Gifts for Yourself
火種を押し潰し、細い煙を出すばかりとなった煙草を灰皿へと横たわらせる。そうして窓の方を振り向いたクラウディオは、目に映った光景により、一度二度と瞼を瞬かせた。
窓を開けて入ってきたのは、間違いなく隣の部屋のアルカディアだ。目に映る、仄かに赤い面持ちは間違いなく彼のものである。
いつでも部屋に来ても良いと窓の鍵は開けている。故に、アルカディアが現れたことに驚く必要はまるでないのだが…アルカディアの姿が、普段と少しばかり違っていた。
窓の前で立ち尽くすアルカディアは…その身にシーツを纏っていた。
「…おいで」
疑念に思いながらも、クラウディオはそれを口にすることなく手招く。ここで不審な様を問いかけて仕舞えば、アルカディアがそのまま自室へと帰ってしまうだろうと予想できた。首から下の全身を隠すなど怪しいことこの上なく、何か武器でも隠し持っている危険性も懸念すべき点であるが…この部屋に危険など欠片もない。クラウディオは随分と前から、アルカディアに警戒を抱くことを止めている。
呼びかけに対し、アルカディアは素直にクラウディオの隣へと歩み寄った。シーツが床に擦れる微かな音を立てながら、クラウディオの隣へと腰掛ける。白いシーツに覆われたその身を抱き寄せれば、いつも通りおずおずとした様子で身を預けてくる。愛おしい仕草だ。しかし、手に触れる白色は気に掛かった。
「……寒いのか?」
数秒ほど、なんと問うたものか逡巡し……畢竟、クラウディオが思いつく理由と言えば、それくらいなものだった。夜が冷える季節だ。それにしても、シーツは体を暖める役割を担うに相応しいとは言えまい。ガウンなどを肩掛けた方が良いはずだが…他の理由を特に思いつかなかったのだ。
「…ううん、そうじゃなくて…」
案の定、アルカディアの首は小さく横へと振られる。そうだろうと納得しながら、クラウディオは微かに首を横へと傾けた。では何故?と、暗に問いかける眼差しを向けながら、返事を待つ。
その視線にアルカディア気付いていないはずもなく。彼はシーツをきゅっと手に握り、手繰り寄せると、僅かばかり俯いた。
そうして少しと経たない内に、アルカディアの顔が再び擡げられた。赤い眼差しは、羞恥と期待、それから不安で満ち満ちている。そうしてそのまま…アルカディアの手が手繰り寄せていたシーツを離す。
はらりと、白の薄布がその身を滑り、落ちていき…その中に隠されていた体躯が顕となった。
「…これ…どう…」
感情に揺れる赤い眼差し、赤く火照る頬の下。シーツで覆われていた体躯は……肩と胸部を露出した、ニット素材の衣服を纏っていた。
一見すれば、冷える時期に重宝されるセーターのような形だ。しかし首こそ詰めているものの、その両肩から先まで大胆に露出しており、それが防寒の類ではないのだろうと理解できる。殆ど前掛けのようになっているようだ。背にある布は臀部を包む箇所くらいなもので、後は頸当たりから垂れる飾りリボン程度だろうか。肩だけでなく、脇も背中も露出している。
そして露出は肩や背だけに留まらない。胸部は縦長の円形に繰り抜かれており、本来隠されるべき肌を顕としている。本当なら、胸の膨らみで押し上げるような穴となっているのだろう……ここまでくれば、その目的は推測できた。しかしアルカディアは女体でなく、男体だ。加えて肉付きも薄い。
特別に、自分のために用意したのだろうとは、その姿からも、それを隠していたことからも暗の内に理解できた。
「こういうのが…男の人はいいんだって、シトラスが言ってた」
「……」
「だから、色々調べて…サファイアさんに、もらった…んだけど…」
「…………」
「……変、だった…かな……やっぱり…」
言いながら、アルカディアは徐々に俯き、その視線を自身の膝元へと落としていく。羞恥のあまり赤く染まった耳を晒しながら、膝元で自身の両手を握り合わせる様は、いっそ後悔すら滲んでいるように見える。
それを見逃さず目に映しながら…クラウディオはどうしたものかと僅かばかり悩んだ。長考は不安を煽るだけになるだろう。そう察した彼は、肩に掛けていたガウンを脱ぐと、隣の愛しい体躯へそうっと掛けた。露出していた箇所が分厚い布で覆われ、露出する肌の面積が途端に減る。
予期せず暖かなそれに包まれ、アルカディアは驚いたのか顔を今一度上げた。不安と当惑で満ちる眼差しと出会い、クラウディオは口を開く。
「体が冷える」
「…そ、う……」
行動の理由を述べれば、アルカディアはその目を丸めた後、すぐに視線を逸らして俯いてしまった。耳は未だ赤く、手は互いに握り合わせて、その皮膚に爪すら立てられている。
彼が恥いっていることは明白だ。大方、誘いが無駄だったとでも思っているのだろう。サイドテーブルのランプに照らされた、その全ての仕草を見逃さずに見つけながら、クラウディオは正しく予想を立てていた。
「アルカディア」
ガウンの下に手を潜り込ませ、その肩にそうっと触れる。体はぴくっと震えたものの、アルカディアがクラウディオの呼びかけを無碍にすることなど有るはずもない。眉尻を情けなく垂れさせたその顔がおずおずと擡げられるのを、クラウディオはじっと見つめていた。
それだから、目が合うや否や。その唇に口付けることなど、実に容易いことであったのだ。
「んっ、ん、ぅ!?…っ」
アルカディアは一瞬身を震わせて、その身を後ろへ引き退らせようとした。喫驚に伴う自然的な呼応だ。しかし舌を舐ってやれば、それがクラウディオからの口づけだと理解したのだろう。逃げようとする体はすぐに諌められ、彼は肩を抱かれるまま口付けを甘んじた。
それを褒めてやるようにぢゅっ♡と甘く吸い付き、舌先を咥内へと差し伸ばす。迎えに伸ばされた舌と絡め合いながら、時折その上顎をずり…♡と強く舐ってやる。そうすれば、喫驚のために強張っていた体が少しずつ解れて、クラウディオへくったりと身を委ねていく様を、肩を抱く手によって如実と感じ取れた。
「ん、ん…っ♡っ…♡ん、…♡…ぅ……♡」
確かに欲情しているのだと…これは情けなどではないのだと解らせるように、舌を執拗に絡め、歯をも甘く立てて愛でてやる。肩を抱く手を一寸も離さないまま抱き寄せ続ける。時折唾液を注いでやれば、舌を絡めるままにぢゅぅ…♡と音を立てて飲み干していく様は、なんとも従順で愛らしい。
「は、ぁ…♡…っ♡ぁ、…ふ…♡」
顎が痺れたのだろうか。交わす唾液が飲み切れず、口端から溢れて伝っていく感覚を覚え、名残惜しくも唇を離せば……眼前には蕩けた眼差しを晒す愛しい人の姿があった。赤い瞳は陶然とクラウディオを映している。その眼差しに引き寄せられるようにして、クラウディオは肩を抱いた腕でその身を後ろへと引き寄せ、引き倒した。
「ぁ…ぇ……?♡…♡くら、ぃお……なん、で…」
視界に天井が広がり、ようやく事の様を認識したのだろう。アルカディアは甘さの滲む声のまま、今にも掻き消えそうな疑念を紡ぐ。蕩けた眼差しが不可思議そうにクラウディオを見つめている。
愛しい視線に微笑みながら、クラウディオは顔を下ろすと、アルカディアの面持ちへと口付けを注いだ。
「こんなに可愛い姿をしているんだ。仕方ないと思わないか?」
「っ♡ぁ、う……でも、さっ、き……さむそうっ、て…」
「姿は愛しいが、体を冷えさせる訳にはいかないだろ。お前の体が何より大事だからな」
「っ♡っ、ぁ♡…〜っ♡」
唇へ、頬へ、鼻へと……全てにキスを降らせつつ、穏やかな声で答えてやる。頬を手で覆い包み、優しく撫でながら合わせた目を愛おしげに細めれば、そこから注ぎ出される眼差しをありありと感じ取ったのだろう。アルカディアは堪らなそうに声を上げて、その瞳から疑念や不安が霧散する。
それを確かに見て取り、安堵しながら、クラウディオは己の片方の手をその体へと這わせていく。
「しかし、随分と大胆な服だな。…まさか、勧められた訳じゃないだろうな」
「っ、ぁ、…♡違…う♡…っ、調べ、た…自分で…」
「そうか。ならいい」
先程から見つめる最中、噤んだ口の奥側でまさかと思案したことを否定され、クラウディオは安堵の言葉を抑えられない。自分のためとはいえ、その過程によって、この愛らしい姿を夢想した輩が(例え同僚であろうと)ひとりでもいるかもしれないことを思うと、クラウディオは耐えられない心地であったのだ。もし頷かれた暁には、殺したいとすら思う。そんな暴力的な願いを、頭の隅で考えるほどだった。
しかしそれが無いと解った今、クラウディオの頭は目の前の愛らしい存在のことで埋め尽くされている。このどうしようもなく可愛く、愛おしく、堪らない存在を、どうやって愛し抜くべきか。そういった思考の他には、何も有りはしなかった。
