On sleepy nights

その夜は始まりからして慌ただしかった。
外から彼の車の音が聞こえたアルカディアは、手伝っていた簡単な事務仕事を切り上げてクラウディオを出迎えに行った。
けしてまだまだなくなりそうにない書類の山に嫌気が差して放り出した訳ではない。一人で黙々と机に向かっているのにうんざりして戦略的撤退をした訳でもない。
ただ一目彼の顔が見たかった、それだけのことだ。

だが車両から降りて来た男の顔を見てアルカディアは意外さからわずかに目を見開いた。日頃家の中以外ではポーカーフェイスを貫き通すクラウディオにしては、珍しくその顔には疲労が浮かんでいたからだ。
思わず事情を尋ねると出張先で面倒な取引先との会食やら会合が続いた上、帰路の途中にオルブライト家の残党の襲撃を受けたのだと説明を受けた。
最近随分と忙しかったせいもあってか堪えたようで、その疲労困憊は明らかだ。
久方ぶりの再会ではあったがこんな状態で無理をさせたいとは思わない。
ゆっくり休んでと労いの言葉をかけ、せめて見送りだけでもしようと寝室まで付き添ったが、おやすみと続くはずだった言葉はその口の中に飲み込まれ、そのまま部屋に連れ込まれてしまった。
気遣いを無下にされベッドに引きずりこまれたアルカディアも最初の内はクラウディオの体調を考慮して抵抗した。
しかし男にとってそんな抵抗など物の数にも入らない。戦闘による興奮と肉体的な疲労がピークを迎えていたクラウディオはいつもより口数少なく、そして余裕もなかった。
噛みつくようなキスに早く繋がりたくて急ぐような荒っぽい前戯。自分が射精するために容赦なく打ちつけられる腰にアルカディアは頭の片隅で何度も星が散った。
これほどまでに余裕なく抱かれるのは初めてだったが、こういうのもたまには悪くないかもと思う余裕がこの時にはまだあった。



「は、ぁっ、んぅ……?」

アルカディアがその異常に気づいたのは必至に息を整えている最中のことだった。
一番奥に流し込まれる熱い奔流に身を震わせ、その感覚だけで甘イキできるようになってしまった身体にずしりとした重みがかかる。
最初はクラウディオが珍しく甘えているのかと思ったがそれにしては重すぎる。
ふと胸の奥で生まれた予感は耳元にかかる男の健やかな寝息で確信へと変わった。

「……くらでぃお……?…クラウディオ…、寝落ちしてる……?」

アルカディアはまだ蕩けるような熱を帯びた声で何度か彼の名前を呼ぶ。
滅多にない状況だがクラウディオがベッドの上で先に落ちたのだ。しかも陰茎を後孔に入れたままで。
男の疲労度を考えれば当然のことだろう。むしろこの状態でよくぞ持ったと褒めてあげるべきなのかもしれない。全然褒める気にはなれないが。

「ん…もぅ…こんなになるくらい…疲れてるなら、ぁっ……休めばいい、のにっ」 

のしかかってくる逞しい身体は重いし、ぎゅっと抱きしめられてて動けない。男を迎え入れるために大きく開いたままの足も苦しい。萎えた状態でも羨ましくなるような長大さを持つ陰茎を受け入れたままの粘膜が勝手にひくついて快感を得ようとする。
だがそれでも責める気にもなれないのは惚れた欲目だろうか。
日頃一分の隙も無いまでに完璧な振る舞いを見せる男の弱った姿を前にしては、不思議と怒る気も湧いてはこなかった。逆に目を覚ました時の反応が気になるくらいだと思う己の末期さを自嘲しながら、アルカディアは汗に濡れたローズグレイの頭をくしゃりと撫で回した。

「(……それはともかくとして、この状況で…どうやって抜け出せば……)」

眠りに落ちたクラウディオの鋼の肉体は人体とは思えない重みでのしかかってくる。
意識はないのだから壁だと思って押しのけてしまっても構わないだろうか。クラウディオならきっと許してくれるだろうと勝手に判断したアルカディアは、触れ合う身体の隙間に入り込ませた腕に力を込めて退かそうとした。
だが抱かれたばかりの身体は体力も気力もろくに残されておらず、揺れる程度しか動いてくれない。

「っ、はっ…ぁ…」

しかもクラウディオの身体が揺れ動く度に、たくさん精液をこぼして力なくうなだれていたアルカディアの性器は二人分のお腹に擦りたてられ、後孔にまだ残された陰茎がぐちゅぐちゅと粘膜を撫で擦るのでこれでは込めた端から力も抜けていくと言うものだ。
どうにかしてこれを抜いてしまわねば、と腰をもぞもぞ動かすがカリの段差がふちに引っかかりあと一歩のところで抜けないまま。散々擦られてぷっくりと腫れ、赤くなった肉のふちは太い亀頭で押し広げられるだけでぎゅぅっと吸いついてしまう。

