坂頼海尽。 俺と同じ中学2年生。 人当たりは悪くない、と思う。 現ボーダー設立直後に入隊、A級に昇格した後に所属チームが解散し、それ以降誰とも隊を組んでいない隊員。 使用トリガーは、主に弧月。 前述のとおりソロ隊員なので、任務では常に他部隊と行動を共にし、A級に見合うだけの身のこなしで次々にトリオン兵を破壊する。 戦力としては、申し分なし。 ただし、悪癖がひとつ。 「また、手足をくれてやったのか」 モールモッドの山の上に立つ脚は、片方の膝から下が飛んでいる。 弧月を握っていないほうの腕は、肩から丸ごと無くなっていた。 こいつの悪癖、それは自らを省みないにも程があるということ。 肉を切らせて骨を断つ、どころか、骨を断たせて息の根を止めるとでも言うべき戦法を好んで用いる。 いくら負傷するのがトリオン体で、痛覚も生身への実害も無いとはいえ、見ていて気分はよくない。 「その状態で、新しく門が開いたらどうするつもりなんだ」 「緊急脱出させられるまでは、なるだけトリオン兵を壊すかなぁ」 「ふざけるな、お前が飛ばされればその分俺たちの負担が増えるのを理解しろ」 そうだね、と事も無げに呟きながら、片足で器用に残骸の山から飛び降りてくる坂頼。 ごめんねーと言いつつ悪びれた様子のない笑顔が、嫌いだ。 坂頼は最初の侵攻で特に被害が甚大だった区域の出身で、家族も自分も、かなり酷な目に遭ったと聞く。 それなのに、どうして笑っていられる。 どうして多く仇を討つよりも、自棄のような戦い方をする。 お前に、近界民への怨みはないのか。 見ていると、苛立って仕方が無い。 これだけのことが、俺が坂頼海尽に関して、知っていることと思うことの全てだった。 |