「ぁ、ぁ、ぁ♡っぁ、…♡…♡っ♡ぁ♡…ん♡」
顔中に口づけを落とし続けるまま、頬に宛てがった手のひとつを体へと滑らせる。顎の下をくすぐる様に撫でて、詰襟となった首元の柔さに従い、肩口へと。するすると掌で覆い撫でてから、指先を柔らかな二の腕に触れて……そこから脇を辿っていく。背面の布地が失われた大胆な衣服のために……そしてアルカディアの肉付きが悪いために、脇を掌で覆い包めば、指先は容易く背中の肌へと辿り着いた。するすると、指先をぴったりと背中にあてがったまま、脇を上下に撫で回す。
もう片方の手は暫し頬を撫でていたが、ややあって片側の肩へと滑り下りていった。反対の手と同じように肩口を撫で回すと……その手とは異なり、脇へは赴かなかった。指先は首元へ戻り、その下……ぱっくりと穴の空いた胸部の谷間へと辿り着く。掌を広げると、中指を谷間の真ん中に置き、そのままつう…と肌をなぞる。クラウディオの大きな手は正中線のみだけではなく、胸に薄くついた肉や、その下に続く薄く割れた腹部、それらを衣服を纏いながらも垣間見させている穴の縁の柔らかなニット素材までにも触れた。
腹部を、爪先で優しくなぞる。引っ掻くよりも優しく、くすぐるよりも確かに触れ愛でて、それから、指の腹を押し当てる。
そういった、愛撫の他にはまるで意味のない戯れを、口付けと共に続けた。
普段とは異なる服を纏ったアルカディアの体躯を、クラウディオが愉しんでいるのは明らかだ。だからか……それとも口付けをふんだんに与えられたことにより抱いていた不安が拭われたのか、アルカディアは徐々に口元へ笑みを浮かべていた。そうして、クラウディオの唇に吸い付いて、口づけ返すようになった頃には、その唇は心底嬉しげな笑みを浮かべきっていた。
「、ん…♡これ、名前が…ちょっと、変、だから…不安、だった…」
「名前?」
「うん、…その……」
アルカディアは言葉を濁し、言い淀む。しかし笑みが滲むのを隠せない唇でどれほど耐えられるかは、見るからに明らかだ。加えて、教えて欲しいと強請り甘えるように、クラウディオがその微笑む口元へ口づけを落とすものだから、アルカディアがその甘ったるい口元で白状を零すのは、時間すら問題にしないようだった。
「童貞をころす、セーター、だって…」
「…………」
そうして愛らしい唇が開かれたとき、クラウディオは不覚にも一度口を噤んだ。聞こえた言葉を脳裏で反芻し、どうにか理解しようと努める。
理解できたその名称は、本来であれば、アルカディアから聞こえるとは思えない俗物的なものであった。それだから、クラウディオはなんと返答すべきか幾らか悩んだ。一体なにをどうしたらその服に辿り着いたのかと問うか。はたまた、そんな言い慣れない単語を用いたものに辿り着くまで悩み抜き、探し当ててくれたのかと喜ぶべきか。
「くらうでぃおが…そうじゃないことは、わかる」
二の句を中々告げないクラウディオを見てとって、アルカディアは何を思ったか慌てた口ぶりでそう付け足す。当然のことだ。童貞どころか、その細身の処女を奪ったのすらクラウディオなのだから。
「くらでぃおは…、経験も沢山あるだろうし…なら、ダメかなって、不安だったんだけど…」
自身を見つめる眼差しが不安げに揺れ始めたのを見て、クラウディオは今一度、柔い唇に甘く噛み付いた。味わうように悪戯に歯を立てたかと思えば、ただの甘噛みにすら謝るように舌で舐ってやって、迎えに差し出された舌と絡め合う。
口内に蹲った熱い体温を舌で分け合いながら、クラウディオは確信していた。今行うべきは尋問ではない。喜びと、それに伴う称賛、褒美のようにしとどと愛撫を与えるべきなのだ。言葉を誘導し、然りげ無く聞き出すことはいつでも出来る。彼はもう辿り着いてしまって、クラウディオには考えもつかない程の勇気を持って身に纏った。そして幸いにも、クラウディオはこの夜に与えられた宝物を愛でないまま、朝を迎えるつもりは毛頭なかった。
「お前が身に付けるなら魅惑的なものだろう。…まあ、本来の使用用途は果たせないだろうが」
「え?」
口づけから名残惜しくも唇を離し、クラウディオは告げる。すると、ぱち、と白い瞼が瞬いて、赤い瞳が丸みを帯びた。
その様に目をやや細めながら、クラウディオは胸元へと手を這わす。ぱっくりと開いた穴から指を差し入れ、指先で片側の頂を容易く探し当てる。未だ柔らかなその上に指の腹を乗せ、く…っ♡と優しく押しやると、愛された記憶に呼応して体が小さく揺れる。
「ぁ、♡っん♡……、ぅ♡」
「私以外に……例えば、どこぞの童貞などに見せることは無いんだろう?まぁ、そうだろうな。私のためだからな」
「んっ、ん……♡…っ♡ぜんぶ、くらでぃお、のため…♡」
「ああ…いい子だ。いい子だな、アルカディアは」
胸に満ち足りる熱に任せて、クラウディオは愛を紡いだ。アルカディアが自分以外のどの男も知り得ないこと……それを自供させることは、酷い悋気からきたものに違いなかった。しかしクラウディオの理性は、とうの昔に溶かされて失われていた。この夜だけではない。ずっと前から。昼間はただ、かつてあったはずの理性の姿をどうにか思い出して、その見てくれをみせてるだけになっていた。そうやって、いつこの愛しい人を名実共に、この腕の中に収め続けることができるのか。虎視眈々と狙い澄ましているだけに。
アルカディアが好意という、熱く重い感情を受け入れるには時間が必要だ。クラウディオはそれをなんとなしに……けれどもよく解っていた。
幼い時の自己形成の最中か、或いは事故めいた大きな事を目の当たりにしたのか、定かでないが、アルカディアは自己肯定という機能が著しく欠落している。大抵の人間がどれ程惨めになろうとも縋り求める自己承認や自己の幸福を、彼は完全に諦めているのだ。代わりとでもいうように、彼の大好きな兄弟にその全てを注いでいる。
小さな頃には未だ、彼がそれを泣いて求めていたことが在ったのだろうか。出来ることならば、その時に走り戻って、抱き上げて、自分が何もかもを与えてやりたい。そしてその何もかもを守り抜いてやりたい。クラウディオはしばしば、そんなどうしようも出来ないことを渇望した。けれどそんなことは出来るはずもない。クラウディオが今行えることは、アルカディアに長い時間を掛けて愛情を注ぐことだけだ。熱く重いこの熱情を少しずつ、しかし日常的に、どうにか染み込ませて、いつしかそれを手放させなくすること。
突然与えては……例えばクラウディオが愛欲のままに愛しているなどと本心を伝えれば、アルカディアは驚くだけでは済まない。慄き、震えて、青褪めて、現実すらも疑うだろう。はたまた、憐れみ深い慈悲めいた冗談を与えられたと、泣きたそうに微笑むかもしれない。そんな風に受け取ってすら貰えず、そこから解らせていくなど耐えられないと、クラウディオは心底思う。この熱情を欠片も受け取って貰えなかったならば、自分は彼を二度と外に出さないだろう。そして彼が解るようになるまで、永遠と愛欲を注ぎ続けるに違いない。
そんな未来が、クラウディオには容易く想像できた。それはあまりに甘美で、そして避けなければならない選択だ。クラウディオはアルカディアの尊厳を、それに伴う自由も、何もかもを守ってやりたかった。
「ぁ♡……っ、♡…ぅ、ぁ♡」
柔い粒をきゅ…っ♡と摘むとまろび出てくる甘い声音は、クラウディオの努力の賜物だ。男の体を持つアルカディアにとって、胸部とは本来性感を得るところではない。しかしたっぷりと愛撫を注いだことによって、快楽に弱い体はすっかりとそこを性感帯として認識した。
漏れ出す声を留めないことも、クラウディオが教えたことだ。その方が心地いいからと、クラウディオは強請り、声を聞きたがった。だから唇を噛むのは止めなさいと、何度も舌で舐っては教え込んだ。
「ぁ、ぁ…っ♡…っ♡ん、んー……♡」
摘むのを止めると、頂はその身を少しと硬くさせ、輪郭を顕としていた。触れられたことにより、自分は愛されるための箇所だと自覚し始めたそこを、クラウディオは指の腹で撫で擦る。くり…くり…♡と、まるで褒めてやるように。幼子をそうして構ってやるように。時折ぴんっと弾くようにしてやれば、白肌を纏う細身がぴくんっ♡と跳ね、同じように白い喉から息を詰めた喘ぎが零れ出す様がいっとう愛おしい。
「…っ♡…くら、ぅ……♡…っ、ぁ…く、ら…でぃお…♡」
縺れながら紡がれた呼び声に呼応代わりの目を向ければ、美しい赤い瞳が一心に注がれる。喜びと愛欲、それから快楽によって聡明さを濁らせ、悩まし気に揺れる瞳。それは物欲しそうな色を帯びていた。