「もっ…寝てても人の身体を好きにすっ…ひっぅっ?」

悪態をつきながらも気力を振り絞りクラウディオの身体を押しやろうと、立てた片膝を震わせながら力を込めたまさにその時だった。

「はっ…んあ゛っっ!?」

自分の身に何が起こったのかよく分からないまま、アルカディアの口からはこらえきれない嬌声が溢れる。とっさにしがみついた肩に爪を立て腰骨からじんじんと響いて広がる快楽に耐えようとした。

「あっぁ、…ん、ぁっ…っはっ、ひっ、ぅ……」

突っぱねるはずの重い身体が突然動きそのまま巻き込まれるようにして身体がぐるりと反転してしまった。
先程までとは真逆の態勢、クラウディオの身体に覆い被さるようにうつ伏せたアルカディアは口の端から唾液をこぼしながらひくひくと全身を震わせた。
強引に態勢を入れ替えられたことは今までも何度かあったがこんな状態は初めてのことだ。
思考が逸れていたせいで頭の奥で跳ねた快感はすさまじく、逞しい腹筋に自ら押しつける形となったペニスからは薄い精液がとろとろとこぼれている。

「ひ、うぅっ……はぁっ…は…ぁ…」

これで抜けてくれたらまだ良かったのだがとっさに後孔を締めつけてしまったせいで陰茎はまだ挿入したままだ。
自分に快楽を与えてくれる太い陰茎を離すまいときゅうきゅうしゃぶりつく粘膜の貪欲さに呆れ果てる余裕すらなく、アルカディアは落ち着きを取り戻すまでの間しばしクラウディオの肉体をベッドに、ほの紅く染まった身体を震わせ続けた。

「(っ、こ、これいじょうは…やばい、気がするっ……ほんとに、はやく、ぅっ、抜かないと……)」

ダメになっちゃう、とほとんどダメになった思考で危機感を抱く。
俯せのままなんとか視線を上に向けるとクラウディオは変わらず昏々と眠り続けており覚醒する兆しすら見せない。秀麗な顔には驚くほど穏やかな寝顔が浮かんでおり、こんな状況に陥ってなければかっこいい可愛いと撫でてあげたことだろう。だが今のアルカディアの中にそんな余裕など欠片も存在しない。
先程覆い被さっていた時とは違いクラウディオはアルカディアの薄い背中を片腕で縫い留め、もう一つの腕は敏感になった腰回りをぎゅうっと掴んでいる。寝入った状態でも少しも離す気はないと全力で主張してくる。
普段であれば少し苦しいけれど我慢できるくらいの抱擁だと放っておいただろう。だが入ったままの陰茎は先程よりも亀頭を太らせアルカディアの雄膣を舐めしゃぶってお腹の中からも身体を圧迫する。

「…ぁっ、んっ」

なんて不埒なベッドだろうか。こんなベッド頼んだ覚えはない。

「ぅっ、ぁうっ、うぅっ……♡」

先程よりは動けるのだから今しかないと己を叱咤し、再び足に力を込めた。
後孔に収まった肉竿がゆっくりと粘膜を擦り上げる。湧き上がる快楽を目をつぶって堪えようとするが、喉からは絞りとられた果汁のようなか細い泣き声がこぼれ落ちる。
あまり大きく動いてクラウディオがまた動いてしまうといけないので慎重に抜こう。そう心の中で自分に言い聞かせて、アルカディアは這うような速さでゆっくりと腰を持ち上げた。

「はっ…ぁ…ゆ、ゆっくり……ぬけ、ばっ…ぁっ、あっ…♡」

背中に回された腕の力が緩んだタイミングを見計らい膝に力を集中させてぐっと腰を上げる。
ローションとクラウディオが中で出した精液でぐちゅぐちゅに濡れた内壁が張り出したエラにこそがれる。じれったくなるようなゆったりした動きで広がっていく肉のふちが拾う快楽に、このまま奥に押し込んだら気持ちよくなれると知っている身体が無意識に強張った。
そしてその一瞬の躊躇がいけなかった。

