは、今まで抱いていた「愛でる」とか「庇護欲」というような感情だけでなく、何かそれよりも深く、おどろおどろしい、だがどこか甘美で背徳的な感情が確かに胸の内で芽生え始めていた。
その後、冒頭の状況から察する通り、アルカディアは自分がクラウディオの劣情を煽ってしまったことを後悔することとなる。
どうやら、反省はしていないみたいだが。