呼び声の意図が解って、クラウディオは顔を寄せ、その唇にキスを落とす。ちゅ♡ちゅぅ…♡と甘く吸い付いては、時折ぺろりと子猫のように舌先で舐るアルカディアの口づけは、互いの溢れ出る熱情を感じ得て、酷く心地よい。
唇を噛むという無意識の自傷行為を止めさせるため口づけを繰り返した結果……アルカディアはキスが大好きになった。名を呼んで、時に首へと腕を回して、果てには舌先を伸ばして強請るほどに。
「ん、ぅ♡……ぁっ♡ぁ、ん♡…♡ん、ぅ……♡」
「ん………」
アルカディアの手が自身の頭を支える枕を握る。その手を絡め取り、握ってあやしてやりたいと、内心で願いながら……クラウディオは胸への愛撫を続けた。
撫で続け、時に押し潰すように捏ねて、弾く。すっかりと粒と言えるまで形を浮き上がらせたそれを、優しく摘まんではくりくり…♡と指の腹でこすり合わせる。
口づけの合間に漏れる喘ぎは少しずつ、確かに上擦り、淫猥な衣服をまとった体が堪らなそうに身じろぐ。胸のふくらみがない為もあるだろうが……谷間を晒すように空いた穴は、ずらさない限りはその頂までもは見せないように成っている。その奇妙ないじましさが堪らないのだろうと、クラウディオは劣情を自覚していた。
「は、っぁ♡ぁ……♡っ、ん♡ん……♡んぁ、ぁ……♡♡」
そうして、くねる体がもどかしそうに背を僅かに逸らし、胸を浮き立たせるようになったとき。クラウディオはそうっと、愛おしい唇から少しだけ離れた。視界で輪郭を取り戻した瞳同士が出会い、瞬きすらせずに互いを認識する。
それだから、アルカディアにはクラウディオが名残惜しくもゆっくりと下っていき、唇から離れ切ろうとする様が解ったに違いない。それはクラウディオも同じであった。枕を握っていた手が、そこから離れてクラウディオへと伸ばされようとする機敏を見て取っていた。畢竟、その手が枕を握り続け、眼差しだけが切なげにクラウディオを見つめて、引き留めようとしていた様も。
「いい子だ、アルカディア」
ちゃんとわかっている。そう言うように、クラウディオは睦言を囁く。そしてアルカディアの唇から離れた口を、その胸部へと辿り着かせる。白肌を晒す穴から免れ、ニット素材の下で暖まる胸の頂を、クラウディオはそのままにしておいた。穴をずらし、些か無理矢理にその粒を晒すことはせず、ニットの上へと唇を宛がう。布越しに唇を押し付けることを幾らか繰り返す。
先程よりも焦れったい愛撫に、アルカディアは寂しがり屋な唇を薄く開いては閉じさせて、切なそうに眉尻を下げる。その様を視線だけで見て取りながら、クラウディオは衣服へと唇を押し当てた。この生地が見た目より随分薄いことは、手を潜り込ませて、そして幾らかキスをして確かめた。ならばクラウディオが目論みは正しく果たせるはずだ。
「っ、ぁ♡ぁっ、んぅ、…!♡」
押し当てた唇の下には、愛されたがる胸の頂がある。それは存外薄い布越しに把握していた。クラウディオは唇を押し当てたまま薄く開き、舌を出す。そしてねっとりと舐め上げる。ニットのざらりとした不快な感触が舌背を撫でる。けれど、それを繰り返していく内、薄い生地が唾液で塗れ、少なからず肌に張り付く。そして、その下にある愛らしい粒が、濡れた布地をつんと押し上げる。
「ぁ……っ♡ぁ、ぅ…♡…っ♡は…ぁ…♡」
よく見つめていなければ解らない……しかし見つめていれば解る程度に自信を主張する胸の粒を、クラウディオは服越しに愛で続ける。舐り、唇で食んで、時に歯で噛み付く。
存外薄いとはいえ、ニット素材の服越しだ。酷くもどかしいのだろう。アルカディアは僅かに身じろぎ、胸を突き出すようにくねらせて、ついには枕を掴んでいた手を離してクラウディオの頭部へとやった。髪をそろりと撫で付けるように……それよりは随分と余裕なく髪に指を潜らせて、指先で頸を掻く。
髪越しとはいえ、細指に急所を触れられている感覚に背筋をぞわぞわと…存外心地よく粟立たせながら、クラウディオはそれでも口を止めなかった。
「くら、ぅ……っ♡ぁ…ぁ…っ♡…っ♡くす、ぐ…っ、たぃ…♡」
「ん……ああ、悪い」
「ぁっ♡♡っ、ぁ♡ぅぁ…っ♡」
アルカディアが零した言葉が、本心の全てを伝えていないとは、クラウディオは無論理解していた。けれど自身に縋るような指先が、その声が愛らしくてならず、クラウディオは口を離すと、布越しのままの頂を指先で掻く。くにくにくに…♡と、布の摩擦でほんの少し強く擦られる快感に、アルカディアは堪らなそうに、そして切なげな顔をして声を上げた。いっそ泣きたそうな目がクラウディオへと注がれる。
「ちが、ぁ…♡ちが…ぅ♡っ…♡ちょく、せつ…っ♡」
「……そうしたいのは山々なんだがな」
「ぁ、っ♡♡んぁ、ぁ…♡っ♡ん…♡♡っん、ぅ♡」
クラウディオは言いながら、爪先で乳首を捉え、くにぃ…♡と押し潰すようにしながら、ゆっくりと捏ね回してやる。先ほどより強いものの望んだ苛烈さには及ばない快楽に、そして渇望が叶う気配に、アルカディアはいっとう堪らなそうな声をあげる。
クラウディオは少し顔を上げて、注がれる瞳と目を合わせた。愛おしい美しい目を前に琥珀の瞳を細めて、思う。縋るような眼差しを見ると、ほんの少しだけ悪戯がしたくなるのだ。
「折角用意した服だ。脱がせるのは勿体無いだろう」
「そん、な、…っ♡っ、ぁ♡ぁー…♡♡」
赤い瞳は揺らめいて、視線だけでも十分に乞い強請う。そのいじましく、愛おしい様を、クラウディオはじっと見つめていた。真に優しい者ならばならば、ここで口を離すべきだ。穴を引き伸ばすなり、ずらすなり、果てには服を脱がして、愛でてやるべきだろう。しかしクラウディオは、そうしなかった。あくまでも用意されたプレゼントを存外に解きはしない体を装った。
クラウディオは優しいと、アルカディアはよくクラウディオに告げた。しかし実のところ、自分は優しくなどないのだとクラウディオは知っている。こういうとき、その自覚は深くなった。優しさよりも愛欲のまま、彼を愛したくて仕方ないのだがら。
「ぁっぁ♡ぁ…ぅ、ぁ♡〜…っ♡ゃぁ…♡っ♡♡ッ、ぁぅ♡」
クラウディオは暫く、服の上から乳首を愛でた。食べる真似事を繰り返し、その胸部の、素材の割に存外薄い布がすっかりと色を変えるまでやめなかった。そして銀の糸を細く引いて口を離したかと思うと、アルカディアと見つめあって……その唇にキスをした。泣きたそうな瞳はそのとき少しばかり柔さを帯びたものだ。けれどもクラウディオがもう片側の胸へ唇を下ろしてからは、その柔さは掻き消えて、先程よりも揺らめいた。もどかしく焦がれる、ひたすらに欲を掻き立てる、酷く心地のよい快楽がまだ続くのだとは、もはや明白だった。
「ぁッ♡♡ぁ、ぁ♡ひ、ん…♡…っ♡ぁぅ……♡〜〜…♡♡」
クラウディオがもう片方の胸も同じように服越しに愛で続ける最中。彼の指は口とは反対の……つまり先ほど愛でていた胸の頂に伸ばされた。谷間にできた穴の縁へと潜り込み、唾液で濡れたニットを手の甲で抑えて浮かせながら、愛されたがる乳首を指先で愛してやる。優しく捏ねては時々摘まんで、そのままきゅっ♡きゅぅぅ…♡と不定期な感覚で挟みこむ。爪を立ててやれば、漏れ出す声音はいっとう上擦り、その快楽を跳ねる体と共に如実と現した。
片側で鈍い快楽が与えられる中、もう片側を指でじかに愛されることは、アルカディアにとって救いのような愛撫に違いなかった。それは溢れ出る声からも、どんどんと赤らんでいく肌からも明らかだ。けれどもその分、渇望も募っていく。アルカディアは口での愛撫がなにより好きだ。クラウディオの指も無論いっとう好いているが、味わって食べていくような優しく深い愛撫が彼の体には何より好ましいようだ。故に、手での愛撫は、そのまま懇願にもつながった。これが直に与えられたらどんなにいいだろうという熱望を思わずにはいられなかった。それは彼の口から漏れ出る切なげな声からしても明らかだった。
「くぁ、う…♡♡…っ♡♡ぁ、ぁ…♡っ……♡♡くぁ…ぃお…♡」
アルカディアの声音に涙の色が混じり始めた頃、クラウディオはようやく胸部から口を離す。片側と同じように布の色を変えた様は、与えられた執拗な愛撫を物語った。クラウディオは顔を上げ、アルカディアの面持ちを見つめる。涙が薄い膜として滲んだ赤い瞳は酷く美しい。そして、なによりも煽情的だ。
目の当たりにする光景によって熱を帯びる胸の裏側を自覚して、クラウディオは自分がどれほど欲深い男なのかを自責じみた心地と共に自認した。けれども後悔などは体中のどこにもなく、むしろ、いっそうの欲が駆り立てられるばかりだ。