「ふぁっ…」

陰茎を包み込む粘膜の心地良い感触がなくなるのを無意識に嫌がったクラウディオの両手がアルカディアの尻を鷲掴んだ。 

「はぅっ、っんっ…!んぅっ、ぁ、あ!!♡♡」

腰が引きずり降ろされ、どちゅんっと下肢から水音が響く。
あともう少しで抜けるはずだった肉竿はアルカディアのお腹の中をこそぐようにして再び熱い粘膜の中に戻された。

「ぁあぅっ、ぁふっ…は、ぅっ♡寝てる、のにぃ…なんでぇっ…♡やぁっ♡」

やわらかみの欠けるお尻を大きな手で容赦なく揉まれ、堪えていた足から力が抜ける。
半端に沈み込んだ陰茎の先端がぷくりと膨れた前立腺に押しつけられる。意識はなくともあたたかな粘膜に優しく刺激を与えられた性器はすっかり勃ち上がり硬くなり弱い場所をごりごりと擦り上げる。

「ぃぁっ♡やぁあ゛ぁっ…♡っゃ、あっん♡ぁあっ…♡」

泣くほど気持ちがいい場所をカリ首に引っ掻かれ嗚咽まじりの喘ぎ声がこぼれた。
逃げようと腰を浮かすがお尻をしっかり掴まれては大して動くこともできず、すぐにまた引きずり戻されて前立腺を責め立てられる。ずっとその繰り替えしだった。

「ひっぅ、ぅっ♡や…だ、も…やぁっ♡」

とめどなく続く快楽についにアルカディアの口から泣き言が漏れた。一体いつの間にこんな淫蕩になってしまったのだろう。意識のない男の性器で勝手に気持ち良くなっていく自分が信じられなかった。
滅多にやらない一人遊びで快感を得る背徳と眠る男の陰茎に良いようにされる被虐に思考が爛れていく。
ここで全てを手放せばもっと気持ち良くなれると頭の片隅で天使のふりをした自分が囁くが、その言葉に流されてしまうにはまだ理性が残り過ぎていた。

「っ……は、ぁっ……♡」

幾度目かの覚悟を持ってクラウディオの肩に埋めていた顔を持ち上げた。起きてしまう前に、気づかれてしまう前に、この快楽の檻から抜け出したい。
お願いだからいい子にしていてと形の良い顎先に唇が触れる。だがその瞬間後孔を貫く陰茎がびくりと脈動したかと思うと熱い飛沫がどくどくと身体の中に弾けた。

「んぁっ!?♡ゃっ♡で、てる…っ?♡」

まったく予想していなかったタイミングで注がれる精液に中が濡らされて腰が跳ねる。たった二回の射精では満足し足りなかった精嚢は眠る間に与えられた性器への刺激を受けて我慢しきれなかったようだ。お腹の浅いところに精液をそそがれる感覚にたまらず下敷きにした身体にすがりつく。

「ぁっ♡ぁっ…あ…♡」

びゅくびゅくと中に射精され熱が広がっていく感覚に、か細い声が飲みきれなかった唾液と共に口の端からこぼれ落ちる。互いのお腹に挟まれたアルカディアの陰茎からは薄い白濁がとろとろと流れていた。
激しく揺すられたわけでも奥を亀頭で叩きつけられたわけでもない。ただ中に出されただけでこんなにも感じ入ってしまうなんて。
普段とは違う状況に陥ったせいで身体のタガが外れかけていることに気づいたが、そんなこと分かってもろくに身動きも取れなければどうしようもない。
少し身じろぐだけで前立腺を押し上げる陰茎をしゃぶり、たっぷり出された精液でぬかるんだ後孔からは聞くに堪えない水音が響く。耳を塞ぎたくとも腕を上げる力すら今は振り絞ることができなかった。
もう何をしても気持ちいいのだと自覚したことで、己の身にふりかかる全てのことを快楽として知覚してしまったアルカディアに残された逃げ道はもはやたった一つしかない。

「っ……く、くら、でぃお、おきてっ、おきてぇっ♡」

疲労から寝落ちた男の睡眠を守るために起こさないよう気遣っていたが取り繕えるだけの余裕はもうない。
アルカディアはクラウディオのうなじに頬をすり寄せ短く切り揃えられた爪で肌を引っ搔きながら必死に名前を呼んだ。しかしどれほど深い眠りに囚われているのか、返ってくる反応はその長い睫毛を震わせるくらいだ。
他者の気配に敏いはずの男がこれだけの状況に陥っていながら、どうして寝入ったままなのか理解できなかった。

「んぅぅっ♡ぅあっ♡ぁ♡もっ…むりぃ…♡」

再びぎゅぅっと身体を抱きしめられ受け入れたままの肉竿がどろどろに蕩けた粘膜をやさしく揺する。
途端に溢れだす甘く快楽にまみれた声など眠る男にとってはただの心地良い子守唄だとは知らぬまま、アルカディアはクラウディオの腕の中で長く可愛がられることとなった。