「く、ぁ、…ぅ、…っ、ん♡♡ん…♡んぅ……♡♡」
「……ん、っ、……ん」
懇願する口にクラウディオは自らの唇を触れ合わせる。柔らかな感触を確かめ、ちゅぅ…♡と甘く吸い付いてやる。唇の隙間が開き、そこから差し伸ばされる熱い舌を、クラウディオは唇とその奥にある歯で甘く噛んだ。ぴくっ♡と、急所に歯を立てられる危機感と快楽に跳ねる体を、片手で一度優しく撫でながら自分の舌で迎え入れてやる。絡みつく舌を丁寧に舐り、上顎をずり…♡ずり…♡と舐めて、奥歯の付け根にまで舌先を伸ばす。乞われた通り、食べるような口づけだ。
「ん、く…♡…っ♡…っ♡♡ぁ、ん♡……ッ♡ん〜〜…♡♡」
捧げていた願いとは少しだけ異なる捕食を、アルカディアは陶然と受け入れる。唇を合わせた最初の内は、その眉尻が下がり、切なげな声が咥内でくぐもったものだ。けれどもクラウディオがその舌を甘く噛んだ頃には、彼の瞳には快楽が滲み渡り、蕩けて、体を弛緩させ、うっとりとその口付けを甘受するようになった。アルカディアは口づけも好んでいた。
自身の下で堪らなそうにくねる体を撫で上げながら、クラウディオは胸の谷間へと再び手を持ちやった。月に愛された白い肌は、今や手づから与えた法悦により赤らんでいるに違いない。彼はそれを肌で感じ取る体温で想像した。甘美で、そして現実に近しい想像を抱きながら、指先が片側の胸部へと辿っていく。淫靡を作り出す穴の縁へと潜り込み、濡れた布を手の甲で押し上げる。
それは先程愛撫をしたときと同じ仕草であった。それをアルカディアも理解したに違いない。極々近くにある赤い瞳が期待に細められ、背がくねり、胸を僅かに突っ張らせる。声もない愛らしい懇願に対し、悪戯をするつもりはもうなかった。
「んっ♡んっ♡ん゛、ぅ…♡♡…ッ♡ぁ、は…♡ッ…ん♡んむ、ぅ…♡♡」
育て上げた胸の粒を、指先で摘まみ上げる。きゅっ♡きゅ…♡と絞り上げるように上下に擦り上てから、指の間でくりくりと優しく擦り捏ねる。時に、爪先を立てて殊更優しく搔けば、口づけの合間に漏れだす喘ぎはいっとう甘いものとなった。膝が立ち、シーツの上を足が泳いでいるのだろう。布の擦れる音が遠くで聞こえて、クラウディオは想像した。立てられた膝が、自身の腰に擦り寄るようにぶつかってからは、その予想が正しいのだと確認できた。
体を撫でていた手をも胸部へと辿らせ、同じように愛でてやる。そして、聞こえてくる喘ぎと身じろぐ様から、クラウディオは予感を感じ取る。それは彼の胸に、いっそ暴力的で、ひどく甘美な望みを抱かせた。クラウディオは優しい男でなかった。だから、自身の欲に従い続ける。
「…♡んぅ、ぅ……♡…っ♡♡ぁ゛…♡♡ッ…う、…ぁ…♡…っ゛♡んぅ゛…♡♡…っ♡」
爪先を使う愛撫を多くし、口づける間隔を長くしてやる。舌を丹念に愛撫し、唾液を送り込んで、従順と飲み込ませる。そうして息を薄くする内、アルカディアの瞳が漠然と色を滲ませていく。身悶えていた体はぴくっ♡ぴくん♡と跳ねることを繰り返し、立てた膝はすっかりと腰にすりついた。枕を掴むばかりであった両手が、ついにクラウディオの首の後ろへと回る。
僅かに身を屈め、縋る抱擁を助力してやりながら、クラウディオはいっそう口づけを深めた。時折行う口づけの合間で、アルカディアが懇願じみた呼び声を紡ごうとする。しかしクラウディオは、それを口づけで飲んでやった。
優しいのに強引な口づけに、アルカディアは堪らなそうに音を漏らす。彼は元から従順であったが、従順を強いられることに喜びを見出す性質があった。
「ん…ッ♡♡♡…ッ゛♡♡っ♡んぅ゛…ぅ…♡♡…〜〜っ♡♡……ぅ、ぅ゛…♡♡」
やがて、びく…っ♡♡ぴくん…♡♡と体が震え、項に柔く爪が立てられたとき。クラウディオは自分の欲が果たされたのだろうと察知した。片手は未だ愛撫を続けるまま、もう片手を胸から離し、腹へ、太腿へと下ろしていく。股の付け根辺りまでずり上がっていた裾を超え、ぴくっ♡ぴく…♡と身じろぐ太腿を撫でながら、股の間へと指を伸ばす。指先には濡れた感覚があった。吐精か蜜液かは、目に映らない今は定かでない。しかし濡らす程度には感じ入ったのだとは、容易に理解できた。
「イったのか?」
「っ、♡♡…わか、……ぁ…♡…っ♡わかん…にゃ、ぃ……♡」
「濡れているぞ。軽くいっただろう」
「ぁっ♡♡ぁ、は♡♡ッ♡ァ、ぁ♡♡」
クラウディオは断定的に聞きながら、手を縁の下へと潜り込ませへその下へと指を宛がい、親指の腹で押しやる。丁度、雄膣の最奥にある、雄子宮の個所を、ぐり…ぐりぐり…♡とほんの少し強く押し込む。
夜ごと行われる愛撫により、アルカディアは皮膚の上からの愛撫でも深い快楽を得るようになっていた。剛直で、そして熱く白い欲望で満たされた快楽が、その記憶が、体に快感を呼び起こすのだ。
「ぁ、ぁ♡♡♡ぁっ♡あ♡♡ぁ〜…ッ♡♡ッ♡♡っ♡っぁぅ゛う♡♡」
呂律の回りきらない口でいっとう堪らなそうな声を上げながら、アルカディアは喉を晒した。頭を枕に擦り付け、髪を擦り合わせる。未だ胸部にある手でぎゅぅ…♡と強く胸の粒を摘まむと、今度は顎を引いて、喘ぎと共に舌をまろび出す。瞳全体に滲んでいた涙が目尻に溜まり、ついに零れ落ちかける。そうしながら、アルカディアは白状の声を紡いだ。
「いった…っ♡♡いっ、た…ぁ♡♡ッ♡ぁ♡ぁ♡♡っ…♡いってぅ…、の…♡♡」
「ああ……そうだな、その通りだ」
白状されずとも、その事実は明らかだ。呂律はもう碌に回っていない。言葉よりも喘ぎを紡ぐ方が簡単なほどに。股座は濡れている。それは下腹部から脚の付け根辺りまでをようやくまともに覆う布地が、漏れ出る先走りを、そして零れ出た白濁を吸い取ったからに違いない。それは手を裾から内側に潜り込ませるときに感じたニットの濡れた感触から想像できた。
けれどもクラウディオは微笑んで、その白状を受け入れる。よく言えたと褒めるように頬や瞼へと口づけ、零れ落ちる涙までもキスでもって拭い取ろうとする。そうしながらも、へその下、雄子宮を愛でる手は止めないままだ。そして胸部を愛でる手を離すと……今度は片側の手と同じように裾の下へと潜り込ませる。そして、股座にほど近いところで首を擡げる生殖器を、指先だけで撫で上げる。するりと、確かめるように。いたずらに愛してやるように。
敏感な先端を布地に擦らせていじましい快楽を得ていた陰茎は、すぐにぴくぴくっ♡と甘く震えた。ニットのざらりとした感触は心地いいが、大好きな手によって愛でられる方が幾らも気持ちがいいに違いない。漏れ出る液は全て服に吸い取られるため、竿はまだ乾いていた。クラウディオは股座に一度手をやって、溢れ出る愛液を指先に掬うと、それを陰茎に擦り付けてやった。ぬち…♡と、わずかな水音が立ち、指が愛撫をしやすくなる。へその下をぐりぐりぃ…♡と捏ねて押し込みながら、陰茎を指先だけできゅぅぅ…♡と揉み込んでやると、腰はびくっ♡♡と跳ね、陰茎も同じように身を震わせる。その頃には、聞こえてくる声はあられもなく、そして懇願に満ちたものとなっていた。
「くぁ…でぃお♡ッ♡〜っ♡くぁ…ぅ…♡♡おねが…ぃ♡♡」
ついに耐え切れなくなったのだろう。アルカディアは自分の片脚を大きく広げると、両手を自身の股座へと差し伸ばす。濡れた局部が晒され、更に、彼は指を蜜壺の入り口へと宛がい、そこを恥部を晒す。左右に押し開き、そこがどんなに濡れているか、そしてどんなに雄を望んで赤らんでいるかを曝け出す。恥に構ってもいられない懇願は実に大胆だ。アルカディアの顔は、羞恥か与えられた快楽かによって赤色が滲んでいる。そして赤い瞳は涙を滲ませるままクラウディオを見つめていた。唇は震えて、必死に呼び名を紡いでいる。
その呼び名に混ざり込む懇願と、その内容までも、クラウディオには理解できた。もう触れてくれと……否、もう挿入てくれと強請っているのだ。愛液は股座を濡らし、臀の谷間にまで伝うほどで、このまま挿入たとしてもナカは然程苦労せず受け入れるだろう。クラウディオの股座にある熱も随分熱く、硬くなっている。先程からずっと、眼前の痴態は堪らないものだ。果てにこうも大胆に強請られては、今すぐにもその中を味わいたくもなる。アルカディアを前にすると、クラウディオの性欲は愛欲と共に酷く掻き立てられる。
けれども、クラウディオの本能と心は、別の意見を持っていた。この折角のプレゼントをすべて味わってしまうのは、まだ早いのではないだろうか?もっと丁寧に、愛し抜いてからでも遅くはない。違うか?
「アルカディア」
喘ぎ震える声を紡ぐその口元へと顔を寄せ、クラウディオは微笑んで呼び名を囁く。そうしながら、愛しい陰茎を愛でていた手を下へと下らせる。晒された局部をなぞるのは、あまりに容易いことだ。ぬち…♡と軽く音がたち、眼前にある唇がはっと息をのむ。眉尻が下がり、泣くような喘ぎが漏れ出す。
「ぁ、っ♡ちが、♡なんれぇ…っ♡♡あ♡♡ぁ、あ♡♡んぁ、あ♡♡♡」
クラウディオの指がぬぢゅぅ…♡とナカへと入り込んだとたん、アルカディアはあられもなく喘ぎを溢れさせた。びくっ♡びくっ♡と腰を揺らしながら、涙が零れ落ちた瞳は自身の局部を見つめている。信じがたいという風に、そして酷く高揚しているような眼の色をして、クラウディオの指が自身の雄膣へと埋められる様を映し込んでいる。
ナカは熱かった。愛液が満ち満ちており、奥へと指を進めていくのになんの弊害も有りはしない。柔い肉の壁を指の腹で擦れば、ぬりゅ…♡とした感触がする。こうなれば、鳴き所を触れるまでもなく、雄膣の壁をなぞるだけでも気持ちがいいはずだ。それを知っていたクラウディオは、浅いところで幾らか指を遊ばせた。一度埋めた指で、愛液を搔き出すようにナカから縁へと擦ってやる。最中、縁を広げたままでいるアルカディアの指をも擽るように撫でて、戯れるようにしながら、そこから離してやった。そしてアルカディアの両手の指のすべてが離れようとする頃に呼び声を落とす。
「アルカディア」
「ぁ♡ぁ♡っ♡ぁ、ぅ♡♡っ♡…っ♡くぁぅ、ぅ…♡♡」
「抱き締めてくれないか」
呼び続けるまま、涙を拭い取るように、慰めの真似事のように眦へと口づければ、赤い眼差しはクラウディオへと戻った。ほんの先程までは非難めいていた眼差しは、今や与えられる快楽によって縋るような色しか帯びていない。愛しくてならないその変異に堪らず下瞼に幾らかキスを落としながら、クラウディオは強請る言葉を紡ぐ。
「手を後ろに回して。さっきと同じように」
「んっ、ん♡っぁ、ぁ…♡ぁ、♡ぁ♡へ、ぅ…♡」
「そう、いい子だ。そのまま、ぎゅっとしていろ」
アルカディアの両手のすべてが自身の首の後ろ、項へと戻ったことを知ると、クラウディオはようやく自らの指を奥へと進め始めた。
きゅん…♡と雄膣は甘くうねり、指を抱きしめる。週末の夜ごとクラウディオに愛でられ続けたそこは、入り込んだそれが望んだ男根だと信じたいのだろう。むちゅぅ…♡と指を抱擁する肉は熱く、そして確かめるように幾度も甘く締め付けている。けれどもアルカディアは、クラウディオの指も好んでいるのだ。指先が慰めるように、擽るように肉を搔けば、締め付けはいっそう甘さを帯び、その収斂は次第に指を歓迎するものとなった。クラウディオの耳元に零され続ける喘ぎも上擦り、甘えた色を滲ませていく。
この体制を、クラウディオはひそかに好んでいる。アルカディアが自分に抱き縋る様に胸が満たされるようだったし、落とされる喘ぎが丁度耳元で直接囁かれるようになることも、酷く高揚を煽る。
「ぁっぁっ♡♡ぁ〜〜っ♡♡ッ♡ん♡♡そ、こ…ひゅき…♡♡っぁ♡ぁぁぁ♡♡」
クラウディオの指が前立腺に辿り着いたとき。アルカディアは息をのみ……そしてすぐに媚声を溢れさせた。触れた指先が、そのまま前立腺を擽るようにして愛で始めたからだ。ぬりゅぬりゅ…♡と指の腹で擦り、ぬぢゅぅ…♡と円を描くように優しく撫でながら、ゆっくりと押してやる。
クラウディオは脇辺りに手を宛がうと、そこを優しく覆い包んだ。殆ど前掛けのようになっている衣服のため、手は汗に濡れた素肌に触れる。そのまま下ろしていけば、震える腰へとたどり着く。びくっ♡♡ぴくっ♡♡と跳ねる腰を指先で撫でてやれば、心地よさげにくねる様まで感じ取れた。クラウディオは堪らず、蜜壺へもうひとつの指も潜り込ませる。濡れそぼる雄膣はその指をも難なく飲み込んだ。むしろ、剛直のような太さのない指に寂しがっていたかのように、その幅が増すのを喜んで収斂した。
「あ♡♡ぁ♡ぁ♡ッ、ぁ♡ぃ、ぅ♡♡…っ♡きもち…っ♡♡」
「アルカディア。いい子だな、かわいい」
「ぁ、ひ♡っ♡んぅぅ♡♡ぁ、ぁ♡ぁ♡ぁぁ♡♡」
「いい子だ。気持ちいいな」
聞こえてくる喘ぎを聴きながら、クラウディオは優しい声音を紡ぐ。覆い包む腰や脇を優しく撫で、傍にある真赤い耳を愛しく思い唇を寄せながら、喉奥から優しい声を紡ぐように努める。喘ぎを堪えることなく、加えて気持ちがいいと白状した愛しい人を褒める。そこにもっと白状をして欲しいという願いを込めて。
未だかつて、自分がこのような声を作り出すことがあったろうかと、クラウディオは時折考える。考えざるを得ないほどの声なのだ。物心がつき、自分で物を考えるようになって、愛を選べるようになってからは、初めてのことだ。認識と共に、思う。自分のこんな声を聴くのは、アルカディアだけでいいと願う。今生なにがあろうと、この人以外の温もりは知り得ないだろうし、知りたくもないと。
「ッ、…♡くぁ…う…♡♡くぁぃお……♡♡」
指での愛撫を幾らも続けた頃。耳元で声が聞こえ、クラウディオはそれに米神へ優しく口付けることで答えた。「アルカディア」と、やはり優しい声で名を紡ぎ、顔を上げて目を合わせてやる。快感を与えられ、それでも一番欲しいものを与えられないまま蕩かされた赤色。艶やかで美しい瞳は、先程と変わらずクラウディオを縋り見ていた。
「いれ、て……♡♡っぁ♡ぁ♡も、ぉ♡♡っ♡いれて♡いれて……♡♡ん、ぅ♡ぁ♡っ♡おねが…♡♡」
アルカディアは言いながら、腰を緩く揺らす。クラウディオの手が覆う中で、細腰はくねるように上下する。ナカに埋まったままの指により、ぐちゅ♡くちゅ♡と音が立つ。指先が前立腺を掠めて……けれども、クラウディオが愛するという意図をもって愛でていたときよりは明確な快感を得られないようだ。アルカディアの眉尻はさらに切なげに下がっていく。
口から紡ぎ出す言葉がどれほどあられもないものか、アルカディアは考えもつかないようだ。或いは理解した上で、煽るためのものとして口にしているのか。どの道、クラウディオの胸の裏側が酷く熱くなったことに変わりはない。
「ぁ、ぁ……っ♡ゃ…♡っぁ、…!♡♡ん…♡」
クラウディオは指股まで差し入れていた指をゆっくりと引き抜くと、手と腕で腰と臀部を掴み、自分の膝の上へとアルカディアの体を乗せた。アルカディアが未だ頸へと回した腕を解いていなかったため、抱き抱えることは容易いことであった。
アルカディアの臀部が膝へと下ろされると、ニット素材が覆うその腹部にいきり勃った剛直がぶつかった。愛撫の最中、幾らか軽く達していたのだろう。漏らした白濁が服に染み、谷間からへその上あたりまで伸びる穴の下……丁度、クラウディオの剛直が触れる下腹部辺りはいびつな円形に色が変わっている。布越しに生殖器同士が擦り合い、アルカディアは声にならない声を漏らした。
「アルカディア、よく頑張ったな」
「っ♡♡ぁ♡♡ぁ♡っひ、ん…♡…っ♡ぁ、ぁぅ…♡♡」
クラウディオは言いながら、アルカディアの頭を撫でる。赤色の髪には汗が滲んでおり、しっとりとした感触をクラウディオの掌に伝えた。手はそのままニットに包まれた項へ、そしてすっかりと晒された背中へと降りていく。背骨が描くなだらかで美しい線を辿るように優しく。
アルカディアはその手の動きに合わせて、クラウディオへと縋りついた。両腕を彼の項へと回し、体を逞しい胸部や首元に傾けて、頭に頬を寄せる。俯く顔は自然と、その唇をクラウディオの耳に触れさせ、唇は甘えるように耳朶を食んだ。
赤子のような甘えを感じ取りながら、クラウディオの手は腰あたりまで辿り着く。尾骶骨を指先で擽れば、耳朶を食んでいた唇は甘やかな喘ぎを零した。体がぴくんっ♡と跳ねて、たった今染み込んだ快楽と、これから来る法悦に震える。
そう。わざわざ抱き上げて成した体制と、クラウディオが紡いだ言葉、そして意図のある手からしても、アルカディアがこれから望んだ快感が訪れることは、明らかだった。
「腰、上げろ。できるか?」
「ん…っ♡♡ん、んんぅ…♡…っ♡ぁ、ん……♡」
「そうだ。いい子だな」
「ぁっぁ♡ん♡♡ッぁ〜…♡♡っ♡」
クラウディオは褒めたが、アルカディアの腰はそうまで擡げられなかった。快楽を与えられ続けた腰元は、もはや震えながら微かに浮かす程度の力しか残されていない。けれどもクラウディオは優しく……もはや甘いとさえいえる声を紡いで、ようやく浮かせた臀部を掌で覆う。ぎゅぅ…♡と、柔く掴みながら幾度か揉み込み、その肉付きを確かめる。アルカディアの体にはほとんど肉がなかった。臀部などは、掴めば骨の感触が掌に感じられるほどだ。けれども以前よりはよくなっている。このまま肥えさせなければならない。
「ぁ゛♡♡ぁ♡ぁ♡♡〜〜…っ♡♡うぁ、ぁ…♡♡」
クラウディオは使命感めいた思いを抱きながら、指先を臀の合間に潜り込ませる。先程愛でた後孔を指先で突けば、アルカディアはいっとう堪らなそうに声を上げる。両手の指先でぐぅ…♡と押し広げてやれば、その声はさらに上擦ったものとなった。
「ッ♡ぁ、ぅ♡くぁ…ぅ……っ♡♡っ…♡うぁぅ…ぃお……♡♡」