クラウディオは温かな湯船に浸かっているような心地良さに包まれながら、奥底に押し込められていた意識がゆっくりと浮上していくのを感じていた。
眠りにつく前の己の輪郭が定かではないが、恐らく意識を飛ばすようにして寝入ってしまったのだろう。このようなことは一体いつぶりだろうかとまだ眠りの淵で揺蕩いながら考える。
だが思考がまとまるよりも先に得も言われぬ快感がじわじわと全身に広がっていき、クラウディオは身震いした。この心地良さには覚えがあった。
自身が恋人と呼ぶただ一人の人。彼のやわらかな粘膜に包まれている時に感じる快楽のそれだと気づいた瞬間、男の意識は急速に覚醒した。

「ぁっ、ぁうっ♡うぅっ……♡」

言葉の形を失った甘ったるい嬌声が鼓膜を揺する。薄っすら開いた目蓋の隙間から見える室内は薄暗くまだ夜明けを迎えてはいないようだった。
深い睡眠から目覚めた肉体は意識だけではなく快楽もまたクラウディオの思考に叩きこんできた。

「ぅっ……」

快楽を知覚し喉から掠れた声が漏れる。自分の両腕が何かを抱え込んでいることを悟ると、堪えるために反射的にそれを強く掻き抱いた。

「あ゛ッ!♡ぁ、あっ、ぐっ♡ひぅうっ……ひっ♡」

なんと心地好い悲鳴だろうか。
糖蜜のように甘くなめらかな声は目覚めたばかりのクラウディオの脳を揺さぶった。だがそれと同時に熱く蕩けた粘膜が陰茎を包み込み鈴口にじゅうっと吸いついてきたので、起き抜けの無防備なところに襲い掛かって来た強い快感をやり過ごすべく抱きしめる腕に更に力を込めた。
そうしてしばし堪えて快楽をやり過ごしたクラウディオは、改めて腕の中に抱き込んでいたアルカディアの顔を覗き込んだ。そこにあるうつくしい顔は快楽に濡れどろどろに蕩けきっていた。

「…く…あっ…ぃお…♡」 

快楽に塗り潰された瞳を見た瞬間に、クラウディオは自身が昨夜アルカディアとの性行為の途中に寝落ちしてしまったことをはっきりと思い出した。
そして目の前にあるぐずぐずに溶けた顔が数え切れないほどの絶頂を味合わせた後に浮かべるそれと同じだと察した時、寝起きかつぐちゃぐちゃにぬかるみこの世のものとは思えないほど心地好い粘膜に陰茎を吸いつかれながらもなお明晰な脳が一つの可能性に辿り着く。
もしや意識を失って以降ずっとこうしていたのだろうか。こんなぐずぐずに煮込んだジャムのようになるまで、この陰茎で苛まれ続けていたのだろうか。
それはなんてあまりにも​​──

「ぁっ、うぅ♡ぬ、ぃ…ぬい…てっ…くるし…♡」

真っ赤に焼けつくような衝撃がクラウディオの思考を塗り潰そうとするのを抑え込んだのは、苦しそうに引きつったアルカディアの声だった。

「…入れ、た、まま、ねてから…ぬけな、くて、ずっ…と…くるしっ…」

「っ…ああ、悪い、悪かった。許してくれ」

ずっと苦しかったとすすり泣く声のか細さに、クラウディオは覆い被さっている薄い身体を抑え込みこのまま無茶苦茶に腰を揺さぶりたい衝動をぐっと堪えた。
意識のないままに無体を働いてしまったという負い目は欲望に僅差で打ち克った。
苦しさに歪む顔を見せないように気をつけながら、今抜くから心配するなとできるだけ優しく声をかけ、男とは思えぬほど細い腰を掴む。
ゆっくりと陰茎を引き抜くにつれ覆う熱い粘膜が離れていくのは男にとって耐えがたい苦痛でしかない。それでもこれ以上苦しめてはいけないと理性が情欲を押しとめる。
だがカリ首が粘膜のふちに差し掛かったところで、それまでクラウディオの身体の上ですすり泣き悶えていたアルカディアがぎゅぅっと首筋にしがみついてきた。