呼び声はもはや愛称のような声の羅列となっている。クラウディオの米神に、耳に口づけるようにして呼びかける唇は、もう媚声しか紡げていない。限界なのだろうとは解っていた。今よりずっと前から、だが。
「アルカディア、挿入るぞ」
「ッ♡♡あ…♡♡っぁ♡ぁぁ、ぁ♡♡」
クラウディオは頬を擦り寄せるようにアルカディアの耳元へと顔を向け、とりわけ優しく甘い声音でそう告げた。それが、突然の挿入に驚いてしまわないようにという配慮なのか、これからその体の奥底までをも貪るという宣告なのかは、クラウディオ自身にも定かでなかった。けれど、堪らなそうに背を反らしたアルカディアの姿を目に映すと、それは後者のように思えてならなかった。
「ぁ、っぅ…♡♡くぁ…っ、でぃお…♡♡ッ、♡あ、ぁ、ぁ♡あ♡♡ぁ゛っ♡♡ッ♡♡〜〜っ♡♡」
臀部を掴むままの手で柔い肉を揉み込みながら、双丘の合間を割り開く。濡れたそこに熱く育ち切った欲望を宛てがい、挟んで、ずり…♡と扱く。それだけで、アルカディアは今にも達しかねない声音でクラウディオを呼んだ。
そしてその声は、臀部の合間で擦られていた剛直が、その切っ先を後孔の縁へとあてがった時……そして、熱い切っ先がその縁を舐めつけるようにしてこえたとき、いっとう堪らなそうにまろびでた。
「あ、ッ゛♡♡♡っ♡〜〜〜ッ♡♡♡〜〜〜……ッ♡♡♡」
ぬちゅ…♡ぬぢゅぅ…♡と、互いの肉が擦れ合い、溢れ出た愛液と先走りが混じり合う。赤く膨れた亀頭が熱い淫肉に包まれる。余程待ち望んでいたのだろう、雄膣は包み込んだ亀頭を丹念に愛であげようとする。淫肉で包んだままきゅん♡きゅうぅ…♡と甘く締め付ける。熱い抱擁により、しとどに纏わせていた愛液が敏感な亀頭へと塗りたくられるのだ。
雌の歓迎と、愛らしい呼応、もはやどれが起因かなど定かにする間もないまま、募る高揚は留まることを知らない。クラウディオは手で掴み続ける臀部を、ゆっくりと己の股座へと落としていく。ぬぢゅ…♡ぐちゅ…♡と、粘膜の擦れ合う音と共に、クラウディオに縋り付いているアルカディアの体躯が震えた。声にならない喘ぎが音として溢れ、クラウディオの鼓膜を甘く擽っている。その音によって体の内側の熱を絶えず湯立たせながら、クラウディオは頬を寄せる。汗に濡れた米神へ、耳へ、頬へと。
近くにある骨張った肩越しに腰へと目を向ければ、晒された背中がありありと映る。桃色が滲んだ白皙が、背骨を中心に流れるなだらかな曲線と共に美しい様を描いている。そしてその流れに従って、詰襟となった頸からリボンが垂れ落ちている。美しく、愛らしく、堪らない光景だ。
その背に手を這わせたいと、クラウディオは思った。けれども掌を掴んだままの臀部から離すことは、決してしない。この手を離せば、快楽の滲みきった体躯はその重みに従って股座へと落ちるだろう。剛直は容赦なく雄膣を貫き、甚だしい快楽が響く。負荷とすら言えるほどの快感だ。それに打ち震える様とて、きっと愛おしいのだろうと……クラウディオは夢想する。熱に塗れた思考は、いっそこの手を離してしまいたいとすら考える。
けれどクラウディオはそうしない。劈くような快楽よりも、ゆっくりと滲み、深く染み込むような快感に侵されるアルカディアの面持ちの方が、クラウディオは好きだった。そうやって自分という雄を、この愛おしい存在に刻みつけたいと心から願っている。
「くぁ゛…ぅ…っ♡♡…っ♡くぁ、…ぃお…ッ♡♡っ♡♡っぁ♡ぁ、ぁ♡ぁ〜〜…ッ♡♡」
ゆっくりと腰を落としていくうち、亀頭が前立腺へとあたったのだろう。行き当たるように角度をつけていたのだから当然だ。堪らなそうに、甘えるように、そして愛おしそうに、仕切りにクラウディオの名を読んでいたアルカディアの声が一度詰まり、上擦る喘ぎが連なる。腰が跳ねようとする振動も掌へと伝わった。同時に、絡み付いていた雄膣がきゅん…っ♡と締め付けを強め、クラウディオは僅かに眉先を寄せる。甘くうねる淫肉が、自分を愛でる力強い剛直へと縋り付く感覚は堪らない。
「〜〜…っ♡♡っ♡ッあ♡♡そ、こぉ…♡♡」
「……ここが…どうした?ん?気持ちいい?」
「ぁッ♡♡ぁ゛っ♡♡っッ♡きも、ち…♡♡ッ♡あ♡♡あ♡あ♡♡ん、っん♡きもちぃ♡♡」
首元から背へと回されていた腕がぎゅうぅ…♡とクラウディオの頭を掻き抱き、そのままアルカディアが声を紡ぐ。クラウディオが掴む臀部を上下に揺らし、熱い先端で膨らんだそこを捏ね突いているためだろう。喘ぎ声は溢れ出し、クラウディオの耳を揺らす。
「い、く…っ♡♡っぁ、あ♡あ♡♡い、ぅ♡♡くあ…ぃおっ!♡♡ッ♡い、く…から…っ♡♡」
「ああ…そうだな、軽くイってる。ナカがしまって…気持ちいいよ」
「ッ♡♡っ♡ぁ♡♡ぁぁぅ♡♡〜〜〜っ♡♡♡」
おそらく、アルカディアは律動を止めるために声を上げたのだろう。喘ぎの最中にも懸命に紡がれた言葉に、クラウディオはただ肯定を返してやる。側にある真赤い耳朶を食み、舌先でくすぐるように舐めてやりながら、自身の感じる快楽を伝えてやる。こう言えば、アルカディアが何も言えなくなるだろうとクラウディオは知っていた。どころか、酷く喜ぶだろうことも想像がついていた。アルカディアはクラウディオが快楽を得ていると告げる度に、心底嬉しげな……そして安堵したような顔をする。
案の定、耳元からは甘やかな喘ぎばかりが聞こえてくる。加えて、雄膣はきゅうぅ…♡♡と剛直への抱擁を熱くするものだから、クラウディオは堪らない心地で耳に柔く歯を立てたものだった。
「ぅぅ…ぁ…♡♡ぁ♡ぁ♡♡…っ♡ぁ゛ぅ…♡♡ん…ぅ…♡」
捏ねては擦り、突いては、慰めて撫でるようにゆっくりとなぞる。そのように、指で育てた前立腺を剛直によって擦り愛で続け、アルカディアがくったりとクラウディオの頭へ頬を乗せた頃。クラウディオはようやく、前立腺への愛撫を留め、その奥へと剛直を進め始めた。雄膣は、無論雄を拒むことなどなく、むしろ甘くうねっては強請るように剛直を抱き込んでいる。
鳴き所に次々と与えられた快感によって、甘イキが止まらないのだろう。アルカディアは前屈みにクラウディオの胸に身を預けながらも、ぴく♡ぴく♡と小さく跳ねることを繰り返す。もはや、剛直が雄へ進むため、雄膣を撫でこするだけでも気持ちがいいのだろうか。シーツに両膝をついたまま、そこから伸びる足先は、その指ですりすり…♡と幾度もシーツを掻いていた。まるでそうしなければどうにもならないというように。溢れ来る快楽に溺れかけている体現であるかのように。
「ひ……っ♡♡…ッ♡♡ぁ、♡ぁ…♡♡〜〜〜…♡♡♡」
こちゅ…♡と、小さな音を立てて欲望の切っ先が行き止まりへと行き着く。それをアルカディアも分かったのだろう。感嘆とした声を漏らしながら、びくびく…っ♡とその背が反らされる。
クラウディオはひとまず深く息をついた。シーツへ伸ばしていた膝を少し宙に浮かし、脚でそれとなくアルカディアの臀部を支えて、これ以上は入り込まないように姿勢を調整する。そうして臀部から手を離すと、己にしなだれかかる体躯を抱き竦めた。
「アルカディア、…っ、…アルカディア……」
「ぁ、ぁ…♡♡っ…♡んぅ…♡♡…♡♡はぁ、ぁ…♡〜〜…♡♡」
熱い抱擁に、アルカディアからは嬉しげな音が零れていく。子猫の鳴くようなその声に、クラウディオは小さく微笑むと、曝け出された背中を優しく撫でながら、耳や頭にキスをしていった。キスの最中に名を紡ぎ、そして愛でる言葉を紡ぐ。幾度も優しく呼び掛けて、そして仕舞いに「可愛い」とまで囁く。ただ撫でるだけ……そして囁かれるだけで、堪らないのだろうか。アルカディアから溢れる声は止むことなく、むしろ次第に甘く上擦ってもいった。
「アルカディア。…聞こえるか?」
「……♡♡ん…♡…っ♡ん…っ♡くぁ、ぅ…♡♡」
汗に濡れた髪を優しく撫でてやりながら、耳元で声を掛ける。ナカを時折きゅ…♡と締め、むにゅ…♡と肉をうねらせて、埋まる剛直を確かめるように愛撫していた彼は、呼び掛けに対しいっとう甘く雄膣を締めながら、口でもきちんと呼応した。「いい子だ」と、頭を撫で続けるまま耳に口付け、返答を紡げたことをひとまず甘やかす。そのように甘え縋る様を堪能しながら、クラウディオは口を開いた。
「お願いがあるんだ。聞いてくれるか?」
「ん…♡ん…♡♡…っ♡……♡なぁ、に…♡」
開けば媚声ばかりが溢れる口で、アルカディアは懸命に返事を紡ぐ。クラウディオの願いとなれば、アルカディアはなんだってしようとするだろう。解った上でその言葉を選んだのだ。
「アルカディア、お前に動いてほしい」
うっとりとした様子で肩口に頬を寄せるアルカディアへ、クラウディオはそう願う。ついで、耳へともう一度口付ければ、ややあって言葉を理解したのか、アルカディアは寄せたままの頭部をすりすりとクラウディオの首元へ擦り付ける。甘えるふりをして実のところ悩んでいるような素振りである。あと一押しが必要だろう。
クラウディオは頭を撫でていた手を、するすると頸へ下ろしていく。火照り、汗の滲む皮膚を指先で撫でながら、優しく声を紡ぐ。アルカディアは耳も、首元も弱い。
「アルカディアの中が気持ち良くてな…あまり動けそうにない」
「…っ♡♡……ぅぁ、ぁ…♡…ん……っ♡」
「だから、お前に動いて欲しい。…頼めるか?」
口ぶりで、声音で、指先で、甘えるようにしながら、クラウディオが紡いだのは窺うような言葉だ。けれどそれは実のところ、確信めいて紡いだ命令のようなものだ。アルカディアはクラウディオが快楽を得ることに何よりの幸福を得る。そしてクラウディオが願えば、それをどんなことでも叶えようとする。そういった、いじましい程の恋情を、クラウディオは知っている。常から注がれる態度で、言葉で、そして自分の胸の裏にある同じような熱情によって。
クラウディオが願った時から、ナカはきゅうぅ…♡と歓喜の収斂を続けていた。指先で擽り、気持ちがいいのだと言葉を交えて強請った頃には、その締め付けはいよいよ甘く、行き止まりの先から次々に垂れ落ちて来る熱い粘膜からも、その高揚は明らかであった。
それだから、擦り寄るようだった頭部が、頷くために首元に擦り付けられるのは、もはや必然的なことだったのだ。
「ん……♡…っ♡♡す、る…♡…♡じぶん、で…♡…ぁ、ぁ…っ♡♡…う……♡」
「ああ…本当か?嬉しいよ…いい子だな、アルカディアは」
「ん…っ♡♡〜〜…っ♡♡」
僅かながら笑みも交えた声で褒めそやせば、アルカディアは堪らなそうに声をまろびだし、ぎゅうぅ…♡とクラウディオを縋り抱く。ナカはきゅん…♡♡と甘くうねって、軽く達したのかと疑うほどだ。
動く前からこうで、果たして本当に自ら動くことなどできるのだろうか。強請った手前、そう心配すらしたクラウディオであったが……アルカディアは少しの間クラウディオを抱き続けた後、緩慢と前に屈んでいたその身を起こしていった。
「……っぁ、ぁ♡♡あっ♡ッ♡ん…っ♡ん〜〜…っ♡♡」
先ほどまではクラウディオの手で、今ではクラウディオの脚で支えられている腰が、緩慢ながらほんの僅かに宙へ浮き出していく。くちゅ…♡ぬぢ…♡と音を立てて、血管の浮き出た剛直が僅かにその身を現す。一度は宙に浮いた細腰は……けれどもすぐに、クラウディオの膝元へと落ちていく。ぱちゅっ♡と音を鳴らしたのは、後孔というよりも汗の滲んだアルカディアの臀部と、クラウディオの鍛え抜かれた太腿だ。根元のほんの少しが外気に触れた剛直は、再び殆どを雄膣に包まれる。
暖かな淫肉の感覚に音もなく息を吐き出しながら、クラウディオは腰元に回した手で白肌を撫でる。淫猥な衣服はちょうど尾骶骨の辺りで肌の露出をやめ、くるりと臀部を覆い始めている。きゅう…♡と弱々しくも甘くすり…♡と己の腰へと擦り寄せてくるアルカディアの足は愛らしく、愛でてやりたいとクラウディオは何度も願ったものだ。けれども願いに任せてその足へと指を伸ばせば、アルカディアの腰は二度と擡げられなくなるだろうと解っていた。
「ん♡♡ん♡♡ッ♡ぁぅっ♡…っ♡は、は…っ♡ッぁ♡あ♡♡ぁ、っ♡♡」
「…っ、……いい子だな…。…そう、その調子だ」
僅かに腰を浮かせては、すぐに膝元まで臀部を落とす。アルカディアはそれを何度も繰り返した。ぱちゅ♡ちゅっ♡ちゅぷ…♡と、そんな愛らしい淫音だけが部屋に弾けていく。
自分でやる、というにしては、可愛らし過ぎる動きだ。けれども快楽により重みを増した腰を、クラウディオに縋り付いてはなんとか擡げるアルカディアの姿を前に、クラウディオは何も言えなかった。なにより、糾弾などするつもりもない。焦ったい程に甘えるような愛撫ばかりを受ける剛直には確かに辛いものがあったが、それ以上に、腕の中に抱く愛おしい人が好ましかった。力を込めるために強張り震える体、伴って、シーツの上でもがく脚。それらが膝の上に臀部を下ろした途端、喘ぎながらも深く息をついて脱力していく様。肩口に、頭に擦り寄り、甘える声が隠すことなくまろびでること。安堵に満ち満ちたその姿が何よりも愛おしく、何よりも興奮した。
「ぁ♡♡あ♡ッ〜〜♡♡んぅぅ…♡♡っ♡ぁ♡ぁ♡ぁぁぁ…♡♡」
耳元で落とされるアルカディアの声音がいっそう甘さを増していく。上擦る声音を心地よく聞き入りながら……そのときになって、クラウディオは不可思議に気づいた。
アルカディアは執拗に、同じ動きを繰り返す。力が入らないにしても妙だ。途中、一度や二度は大きく腰を振り下ろしてもいいだろうに、細腰は決してそうしようとしない。ぱちゅ♡ぱちゅっ♡と鳴る音と共に剛直に落ちていく腰は、そのまま膝下へぐりぐり…っ♡と臀部を押しつける。びくびく…っ♡と背がのけ反り、子猫のような声がまろびでる。きゅん…っ♡きゅん♡と剛直を咥え込む雄膣の堪らない動きに、クラウディオは唇を舐める。そうして……亀頭に感じる甘い快楽によって、はっと思考を覚まさせた。
「お、く…っ♡♡っ♡きもちぃ…♡ぁっ♡あ♡♡おく♡す、き♡♡っ♡すき、ぃ♡♡」
紡がれる媚声の通り、雄の子宮口はしきりに怒張へと強請っている。鈴口を甘噛みし、舐めるように吸い付き、深く口付ける。いずれそこから溢れ出す白濁に、最奥を犯してもらいたがっている。離れることすら寂しいと言わんばかりに小刻みな衝突を繰り返させ、しきりに射精を乞う。
疲弊と不慣れのあまり繰り返されていたとばかり思えた愛撫が、実はそうでなく、雌の欲望を如実と現したものだと悟ったとき、クラウディオは思わず生唾を飲み込んだ。音もなく発した欲望の発露をアルカディアは見つけられなかったようだ。けれど熱を増した剛直はしっかりと感じ取ったようで、口元が堪らなそうに声を零した。
「ッ゛♡♡ぁ♡ぁ♡♡ん、う…♡♡ッ♡っ♡おく…♡おく、ほし…い♡♡ッ♡ぁ♡ぁ♡おく、…♡♡」
「……ッ」
首元に抱き縋り、雄の力強さに体を震わせながら、クラウディオの耳元で懇願を紡ぐ。たんっ♡たんっ♡ぱちゅっ♡と、腰の動きは先程よりも早くなり、声と共に雄膣でもって剛直に強請る。アルカディアの唇はクラウディオの耳を食み、舌でちろりと舐めながら、堪えることなど出来はしない媚声を零し続けていた。
それが故意によるものか、快楽に酩酊とした意識で訳も分からぬまま行っているのかは定かでない。故意にしろ無意識にしろ、仕草も声も、男を誘惑するに相応しいものである。
「ッあ!♡♡♡ぁ、ぁ…っ!?♡♡ッ♡♡ぁ゛♡♡♡〜〜っ♡♡♡」
膝の上に臀部を擦り付け、腰をくねらせていた体が、ひときわ大きく跳ねる。声にならない喘ぎがクラウディオの耳たぶを震わせる。首元に抱き縋っていた腕は先程よりも力をなくし、その身をくったりとしな垂れるばかりだ。剛直を抱擁する雄膣はぎゅぅ…♡♡と締め付けを強め、その身の絶頂を表していた。先程まで甘くうねり、最奥へ導こうと強請っていたそこは……今や過ぎたる快楽に打ち震えている。
深い快感のあまり、何が起こっているか理解も、理解しようとする思考も及ばない。そんなアルカディアとは裏腹に、クラウディオはその身に襲った快楽の正体を確かに把握していた。何せ自らが与えた快感なのだ。膝に下り、擦り付ける臀部に合わせて、自らの腰を突き上げた。ずんっ♡と、伸し掛かる体重を諸共しない突き込み。雄の子宮口からの甘噛みをただただ受け入れていた切っ先が、甘えるその口へと強く押し付けられる。ただそれだけでも、欲しがりな雌には多大な快楽だったに違いない。先程まで愛らしく強請っていた体は、クラウディオに縋りついて擦り寄ることの他、なにもできなくなっていた。
「アルカディア…」
「ぁ♡♡ぁ♡♡ぁ♡♡ッ♡♡ぁ゛♡♡〜〜〜ッっ♡♡♡そ、こぉ…♡♡♡」
クラウディオは首を僅かに傾け、喘ぎじみた息を繰り返すアルカディアに頬を寄せる。それに応えるように、頭を抱き込むように回された腕がぎゅぅぅ…♡と微かに力を取り戻し、アルカディアの頬がクラウディオの頭部へと擦り付けられる。
愛おしい呼応を感じ取りながら、クラウディオは背を撫でていた手の一方で、尾てい骨の辺りを覆う。そしてぐ…っ♡と己の股座へと押し付けると、同時に腰を微かに揺らした。ぐり…ぐにぃ…♡と、雄の切っ先が雌の口を強く捏ね回す。先程まで与えられていた甘噛みなど比べようもないほど深い口づけのような。最奥までの入り口をこじ開けようとするかのような。酷く雄らしい愛撫である。
「あぅ♡♡ッ♡♡っ♡♡く、ぁぅ♡♡う゛ぁ、ぃお♡♡」
殆ど掠れている声を何とか絞り出して、アルカディアはクラウディオを呼んだ。懸命さの中に様々な感情が混じり合った声だ。どうして動いたのか、という非難じみた疑問。もう我慢ができなくなったろうかという不安と期待の予想。それらが法悦という隠しようもない感情で押し潰されている声。アルカディアは堪らなそうに……おそらく殆ど無意識に背に回した手で肌を搔く。肩甲骨の辺りで僅かに鋭い感覚が走ったが、クラウディオは気にも留めなかった。爪の搔き傷など、痛みのうちに入らない。むしろ強い愛撫にさえ思えて、愛しくてならない。
「ぃく♡♡いく…っ♡♡い…く♡♡いくぅ♡♡」
アルカディアは泣くような声で幾度も絶頂の予感を紡ぐ。けれども彼の雄膣は剛直の愛撫によってすでに幾度も達している。打ち震える淫肉は怒張に縋りつく他なく、その締め付けによって前立腺が押し潰され、雄子宮口に亀頭がいっそう密着する。更なる快感は絶頂を呼び……その巡るめく法悦の連鎖に、アルカディアは耐えられないのだろう。クラウディオの肩口に、耳朶に濡れた感触が落ちる。涙に違いない。けれどもクラウディオに止まる気はなかった。己の腰を振り上げ、剛直で行き止まりをど突き、捏ね続ける。その涙が快感によるものだとは、度重ねた彼との経験によって知っている。