「ぁっ、ぁっ♡あ、ゃだ…」

やだやだとぐずついた声が鼓膜を揺する。

「落ち着け、いい子だから、大丈夫だ」

「やぁっ、ぬけちゃ、う…♡っぬくの、やだぁ♡おく、が、ほしっ…♡」

寝入ったままの状態でクラウディオの陰茎がかき回し続けたのは後孔の浅いところ、肉の輪のふちや前立腺ばかりだった。
そこはアルカディアにとって確かに泣くほど気持ちの良い場所だったが、お腹の奥にある快楽の底はずっと可愛がってもらうことができなかった。
ずっと入れてもらえなかった奥はクラウディオが欲しくてずっと泣いていた。もはや何が苦しいのか自分では分からなくなるくらいただただそれを求めていた。
それはクラウディオの思考を一瞬で塗り替えるだけの破壊力だった。

「ッ……悪い、後で責任は取る」

「ひゃっ、う、んぁあっ…!?♡……ぁっ、はっ…うぅ…♡」

クラウディオは腹筋の力だけで上体を起こすと強引にお互いの身体の位置を組み変えた。ベッドに仰向けに押し倒されたアルカディアは突如として襲い掛かってきた快感の衝撃に思考が焼き切れる。
焦点の合わなくなった瞳が覆いかぶさってくる男の顔を映し出すがそれが正しく見えていないことは明らかだった。クラウディオはもう一度心の中で、悪いと謝ってぐずぐずに蕩けた雄膣の中にいきり立つ肉竿を叩きつけた。

「ぁ、あ゛♡あっ、ぁ゛っ♡や、ぅぁぁっ♡♡」

飛びかけたアルカディアの意識は敏感になった粘膜を擦り上げる肉竿がもたらす強い快楽に引き戻されたようだ。
肉壁の奥に当たった亀頭で結腸口を押し叩くともう肩を掴むだけの力もないのか、シーツに投げ出されたままの腕が律動に合わせてがくがくと跳ねる。
力のない腰を抱え上げ奥を何度も小突く。ずっと求め続けていた快楽を与えられた結腸口は落ちるのも早く、先端がぐぽりと鈍い水音を立てて奥を穿った。 

「っんぁ♡ぁ♡ひっぅ♡ぉっ、く…きもち…♡」

理性の溶け落ちたアルカディアは腹の奥を犯される度に甘い声をひっきりなしに上げる。快楽にぐずぐずに溶かされた脳からまるで幼子のようなつたない言葉がこぼれ落ちる。
ずっと入れ続けられクラウディオの形になってしまった、どうしよう、ずっと入れてもらってないとだめになっちゃったらどうしようと言ってむせび泣くつがいに、クラウディオの神経が今度こそ焼き切れそうなほどの熱を持った。
溢れんばかりの愛おしさはこのまま抱き潰してしまいそうなほどの興奮を呼び起こし、抑えの利かなくなった肉体は手加減を忘れて何度も腰を打ちつけた。

「っうぁ、あ♡♡ぁっ♡なか…♡もっと…して♡♡ぁ、あ゛っ♡♡」

「それでいい、心配するな。お前はただこの身体で感じ取っていればいい」

「い゛っ♡あっ♡はぅっ♡くぁぅ、ぁっ♡ぃお♡♡んぅうっ♡」

「っ…」

「あっ♡ぁうっ♡うぁっ……んぅぅっ…♡」

ひときわ強い力で奥へと身体を押しつける。その衝撃にアルカディアのお腹の奥はひきつけを起こしたように痙攣し亀頭をぎゅぅっと引き絞った。
腰骨を走り抜ける強い快楽に逆らわずにクラウディオは熱い飛沫を奥へと叩きつけるように吐き出した。粘膜は嬉しそうにそれを舐めしゃぶり締めつける。
そうして残滓ごと絞り上げるような肉壁のふるえが弱まる頃にはアルカディアの意識は完全に落ちてしまっていた。
泣き濡れた顔は真っ赤に染まりクラウディオの目には食べ頃のように美味しそうに映る。だが、アルカディアにこれ以上の無理を強いる訳にはいかない。

「……はぁっ……仕方ない……」

クラウディオは深いため息をこぼして蕩けた粘膜の中から陰茎を一息に抜き去った。
ベッドサイドに置かれたデジタル式の時計に表示された時間を見る限り、二時間くらいは眠ってしまったのだろう。思いがけず極上の仮眠を味わったようだがそれをまったく覚えていないのが口惜しい。聞きたいと強請れば教えてくれるだろうか。
熱の引き切らない細い身体を抱きしめ薄っすらと汗に濡れたうなじを甘嚙みしながらそんな益体もないことを考えた。
これから数時間の後、自分の晒した痴態を受け止めきれずにベッドの上で丸まって籠城するアルカディアの機嫌を取るために四苦八苦する未来が訪れることを、クラウディオはまだ知らない。