クラウディオは眼前へと僅かに意識を移す。目の前にあるのは白く細い首筋だ。男性特有の太さはあるものの、色の白さが儚い印象を与えている。赤色が滲んだその肌が、酷く美味そうに見えて……クラウディオは唇をその首へと這わせる。舌で舐り、唇で食んで……そのまま、そればかりを繰り返す。歯を立ててしまいたい、強く吸い付いて赤い印をつけたいと、沸き起こる熱情を舐ることで慰め、抑え込む。
「んん゛ぅ♡♡ッ♡♡ぁ、あ♡ぁ♡♡〜〜ッ゛♡♡♡くぁ、ぅ♡♡ひゅき…っ♡♡ッっ♡♡ぁ♡♡」
耳と同様に、首も項も、アルカディアは弱い。ナカの締め付けはいよいよ甘く、強く、立て続く愛撫によって開きかけた雄子宮口から、どろりとした愛液が垂れ落ちてくる。それを先走りと混ぜ合わせながら、亀頭はずちゅ♡♡どちゅ♡どつ…♡♡と重い愛撫を繰り返し続けていく。アルカディアの腰が擡げられることなどもはや有りはしない。時折逃げようと擡げかける腰はクラウディオの手で押さえつけられ、ただただくねり、最奥を捏ね回す助力するばかりとなった。尾てい骨にあった手はそのままに、クラウディオはもう片方の手で太腿を愛でてやる。指先で押しつぶすように強く捏ねたあと、すりすりと優しく撫で回す。
首を。太腿を、ナカを……特にその奥側を愛でられ、アルカディアはもう意味のある言葉のなにをも紡げやしなかった。ただ打ち震える体と、白い背中の跳ねる様、剛直を愛撫する雄膣、そして舌足らずに紡がれるクラウディオの名前。それが如実と、アルカディアの法悦を現し続けた。
「ぁ、あ゛ッ♡♡♡っ♡♡ひ♡ぁ♡♡♡…〜〜〜〜〜ッ♡♡♡」
腰元から、聞こえてはならないような音が響き、ひときわ大きく背が跳ねて、ついに仰け反る。意識もしない内にその背を抱き込み、支えながら……クラウディオは奥歯を噛み締めた。腹に力を込め、沸き起こる絶頂を堪えんとする。亀頭の先が、熱いなにかに挟まれているのが解る。包まれているという優しさなどない。ぎゅぅぅ…♡♡きゅん…♡きゅん♡♡と強く吸い付かれている感覚。赤く膨れた敏感な雄の弱点を舐め回し、締め付け、吸い付いて、子種を搾り取ろうとする、雌の動き。
酷く情熱的で、本能的でもあるそれがなんなのか、クラウディオは知っていた。その堪らない快楽を味わったことがあるからだ。行き止まりをぶち抜いたのだ。先程まで甘噛みを、深い口づけをしていた雄子宮口に、先端が完全に食まれている。愛液と本気汁を垂れ出させていた雄の子宮に鈴口辺りが入り込み、堪らなく熱い感覚に包まれている。雌の部屋そのものに先走りを……種付けたいという渇望そのものを零され、ナカは酷い歓喜に包まれた。きゅん♡きゅん…ッ♡♡と甘イキも絶頂もどちらも繰り返し、淫肉が甘く甘くうねる。うねり続ける。
「ッっ♡♡♡っ…ぁ♡♡ぁ♡っ♡♡ッ♡ひゅ、ぅ…♡♡う…♡♡っ♡♡ぁぁ、ぁ〜〜…♡♡♡」
声さえ、息さえなくしたアルカディアは、震えが小さなものに収まりかけたとき、ようやくか細い喘ぎを零し出した。天を仰いだままの顔が、未だ降りてくることが出来ずにいる。クラウディオは米神から顎へと垂れ落ちてくる汗を感じながら、唇から細く息を吐き出した。射精はなんとか堪えた。しかし、目の前がくらりと酩酊する。それだから、眼前にようやく見えた胸部に……ぱっくりと開いて谷間を晒す淫猥な穴に、汗の伝う白い肌に、酷く酷く欲情した。
「ッぁ♡♡ぁ゛ぁッ♡♡〜っ♡♡らぇ♡くぁ、ぅ♡♡ッっ♡♡らぇ♡んぅぅ…♡らぇぇ♡♡♡」
顔を胸部に寄せ、晒された谷間に唇を押し当てると、そのまま顔を横へとずらす。穴がいびつに変形をすること、クラウディオはもう構っていられなかった。桃色の乳首に唇を押し当て、舌を這わせる。幾度も舐め上げては唾液ごと吸い付き、歯で幾度も甘く噛みつく。まるで首筋にはできなかった代わりとでも言うように、幾度も。
先程お預けされ続けた唇での愛撫に、アルカディアは打ち震えた。既に幾度も達するナカが、更に甘い締め付けを増す。顔がようやくクラウディオの頭の傍へと降り、そこで首を左右に振ったものの……それはあまりに酷く力なく、ただクラウディオの髪に擦り寄るばかりであった。
むちゅ…♡ぢゅう…♡♡と、雄子宮口は雄を食み続ける。クラウディオが一度耐えた為に、その懇願は熱くなるばかりであった。体は絶頂を味わい続け、雄膣は最奥を真似るようにきゅん…♡ぎゅぅぅ…♡♡と怒張に絡みつき、縋り続ける。
それだから、剛直がどく…どくん…♡と熱く脈打つさまも。その大きさと熱を増していく感覚も。陰嚢から先端へと、子種が管を登り、その身がいっそうの熱を帯びていくことも。そのように、雄の欲望が膨れ上がる様を。雌の身をもって、如実と感じ取れたのだった。
「ぁ……ぁ…ぁ…♡♡♡ぅ…♡う、ぅ…っ♡♡ッ♡♡っ…♡あ、ゃ、ぅ…♡♡」
脈打つ欲望に震えて、アルカディアがクラウディオへと抱き縋る。泣くような、期待に満ち満ちたような声につられて、クラウディオは顔を胸から離し、その背中を搔き抱いた。首筋に頬を寄せ、隙間なく胸同士を合わせながら、皮膚の裏の動脈から聞こえる鼓動を聞く。幾らも早い鼓動の音が愛おしく、それに聞き入る間に暖かな限界は訪れた。
「ッ♡♡♡ぁ♡♡あ゛……ッっ♡♡♡ぁ〜〜〜〜…♡♡♡♡ぁ♡♡ぁ♡♡っ♡〜〜〜〜っッ♡♡♡」
びゅっ♡♡びゅるるッ♡♡びゅぅ〜〜〜…♡♡♡と、勢いよく白濁が溢れ出す。吐き出された欲望が雌の部屋をしとどに満たしていく。体の中の、大切な個所を埋められていく。それは酷く堪らないのだろう。アルカディアはひときわ堪らなそうな声をまろびだし、法悦に浸る。指先が震えながらも、もがくようにしてクラウディオの背を幾度も搔き、幾重もの赤い線をつける。肩口に顔を擦り寄せたまま、クラウディオの耳へと喘ぎを注ぎ続ける。背はくねるように震え、背骨に沿って垂れたリボンを跳ねさせた。アルカディアの両足は、クラウディオの腰に絡みつき、きゅう♡きゅぅぅ…♡と弱弱しく締め付け、縋りついている。腕に搔き抱いた体は何処もかしこも愛おしい。愛おしい人だ。
どくっ♡どくっ♡♡と多量の子種を注ぎ続ける剛直を、雄膣は歓迎し続ける。きゅん♡きゅん…っ♡といった甘く深い締め付けは止むことなく、むしろしつこいほどに怒張に絡みついて、子種の欠片とて逃がさないといった風だ。白濁が雄の子宮を満たした後も、それは変わらなかった。
クラウディオは僅かに腰を引くと、すぐに擡げ、アルカディアの腰を強く押し付ける。ずちゅ♡ぬぢゅ…♡ぬぢぃ…♡♡と音を立てて亀頭を子宮口に擦り付け、嵌め込み、精液を擦り付けようとする。あまりに雄らしいその律動に、アルカディアは歓喜した。それは雄膣の収斂からも、そして背に回した腕が甘く縋りついてくる力からも明らかであった。
「……っ♡♡♡ッ♡♡……♡♡♡っ…♡っぁ…♡♡ぁ、ぅ……♡♡ぁぁ、ぁ……♡♡♡」
射精の勢いが弱まり、残滓までも残さず吐き出す間。クラウディオは深く息を吐き、搔き抱いた背中を優しく撫でていた。白い肌のどこにも、自分の触ったことのない個所などないようにする。最早月にすらもこの肌を触れさせまいといわんばかりに、その全てを優しく撫で尽くす。その手は畢竟、長い赤色の髪にも至った。すっかりと汗の滲んだその髪を何度も、何度も撫でる。褒めてやるように、慈しむように何度も。
それから、クラウディオは体を前へ傾けた。背を撫でていた手で腰を支え、撫でていた手で頭部を支えて、アルカディアの体をベッドへ横たわらせる。体が柔らかく沈み込んだのを確かめて、頬をアルカディアの頬へと擦り寄せてから顔を上げる。
久方ぶりに真正面から見たアルカディアの面持ちは、愛おしかった。頬を桃色に火照らせ、その血の気を耳にまで至らせている。快楽に蕩けきった眼はぼんやりとしながらも、クラウディオばかりを映す。頬を手で包めば、彼は甘えを隠すことなく掌へと擦り寄った。柔らかく暖かな頬を優しく撫でながら、クラウディオはその唇へ一度触れるばかりのキスを落とす。唇で優しく食むことを幾度か続け、それから下で舐ると、アルカディアは緩慢と口を開き、舌を差し出してくる。
熱い舌同士を絡めながら、クラウディオは目を瞑らないまま、眼前の愛しい人を見つめる。赤い眼差しは依然として情熱的だ。剛直を埋めたままの雄膣は未だ甘く絡みつき、雄の欲望が熱を帯び、硬さを帯びても、雄膣はそれを容認しているかのようだ。きゅぅぅ…♡と甘く締め付ける様からして、歓迎しているように思える。
「……もう一度、いいか?」
クラウディオは唇を僅かに離し、言葉を紡げば触れ合う距離でそう尋ねる。頬を覆い包む手はそのままに、指先で優しく柔らかな皮膚を撫でた。アルカディアはぼんやりとクラウディオを見つめたまま、暫し何をも答えなかった。けれど、クラウディオの唇へと吸い付くように合わせられる。ちゅ…♡ちゅむ…♡と、口づけを交わす唇が、解りきっていた答えを示していた。それだから、クラウディオは安心しきったまま、腕の中のプレゼントを長く味わうためにもう片方の手を伸ばした。